もともとは劇団ヨーロッパ企画の上田誠による舞台劇「冬のユリゲラー」が原作で、上田誠自ら映画用脚本を担当し、「踊る大捜査線」の本広克行が監督をしました。舞台を演じた俳優と、これまでの本広作品に登場した俳優が、入り乱れてのシチュエーション・コメディで、舞台では脇役だったテレビ局の女性ADを中心に展開します。
テレビで超常現象バラエティ「あすなろサイキック」を担当しているADの桜井米(長澤まさみ)は、こどもの頃から超常現象に強い興味を持っていて、日頃から自らもスプーン曲げに挑戦しているのです。しかし、番組に登場するのはインチキ臭い者ばかりであったため、上司から局に寄せられた多くの投書を検証して本物のエスパーを探すようにいわれます。
今日はクリスマスイブで、喫茶店「カフェde念力」には本物のエスパーが集まってパーティをすることにしていました。マスター(志賀廣太郎)自身は超能力を持っていませんが、昔エスパーに助けられた恩義があるということで、彼らが気楽に集える場所にしていたのです。
マスターは、サイコキネシスの河岡(諏訪雅)、エレキネシスの井出(川島潤哉)、透視の筧(中川晴樹)、テレパシーの椎名(辻修)らに「今日は新入りが来る」と言ってお使いに出ます。そこへやってきたのは桜井と待ち合わせしていた神田(岩井秀人)ですが、彼はテレビに出たいだけのインチキエスパーなのです。
そんなことも知らずに4人は自分の能力を神田に見せてしまいますが、遅れて登場したのが今回が初参加のテレポートの小山(三宅弘城)でした。神田にエスパーである秘密をばらされると困るため、神田の処遇をどうするか困っているところに、桜井が店にやってきます。
神田は技を桜井に披露するのですが、超能力とはとても言えるものではないため桜井はがっかりして帰ろうとします。ところが、筧が透視で桜井の持ち物の中に毒蜘蛛が紛れ込んでいることを見てしまったため、自分たちの超能力で何とか毒蜘蛛を退治しようということになるのでした。
映画化に際して桜井米が町をあちこちエスパーを探して歩き回るシーンなどが追加されてはいるものの、基本が喫茶店の中だけで起こる舞台劇ですから、あまり背景に奥行きは感じられません。正直、作者ではない別の映画専門の脚本家に任せた方が面白かったのかもしれません。
また、監督の本広もそんな脚本を尊重してか、時間の経過やストーリーの転換点で暗転する舞台的な編集を多用していて、いちいちCMでも入るのかと言いたくなるようなぶつ切り感があるのも残念なところ。せっかく舞台と違って、エスパーを信じている長澤まさみをメインに仕立てたのですから、彼女の主観で進行する形はできなかったのかと思いました。
結局、長澤まさみであってもなくてもいいような流れの中に、上田・本広の作品を細かく知っているマニアがクスっと笑うような小ネタ満載の映画なのかもしれません。