メディア・クリエイターとして様々な顔を持つ鈴井貴之の第1回監督作品。安田顕は初めての主演作、大泉洋はセリフのある初めての映画出演となりました。
望みを書いた紙を落とすと希望が叶うマンホールが、札幌のどこかにあるという噂がまことしやかに出回っていました。
小林(安田顕)は札幌の豊水橋派出署の新任警官で、先輩は奥さんに逃げられた村田(中本賢)、あまりやる気のない吉岡(北村一輝)の二人。ある日、女子高校生の鈴木希(三輪明日美)がカバンをひったくられるところに出くわした小林は、犯人(音尾琢真)を追跡して逮捕するが、希はカバンを取り返して姿をくらましてしまう。
希の父親は高校の次期教頭候補で生活指導を担当していて、家庭はぎくしゃくしていました。望みは進学塾に行っているふりをして、寒河江純(大泉洋)のデートクラブに出入りしていました。純が買い物に出かけた時に、客(きたろう)の妻(風祭ゆき)が逆上して怒鳴り込み、仲間の梨絵(尾野真千子)が怪我をしてしまいます。純は建物の外に隠れていた希に事情を教えてもらいますが、そこを小林に見つかり追いかけられる。何とか逃げ切りますが、希は生徒手帳を落としてしまいました。
小林は正義心があふれていたので、勤務時間外に希の周辺を調べ、なんとか犯罪にならないようにしたいと考えるのです。小林がつきまとうのをしつこく感じた希は、小林を名指しでストーカーだとネットに書き込んでしまったため、小林は謹慎させられることになります。
希は小林に、いくら警察官だと言っても人の心の中にまで勝手に入っていいわけじゃないと言い、小林も謝ります。希は一緒に夢のマンホールを探すのに付き合ってほしいと頼むのでした。
TEAM NACSは、北海学園大学の演劇研究会に所属していた森崎博之、安田顕、戸次重幸、大泉洋、音尾琢真により1996年に結成された演劇集団で、北海道テレビのバラエティ番組「水曜どうでしょう」により人気が高まりました。番組を企画構成したのが、監督の鈴井で、TEAM NACSにとっては世に出してくれた兄貴分みたいな存在です。
ここでは、TEAM NACSの安田顕を主役に、大泉洋を助演として、音尾琢真を端役で起用しています。北海道にこだわって作られた作品は、自主製作映画に毛が生えたくらい・・・というと怒られるかもしれませんが、おそらく超低予算の中でそれなりに頑張っていると思います。ちなみに、デートクラブのメンバーには尾野真千子や小池栄子も入っていて、さすがに超若いのは驚きます。
登場する人々は、すべてが生きることに中途半端というか、不器用な面がある。劇中に「何のために?」とか「夢は何?」といった会話が度々でてくるのですが、ちゃんと答えられる人はいません。それは現代人誰にでもあてはまるところかもしれません。ある種の閉塞感みたいなものですが、夢のマンホールという出口は誰にとってもある種の期待の一つなのかもしれません。