2025年9月30日火曜日

資格確認書と資格情報通知書


資格情報通知書というものが郵送されてきました。

比較的厚いA4サイズで、マイナンバーカードに健康保険証を紐づけした、いわゆる「マイナ保険証」を所有している方に送られてくるものです。

この通知書だけでは保険診療を受けることはできません。ただし、マイナ保険証の読み取りなどに不具合が生じた場合には、マイナ保険証と通知書をセットにして提示していただければ健康保険扱いができます。

とはいっても、これを持ち歩くというのは現実的ではないので、あまり利用価値は感じられないというのが正直なところです。

マイナ保険証を所持していない方には、資格確認書というものが送付されているはずです。呼び名が似ていて間違いやすいので、何か他のネーミングにしようと考えなかったのでしょうか。

資格確認書は従来のキャッシュカード大の保険証と、ほぼ同じ外観です。まさに、これなら今までの保険証でいいじゃないかと思うのが当たり前。せめて、呼び名は資格確認カードくらいにしてくれればわかりやすい。

マイナ保険証を持っていても、暗証番号を忘れたり、そもそもカードリーダーの操作が不可能という場合には、マイナンバーカードの写真などを見て、医療機関側が目視確認する方法も提供されていて、もう何でもありみたいな感じになっています。

ただし、目視確認はいちいちリーダーの設定を変更しなければならず、受付業務としては非常に煩雑なためとてもおいそれと対応できるものではありません。

何にしても、様々な混乱はまだまだずっと続くんでしょうね・・・・

2025年9月29日月曜日

ラッキーセブン (2012)


大泉洋の連続テレビドラマのレギュラー出演は、2005年の「救命病棟24時 Season 3」から始まり、2007年「暴れん坊ママ」で準主役、そして2008年「赤鼻のセンセイ」では主役と言う具合に出世しました。そして、2010年にはついにNHK大河ドラマ「龍馬伝」で重要な役を演じるまでになっています。2012年のこのドラマでは、主役の嵐の松本潤人気で大ヒットしましたが、準主役として瑛太と共にチームをまとめるそこそこ大事な配役を得ています。

もう一点、注目したいのは脚本チームの中心になったのが野木亜紀子というところ。2010年に脚本家デビューし、実質的にプロの脚本家として初めて参加したのがこのドラマで、全10話のうち7話に関与しています。すでに、スピーディな展開と、各登場人物のキャラクターが実に魅力的に描かれています。

北品川のラッキー探偵社は、社長が藤崎瞳子(松嶋菜々子)で、開業から瞳子をサポートする筑紫昌義(角野卓造)、ベテランの旭淳平(大泉洋)、武術の達人であり理系知識も豊富な新田輝(瑛太)、サバサバした女探偵の水野飛鳥(仲里依紗)、そして事務員ですがデジタル系に強い茅野メイ(入来茉里)というメンバー。

フリーターでセレブな女性と付き合ってヒモみたいな生活をしていた時多駿太郎(松本潤)は、ラッキー探偵社の素行調査にひっかかり金づるを失ったことで、探偵社に怒鳴り込んできますが、逆に瞳子に探偵としてスカウトされるのでした。

調査して終わりじゃ満足できない駿太郎に影響されて、問題の解決にも力を貸すようになり、チームはちぐはぐながら少しずつまとまっていくのでした。

瞳子の父は弁護士でしたが、今では大会社になった八神コーポレーションの16年前の地域開発の不正を暴こうとして、謎の死を遂げていたのです。八神の犯罪の証拠となる父の手帳を巡って、八神の手のうちの者が暗躍し始めたため、チームにも事情が知られたことで、彼らは一致団結して巨悪に立ち向かうことになるのでした。

やっぱり松本潤は喧嘩はそこそこ強いハンサム担当。瑛太とは事あるごとにぶつかり合うのですが、力では武闘派の新田に軍配が上がります。大泉の役どころはコメディ担当ですが、チームをまとめる係であり、時々はアクションも披露します。また警察の女性刑事(吹石一恵)との間に、ドラマの中で唯一のプチ・ラブラブ・パートも担当する美味しい役所です。

まぁ、大泉洋目当てでみるドラマではありませんけど、ドラマとしての完成度の高さは十分に評価されますし、松潤・瑛太のアクションも堪能できるのでお勧めです。

2025年9月28日日曜日

赤鼻のセンセイ (2009)


北海道のローカル・タレントとしては、知名度・人気が抜群に高くなったTEAM NACSのメンバーたちでしたが、2004年に初めて東京に進出し、大手芸能事務所AMUSEに所属して北海道以外でも活躍を始めました。

TEAM NACS の「切り込み隊長」、「広告塔」、「客寄せパンダ」と言えば大泉洋。瞬く間に、地上波テレビ・ドラマに出演するようになり、2008年には「アフター・スクール」で映画の初主演を果たしました。そして連続ドラマで初めて主演に起用されたのが、2009年の日本テレビのこのドラマでした。

脚本は2006年以降、大泉洋とのテレビの仕事が多い土田英生が中心となって作られていますが、モデルとなったのは昭和医科大学の院内学級を支えている副島賢和氏で、「あかはなそえじ先生」と呼ばれて病気のこどもたちから親しまれています。

石原参太朗(大泉洋)は、家電量販店の仕事をクビになっているところに、恩のある桜山総合病院の前院長(神山繁)から病院内の学校の先生に誘われます。病院の院内学級の責任者は太川絹(小林聡美)、美術担当は権田(光石研)、音楽担当は西森(平岩紙)らがいて、病気で長期療養しているこどもたの勉強を見ていました。現院長はおおらかな桜山真(上川隆也)で、小児科には若手医師で責任感が強い七瀬遥華(香椎由宇)、物静かな遠野(高橋努)医師がいました。

院内学級を利用している最年長は中学3年生の八重樫(神木龍之介)で、慢性の難治性小児喘息で長期入院を余儀なくされ、志望する高校からは受験を拒否されてしまいます。中学2年生の和田雅樹(須賀健太)は、重症の白血病。同じ中2の田中香(高良光莉)も慢性腎臓病により、退院の目途がたちませんでした。

院長の真は自らつなぎと言い、兄の優秀な幸一がアメリカから帰国すると、院内学級は不要と考えている幸一が院長になってNICU (新生児集中治療室)設置のため教室は閉鎖されることになると言うのです。

新米教師の参太朗は鼻に赤いボールをつけて、オヤジギャグを飛ばし、空気を読まず突進するためいろいろと問題を起こしますが、少しずつこどもたちも心を開くようになり、自らも命と向き合う彼らから多くの事を学んで成長していくのです。

病気で苦しむこどもたち・・・というのは、描き方によってはかなり重苦しいテーマなんですが、登場する人々全員が「明日を信じて」成長していく前向きのストーリーは、ベタですど素直に感動して共感できる。

初めて連続ドラマの座長をした大泉洋にとっても、比較的入りやすい役柄だったのではないでしょうか。そもそも、大泉をよく知る土田が最初から脚本を大泉に当て書きしたのだろうと思います。

小林聡美も参太朗に困りつつも見守り、必要な時は遠回しにアドバイスする先輩教師を好演しています。ただし太川先生の描き方だけは中途半端なところがあり、彼女の過去の話について途中で放棄してしまった感があるのは残念なところです。

参太朗は「人は笑うために生きている」という信念をもっていて、オリジナルなのか出典があるのかわかりませんでしたが、確かに「名言」だと思います。笑うことは大きな呼吸をして横隔膜を動かし、全身の血流が良くなることは明白で、新陳代謝を促し病気に対して良い方向に向かせるのです。

2025年9月27日土曜日

カメヤ演芸場物語 (2004)

これは、2004年11月に行われたイナダ組の第29回公演で、TEAM NACSと掛け持ちをしていた大泉洋、音尾琢真はイナダ組での最後の舞台になりました。森崎博之は2006年の本作の続編にも客演しています。

浅草の亀屋という演芸場に集う人々の人情味あふれる群像劇であり、大変よくできたストーリーです。時は1970年頃の高度経済成長期で、若者の一部は体制打破を目指した学生運動に身を投じていた時代の日本です。

亀屋演芸場の支配人は佐竹(森崎博之)、事務をしているのは御所河原(山村素絵)、芸人をめざしている夏目(飯野智行)が進行係です。楽屋に出番を待つのは、やたらと高座に出たがる落語家の出船亭金朝(川井"J"竜輔)、若手のトリオ・ザ・ハイセンスの石崎(岩尾亮)、クニ(江田由紀浩)、チー子(小島達子)の三人、そしてベテラン夫婦漫才のロマン(大泉洋)・カレン(棚田佳奈子)たちです。

ロマンは酒浸りで、カレンとの間に喧嘩が絶えません。石崎は芸に真剣に取り組んでいて、真面目にネタを覚えず稽古もしないクニに厳しく当たります。そこへ、学生運動家の一斉検挙を逃れてきた秋田徹郎(音尾琢真)が逃げ込んできます。この際だから、ほとぼりが冷めるまで夏目と組んで漫才をするようにロマンから勧められます。

石崎からそんな甘いもんじゃないと言われた秋田は、意地になって夏目と漫才をしているうちに、しだいにここにも一生懸命になれるものがあることに気がつきます。酒に飲まれていたロマンは、カレンが病気で倒れたことで酒をやめてカレンをつきっきりで看病するようになりました。

ネタが飛んで途中で舞台を降りてしまったクニに石崎は激怒して、トリオ・ザ・ハイセンスはついに空中分解してしまいます。自分の余命を悟ったカレンは、チー子にカレンを継いでほしいと言い、自分の芸のすべてをチー子に教え込むのでした。

そして、二代目カレン襲名披露の日、カレンは無理を押して楽屋にやってきます。しかし、一人きりになって面白くないクニが、秋田のことを警察に知らせたため、刑事と警察が踏み込んでくるのです。佐竹らが今日のステージがどれほど大事か必死で説明し、これだけはやらせてほしいと頼み込み、前座の秋田と夏目はステージに向かいます。

ロマンは、初めてカレンと上がったステージのことを思い出していました。ロマンの話を聞きながら、カレンは静かに息を引き取るのです。ロマンは「さぁ、しっかりと聞いていてくれよ」と言うと、チー子を連れ立ってステージに向かうのでした。

よくあるストーリーなのかもしれませんが、目標は違っても何かに向かって熱くなる人々がたくさんいた時代の空気を、とてもうまく描き出した舞台だと思いました。笑うところはそこそこありますが、かなりTEAM NACSの三人に頼っているところはちょっと残念かもしれません。

2002年には、似たようなテイストの「亀屋ミュージック劇場」を上演しており、2020年には本作を再演をしていますが、そこでロマン演じたのは「水曜どうでしょう」ディレクターの藤村忠寿というのが興味深い。作者の稲田博にとっては、それなりに思い入れがあるように思います。

年に2本のペースで舞台を行っていたイナダ組に、大学卒業前から在籍していたTEAM NACSの面々にとって、ここでの経験は演技者として大きく成長する糧になったことは間違いありません。

2025年9月26日金曜日

TKG


TKG・・・と言えば、まぁ、普通は「卵かけ御飯 (Tamago Kake Gohan)」というのが、世間の相場となっている。

いゃ、もちろん好きですよ、TKG。

大好きな方はかなりの高級卵をチョイスするようです。

中にはかけるタレなんかに、ものすごくこだわる方もいらっしゃるわけですが、自分的にはこどもの頃から大好きだったTKGはこちら。

豆腐かけ御飯 (Tofu Kake Gohan)です。

絹ごし豆腐をぐちゃぐちゃに潰してご飯と混ぜる・・・と言うと、何か汚い感じがしますけど、卵の場合だって同じです。ご飯の白和えと言えば耳障りがいい感じです。

豆腐の味噌汁だったりすると、わざわざ豆腐を取り出してTKGにすることもありました。

タレは醤油オンリーで十分。変に凝ったりすると、せっかくの豆腐の美味しさが半減してしまいます。

卵はずいぶんと価格が上がってしまったので、6個入りの物だと安いものを探しても1個40円くらいはします。豆腐は小ぶりの150g×3個パックが99円。1パックで十分ですから、1食33円ですむのも嬉しい。

これからはTKGと言えばこちら、となる・・・わけはないかな。

2025年9月25日木曜日

国勢調査2025


5年に一度の国勢調査が始まっています。

国勢調査は統計法という法律に基づいて、国籍を問わず日本に居住しているすべての人(世帯)に回答義務があります。

昔は一般から募集された調査員の方が、一軒一軒に回答書を配布し、かつ回収するという方法が取られていました。

うちの家内も調査員をしたことがあるのですが、何度も何度も訪問しなければならなくなり、なおかついろいろと文句も言われて苦労していました。

今はインターネットのサイトから回答が出来るので、調査員の方もだいぶ楽になったのではないでしょうか。スマートホンでもQRコードから回答可能です。

なお、メールで回答依頼が来る場合がありますが、少なくともメールで回答依頼してくることは絶対に無いのですべて詐欺メールなので注意が必要です。

実際、オンラインでの回答をしてみると、実に簡単で時間も数分間で終わりました。あれっ? こんなに少しだっけ、という感じ。

どう考えても、日本という国が以前のような勢いが無くなってきている中で、調査の結果でそれが明らかになるのかもしれません。

それでも、その中で課題を整理してより良い国作りに役立てる大事な資料になることを願うばかりです。なお回答期限は10月8日となっています。

よれよれになってきた与党、自由民主党の総裁選挙が始まりましたが、現状では総裁が自動的に総理大臣になるのでしょうから、一般国民には投票権はありませんが無視してもらいたくないと思います。

新総裁、新総理大臣には、国勢調査の結果をしっかり吟味してもらいたいものです。

2025年9月24日水曜日

お彼岸


暑さ寒さも彼岸まで・・・

まだ、このフレーズは生きているようです。

夏は灼熱地獄のようになった日本列島ですが、彼岸の入りになって急に朝は気温が下がりました。日中も湿度が下がって、30度近くなっても、暑さがしのぎやすくなったと思います。

昨日は秋分の日、秋のお彼岸の中日で、朝から恒例となっている墓参り・墓掃除に行ってきました。

空を見上げると、まぁ、見事な鰯雲。

まさに天高く、秋の空と言わんばかりの光景が広がっていました。

まだまだ、四季を感じることができることに、ちょっとだけ嬉しくなっりました。

2025年9月23日火曜日

アルプス (2004)

真面目に調べていないので間違っているかもしれませんが、TEAM NACS以外での舞台の数は大泉洋が一番多い。ただし、自作の舞台と言うことになると、おそらく戸次重幸が最も多いだろうと思います。TEAM NACSの本公演では、2000年の短編「通販番組」2003年の「ミハル」がありますが、2007年のTEAM NACS SOLO PROJECT以前に、3本の自作・自演出公演をおこなっています。

この公演は「ロックメン」と呼ぶ札幌で活動する各劇団のメンバーで結成した演劇ユニットによる「旗揚げ公演」として行われた、戸次重幸の作・演出の舞台です。ただし、旗揚げとなっていますが、その後は活動実績はありません。メンバーは戸次以外は、劇団イナダ組から川井"J"竜輔と江田由紀浩、ff男盛りレコーズの岩尾亮、劇団RUSHの高橋逸人、そして劇団深想達嘘の城谷歩の男性6人組です。

夏だというのに、日本アルプスの3000m級の高山の頂上付近は天候か急変して猛吹雪となりました。山田登(岩尾亮)は、山小屋に飛び込んできますが誰もいる気配がありません。そこへ山川進(江田由起浩)、さらに年配の山浪歩(城谷歩)、武道修行中の山上生(川井"J"竜輔と)が避難してきます。

彼らは暖を取りたいのですが、火をつけるものを持ち合わせていない。その時、奥の部屋から全身白い毛むくじゃらのイエティ(戸次重幸)が飛び出してくる。イエティは何と言葉がわかるらしい。しかも、マッチを持っていて人間たちをからかうように無駄に燃やしてしまうのです。山上が飛びかかると、このイエティは意外と弱い。

そこに登場したのは自信が持てない修験者の山出修(高橋逸人)で、今度こそイエティに勝つと意気込むのです。だいぶ前から、何度か勝負を挑んでいたのですが、勝ったためしがないらしい。でも幸いなことに山出はライターを持っていました。山田が暖炉の薪に火をつけようとした時、イエティは「やめといた方がいいよ」と言います。イエティの言うことを無視して火をつけた途端、まぶしいくらいの光が発せられ、山小屋は時空を超えて次元を移動してしまうのです。

基本的に、遭難して山小屋に集まった者たちが、時空トラベルに巻き込まれるというシチュエーション・コメディであり、ドタバタ感が強い作品です。一応、仲間となったらお互いを思いやり大事にするというメッセージはあることはありますが、その主張は薄めで個々の欲望が優先されている部分が目立ちます。

ですから、あまり深く考えずに単なるコメディとして楽しめばいい。戸次目当てで見ると、なかなか登場しないので、ファンの方は辛抱強く待つ必要があります。それぞれの演技は安定していますが、イナダ組の二人は経験値が高いように思います。ユニット名の「ロックメン」は、メンバーの岩尾が「岩男」になって英語になったところから来ています。

ちょっと気になるのは舞台の広さ。この手の話を展開するには広すぎるような感じがします。広い一室だけで、やや閑散とした感じ。音声だけで伝える隣の部屋で起こることは、けっこう重要な部分なので、上手1/4を隣室、下て1/4を屋外とかにして使うのもよかったように思います。ただ、予算はだいぶ増えてしまいますけどね。

2025年9月22日月曜日

ESCAPER〜探し続けていた場所 (1999)

1999年3月に、戸次重幸と音尾琢真が大学を卒業しましたが、この公演のため彼らは卒業式に出席しませんでした。これでTEAM NACSのメンバー全員学生ではなくなりました。この第5回公演は、リーダー森崎博之が初めて、完全フィクションとして作り上げたもので、冒険公演と呼ばれました。

客演は初期のTEAM NACSではお馴染みの3人。劇団イナダ組から川井"J"竜輔と小島達子、そして劇団SKグループから小山めぐみが参加しています。劇団SKグループは、戸次らと同期の北海道学園大学演劇研究会のすがの公が、1998年に立ち上げた演劇ユニットです。イナダ組ともメンバーの交流が深く、当時の札幌演劇界を盛り上げていました。

舞台となるのは、近未来の地球。多くの地域が砂漠化し、そのゴミ溜めのような土地の中にエンジャイルと呼ばれる死刑囚だけを集めた刑務所がありました。そこへ新たな囚人として送られてきたタクマは、囚人たち自身で娯楽を提供するチェリーさくらんぼ劇団に入ることになります。

チェリーサクランボのリーダーはモリサキ、こどもとの再会だけを夢見るシゲ、収監されて40年たつ最古参のオオイズミ、変態芸が得意なヤスケン、そして女囚のメグミとタツコで、誰もが大量殺人の罪を犯していました。

一方、別の時間軸では、時は現代。メグミはヤスケンとの婚約を発表するために、家にタツコ、オオイズミ、シゲ、タクマらの友人たちを招待しました。扉を開けると隣の部屋からヤスケンが飛び出るサプライズのはずでしたが、そこにいたのは緑のジャージのJでした。Jが静かに退場すると、その後にはヤスケンが死んでいたのです。

エンジャイルでは、チェリーさくらんぼによるショーが行われ大盛況でした。そこへ現れたのは、モリサキへの暴力行為で半年間懲罰房に入っていたJで、彼は「次のショーを楽しみにしている」と言って去っていきます。そして、看守に頼んだこどもへの手紙が捨てられているを発見したシゲは、怒りに震えるのです。

看守がシゲが脱走したことを報告します。そして、新たに看守のJが派遣されてきます。看守のJは何故かタクマを探しているのです。ほどなくシゲの遺体が発見され、チェリーさくらんぼは解散命令を受けてしまいます。

部屋を片付けていたメグミが扉を開くと、死んだはずのヤスケン、そして緑のジャージのJが現れメグミは腰を抜かすのです。実は緑のジャージのJは死神で、明日死ぬはずだったヤスケンを間違えて早くに死なせてしまったので、とりあえず生き返しておいたと言うのです。ヤスケンとメグミは、二人の最後の夜を過ごすのでした。

チェリーさくらんぼは最後の公演の練習をしていると、看守が登場しタクマの死刑執行命令を読み上げます。連れていかれるタクマをみつめていたのは、緑のジャージのJでした。モリサキは、全力でエスケーパー(脱獄して逃げる人)の劇を始めるのです。看守のシゲはエンジャイルの囚人の扱い方に疑問を抱いていたので、タクマを逃がしますが、所長のオオイズミは看守のシゲにタクマを射殺することを命令するのでした。

時空の異なる2つの場所でストーリーが進行するのですが、7人の俳優のうち両方の場所で同じ役をするのは川井"J"竜輔だけです。他の6人は、全員が看守であり、囚人であり、そして現代の人々を演じますが、それぞれの直接的な関連はありません。

それぞれのストーリーだけなら珍しいものではないかもしれませんが、死神というたった「一人」の存在をかませることで、生きることの大切さを両方からリンクさせていくというのは、森崎博之の「天才」的な発想によるものです。

また、舞台装置を初めて立体的に組み、3次元的な高低・奥行きを利用した森崎の演出も冴え渡っています。チェリーさくらんぼのショーで歌われるのはTHE BOOMの「気球に乗って」で、音尾のギターと森崎のハーモニカの伴奏で全員で歌い上げます。そして、その直後の安田の狂気はほとんどアドリブで行われているようで、舞台にいた全員がマジで笑い出している。まさに「変態安田」ここにありというエネルギーの爆発が見事です。

最後のシーンも、ステージを2つに割って照明の色を変え、左はチェリーさくらんぼの脱獄の芝居、右には実際に脱獄するオトオの行動をリンクさせるところは唸ってしまいます。そして、結末はまったく反対になる演出もさすがだと思いました。

まだまだ新米の演劇集団にもかかわらず、札幌の2か所で全20ステージを行い、そのほぼすべてを満席にするというのは、人気が先行しているだけでなく、見事なチーム・ダンスなどを含めてエンターテインメントとしての完成度がスバ抜けていることを実感できるものでした。

2025年9月21日日曜日

スマホでマイナ保険証 (運用中)


先頃お知らせした「スマホでマイナ保険証」は、無事に設定が終了し、国がシステムを開放した9月19日から当クリニックでは利用可能となりました。

昨日、初めてスマートホンで受診した患者さんがお一人いらっしゃいましたが、特に問題なく健康保険情報を確認することができました。

マイナンバーカードを利用する方法と比べて、特別に変わったことは無く、どちらを選ぶかは各人の好みです。スマートホンだから、より簡単というわけではありません。

スタート画面で「スマートフォンを利用」を選ぶと、AndroidあるいはiPhoneの機種選択画面になります。スマートホンで生体認証(FaceIDあるいは指紋認証など)を行うか、各自が設定した4桁の暗証番号を入力し、その後専用リーダーにスマートホンを近づけます。

重要な注意事項

事前準備であるスマートホンにマイナ保険証を搭載する方法については、当院ではご案内できません。個人情報の問題と、機種によって多少違いがあるため、医療機関側では対応できませんので、「スマホでマイナ保険証」を利用したい方は来院前に必ず各自で準備を完了して下さい。


厚生労働省からの案内

マイナンバーカードの健康保険証利用方法
スマートフォンのマイナ保険証利用について 



2025年9月20日土曜日

へのへのもへじ


どこで覚えたものか・・・たぶん、小学生の頃かもしれません。

へ・の・へ・の・も・へ・じ・・・

順番に平仮名を紙の上に書いていくと、あらあら不思議、人の顔になっちゃいます。

これはいつから広まったものかは謎だそうで、はっきりした起源はわかっていません。

おそらく、関西が発祥で、江戸時代のなかばに関東に伝わったらしい。

文字で絵を描くという文化は、遡ること平安時代からあったらしい。貴族たちの洒落た戯れの文化です。

しだいに庶民の娯楽として、ギャグ化したものの一つが「へのへのもへじ」だと考えられています。

江戸の浮世絵師として有名な歌川広重(1797~1858)が1848年に発行された「新法狂字図句画」という本の中に「へのへのもへいじ」と題した戯画があるのが有名。


確かにきゅっと結んだ唇の下の皮膚のしわが、まさに「い」になっている。しかも、この人は侍かそこそこの商人みたいで、「茂平治」さんということなんでしょうか。

ゆとりが無いと、このような遊び心は生まれてこないもの。今だと、パソコンのキーを叩いて絵を作るのに通じるかもしれませんね。

(^_^) (*´ω`*) (*´▽`*) (≧▽≦) (๑˃́ꇴ˂̀๑) (^∀^)

2025年9月19日金曜日

ライナス (2003)

稲田博は1960年生まれ、函館市出身。1990年に鈴井貴之と劇団OOPARTSを旗揚げし、1992年に独立して劇団イナダ組を立ち上げました。北海道学園大学の演劇研究会の会員も自然とイナダ組の公演に参加するようになり、TEAM NACSの安田顕以外は一時劇団員として活動することになります(安田はOOPARTSに所属)。

1996年に予定していた公演が中止になったため、急遽代わりに森崎博之と安田顕の大学卒業を記念した公演を行うことになり、TEAM NACSが結成され旗揚げ解散公演「LETTER〜変わり続けるベクトルの障壁」が行われたのです。森崎博之、大泉洋、戸次重幸、音尾琢真の4人は、TEAM NACSが東京進出するまで、並行してイナダ組の組員としての活動も行っていました。

本作は2003年夏の第26回公演の舞台で、稲田博の作・演出によるものです。タイトルのライナスはチャーリー・ブラウンの女友達であるルーシーの弟の名前にヒントを得たもので、ここでも主人公はブランケットを大切にしています。

松永竜一(音尾琢真)は、3歳の時に父・春夫(大泉洋)と母・陽子(棚田佳奈子)が離婚して、姉・千明(小島達子)と母子家庭で育ちます。しかし、心労から母が亡くなってからは、伯母の小坂淳子(庄本緑子)に預けられていました。竜一も結婚して、今は妻の伸子(出口綾子)と17歳の娘・まなみ(山村素絵)と3人暮らし。

まなみは竜一に反抗的で、今日も帰りが遅い。イライラする竜一でしたが、伸子は相手にしません。日付が変わる頃にやっと帰宅したまなみは、妊娠したことを言い出し、竜一と口論になります。竜一は行きつけのオカマ・バーで、ジュンちゃん(川井J龍輔)を相手に妻や娘から相手にされない愚痴を言うのでした。そして30年ほど前に、一時三鷹に住んでいたことを思い出すのです。

10年間音信不通だった春夫から、突然是非会いに来てほしいと連絡を受け、小坂の伯母に連れられて中学生の竜一(江田由紀浩)は大学生の千明と共に三鷹に着ていました。そこで出会ったのは、女装してオカマになっていた松永春夫でした。憤慨して帰ろうとする千明をなだめて、何とか食事だけでもと春夫の経営するオカマ・バーに立ち寄ります。

春夫は恋人の安西徹男(森崎博之)と店をやっていたのですが、従業員のオカマたちも混ざって宴会が始まります。酒癖の悪い小坂のおばさんが酔いつぶれ仕舞ったため、仕方がなく3人は一晩だけ泊まることになってしまいます。

翌朝竜一の姿が見えないことで、取り乱した春夫は徹男と口論になり、気が進まなかったのに何故こどもたちに会うことにしたかなどの話をしているのを、店の隅に隠れていた竜一に聞かれてしまいます。竜一は母にずっと暴力を振るわれ、何とか嫌われないように、自分を殺してきたのです。辛い記憶を出来るだけ封印して、自分の気持ちを表に出さないようにしていたのでした。

ところどころに笑いはあるものの、かなり複雑な人間模様を描いていて、一つの家族の重たい(不完全な)再生の物語です。この頃のTEAM NACSのエンターテインメントに比べると、ある意味より演劇らしい作品といえそうです。

とにかく圧倒的なのは大泉洋のオカマ。実に女性らしく、でもところどころに男であることも思い出させる素晴らしい演技です。今でこそ素晴らしい俳優だと思いますが、この頃にすでにこれだけすごい演技ができる俳優だったということに改めて気がつかされます。最終場面で、一瞬春夫が父(男性)に戻る瞬間は鳥肌ものです。

森崎博之も悪く言えば演技よりもムードメーカーという印象があったりしますが、ここでは落ち着いたきっちりとした演技をしています。音尾琢真は、大人のシーンだけでなく、過去の回想でも説明役としてずっと舞台に立ち続けています。まだ20代だったにもかかわらず、過去の辛い記憶から娘との関係に悩む父親を自然に演じているのが凄い。

登場する人々が誰もが一人になりたくないのに、どこかで一人にならざるをえなかったり、一人きりで辛い思いをしてきている。そして、それは簡単に解決できるものではないことを、強く訴えている内容です。TEAM NACSの面々の違う顔を知る作品として欠かすことはできないように思いました。

2025年9月18日木曜日

GHOOOOOST!! (2007)

2004年に東京進出した後のTEAM NACSは、メンバー各人がどんどん露出を増やし知名度を上げていきました。結成10年となり2007年以降は、「TEAM NACS SOLO PROJECT」を立ち上げ、チームとしての舞台と並行して個人での活動も開始されます。

その先陣の舞台を飾ったのは佐藤重幸でした。混乱しやすいのでずっと「戸次」と呼んできましたが、活動開始時から本名の佐藤を名乗っていました。2008年の年初より改名したのですが、これは2006年12月に病気で死去した母の旧姓「戸次(べっき)」をとったもので、難読なため「とつぎ」と名乗ることにしたのです。

2007年8月に行われた本作は、東京新宿と札幌市道新ホールで行われた、佐藤姓による最後の舞台です。母を亡くしたことが、少なからず影響した作品になっていると思います。佐藤重幸が自ら脚本を書き、演出はこの作品を機会に、度々TEAM NACSとの仕事をするようになる福島三郎です。

幕が開くと舞台の奥には3つの柩が横に並んでいて、真ん中の柩からでてきたのは会社社長の山田晴海(大河内浩)、右からは水木しげお(二瓶鮫一)、左からは北海太郎(野仲イサオ)が登場しますが、みんな幽霊です。水木と北海は山田に心からの謝罪を求めて責めますが、実は山田が飲酒運転で起こした交通事故の巻き添えで死んで幽霊になっていたのです。

そこにもう一人、キット(音尾琢真)という幽霊が登場します。自分もあの事故で死んだと言うのですが、そんな被害者がいたという話は誰も聞いていない。実は彼は、山田が運転していた車に搭載されたカーナビでした。山田の会社で密かに開発したAI搭載ナビで、山田が使い込んで人格が形成されていたのです。

葬儀場に現れたのは、山田の息子で副社長の手塚君彦(佐藤重幸)でした。君彦は社長が死んだので、自分が社長になって社名も変えて新たな事業を始めると言い出します。そんな勝手なことは許さんと山田が姿を現したので、他の者も一斉に見えるようになり君彦は驚くのです。

君彦は実は山田の愛人だった手塚文江(加藤たか子)のこどもでした。山田から援助が無く、文江は独りで君彦を育てるためにかなり無理をしていたため、君彦が小学生の時に亡くなっていたのです。母親が何と言おうとも、山田が会社に迎い入れてくれても、君彦は父親を許す気にはなりませんでした。

4人の幽霊は、供えてあった酒を酌み交わしているうちに意気投合して、それぞれちゃんと自己紹介しようということになります。北海は1万年以上前に地球に観光でやって来た宇宙人で、迎えが来ないために今に至ると言います。水木は600年前から妖怪の座敷童でした。

そこへ君彦が戻って来て、キットにプログラムのデータを返すように言い出します。キットを産み出した画期的なデータは、キットの仕業ですべて消去されていたのです。データを渡したら自分にも仲間を作ってくれというキットの頼みを君彦が了承したので、キットはパソコンに乗り移りデータに戻ります。

しかし、君彦はキットの学習してきたパーソナル・データについては破壊してしまうのでした。山田・北海・水木は怒り、それは殺人と同じだと言いでします。水木は自分の能力を使って、データを復元してキットを蘇えらせます。キットは怒って、君彦に乗り移ってすべての記憶を消して「人として死」なそうとしますが、乗り移って記憶を読み取った途端に元の体に戻ってしまうのです。

キットは君彦に自ら隠していたことを白状しろと詰め寄ります。実はこの事故は君彦が山田の酒に睡眠薬を入れたことで起こったのであり、すべては母親を見殺しにした山田への復讐であったと君彦は話します。さらにキットは、山田にも本当のことを話してやれと言うのです。山田が躊躇していると、その時、何と文江の幽霊が登場するのでした。

何しろ幽霊の中で元人間は一人だけで、あとは宇宙人、妖怪、そして極めつけはカーナビというかなり奇想天外な状況なんですが、不思議と見ているうちにあまり違和感を感じなくなるところは、脚本の妙というところでしょうか。特にこの頃にAI(人工知能)をもった機械を登場させると言うのは、けっこう先見の明があるなと感心します。

ところどころの笑わせる小ネタは時事ネタが多いため、今見るとあまり面白くはありませんが、根本的な設定が面白いので楽しく見ることができます。そこそこにテレビ・映画などで活躍している俳優さんばかりなので、演技に関してはまったく不安がありません。

TEAM NACSの舞台をいくつも見た後だと、良く言えば大人の舞台、悪く言うと熱量が少な目という印象ですが、SOLO PROJECTですから、いつもと同じことをしなくて当たり前なので、十分に楽しめました。

2025年9月17日水曜日

東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン (2006)

原作はリリー・フランキーの自伝的小説。文筆家、作詞家、イラストレーターなどの仕事をしてきたリリー・フランキーは、2001年に映画で俳優デヴューをしていますが、一般に名前が知られるようになったのは2006年に発表された本作が「本屋大賞」を受賞してからだと思います。

これをすぐさま映像化したのがこのスペシャル・ドラマで、「時間ですよ」、「寺内貫太郎一家」などを大ヒットさせたプロデューサーの久世光彦が、自ら切望して演出を担当、大泉洋や田中裕子のキャスティングも決めていました。脚本は「おかしなふたり」の土田英生です。

しかし、クランクイン直前に久世が急死したため、西谷弘が久世のプランを引き継いで数か月遅れで完成させました。全国に打って出て間もない大泉洋にとっては、初めて笑いを封印したシリアスな演技を主役として求められた作品です。

北九州の炭鉱町。"オカン"中川栄子(田中裕子)は息子の雅也(神木隆之介)と暮らしていましたが、夫の"オトン"弘治(蟹江敬三)は、別の場所で好き勝手な暮らしをしていて、たまに飯を食うためにやってくるだけでした。母子は、いつか東京タワーに一緒にいこうと約束していました。

東京の大学に進学した雅也(大泉洋)は、後輩の榎本(佐藤隆太)と毎日の食事にも困るような自堕落な生活をしていて、アパートも家賃を滞納して追い出されてしまいます。雅也と榎本が芝公園で野宿をしていると、東京タワーの案内係をしている真沙美(広末涼子)が友人と昼食をとっているのを見かけます。

真沙美のイキイキした様子に感化された雅也は、いろいろなバイトをするようになり、いつしか東京で絵を描く仕事をしたいという夢に向かってがんばるようになります。そして真沙美とも付き合うことが出来るようになりますが、オカンが病気になったため雅也は一緒に東京で暮らすことを提案するのです。

はじめは榎本や真沙美が訪れだけだった家に、しだいに雅也の仕事仲間や出版社の人々などがたくさん出入りするようになり、皆がオカンを囲んで楽しく食事をする毎日になりました。しかし、オカンに胃がんが見つかり入院してしまいます。

雅也はオカンのことで気持ちがいっぱいで、真沙美に別れを告げてしまいます。それでも、真沙美はオカンの見舞いをやめることはありませんでした。そしてオトンも久しぶりに駆けつけ、雅也が見守る中でオカンは息を引き取りました。オカンと一緒に行くと約束していたからと、頑なに東京タワーに行かなかった雅也は、真沙美に会うためについにタワーに上るのでした。

翌年に松岡錠司監督で映画版が公開され、大変評判がよかったのを覚えています。雅也を演じたのはオダギリジョーでオカンは樹木希林、オトンは小林薫でした。真沙美はミズエとなって松たか子が演じましたが、東京タワーでは働いていません。一番良かったのは、やはり樹木希林です。そしてオカンの若い時を演じたのが、実の娘である内田也哉子というアイデアは素晴らしかった。

テレビ版では真沙美の比率が大きく、より母と息子の関係性を際立たせている演出でしたが、映画のミズエはやや弱い存在。小林薫は寡黙な人のイメージが強く、オトンは無茶苦茶な感じは圧倒的に蟹江恵三に軍配を上げたくなります。

オダギリジョーと大泉洋は、どちらかといえばマザコン感ではオダギリジョーの勝ち。ただし、東京でのオカンとの生活と真沙美との関係性に主眼を置いたテレビ版と、オカンだけでなくオトンとの関係に着目した映画版という違いがあるようです。同じ原作でもだいぶ印象が異なりますので、出来れば両方を見てもらいたいと思います。

ちなみにフジテレビはこのスペシャル・ドラマの数か月後に倍賞美津子・速水もこみち主演で連続ドラマも放送しました。オトンは泉谷しげる、雅也の彼女は大学の同級生のマナミとなっていて香椎由宇が演じています。スペシャル・ドラマ版がベストという方は結構いるみたいです。

2025年9月16日火曜日

おかしなふたり (2006)

北海道の学生演劇集団だったTEAM NACSは、2004年の「LOOSER」で初めて東京公演を成功させ、大手芸能プロダクションであるAMUSEと契約し全国へ進出することになります。道内の活動は引き続きCreative Office CUEの元で行いましたが、2005年の「COMPOSER」ではついに全国ツアーをおこなうまでになったのです。

そして北海道テレビのバラエティ専門みたいだったテレビ出演も、2005年「救命病棟24時 Season3 (フジテレビ)」に大泉洋がレギュラー出演したのを皮切りに、戸次重幸は「1リットルの涙 (フジテレビ)」、安田顕や音尾琢真もNHKのドラマに出演ができました。2006年に放送されたこの作品は、新春スペシャルとして放送されたもので、大泉洋にとっては初めての主演ドラマとなり、森崎博之のドラマデビューにもなりました。

桜木直(大泉洋)は、学生の頃からイベント会社が大成功し結婚したものの、その後事業は行き詰まり妻はこどもを連れて去ってしまう。今では無職のまま、訳アリの人生を送る人ばかりが入居している復活荘という古いアパートで暮らしていました。

復活荘の住人は、他には男に触れるとアレルギーを起こして倒れてしまう元ホステスの奈津子(木村多江)、女性下着コレクターでブラジャーの歴史を本にしたい三田村(手塚とおる)、人生に役に立ちそうもないたくさんの資格を取ることだけが生きがいの笹山(大杉連)でした。

元妻(高岡早紀)が海外出張のため、しかたがなく直に8歳になる息子のの直史(広田亮平)は1か月間預けられることになります。直は直史と会うのは離婚以来、5年ぶりで、いいところを見せようと見栄を張りますが、賢い直史には簡単にばれてしまうのです。

しかし、直史のおかげで、下着泥棒と間違われた三田村を救ったり、復活荘の取り壊し計画を中止させたりできました。直は父親として5年分のこどもにしたかったことをできるだけ実行しようとしますが空回りの連続で、直史は「お父さん」とは呼んでくれません。

とりあえず前向きになった直を見ていて、復活荘の住人たちも少しずつ自分を変えようと考え始めるのでした。でも、直は父子の絆を取り戻せぬまま、約束の1か月がもうじき終わろうとしていました。

脚本は京都で演劇集団を主宰する土田英生。監督はすでに「ロング・バケーション」や「古畑任三郎」などで認められていた鈴木雅之で、土田の本や大泉の演技を生かすために、会話主体に長めのシーンを多用して舞台に近づけた演出を行っています。

森崎の出演シーンは高級レストランのウエイター役でほんのチョイ役でしたが、大泉が広告塔になってメンバーの仕事の幅がだんだん大きくなっていることが素直に嬉しかったようです。

ちなみに大泉にとっては「救命病棟24時」のプロデューサーだった中島久美子との再タッグの仕事であり、これを契機に2009年に中島と結婚していますから、そこそこ思い出深い仕事になったのではないでしょぅか。

2025年9月15日月曜日

ハヤシライス


・・・とタイトルをつけたものの、これ、ホントにハヤシライスと呼んでいいのでしょうか。

何を戯言を、と言われそうですが、しばしば巷で議論されているであろう「ハヤシライスとハッシュド・ビーフの違いは何?」問題というのがあります。

生きていくのにあまり関係ないので、明快な答えを確認したことがありません。

そもそもハヤシライスとは・・・

その呼び名には諸説あるようですが、料理用語として英語に「hash (ハッシュ)」というのがあり、意味は「細かく刻む、薄切りにする」ということ。ハッシュド・ポテトというのはよく知られていると思います。

そこで、明治時代にこの料理が日本に入って来て、肉を薄切りにして御飯にかけたものを「hashed beef and rice」と呼んだのが短く訛って変化したものが「ハヤシライス」となったと言うのが、最も有力な語源のようです。

ですからハッシュド・ビーフと呼ばれている料理は、はっきり言って同じもの。あえて言うなら、ハヤシライスはケチャップなどでやや甘めになっていることが多いようです。

基本的なハヤシライスのレシピは、牛肉(時に豚肉)の薄切りとタマネギのスライスをデミグラスソースで煮込むというシンプルなもの(時にマッシュルームのスライスも入ります)。

デミグラスソースは、小麦粉をバターで茶色くなるまで炒めたものに、肉(+骨)、香味野菜(タマネギ、ニンジン、セロリ)を加えてしっかりと煮詰め、ワインで仕上げたもの。いろいろな洋食で用いられます。

主としてすね肉のようなそのまま食べるには固すぎる部位を、タマネギ、ニンジン、ジャガイモなどと長時間煮込んで、デミグラスソースで味付けしたものはビーフシチューと呼ばれイギリス発祥とされています。塊肉を中心とした具材そのものを食べるのが目的で、主としてパンと共に楽しむもの。

薄切り牛肉とタマネギをデミグラスソースで煮込むものとして、ビーフストロガノフがあります。名前から想像できるようにロシア料理で、決定的な違いは最後にサワークリームを加えるところ。

似て非なる物はいろいろですが、まぁ、似たような味でどれでも美味しいので、家庭で楽しむ分には呼び方はお好みでよさそうです。

2025年9月14日日曜日

スマホでマイナ保険証 (ただいま準備中)


医療機関を受診する際に、保険診療を受けるために必要だった「保険証」は、新規の発行は停止されています。手元にある保険証は、基本的には最大で本年7月末までの有効となっていましたので、今の時点では効力のあるものはありません(ただし、あまりに多い例外あり)。

では、保険診療を受けるにはどうするか?

政府が推奨するのはマイナンバーカードに紐づけし、受診の際にはマイナンバーカードを「マイナ保険証」として提示する方法です。

マイナンバーカードへの紐づけは、各医療機関の受付に設置してある読み取り機で簡単に行うことができます

マイナ保険証の有効期限は、マイナンバーカードの有効期限と同じになりますので、しっかりと更新手続きをする必要があります

マイナンバーカードを取得していない、またはマイナ保険証として紐づけしていない場合には、行政から送付される「資格確認書」を使うことができます。従来の保険証と似ているので注意が必要ですが、今のところ最大令和9年9月30日まで(あるいは75歳誕生日前日まで)効力があります。

間違えやすいのは「資格情報通知書」というものも存在することです。これはマイナ保険証を保有している人へ送られてくるもので、これだけでは原則として保険診療での受診はできません。

また、マイナンバーカードの機能をお持ちのスマートホンに搭載できるようになっています。この機能を利用して、9月19日からマイナ保険証もスマートホンに組み込むことが可能になります

うちのクリニックでも準備を進めていますが、写真のマイナ保険証読み取り機の上にあるのが、スマートホン用の読み取り機です。この場合は、マイナンバーカードを提示しなくても「マイナ保険証」の機能が使えるようなりますが、トラブル時にマイナンバーカードも持ち歩いておくことが強く推奨されます。

マイナ保険証は医療機関としては、診療上も事務作業の面でもメリットがあるところだと感じていますが、制度が短期間でいろいろと変更になり複雑で把握が難しくなっています。

各情報についてリンクを貼ってありますが、あまりにも別々のサイトに情報が収載されていて驚きます。マイナンバーに関することは、一つのサイトですべてが把握できるようにしてもらいたいものです。

2025年9月13日土曜日

the TEAM NACS perfect show 〜なんでこんな時に〜 (2014)

これはドラマ? なんでしょうか・・・まともな劇団なら、絶対にこのオファーは受けないだろうという、バラエティ慣れしているTEAM NACSだからこその、かなりめちゃくちゃでいい加減な笑うしかない企画です。

CSチャンネルであるフジテレビNEXTで深夜に放送されたもので、台本は数日前に渡されていたようですが、収録当日の本番12時間前に集合、衣装合わせ、番宣取材、読み合わせ、リハーサルをこなし、一発勝負のノーカットの1時間のコメディを演じるという・・・

こんなバカなこを考えた張本人は福田雄一と知れば、あーなるほどと納得です。福田雄一が脚本・演出を担当し、隣接する3つのセットをナックスの5人が2~3役をこなしながら走り回るのです。しかも観覧する一般客をスタジオに入れて、緊張を煽っています。そんなドタバタの中で、少しでも"perfect"を目指すということ。

右端の「銀行の前の道」セットからスタート。銀行強盗による立てこもり事件が発生したため、現場には吉岡刑事(森崎博之)と三鷹刑事(音尾琢真)がいて、そこへ立花巡査(大泉洋)と富田巡査(安田顕)が集まり、4人だけで突入する計画を打ち合わせます。

そして作戦開始となって真ん中の「銀行内」のセットに移動。強盗のリーダーブラック(戸次重幸)がピストルを持って人質を脅かしています。ブラックは仲間のピンク(音尾)に、逃亡用のヘリコプターを用意するように警察に伝えさせます。人質の支店長(森崎)は縛られて身動きがとれない。さらに仲間のテンパ(大泉)とホワイト(安田)も加わります。

その頃、左端の「演芸場控室」セットでは、相方が現れずに困っている芸人・水本(音尾)がいて、マネージャー女史の重田(戸次)は、こうなったらそこで掃除をしているおじさん(大泉)を相方にしたらと提案します。ピン芸人のヤマダヤマダ(森崎)が入って来て、困っているなら俺とコンビを組もう、なんならおじさんも入れてトリオでやろうと言い出します。

その頃、「銀行の前の道」にはブラックの両親(安田・戸次)が到着して、吉岡・立花に頼まれて犯人を説得し始めますがうまくいかない。水本はテレビで立てこもりのニュースを見て、現場に相方がいるのを発見し、警察官の格好をしていた富田を連れて行ってしまいます。

「銀行内」や「演芸場控室」では、いろいろ動きがありますが、結局、「銀行内」に戻って、犯人の中に潜入捜査官がいるということになる。ピンクが警察官であることがバレてしまいブラックが拳銃を撃とうとしたとき、ホワイトが俺も潜入警察官だといいブラックに銃口を向けたため、ブラックとテンパは逃げ出すのです。「演芸場控室」では、富田を連れ戻した水本が重田の前でネタを披露するのでした。

このあらすじだけでもわかると思いますが、1時間の間にナックスの5人は裏に引っ込んで大急ぎで着替えて次のセットに何度も登場するというかなりの忙しさです。当然、間に合わないときもあり、着替えの途中で登場を余儀なくされたりもします。

そもそも、当然のことながら台本が頭に入っていない。ところどころで、言い間違えたり台詞が出てこないという事態が発生しますが、何とかアドリブで乗り切れたところもあれば、完全に真っ白になってしまうところもある。そもそも、最初の突入計画の説明では、全員が計画書という名目で台本のコピーを手に持っていたり、台本を持ったままセットに登場したりするという失態ぶりです。

さすがに、笑うに笑えない部分もあって、こればかりはナックスの責任というのは忍びない。やはり福田雄一の悪ふざけの度が過ぎると言わざるを得ない。福田は映画だとふざけすぎ傾向があり、テレビでは比較的ギャグをおさえているんですが、これはCSということでやりたい放題ということでしょうか。

しっかり準備して稽古を積んだ舞台をこなしてきたTEAM NACSですが、さすがに1日では"perfect"というわけにはいきません。それでも、アドリブ力の強さでかろうじてドラマを成立させたと褒めておきたいところですが、彼らにとっては悪夢のような時間だったかもしれません。

2025年9月12日金曜日

FOUR〜求め続けた奴等の革命 (2000)

TEAM NACSの第6回本公演ですが、タイトルには「番外公演」とついています。その理由は、4つの短編のオムニバス形式ということ。しかも、ここまでリーダーである森崎博之の作・演出の舞台だけをやってきた彼らが、初めて戸次重幸、音尾琢真、大泉洋、安田顕のそれぞれが作・演出しています。

会場はルネッサンス・マリア・テアトロで、ここは当時の若手の札幌演劇界を牽引する拠点になっていた劇場です。250席ですが、12公演で3000人を動員しているので、連日満席だったことがわかり、すでにTEAM NACSの人気が高かったことがわかります。この公演で、この数か月後に「WAR〜戦い続けた兵たちの誇り」を公演することを予告していましたが、このすぐ後に会場が閉館となっています。

「通販番組」 脚本・演出 戸次重幸

テレビの通販番組の収録風景をギャグにしたもの。とても誰も買いたくならないような品物を売り込みたいスポンサーが、新人MC(音尾)にムチャブリをして困らせるというもの。音尾の演技力が光ります。

「King of Curry」 脚本・演出 音尾琢真

カレー王が亡くなり、辛いカレーが食べられないカレー王子(音尾)、臣下のハンバーグ・カレー(大泉)、カツカレー(森崎)らと、カレー王子の命を狙うシチュー国のクリーム・シチュー(戸次)、シチュー王国からスパイとして潜入していたビーフカレーことビーフ・シチュー(安田)らがハヤシライスの秘密を巡って戦います。

物語の構成としては、一番まともに考えられている。きちんと細部を膨らませれば、通常の公演をうてるほどの内容だと思います。20周年記念企画では、朗読劇としても再演されました。

「ナックス・ハリケーン」 脚本・演出 大泉洋

アイドル・グループ(あからさまにSMAPのパクリ)のチーム・ナックスのステージ。チームは、ラストに「ナックス・ハリケーン」を歌って楽屋に戻ります。すると戸次が「もう、アイドルはやめたい。俺は芝居をしたい」と言って、一人でステージに戻り勝手に「西遊記」を演じ始めてしまいます。連れ戻そうとメンバーがステージに出ると、芝居に巻き込もうとするのでみんなも怒ってしまう。一人になった戸次はマイナー調の悲しい雰囲気で「ナックス・ハリケーン」を歌い出すと、全員が出てきて一緒に歌うのでした。

注目は彼らのテーマ曲みたいに今でも歌い続けられている大泉洋作詞・作曲の「ナックス・ハリケーン」の原典版が登場するところ。まさにSMAPというような、イントロ(SMAPの"ダイナマイト"の流用)での激しい踊りはなかなかのもの。また、その後は伴奏は無くアカペラというのが激レア物の楽しさです。

「すばらしい日々」 脚本 安田顕、演出 全員

年老いたTEAM NACSメンバーが森崎を中心に昔を懐古する話。森崎は娘と孫を交通事故で同時に失っていて、ずっと悲しみに暮れた生活をしていたのです。メンバーはそんな森崎に、楽しかった頃を思い出させて元気づけようとしますが・・・実は、すでにみんな天国に旅立っていて、森崎だけがメンバー最後の一人になっていたのです。

2008年のオムニバス映画「N43゚」で、森崎作の「AFTER」は、森崎だけが先に死んでしまうので、ある意味この話の裏返しのようになっていますので、合わせて見ると感慨深い。ただ、やはり安田作品は、この頃からやや複雑で理解しにくい所があるみたいです。

2025年9月11日木曜日

螳螂生?


螳螂生と書いて「かまきりしょうず」と読みますが、これは暦の用語で四季の「夏」の中の、二十四節季の「芒種(ぼうしゅ)」の中の、七十二候の第二十五候です。

簡単に言えば、6月5日から9日頃をさす言葉で、カマキリが卵からかえる頃ということ。

おいおい、今は9月だよ。しかも、いまだ残暑収まらず。今は本来は「白露(はくろ)」の中の「草露白(くさのつゆしろし)」で、草に梅雨が降りて白く光って見えるはずなんですが・・・

そんな中で、今年初めてカマキリに遭遇しました。

もっとも、このカマキリ、生まれたてではない。どう見ても大人。

この酷暑の中、何とか生き延びたんでしょうか。虫たちにも今の地球は住みにくい場所になっているのかしれませんね。

2025年9月10日水曜日

クリニック受付


どこでもクリニックを訪れると、まず受付があります。

そこで診療の申し込みをするわけですが、患者さん側から見ると、それなりにスッキリしているように思うかもしれませんが、けっこうゴチャゴチャしているものです。

まず、患者さんが見る景色なんですが、一番右にあるのがオンライン資格確認のためのマイナンバーカード・リーダー。一番左にあるのはクリニックの御伴、淡水魚の水槽です。その後ろにあるのが(いまだに使わされている)FAXと各種印刷をするためのプリンター。

引き戸になっている戸棚にはいろいろと種類や雑貨が入っていますが、基本的にあまり説明を要する物はありません。

じゃ、裏側を見てみましょう。


だいぶ混み入っています。

一番左はレジスター。暗くてわかりにくいのですが、その下にはビジネス用途のインクジェット・プリンターがあって、患者さんにお渡しする領収書や診療明細書などを印刷します。

電子カルテのパソコン(クライアント)は2台あって、それぞれが液晶モニター2枚を使うデュアル・ディスプレイ仕様です。その間には文具小物や電話機。その下にも各種書類を入れる引き出しの棚があります。

パソコン自体はスモール・デスクトップで机の下に収納していますが、左モニターの後ろには、さらにオンライン資格確認用のモニターレスのミニ・デスクトップが隠れています。

一番右、水槽の下にちょっと見えているのはオーディオで、BGMを流したりします。水槽の奥の部分は問診票などを記入していただくスペースとして利用しています。

狭いながらもスタッフがいろいろ考えて、何とか効率的に使えるように収納しています。日々の仕事の最前線ですので、時にはバタバタしてしまいますが、少しでもてきぱきできるように頑張っています。

2025年9月9日火曜日

水曜天幕團 蟹頭十郎太 (2003)

北海道テレビの開局35周年記念としてバラエティ番組「水曜どうでしょう」とTEAM NACSとのコラボ企画です。当時の北海道テレビ社屋の駐車場敷地をフルに使って、テントによる500人ほど収容できる本格的な劇場を建てての興行となりました。

「水曜どうでしょう」のレギュラー放送は2002年9月に終了していますが、その後は不定期に特番が作られていました。この企画もその一つです。

原作は「水曜どうでしょう」ディレクターの嬉野雅道、演出は同じく藤村忠寿、脚本は嬉野・藤村と社員の四宮康雅が担当し、戦国時代を舞台にしたファンタジー活劇となっています。出演はTEAM NACS 5人とCreative Office Cueタレント、そしてヒロインには三輪ひとみを招いています。三輪ひとみは、ナックスとの関りがある三輪明日美の姉。

下総の鷲頭領は隣国の騙し討ちの策略により滅ぼされ、13歳の世継ぎ小十郎は3歳の妹・綾姫を連れて城から脱出します。父は小十郎に名刀・備前長船を授け、「ひとを斬ってはならぬ。この刀は大切なものを守るために使え」と言い遺したのです。逃亡の途中で、隣国の組頭・弥七に発見されますが、弥七は「人間らしく生きろ」と言って彼らを逃がします。そして、小十郎は綾姫のために水を取りに川に降りた一瞬の隙に、綾姫は姿を消してしまったのでした。

小十郎は綾姫を探す旅を続け、髪の毛がぼさぼさになりまるで蟹のように見えたため、いつしか蟹頭十郎太(大泉洋)と名乗る浪人者になり13年が経とうとしていました。蟹頭十郎太は、人々が平穏に暮らす神州の地にいました。通りすがりの安藤源八(音尾琢真)と野盗を捕らえますが、源八は刀を抜かない十郎太を不思議に思います。

領主の神州無二斎(森崎博之)には、先妻の間の子・桜姫(三輪ひとみ)、そして後妻の築山(宮崎奈緒美)との間に赤子の千代丸がいました。桜姫が明日で16歳になるため、婿取りの儀を行なうことなっていました。その夜、十郎太は不思議な法師に出会い、「城にかかっている不気味な雲が災いをもたらす」と告げられます。母が亡くなってから10年間、白龍神社への毎日の参拝を欠かすことが無い桜姫は、長い参道で急に気を失ったところを源八に助けられます。

婿取りの儀では、最後の二人に残った十郎太と源八が翌日に真剣勝負をすることになり、二人は城の天守閣に泊まることになりました。話をしているうちに、源八が安藤弥七の息子であることがわかり、弥七は小十郎と綾姫を逃がした罪で打ち首になっていたのでした。十郎太も本名を名乗り、妹を探していることを告白します。

その頃、最近家臣になった黒龍丸(安田顕)は、千代丸がいながらどこの馬の骨ともわからぬものに城をわたそうという無二斎を殺してしまえと築山に迫っていました。そして、自分は桜姫を殺すため寝所に忍び込みます。築山は無二斎に毒を飲ませようとしますが、どうしてもできず自害してしまいます。そして、侍女(小橋亜樹)の知らせて十郎太と源八は桜姫を救出します。

母親から実の子ではないことを聞いていた桜姫は、初めて十郎太の手を握ってお互いに兄妹であることを感じ取ります。しかし黒龍丸が襲ってきたため、源八に桜姫をたくし十郎太はついに備前長船を抜くのです。死闘を制した十郎太は、新たな探し物を見つけるために旅立っていくのでした。

ストーリーとしてはあまりひねりが無い。誰もが想像する内容であり、ありきたりのものです。基本的には「水曜どうでしょう」などの番組のファンのために、番組に絡んだ小ネタをいろいろ挟んで喜んでもらうための芝居だと思います。

感心したのは、冒頭、物語のベースになる兄妹が別れ別れになるまでを、ほぼ大泉洋の講談調の一人語りで見せ切るところ。約20分続くこの場面は、芝居人・大泉の真骨頂が発揮されています。また音尾琢真の舞台での演技力の高さは、出演者の中でも群を抜いていることがよくわかります。

メイキングで初日前日のゲネプロ後に、終わり方がよくないとかなりの部分を削除しているようです。たしかに黒龍丸との闘いが最後の盛り上がる場面なので、その後は付け足しみたいなところがあるのかもしれません。しかし、そのためなのか、決戦中の台詞とかがあまり生きていないように感じます。直前の変更は混乱だけで、あまり良い作戦ではなかったのかもしれません。

また、ナックス・メンバーのギャグに頼り過ぎていて、大泉洋のけっこうな尺を使う物まねコーナーなどは冗漫ですし、やたらと出てくる音尾琢真の「魚顔」ネタもしつこすぎてうるさい感じ。テレビの専門家が、そのまま舞台の演出家として優れているとは言えないということでしょうか。

2025年9月8日月曜日

四国 R-14 (2000)

北海道限定演劇ユニットであったTEAM NACSは、北海道テレビのバラエティ番組である「水曜どうでしょう」にメンバーの大泉洋を送り込んだことで、知名度が一気に上がり人気を獲得していきました。

そして初めてメンバー5人全員が揃ってテレビに登場したのが、「水曜どうでしょう」の特別企画であるこの連続ドラマ(全4回)でした。

「水曜どうでしょう」は大泉以外は、ナックスの所属しているCreative Office Cueの社長である鈴井貴之と番組ディレクター2人がレギュラーで、メンバーの安田顕が準レギュラーでしたが、鈴井が第1回監督作品である映画「man-hole」の製作のためしばらく休みになったため企画されたものです。

「水曜どうでしょう」で2000年3月に収録された四国八十八か所巡りの中で、ある寺のところで、撮影カメラに異常をきたす怪奇現象(現実には単なる故障らしい)に見舞われたことを元ネタにして、ディレクターの藤村忠寿が監督、主として撮影を担当していた嬉野雅道が脚本を担当しました。

編成部長(安田顕)から低予算のドラマ制作を打診された藤木ディレクター(森崎博之)は、一緒に番組制作に携わる上島ディレクター(音尾琢真)に相談します。二人はローカルタレントの大沼陽(大泉洋)と四国お遍路の旅をしたときに、ある寺で怪奇現象が起こったことを検証することを思いつきます。

藤木・上島・大沼の三人は、再び四国にむかい、あの時と同じ時間帯に寺を訪問しました。すると、またもや不思議が減少が発生し、何かが迫ってくる気配を感じてその場を逃げ出します。

その時に録画していた映像を確認すると、どこかの田舎道の映像が映り込んでいて、藤木はどこかで見た場所だと思いますが思い出せません。上島は大沼の様子がどこかおかしいことが気になります。藤木がもう一度四国に行って、謎を明らかにしたいと言うため、上島は大沼の携帯に電話しますが通じない。そして、偶然に半年前の録画された衝撃的なニュース映像を見てしまうのでした。

ほとんどバカ騒ぎ的な番組であるのに、まったく笑いを廃した純粋なホラーに仕上がっていて、当時の番組の視聴者も相当混乱したらしい。まぁ、全体で90分程度のドラマとしては、うまくできている方だとは思います。ただし、さすがに低予算で涙ぐましい努力が繰り広げられているようですが、怖さはイマイチというところでしょうか。

タイトルは四国八十八か所巡りで撮影したビデオ・テープの14本目(ロール14)という意味。14歳未満視聴不可という意味ではありません。

本来は準レギュラーだった安田が上島役のはずでしたが、安田は鈴井映画の主演者の一人だったため、出番は少ない役になっています。また、メンバーの戸次重幸は、役が無いため、その他のエキストラ全部ということになっていて、顔がはっきりわかるのはその中でも数秒だけです。戸次の登場回数を当てるクイズも行われました。

まぁ、ナックス揃っての初テレビ出演という記念ではありますが、初ドラマですから舞台との違いが大きく、メンバーはまだまだ馴れていない感がたくさんあります。彼らの若い時の記録の一つとして、楽しめればいいんではないでしょうか。

2025年9月7日日曜日

タヒチ風キーマ・カレー


タヒチって・・・遠いですね。南太平洋、フランス領ホリネシアで、地球儀でいったらハワイのずーっと下の方。

タヒチアン・カレーというのありますが、実はこれは日本製で、タヒチをイメージしてココナッツ・ミルク、マンゴー、バナナなどを使ったもの。

タヒチアン・カレーの店として超有名なのが湘南にある珊瑚礁で、特にキーマカレーは代表的な人気商品になっています。昔、食べたことはありますが、何しろ渋滞の激しい湘南の海岸道路に行く元気は無いので、今回は自分で再現してみました。

さすがにそのものズバリというレシピはネットでも見つけられませんでしたが、いくつかのヒントは得ることができました。ポイントは、使うのはマンゴーチャツネ、使わないのはココナッツミルクということらしい。

まずは挽肉を炒めます。大事なのはしっかりと焦げ目をつけること。フライパンに広げたら、しばらくいじらない。焼き色がついたら何度かひっくり返して、全体に焦げ目がつくまで行います。

次は、例によって飴色タマネギ作り。ただし、今回は多めに、かつかなり入念に飴色にします。かなり茶色が濃くなるまで、いつもの倍近い時間をかけました。挽肉とタマネギをしっかり茶色くすることで、全体の色合いが決まります。3人前くらいで、挽肉は300~400g、タマネギは大2個使いました。

ニンニクとショウガは、それぞれチューブで大さじ1くらい。トマト缶は1/2の200gです。ここで、いつもなら煮詰めてペーストにするのですが、今回はキーマカレーなので、ざっと混ぜるだけ。

スパイスはいつもと同じ。ただし、ターメリック、コリアンダー、クミンは大さじ1.5くらいで、多めにして深みをだします。カイエンペッパーは大さじ1/2ですが、むしろ少な目でもいいかもしれない。塩を適量入れて味を整えます。

先ほど炒めた挽肉を入れて、マンゴーチャツネを50g程度投入。数分間煮ると出来上がりです。お店の真似でレタスを横に盛り付けた御飯の上にかければ珊瑚礁風のタヒチ風キーマカレーの完成です。

フルーティな甘さとスパイスの深みが際立つ、南国をイメージできる美味しさです。

2025年9月6日土曜日

TEAM NACSのはじまり


多くの劇団がある中で、TEAM NACSが今のような「最もチケットが取れない」と言われるような人気を得るようになった理由を知るためには、やはり彼らのスタート・ダッシュを理解しておくことが必要です・・・というわけで、簡単に彼らのアーリー・ヒストリーをまとめてみました。

森崎博之。1971年、北海道のほぼ中央、上川郡東川町で生まれ、旭川西高校をへて1990年に北海道学園大学に入学し演劇研究会に所属しました。1993年から稲田博主宰の劇団イナダ組と鈴木貴之主宰のOOPARTSに参加。なお、イナダ組はOOPARTSから独立した劇団です。

安田顕。1973年、室蘭市に生まれ、室蘭栄高校をへて1992年に北海道学園大学に入学。当初ジャズ研に在籍するも、レベルが高すぎたため退部。12月に演劇研究会に所属します。1993年に辞める森崎に代わってOOPARTSに参加。

戸次重幸。1973年、札幌市手稲区生まれ、本名は佐藤重幸。手稲高校をへて、1浪して1993年に北海道学園大学に入学し演劇研究会に入会。1994年にイナダ組参加。

大泉洋。1973年、江別市生まれ。札幌藻岩高校卒業後、2浪して1994年に北海道学園大学に入学し演劇研究会に入会。1995年にイナダ組参加。

音尾琢真。1976年、旭川市で生まれ、旭川西高校(森崎の後輩)をへて1994年に現役で北海道学園大学に入学し演劇研究会に入会しました。なお、高校では新体操部部長を務めました。彼も1995年にイナダ組に参加しました。

1995年10月、大泉がOOPARTSの紹介で北海道テレビの深夜番組「モザイクな夜V3」に「二代目元気くん」として出演し、話題になります。この時、芸能活動のために鈴井貴之が1992年に設立したCreative Office Cueに安田と伴に所属しました。またこの頃、「ガメラ2 レギオン襲来(大映/東宝)」に安田、大泉が端役で映画初出演をはたしています(鈴井も出演)。

森崎と安田が1996年3月に大学卒業が決まりますが、ちょうどその時期に予定されていたイナダ組の公演が中止となったため、その会場を利用していつもつるんで遊んでいた5人はTEAM NACSを結成し旗揚げと同時に解散公演を行うことにしました。それが、今では幻の第1回公演とされる「LETTER〜変わり続けるベクトルの障壁〜」でした。

森崎作品としては演劇研究会の公演として「CHAIR〜立ち続けることは苦しいから〜」、「DOOR〜在り続けるためのプロセス〜」というタイトルがあるので3作目にカウントされます。森崎作品のタイトルは、「~R」で終わる英単語と「~続ける(続けた)~」という副題が付くというのはスタートからでした。

森崎と安田が抜けて、当然チームは解散となりますが、大泉は1996年10月に北海道テレビでスタートした「水曜どうでしょう」のレギュラーとして鈴井と共に出演することになります。鈴井と大泉の二人が出たとこ勝負で無理矢理に旅をするだけの番組でしたが、大泉のトーク力が爆発し人気番組となっていきました。

東京で就職した森崎と安田は、芝居をやりたい気持ちが捨てきれず10ヵ月で二人とも退職し、北海道に戻ってきます。そして戸次、大泉、音尾に連絡を取りチームを再結成し、1997年8月に復活公園と銘打って「RECOVER〜描き続けるもう一つの結論」を成功させました。さらに1998年3月には大泉の卒業を機に、プロの劇団としてやっていく決意をもって卒業公演「FEVER〜眺め続けた展望の行方」を上演します。

大泉のテレビ露出により知名度がどんどん上がったことが功を奏し、舞台は回を追うごとに集客数が増加。1998年4月のデヴュー公演「再演DOOR〜在り続けるためのプロセス〜」で収益が黒字となります。1999年3月に戸次・音尾が大学を卒業し、冒険公演「ESCAPER〜探し続けていた場所」を成功させ、森崎・戸次・音尾もCreative Office Cue所属となり、名実ともに職業俳優ユニットとしてスタートしたのです。

少ない北海道テレビ独自のバラエティ枠は、鈴井らの企画がしばしば登場し、タレントとしてTEAM NACSのメンバーが起用される機会が増えたことで「北のSMAP」と呼ばれるようにもなり、人気を不動のものにしていったのでした。

2025年9月5日金曜日

LOVER〜想い続けたキミへの贈り物 (2001)

TEAM NACSの第7回公演ですが、「ときめき公演」としています。本来は2002年に上演した「WAR〜戦い続けた兵たちの誇り」が予定されていましたが、会場の閉館により急遽こちらに差し替えになっています。

リーダーの森崎博之による脚本・演出ですが、ナックスとしては珍しい恋愛コメディになっているので、サポート・キャストとして、当時メンバーが親しくしていたSKグルーブから小山めぐみ、福村澄江の二人、劇団イナダ組から小島達子、山村素絵、川井J竜輔の三人が参加しています。

始まっていきなりウェディングドレスを着たメンバーが、自己紹介を兼ねて一人ずつ飛び出してきます。中でも、"平成の怪物"安田顕の期待にたがわない裸同然の姿は嬉しい。それにも増して、戸次重幸が日本刀を振り回して出てくるところはまったく意味不明ですが、何か凄い。

まず恋人同士の戸次と素絵の別れのシーンから物語がスタート。振られた戸次を慰める大泉洋と音尾琢真でしたが、そこに大泉の携帯に電話がかかってきます。素絵も友人のめぐみと達子に慰められていたのですが、達子の発案で合コンをやることになり、めぐみが知り合いの大泉に人集めを頼んできたのです。

大泉とめぐみは4年前からともだち以上恋人未満が続いていて、お互いに好意を持っているものの進展が無いままでした。大泉と戸次、音尾以外に仕事場の部長の森崎、主任の安田が加わり待ち合わせた店に行きます。めぐみ、達子、澄江の三人が先に到着していましたが、4人目に登場したのは強烈な個性が爆発する順子(川井)でした。それより遅れて5人目として登場したのが素絵だったため、戸次は凍り付いてしまいます。

それでも、森崎・素絵、音尾・達子、戸次・澄江、そして安田・順子というペアができます。男性5人にはときめきを応援するときめきマンがそれぞれについていて、森崎にはピンク(戸次)、安田にはイエロー(音尾)、戸次にはブルー(安田)、音尾にはグリーン(森崎)がついていて、ときめくほど風船が膨らみ、ときめきが無くなると風船が割れてときめきマンも消えてしまうのです。何故か大泉についたときめきマンのレッドは大泉自身が演じます。

めぐみは昔からの夢だったデザイナーになるため、もうじきイタリアに移り住む決心をしていたのです。告白をしようかと思っていた大泉は、先にその話を聞かされ意気消沈して持っていた風船がしぼんでしまうのでした。

大泉以外の4組はいろいろあって結局はうまくいきません。それぞれのときめきマンは、レッドを復活させるために、めぐみの出発に合わせて大泉を飛行場に連れ出すのです。大泉は惠のもとに駆け寄ると「愛してる~」と絶叫。その途端に、ものすごい量の風船が舞台になだれ込んでくるのでした。

という、ほぼ王道のラブコメで、作者の森崎の引き出しの多さに感心しました。女子5人の一人に女装の川井を混ぜて、ナックスメンバーだけに頼らずに笑いを入れ込んでいます。舞台はシンプルですが、やはり照明をうまく使って、細かく場面をいろいろな場所に作るのは森崎演出の得意技です。

女子組との対比の仕方も、ちょっと凝り過ぎ感はあるものの、当時の若者たちの文化・情景が目に浮かんできます。準備期間が少な目で用意された舞台としては、傑作とは言わないまでも楽しく見れる作品です。

2025年9月4日木曜日

パキスタン風無水カレー


パキスタンは、インドの西隣の国で、しばしばインドとの争いがニュースになります。この国のカレーは一般に水気が少ないものが多いらしい。札幌にカラバトカリーというパキスタンカレーの有名な店があって、それを真似たレシピをネットで公開している人がいたりします。

それを参考にして作ってみました。

基本的なパターンは一緒なんですが、一番の特徴は水を加えないので、トマト缶は通常の2倍量を使います。また、パキスタンはスパイスが多めらしいので、スパイスの量は多めで種類も増えています。

飴色タマネギ作りは同じ。ニンニク、ショウガはやや多め。トマト缶はいつもは2~3人前で1/2缶(200g)を使いますが、今回は1缶全部利用します。炒め煮はしないで、スパイスを投入します。

ターメリック 大さじ1、クミン 大さじ1、コリアンダー 大さじ1.5、カイエンペッパー 大さじ1/2。さらに今回はクローブ 小さじ1、ナツメグ 少々を追加しています。

ここで鶏むね肉を入れますが、ポイントはこれを全部煮崩してホロホロにしていくこと。最初に5cm角くらいに切っておいて投入します。ここからは、水を追加せずに蓋をして弱火で煮込んでいきます。ここで塩を加えますが、味は薄めにしておく。

20~30分もすると、肉の線維がほぐれてくるのでヘラで軽く潰すようにしてバラバラにします。蓋は外してさらに10分ほど煮込むと、だいたい出来上がり。

御飯にのせて旨みの凝縮したカレーを美味しく食べましょう。

2025年9月3日水曜日

雅楽戦隊ホワイトストーンズ 〜最終章 呪われし神々の行方 (2003)

熱烈な要望を受けて、「ドラバラ 鈴井の巣」の「雅楽戦隊」シリーズ第3弾・・・なんですが、どうやらスポンサーからの要望が強かったらしい。ところが、スタッフは困った。というのも、前作で主人公の一人、南郷が死んでしまい、物語も一定の解決をしています。

ただし、最終シーンで何者かがカギとなる巻物を拾うシーンが挿入されていたことから、これは企画した鈴井貴之の確信犯的なところがありそうです。前作から5年後ということにして、南郷の代わりに息子の大志が加わることで、ホワイトストーンズを復活させました。

あの戦いから5年後、北郷(戸次重幸)は、皆の溜まり場である喫茶店HEROのマスターになっていました。本郷(安田顕)は、バカでも強くなれることを書いた本がベストセラーになり東京大学の講師として教壇に立っています。そして、大門は故郷の礼文島に帰り、漁師になっていました。恋人の富子(小野優子、HTBアナウンサー)がいたものの、洗脳された妹は元に戻らないまま亡くなっていました。

宮城県白石で爆弾テロ事件が発生します。札幌市白石区は宮城県白石の人々が明治の初めに入植してきた場所なのです(これは本当)。嫌な予感がした本郷は急遽戻って北郷と共に怪しいビール工場に潜入すると、二人の首領をトップにしたネオ悪の秘密結社に襲われます。しかし、二人だけではホワイトストーンズに変身できないため、逃げるので精一杯でした。

そして、白石区でも爆弾テロが起こり、南郷の息子の大志(北野雄大)と母親(北川久仁子)が巻き込まれ、母親が亡くなります。大志は母親の仇を討つためホワイトストーンズに加わるのでした。しかしまだこどもの大志は爆弾怪人に倒され、大志もまた川北博士(音尾琢真)の改造手術でより強くなって蘇るのです。

大門は「あなたを必要とする人がいる場所に戻って戦って」という富子の言葉により、ついに再び立ち上がります。川北博士も自分に責任がある悲劇の連鎖を止めるため、自らを改造したポプラーマンに変身しますが爆弾怪人と共倒れになってしまう。川北博士は、巻物を拾って白龍神社に隠したことを言い遺しました。

大門は白龍神社で巻物と共に伝説の剣と鏡を発見しますが、そこへホワイトストーンズが駆け付け、ネオ悪の結社の二人の首領(安田・戸次)も現れます。二人のボスは本郷と北郷に瓜二つの姿で、戦ってもまったく同じ力を持っているのでした。大門は善と悪は表裏一体であることに気がつき、剣で鏡を割ると強力な光によって二人の首領を倒すことに成功します。そして巻物は火を放って燃え、白鳥となって飛び立っていくのでした。

ヤマトタケルの東北遠征伝説を織り交ぜて、一見、壮大なストーリーになっているんですが、かなり無理矢理感は否めない。ただ、理詰めで見るようなものではないので、単純にどうでもいいようなストーリーを楽しめばいいだけです。

ドラバラの凄い所は、芝居だけでなく強引にナックスのメンバーに歌も作らせているところで、ふざけた歌詞もありますがけっこう良い曲がたくさん出てくる。彼らが鼻歌的に作ったメロディを、採譜して曲に仕上げるター・ナー・カー氏の技量には脱帽です。これらはTEAM NACSの結束力や技術的な底上げに大きく役立っていると思われ、かれらのアマチュアからプロへの脱皮を助けたことは間違いありません。

2025年9月2日火曜日

雅楽戦隊ホワイトストーンズ 〜白き伝説よ永遠に (2002)

「ドラバラ 鈴井の巣」で放送された「雅楽戦隊ホワイトストーンズ」シリーズの第2弾。札幌市白石区だけを守る戦隊物で、基本的には完結編です。

南郷進(鈴井貴之)は、兄を悪の秘密結社に誘拐され、国際秘密諜報員の大門通(大泉洋)は妹を誘拐されている。悪の秘密結社は再び、白石区を狙って暗躍し始めました。彼らはこどもさらって改造し戦闘員として育成していたのです。

幼稚園バスを襲って大勢の園児を誘拐します。こどもたちを助けるため、南郷、本郷(安田顕)、北郷(戸次重幸)はホワイトストーンズに変身します。建設中の札幌コンベンションセンターが悪の秘密結社のアジトであることを突き止めた大門は先に潜入しますが、女性戦闘員に動揺して捕らえられてしまうのです。

後から駆け付けたホワイトストーンズは、雑魚を倒しながら奥に進み大門を救出しますが、大門は女性戦闘員をかばって逃がしてしまうのです。その女性戦闘員は、実は洗脳された大門の妹だったのです。捕らえられた幼稚園児を助け出すと、その中に別れて暮らしていた南郷の息子・大志も混ざっていました。

悪の秘密結社の首領(鈴井貴之 2役)は、さらなる人体改造の方法が記された巻物の半分を持っており、白龍神社に安置している残り半分の巻物を狙っていました。危険を察知した宮司(森崎博之)は、川北博士(音尾琢真)に頼んで人間爆弾に改造してもらうのです。20年前に溺れた南郷・本郷・北郷と共に助けようとした宮司も溺死していたのですが、川北博士によってサイボーグとして蘇生していたのです。

宮司は神社を襲ってきた怪人化した首領に抱きついて自爆しますが、首領を倒すことができません。南郷は首領の正体が兄であることに気がつき、取り押さえようと飛び出します。その時二つの巻物がつながり、巨大な白龍が飛び出してきたのです。白龍の力によって首領は爆死し、南郷も息を引き取るのでした。

オフィース・キュー社長の鈴井貴之は、もともと劇団を主宰していたんですが、わざとかもしれませんが多少疑問を感じる演技力です。もっとも、まだまだ駆け出しのナックスのメンバーも似たり寄ったりのところはあるので、あまりツッコミを入れてはいけないところかもしれません。

ただし、第1弾と合わせて見ると、それなりに辻褄が合っていてストーリーの骨格はよくできている。原作・脚本を担当した鈴井の力量はそれなりに評価されるべきです。当然、白石区の中だけの話なので、ローカル・ネタに精通していれば、かなり楽しめるだろうと思います。

2025年9月1日月曜日

雅楽戦隊ホワイトストーンズ 〜雅やかな愛の戦士たち (2002)

北海道テレビで放送された「ドラバラ 鈴井の巣」は、ドラマとバラエティ(メイキング)を同時進行で放送するという変わった趣向の番組でした。鈴井というのは、北海道のローカル芸能プロダクションであるCreative Office Cueの社長である鈴井貴之で、主たる出演者は鈴井とTEAM NACSの大泉洋と安田顕の3人。

実際は他のメンバー、森崎博之・戸次重幸・音尾琢真も登場していて、オフィース・キューに所属するタレント総出演で作られています。

基本の3人で順番に企画・脚本を回していくという構想でしたが、その第1回作品となったのが「雅楽戦隊ホワイトストーンズ」でした。もともとはローカル局のバラエティなのに全国的に人気となった「水曜どうでしょう」の前身とも言える「モザイクな夜」で始まったもので、基本的なコンセプトは札幌市白石区だけの平和を守る戦隊物です。

悪の秘密結社により祖父を殺され、そして兄を連れ去られた南郷進(鈴井)は、本郷隆(安田)と北郷誠(戸次)と共に雅楽の楽器を奏でることで雅楽戦隊ホワイトストーンに変身するのです。20年前に、三人が川で溺れて死んでしまったところを、悪の秘密結社から逃げ出した川北博士(音尾)の手術で改造人間として蘇った体だったのです。

悪の秘密結社は、白石区の下水道処理場から毒ガスをばらまき区民を混乱に陥れます。妹を連れ去られ両親を殺された大門通(大泉)は、国際秘密諜報員となって悪の秘密結社を追っていましたが、毒ガス事件でホワイトストーンズと協力して対決することになります。

悪の秘密結社首領(鈴井 二役)は、部下のナメリン大佐(滑川まさみ)にホワイトストーンズを倒すように命令します。ナメリンは怪人レンガレンガを使って、さらなる毒ガス散布をしようとしますが、川北博士の作った特殊爆弾によってレンガレンガを倒したのでした。南郷は瀕死の重傷を負いますが、川北博士により回復し、そして白石区の平和は守られたのです。

往年の戦隊物を彷彿とさせる王道の展開ですが、怪人の巨大化、それに伴う巨大メカの登場はありません。かなりバカバカしいストーリーですが、正規の戦隊物も冷静に見ればかなり無理を通しているので、笑いのネタだけ増えたと思えばすんなり受け入れられそうです。