2023年10月31日火曜日

ハロウィン (1978)

キリスト教カトリックの暦に諸聖人の日(All Saints' Day)というのがあって、毎年11月1日をすべての聖人を記念し、古くは万聖節とも称されていました。神聖なもの、あるいは不思議な力持つものをhallows、そしてすべての聖人はAll Hallowsとも呼ばれました。近世になって11月1日の前日、つまり10月31日の夜を「All Hallows' evening」として楽しむ民間行事として定着したと言われています。

これがしだいに短くなってHalloweenとなったわけで、ジャック・オー・ランタン(お化けカボチャ)と呼ばれる、黄色カボチャを顔のようにくりぬいて、中にロウソクを立てたものがシンボルとされました。日本では80年代以降に商業的な利用で知られるようになり、90年代の東京ディズニーランドでのイベントにより定着したと言われています。

1974年に監督デヴューしたジョン・カーペンターは、監督のみならず脚本、音楽、製作までマルチにこなす鬼才として知られ、「ハロウィン」は低予算ながら大ヒットとなり、シリーズとして何度も取り上げられるようになりました。

1963年のハロウィンの夜、閑静な住宅が並ぶハドンフィールドの街。6歳のマイケル・マイヤーズは、姉を刺し殺し、精神病院に収容されました。それから15年後、マイケルの主治医であるサミュエル・ルーミス(ドナルド・ブレザンス)は、裁判所にマイケルを出頭させるため病院を訪問しますが、マイケルはルーミスの車を奪って逃走してしまいます。

ハロウィンの日、ハドンフィールドの高校生、ローリー・ストロード(ジェイミー・リー・カーティス)は、ずっと白塗りの仮面をつけた何者かに後をつけられていることに気が付きます。ハドンフィールドに到着したルーミスは、保安官にマイケルが危険な人物であることを説明し、今では空き家となっているマイヤーズ邸を捜索し彼が戻っていることを確信します。

ローリーの家の向かいに住むアニーは、妹のリンジーをローリーに預けパーティーの準備のため車に乗り込んだところを絞殺されてしまうのでした。さらに友人のリンダとボブがアニーの家にやってきて、二人ともマイケルの餌食になってしまうのでした。不審な気配にローリーはアニーの家に向かうのです。

後年のサイコキラー・キャラクターの先駆けともいえるブギーマン、マイケルの登場は画期的ですが、いわゆる血が飛び散る殺しの場面、いわゆるスプラッター的な描写はありません。カーペンターは、効果的な場面転換、主観描写などの演出と、自ら作った繰り返される不気味なテーマ曲などよって、心理的恐怖を盛り上げていきます。

ルーミスは「マイケルには何も無い」と言いますが、それは殺す動機も罪悪感も何もないということ。さらに倒されても倒されても襲ってくる終わりの見えない恐怖の連続が、しだいに見ている者も主人公と同化していく様は、今では当たり前ですが、映画が観客にショックを与えるための教科書のような作りと言えます。

カーペンターが尊敬するハワード・ホークス監督の「遊星からの物体X」(後にカーペンター自らリメイク)が、映画の中のテレビで放送されていて、台詞がこのストーリーにも効果的にリンクしているところは興味深い。「悲鳴の女王」とも呼ばれるジェイミー・リー・カーティスは、これがデヴュー作ですが、早くもその片鱗を見せてくれました。

もっとも、この手の映画はあまり好みではないので、ハロウィンという時節柄とジョン・カーペンター監督作ということが無ければ、進んで見ることはありません。

2023年10月30日月曜日

ラーメン魁力屋 @ 市ヶ尾


おなじみのラーメン。

魁力屋では餃子祭りを開催中なので、行っちゃいました。たまにやるイベントで、ラーメンを一つ頼めば、餃子(5個)が260円から130円の半額になり、何皿でもOKというからうれしい。

と言っても、餃子だけいっぱい食べれるわけではなく、ここは大人の対応で1皿だけにしましたけど。

今回のラーメンは「全部のせ」です。

濃厚鶏ガラのスープに背脂がのった、実に美味しいスープが特徴。これに細いストレート麺が絡んで、大好きなやつです。

いろいろなトッピングが全部のっているわけですが、チャーシューが薄いけど飽きるほどです。もう少し厚めにして枚数を減らしてもらいたい感じはありますけどね。


2023年10月29日日曜日

カイジ ファイナル・ゲーム (2020)

ついに「アイツが帰ってくる」のキャッチフレーズで、9年ぶりのシリーズ第3弾です。監督は今回も佐藤東弥、主演も藤原竜也は変わりません。今回は原作者福本伸行が脚本に参加、映画だけのオリジナル・ストーリーとなっています。

今回は伊藤開示(藤原竜也)は、地上からスタート。とは言っても、東京オリンピック後、極度の不景気により、日本中が疲弊し経済的な困窮者ばかりの日本という状況で、カイジも細々と仕事をするのが精一杯の毎日で、相変わらずクズ生活を送っています。

その頃、日本政府は次官の高倉浩介(福士蒼汰)の主導で、銀行を封鎖して国民の預金をすべて国の借金の返済に充てようとしていて。帝愛グループの黒崎(吉田鋼太郎)も一枚絡んでいました。

「バベルの塔」ゲームという、8mの高さの立てられた棒の先端にある情報をゲットしたカイジは、同じくゲームを勝ち抜いた桐野加奈子(関水渚)と共に、実業家の東郷(伊武雅刀)から政府の預金凍結を防ぐための資金の調達を託されます。必要な額は一千億円で、統合が出せるのは五百億。カイジたちは、帝愛が地下に建設した賭博場で、残りの五百億円を手に入れることになります。

帝愛ランドで行われる「最後の審判」ゲームが始まります。巨大な秤に乗るのは、黒崎と東郷でした。用意した金塊の重さが勝負を決めるのですが、黒崎は東郷が用意した作戦をことごとく潰し有利にゲームを進めます。これは東郷の秘書の廣瀬湊(新田真剣佑)が商法を流していたためで、彼は東郷が捨てた愛人の息子だったのです。

カイジは事前に展開を予想し、いろいろと仲間を増やし命を懸けたバンジーで不足分を調達します。しかし、高倉はゲームの結果を待たずに預金封鎖を強行するのです。が、これも東郷の予想通りで、真の目的は凍結後に発行される新札のすり替えでした。ついにカイジは高倉とのジャンケン直接対決に挑むのでした。

シリーズ最終作とされる本作は、敵は帝愛というのは見かけだけで、本当の敵は日本政府という、なかなか大掛かりなストーリー。もっとも、バカげていて嘘っぽいを通り越して、もうほとんどカイジの頭脳ゲームを楽しむための舞台の一つにすぎません。そして、当然クズはクズで終わるのも潔い。

シリーズでかつて活躍した遠藤凛子(天海祐希)や坂崎孝太郎(生瀬勝久)、地下建設現場班長(松尾スズキ)も再登場するのもお楽しみの一つで、高倉の部下に山崎育三郎も登場します。徹底的に勝者=金持ち、敗者=クズの境遇の中で、敗者が勝者に一泡吹かせる展開が売りのシリーズですが、さすがに食傷気味になってきたので、これで終わりは妥当なところという感じです。

2023年10月28日土曜日

バトルロワイヤル (2000)

1997年、蜷川幸雄の舞台「身毒丸」で芸能界デヴューした藤原竜也の名前が、一般に広く知られるようになったのは、この映画の出演が大きかったと思います。また、後に活躍する多くの若手俳優が共演していることもポイント。

内容はある意味、元祖「デスゲーム」ともいえる内容で、中学生同士が殺し合う内容は社会問題にも発展しました。自分は、今でもこういう内容の映画は嫌いです。映画の中の殺人は、いくらでも起こっているわけですが、このようなゲームとしての殺人、ましてや同級生を殺して生き残るというのは興味が湧きません。

近未来の日本。学校制度は崩壊の危機にあり、校内暴力はエスカレート。大人たちが自らの威厳を取り戻すために成立したのがBR法で、全国から無作為に選ばれた中学3年生の1クラスが無人島で最後の一人になるまで殺し合うというものでした。

原作は高見広春の小説で、監督は深作欣二、脚本と政策を息子の深作健太が担当しました。全体を管理している元担任のキタノに北野武、生徒役は藤原竜也の他に、前田亜季、柴咲コウ、栗山千秋、安藤政信、山本太郎、高岡蒼佑ら総勢42名。

まぁ、良くも悪くも邦画が低迷していた時期に、爆弾を投げつけたようなセンセーションを巻き起こした映画としては、記憶に残る作品でした。ちょっとでも興味がある方は、ご覧になればいいわけですが、自分にとっては今ではベテランとして活躍する俳優たちの若い頃の雄姿を見れるというものでしかありません。

2023年10月27日金曜日

僕だけがいない街 (2016)

三部けいの2012年に連載が始まったマンガが原作で、完結するのは2016年4月なので、実写化されることになったときはまだ連載中。監督は平川雄一朗で、途中からは原作を離れた展開となっている映画。2017年にはNetflixでドラマ化もされています。

藤沼悟(藤原竜也)は宅配ピザ店の配達の仕事をしていましたが、自ら「リバイバル」と呼ぶ特殊能力を持っていました。これは本人の意思とは関わりなく、何が起きるときに突然時間が戻ってしまい、起きることの原因を取り除くまで繰り返されるというものでした。


配達の途中でリバイバルが発生した悟は、交通事故を未然に防ぎますが自分は入院。見舞いに来た同僚の片桐愛梨(有村架純)と親しくなりました。事故の知らせで悟の母親、藤沼佐知子(石田ゆり子)もやって来て、しばらくアパートにいることになるのです。退院して、佐知子と買い物に出た時、再びリバイバルが発生し、佐知子がこどもを車に誘っていた男と目を合わせたことで何かを未然に防いだらしい。

18年前、北海道にいた悟の周囲で連続小児誘拐殺人事件がありました。犯人として白鳥潤(林遣都)という若者が逮捕されましたが、当時、悟は白鳥は犯人ではないと主張したことを思い出します。悟がアパートに帰ると、佐知子は包丁で刺されて殺されていたのです。悟は今こそリバイバルが起これと念じるのです。

気が付くと、悟は小学生の時にリバイバルしていました。小学生の悟(中川翼)は事件で殺された同級生の雛月加代(鈴木梨央)を守ることを決意します。しかし、加代は母親から虐待によって死んでしまいます。そこで現在に時間が戻り、その場から逃げ出した悟は警察から追われる身になっていましたが、愛梨は悟を信じて匿ってくれるのです。

しかし、今度は愛梨の家が放火され悟は何とか愛梨を助け出す。悟は佐知子が直前に電話していた昔の同僚、澤田(杉本哲太)と連絡を取ります。澤田は記者で事件をずっと調査していて、佐知子は目が合った男が、実は以前の事件の真犯人ではないかと考えたのです。病院から抜け出した愛梨は、河川敷で悟と合流し犯人と会っているかもと話しますが、つけてきた警察によって悟は逮捕されてしまいます。

再び18年前、加代が死ぬ前日に戻った悟は、加代を学校の裏の廃バスに隠すことにします。しかし、悟はバスの中に白鳥が犯人とされた証拠の品があることに気が付きます。担任の八代(及川光博)の連絡で、ついに児童相談所が動き、加代を無事に保護することが出ました。しかし、リバイバルは終わらない。悟は他の事件も防いで、真犯人を見つける必要を理解するのでした。

SF映画では、時間が戻って同じことが繰り返される状況を、一般に「タイム・リープ」と呼びますが、そもそもその元祖と呼べるのは筒井康隆の「時をかける少女」ですし、トム・クルーズ主演でヒットした「オール・ユー・ニード・イズ・キル」の原作も桜坂洋で日本人。もしかしたら、この手の発想は日本人が得意なのかもしれません。

タイム・トラベルでは現在や未来が変わってしまうので、過去を変えることは禁忌というのがよく言われることですが、タイム・リープでは積極的に過去に介入してしまうところが特徴かもしれません。この映画でも、主人公が過去に移動しているわけではなく過去をやり直すということで、こどもの自分と鉢合わせのようなことはありません。

タイム・リープを現実の現象として許容できるのなら、この映画は実に複雑な話をわかりやすく、かつ面白くまとめ上げていると言えると思います。映画の公開後に完結した原作の結末と違うところは、むしろ作者が映画を意識して変えたのかもしれません。映画という限られたパッケージの中では、この結末はありだと思います。

ただ、ある程度配役で誰が犯人なのかは想像できてしまうところが、ややもったいない。まぁ、重要な役どころですから、あまり無名の俳優さんを使えないというところでしょうがない。藤原竜也の心を開き切らない抑えた演技はさすがなんですが、それにも増してこども時代を演じた中川翼くんがなかなかいい。最近では主役の映画もあって注目株です。

2023年10月26日木曜日

鍋の〆


寒くなってくると・・・鍋、鍋、鍋。

鍋はいいわ。簡単だし、野菜をいっぱい食べれるし・・・

でも、最後の〆も楽しみですよね。

残り飯とといた卵を入れるのは定番。おじやにすると、鍋の中はスッキリ。

うどんもOKですが、そーめんの場合は塩がきついので、そのまま入れるのはNG。

最近はラーメン店監修の鍋スープがたくさんあるので、この場合はやはりラーメンで〆たいところです。

ところが、生ラーメンは先に茹でておかないとダメなんでちょっと面倒。そういう時に、おすすめなのがこれ。

本格的なインスタントラーメンのブランドの一つである、日清のラ王です。鍋用ちぢれ麺です。そのまま鍋に入れて大丈夫。

最後はスープが少なくなっていますが、このラ王はけっこう平たく作ってあるので安心。インスタントとは思えない、超美味しい麺なので、ばっちりです。


2023年10月25日水曜日

カイジ2 人生奪回ゲーム (2011)

福本伸行の人気マンガを原作とする映画の第2作目。

前作で何とか地上に戻ったはずのカイジ(藤原竜也)でしたが、やはりクズはクズ。いつの間にか借金を抱えこんで、またもや帝愛地下帝国建設現場に落ちていました。さいころ賭博のチンチロリンでうまいこと皆の金を集めたカイジは、2週間の特別休暇の権利を買い109万円のボーナスを得て地上に出てきました。

カイジの目的は、仲間が出した金と彼らの解放に必要な2億円を稼ぐこと。ドヤ街をうろついていると、カイジに敗れて地下に落ちたはずの利根川(香川照之)と出くわし、帝愛のカジノの招待状を手に入れるのです。カジノを支配するのは、やはり地下から這い上がってきた一条(伊勢谷友介)です。

カジノの目玉は沼パチンコと呼ばれる巨大なマシーン。最終的に玉がゴールに入れば、プールに溜まっている今まではずれた玉のすべてを得ることができ、その額は何と11億円分。しかし、カイジはどうやっても入らない仕掛けがあると見てあきらめて外に出ます。

そのカイジの後を追いかけてきて声をかけたのが坂崎(生瀬勝久)で、ずっと沼パチンコの攻略を研究してきて、カイジとなら何とかなると考えたのです。坂崎はカジノのウエイトレスをしていた石田裕美(吉高由里子)を仲間に引き入れます。裕美を見たカイジは、以前鉄骨渡りで墜落死した石田の娘であることに驚きます。

坂崎は考案した磁石を用いた方法で沼パチンコに挑みますが、裕美の裏切りで玉は磁石を寄せ付けない真鍮製に変えられていました。一条はカイジに「姫と奴隷」へのチャレンジに誘います。3つの檻には姫と2匹のライオンがいて、奴隷はスイッチの一つを選び、姫の檻を開けられれば成功というもの。カイジの前に現れた姫は、何と裕美です。裕美は父親がカイジに殺されたと信じていて、私は勝ち組にしかベットしないと言い切ります。裕美はカイジに「3番」だと言いますが、混乱するカイジは悩みに悩んで3番を選び正解するのです。

どうやっても入らないように操作されている沼パチンコですが、カイジはやっとその仕組みに気がつき、多額の借金が残っいる利根川も仲間に引き込んで、到底誰も思いつかない奇想天外な方法で攻略に挑むのでした。

監督は第1作に続いて佐藤東弥。今回は原作者、福本伸行も脚本に参加し映画オリジナルゲームの「姫と奴隷」も追加されました。内容は前作と大して変わらない。地上に生還したはずのカイジが、クズっぷりを発揮して地下に落ちているところからスタート。

結局クズはクズという話ですが、一発逆転をかけてクズたちが寄ってたかって応援するところが、カイジと誰も信じない帝愛の悪役との違い。こうなると、カイジが大成功の人生を送りました・・・では話にならない。最後までクズというところが、この主人公の魅力ということのようです。

深く考え込む映画ではないので、その場その場のスリルを楽しめば、それで良しとする作品です。

2023年10月24日火曜日

ノイズ 【noise】 (2022)

もっかのところ藤原竜也主演の映画としては最新作。原作は筒井哲也のマンガ。今どきマンガが原作というのは驚きませんが、マンガはヴィジュアルが初めから固定してしまうので、映画化についてはハードルが上がると思うので、作りてにとってはなかなか大変。

この作品も、マンガにしては過疎化が進む孤島という社会問題が底辺にあり、小さな島に生じた小さな「ノイズ」がどんどん波紋を広げていく様は、なかなかの構成力です。

小御坂(渡辺大知)という前科者が孤島の猪狩島にやってきますが、社会更生の世話人を絞殺し島内をうろつきます。島中の期待を背負って黒いちじくを名産にしようと頑張っている泉圭太(藤原竜也)は、妻の加奈(黒木華)、娘の恵理奈(飯島莉央)と暮らしていますが、恵莉奈の姿が見えなくなったため、不審な挙動の小御坂を発見し問い詰めます。

圭太の同級生で農園を手伝う田辺純(松山ケンイチ)と新任警察官の守屋真一郎(神木隆之介)が駆けつけますが、圭太が小御坂と揉みあいになり倒れた小御坂は頭を打って死んでしまいます。島を活気づける大事に時期だったため、三人はこのことを隠蔽することにします。

しかし、そのことに気が付いた町長(余貴美子)が現れ、島のためには圭太の農園が必要なので、真一郎にあんたが犯人として自首しなさいと言い放ちます。そこへ長老の横田(柄本明)がやってきて争いになり町長が横田を殺してしまったため、田辺は町長をスコップで殴り殺してしまうのでした。

島を守る、島の人々を守るという歪んだ気持ちが次第に島民を巻き込んで、嘘が嘘を広げていくことについに真一郎は耐えきれなくなり、自分がすべての犯人だとメッセージを残して拳銃自殺してしまいました。

そこへ死んだはずの町長の携帯から、島民に一斉メールが送られ来る。そこには「死体はイチジク農園。犯人は圭太」という内容でした。小御坂の死体が発見され、圭太はついに自白してしまうのでした。しかし、畠山刑事(永瀬正敏)は、そこには圭太も知らなかったもう一つの秘密が隠されていることを確信していました。

「デス・ノート」のコンビの藤原・松山による、狭い島で育った長い年月をかけて熟成された親友同士の深く刻まれたコンプレックスが影の主題として存在します。そして、開かれた密室ともいえる閉塞感の漂う小さな島では、山奥の過疎化した農村と同じような集団意識が現実の世界でも実在するだろうことは容易に想像できます。

島の産業の担い手として大きな期待がかかるのは、圭太が島の出身者であるからで、他所からの移住者であれば、むしろ相手にされなかったかもしれません。島の人々がいつの間にか隠蔽工作の共犯者となっていく様は、多少強引なところはありますが、確かにそういうことも起こりうると感じさせる絵作りだと思いました。

監督はポルノ映画出身の廣木隆一で、原作では描かれる他所者である刑事たちの主観をできるだけ排除して、島民主体に集中させたのは正解のようです。ただ、精神的に追い詰められ自殺してしまう真一郎については、もう少し踏み込んでもよかったかもしれません。

町長が小御坂を迷い込んできた小さなノイズと表現しましたが、圭太と田辺の間にもノイズがあり、島全体でも最初は無視できたノイズがどんどん増幅して耳をふさぎたくなるほどの騒音になってしまう。そうなると後は暴発して、坂を転がり落ちるしかないという状況が、抑制された映像の中でうまく表現できていた作品です。

2023年10月23日月曜日

カイジ 人生逆転ゲーム (2009)

福本伸行のマンガ「賭博黙示録カイジ」が原作で、原作を知るおおかたの人からも支持される映画。監督は「新幹線大爆破」や「人間の証明」の佐藤純爾の息子の佐藤東弥。主役の藤原竜也のシリーズ化したヒット作です。

どうしようもないクズな人生を送る伊藤開司(藤原竜也)は、保証人になった友人の借金を肩代わりを、遠藤凛子(天海祐希)の消費者金融から迫られる。遠藤は莫大の資産を持つ帝愛グループのメンバーで、借金を払えないなら帝愛のカジノ・クルーズ船に乗って金を作ってくるようにカイジに言います。

乗船すると大勢の「クズ」が集まり、帝愛の幹部、利根川(香川照之)の号令と共に「限定ジャンケン・ゲーム」が始まります。これは最終的には、帝愛の地下帝国を建設するための人員確保のためのイベントであり、ほとんどのクズは敗北して強制的に地下に送りこのれるのでした。

カイジも知り合った石田(光石研)と共に、地下で強制労働をさせられることになってしまいます。苦しい毎日が続きますが、ついに「ブレイブメンロード」が開催されることになる。これをクリアすれば解放されるので、カイジ、石田、そして佐原(松山ケンイチ)らが挑戦することになりました。

地上に上がった一行は、帝愛の超高層双子ビルの最上階をつなぐ幅20cm程度の鉄骨を渡り切ることが試練と知りしり込みしてしまいます。しかし、自由を手に入れるため、全員が渡り始めますが次々と落下し、石田も後をカイジに託して消えていくのでした。残ったのはカイジと佐原だけになり、二人は何とか渡り切りますが、ドアを開けたとたんに気圧差のせいで佐原は吹き飛ばれてしまうのでした。

室内に入ったカイジは、ついに利根川と一対一の勝負、Eカードを行うのです。利根川には皇帝カード1枚と市民カード4枚、カイジの手には市民カード4枚と奴隷カード1枚が渡される。皇帝は市民に強くも市民は奴隷に強い。しかし、奴隷は皇帝を倒すことができるのです。究極の心理戦が始まりました。

ブレイク前の鈴木亮平が帝愛のざこ、吉高由里子が石田の娘として登場するのもちょっと楽しいところですが、クズがクズなりに頭脳戦に挑むところがこの映画の最大の魅力。ただ、ゲームはなかば出来レースなので、結局クズはクズで終わるというのがこの話の本質のようです。

正直に言えば、中身的にはあまり濃いものはありません。能天気なクズなのに、妙に熱い男でいろいろなものに対するチャレンジ精神が旺盛という、だったら普通にクズにならないだろうという気もします。

とは言っても、それなりに見せ場を作って最後まで飽きずに見れるのは、原作の面白さと監督の技量ということでしょうか。実際、マンガならどうにでも空想したゲームが可能ですが、それを実写化するとなるとなかなか大変なことはあるだろうと想像します。

2023年10月22日日曜日

セブンのおにぎり 13


セブンイレブンのおにぎりシリーズ。今回の新顔は、「ほたてめし」です。

昨今、処理水海洋放出で取引を停止された海産物が打撃を受けている状況から、国内でのホタテの消費量を増やすための発売なのかと、ちょっと深読みしてしまうところ。

ほんのりと生姜が香る薄味の炊き込みご飯です。小さい貝柱片が入っていますが、あらあらこれだけじゃつまらないと思ったら、真ん中にもう少し大きめの塊が入っていました。

おそらく直径で2cm程度のホタテ貝柱1個を使っている感じ。物足りないと言えばそれまでですが、おにぎりに入る量としては適切な感じがします。

ただ、肝心のホタテの味はというと・・・う~ん、いまいち。冷めている状態では、普通に美味しいという程度。包装にも印刷してありますが、温めたほうが良いのかもしれません。

あと、「新発売」につられてあまり考えもせずにレジに持って行ってしまいましたが、よく見たら価格が税込みで237円!!

高っ!! と思いましたが後の祭り。せめて100円台で踏みとどまってほしかったというところです。

2023年10月21日土曜日

流浪の歌 / 財津一郎 (1978)

財津さんが亡くなりました。

近年では「♪みんなまぁるくたけもとピアノ」というCMソングでお馴染みだと思いますが、若者には「何だろうこの人、しかもけっこう昔から同じCM流して・・・」くらいにしか思われていないのかもしれません。

タケモトピアノは、晩年ずっと病気療養をしていた財津さんの生命線だからと、損得度外視でこのCMをずっとテレビに流し続けていたという話を聞いたことがあります。

でも、本当にすごい人なんです。昭和の芸能・・・それは大衆演劇、お笑い、歌謡などなど、思いつくものすべてに秀でた芸を持っていて、けして看板スターとは言えませんでしたが、着実に存在感を示した人。

昭和9年に熊本に生まれ、昭和28年上京し喜劇王「エノケン」こと榎本健一に弟子入り。昭和37年、吉本新喜劇に参加して頭角を現しますが、それまでの10年弱の下積み時代は相当経済的にも大変だったらしい。

「流浪の歌」は、昭和53年に発売されたLPレコードで、自分は財津さんご本人からこのレコードを頂きました。

何故?

自分の父親が知り合いだったから。父親は熊本から東京にでてきて開業した内科医でしたが、同郷のよしみで下積み時代の財津さんにいろいろ便宜をはかったらしい。レコードが発売されて、当時のお礼を言うためにわざわざうちに届けに来たんです。

和田誠が描いたイラストがジャケットに使われ、なかなかセンスの良いジャケットで、ジャズを聞き出していたので「アレクサンダーズ・ラグタイム・バンド」にわくわくしたレコードでした。

そんなわけで、自分が直接知っている唯一と言ってよい芸能人が財津さんなんです。ちょっとしたニュースになっても、いつも気にかけていましたが、つい訃報に接するとは、重ね重ね残念です。

2023年10月20日金曜日

ダイナー Diner (209)

そもそも藤原竜也って何者か?


1982年生まれ、今年で41歳。名前が似ているので藤竜也の息子と思っている人もいるかもしれませんが、全くの他人。藤竜也は横浜出身で本名は伊藤龍也。藤原竜也は埼玉県出身で、本名が藤原竜也だから、こればっかりはしょうがない。

1997年、わずか15歳で蜷川幸雄のオーディションで見いだされ主演。以後、厳しいことで有名な蜷川幸雄に舞台で鍛えられつつ、テレビ・映画で活躍する演技派の俳優として現在高く評価されています。

これは、平山夢明の小説「ダイナー」を原作として、蜷川幸雄の娘の蜷川実花が監督した映画。まさに実花ワールド全開の天然色バイオレンス世界観が爆発します。その中で、まさに藤原竜也節とも言える、演劇的セリフ回しがさく裂しています。

ストーリーはちょっと難解。そこに蜷川実花のこだわりぬいた演出が絡むので、さらに複雑な様相をていしてきます。好きな人にはたまらんというところですが、見る人を選ぶ作品であることは間違いなさそうです。

闇の世界を牛耳っていたデルモニコ(蜷川幸雄、もっとも故人なので回想シーンでは井出らっきょが演じます)は、凄腕の殺し屋だったボンベロ(藤原竜也)の料理の腕を見込んで、殺し屋専用のレストラン、ダイナーを任せました。

デルモニコは1年前に自動車事故で死にました。彼の配下にはマテバ(小栗旬)、マリア(土屋アンナ)、ブレイズ(真矢みき)、そしてコティ(奥田英二)という四天王がいて、お互いデルモニコを殺し組織を乗っ取ろうとしてのではないかと疑心暗鬼。

自分が世界中から必要とされていないと悩むオオバカナコ(玉城ティナ)は、たまたま応募したバイトが裏社会の仕事で、殺される代わりにダイナーのウエイトレスをすることになってしまいます。ボンベロは、砂糖の一粒までも俺の言うことをきくこの場所では絶対服従だと言います。

マテバの部下のスキン(窪田正孝)、成長を抑制されたキッド(本郷奏多)、狂気をまき散らすブロ(武田真治)などのかなり変わり種の殺し屋が出入りする店で、カナコはこの不思議な人々と接しているうちに少しずつ自分と向き合うようになっていきます。

デルモニコの一周忌の食事会を開くことになりますが、マテバは直前に殺されてしまう。マリア、ブレイズ、コフィの三人が来店し食事を始めますが、ついにデルモニコを死に追いやった真相が明らかになり、レストランは修羅場と化すのでした。

まずこの映画の評判は、一般的にはあまりよろしくない。これは映像の美しさへのこだわりがものすごいのに対して、登場人物描写がほとんど無いことで、映画としての深みが感じられないということだと思います。

ある意味、監督の自己満足に終始して、ついてこれない奴は置き去りでしょうがないと言わんばかり開き直りみたいなところ。小栗旬は一場面の登場で、次のシーンでは土左衛門になっているくらいで、他にも有名どころがたくさん出演していますが、みんなほとんど右から左に消えていく感じでよくわかりません。

ほとんどの映画では原作のすべてを詰め込むことができないわけですから、ここでは心情を深堀するのはカナコだけに限定して、あとはある程度ボンベロのことだけ理解してくれれば良しとするということだと思います。高圧的なボンベロが発する言葉はまさに芝居じみていて、まるで藤原竜也の舞台を見るようですが、これも意図的なものと感じます。

玉城ティナはそうそうたる俳優陣の中では、かなり演技力としては見劣りしますが、あえて素人的な普通っぽさを求められてのキャスティングだと思えば、必ずしも失敗とはいえません。終盤のカナコのボンベロとの対峙シーンでは、そこそこ頑張っているように思いました。

最終的には、自分としてはやはり蜷川実花ワールドはあまり好みではありませんので、ちょっと映画に入り込めなかったというのが正直な感想。原作を知らないので、改変部分に対して不満は特にありませんが、極彩色の美しさに偏らず、もっとフィルム・ノワールに徹した落ち着いた雰囲気があってもよかったというところでしょうか。

2023年10月19日木曜日

22年目の告白 -私が殺人犯です- (2017)

2012の韓国映画のリメイク作品。監督は入江悠で、オリジナルよりも社会派サスペンスとして強調された作品になりました。

2010年4月27日から、日本では殺人罪の時効が撤廃されました。しかし、4月26日までに解決していない事件については従来の死刑相当は25年が適応されます。この映画はこの時効が大きく関与するので、事件が起きたのは1995年、5人が殺された連続殺人事件で最後の発生が4月26日で、4月27日に時効が撤廃されたということになっています。

1995年、東京で4件の連続殺人事件が発生します。いずれも被害者は絞殺され、家族を対面でその様子を見せるという残酷な手口でした。当時新人刑事の牧村(伊藤英明)は、4件目の事件で犯人の右肩に発砲しますが、逆に顔を切りつけられ今も痛々しい傷を残しています。

犯人は、次の標的は牧村だと通告してきたため、自分のアパートに急行した牧村たちは爆発に巻き込まれ、先輩刑事の滝(平田満)が殉職、同居していた妹の里香(石橋杏奈)が行方不明になっていました。しかし犯人逮捕に至らず、ついに一連の事件は2010年4月26日に迷宮入りとなってしまいます。

それから7年、突然曽根崎雅人(藤原竜也)と名乗る人物が、「自分が犯人である」と名乗り出る手記を発表するのです。曽根崎は大々的な会見を開き、本のサイン会まで行う。その会場で、被害者の遺族である美晴(夏帆)や戸田(早乙女太一)らが曽根崎を襲いますが、牧村は曽根崎を守るのです。さらに、曽根崎は遺族の山縣(岩松了)の病院に突然現れ土下座するパフォーマンスを行います。

事件発生時から取材に奔走したジャーナリストの仙堂(仲村トオル)は、現在はニュース番組を持っており、曽根崎に出演を依頼します。船頭は曽根崎に手記の目的などを訪ねる一方、動機やあまり知られていない牧村の妹のことが書かれていない点などの疑問を投げかけます。

放送後、番組を見た「真犯人」から曽根崎は偽物であるとし、犯人である自分でないと撮れない映像がネットに流されました。仙堂は、曽根崎と牧村、そしてあらたに登場した「真犯人」を番組で一堂に会させることにします。そして、覆面を被った「真犯人」もテレビに登場することになりました。

元ネタが映画なので、全体の構成は最初からある程度出来上がっていて、無理なところはありません。ただ、登場人物の描き方のウエイトに明らかな差があるので、曽根崎の行動は真犯人をおびき出すための作戦であることはすぐにわかるし、犯人についても正体も時効とのからみも容易に想像できてしまうのはちょっと残念。

その分、犯行の動機について社会派的な面を強調することで謎を深めるようにしているように思います。ただし、その動機についても特殊な環境下でしか体験できないトラウマが原因にあるので、共感はなかなか難しい(もちろん共感する必要はありませんが)。

遺族の怒りを気にせずこ憎たらしく「自分が犯人」と名乗り出る役は、藤原竜也にはぴったりで、また伊藤英明も泥臭い直情型刑事に実にうまくはまっています。彼らの熱演も相まって、緊張度の途切れない映画作品であることは間違いありません。

2023年10月18日水曜日

鳩の撃退法 (2021)

佐藤正午原作、最新作「アナログ」で注目されるタカハタ秀太が監督しました。脚本は「るろうに剣心」にも参加した藤井清美です。

主人公がリアルタイムに進行している身に起きた事件を、小説として書いてその内容を編集者に話す形式で進行するため、やや複雑な構成が難解な印象を与える作品。

北陸の一地方都市で、デリヘル嬢の送り迎えをしている津田伸一(藤原竜也)は、かつて直木賞をとったことがある小説家でした。ある日、津田は水商売をする幸地秀吉(風間俊介)と出会います、秀吉は、その日、妻に妊娠を告げられ自分のの子では無いと確信していました。そして、翌日秀吉と妻の奈々美は行方不明になってしまいます。

津田が世話になっている古書店の老人(ミッキー・カーティス)が亡くなり、他に身寄りがなかったため津田に遺品のスーツケースが渡されます。中には3003万円が入っていて、津田はバラになっていた3万円を持ち歩き、まえだ理容店でそのうちの一枚を使う。ところが、それが偽札であることが判明しますが、店主の前田(リリー・フランキー)は、警察には津田のことを話しませんでした。

裏情報に詳しいデリヘルの社長(岩松了)は、この偽札には街の裏社会を一手に牛耳る倉田健次郎(豊川悦司)が絡んでいて、津田にも手が回っているから東京に逃げるように忠告します。津田は残りの3000万円を倉田の手下に渡し、前田の知り合いの高円寺のバーで働きながら、編集者の鳥飼(土屋太鳳)にこれまでの経過を小説にしたものを少しづつ見せるのでした。

実はストーリーの進行は時系列の逆に示されていくため、最初のうちはいったい何だろうと謎が謎を呼ぶ形になっています。ここを我慢しきれれば、終盤は一気に時系列に真実が明らかにされていくところが心地よい。ただし、津田の小説では結末はおそらく読者が望むような締めくくりとしたようですが、本当のところは見たものの想像に任せる終わり方です。

藤原竜也の軽くて腕力には自信がない演技ははまりもので、さすがというところでしょうか。ところどころで津田に「沼本(ぬまもと)」と呼ばれ「ぬもとです」と切り返すウェイトレスの西野七瀬が、意外と良いアクセントになっている。

いわゆるクライム・アクションではなく、手品のトリックように偽札が巡りまわっていく様子と一つ歯車が狂うことで人の生きざまが変わってしまうことを、人間ドラマ的に楽しめる作品と言えそうです。

2023年10月17日火曜日

探検隊の栄光 (2015)

元はと言えば、荒木源の小説なんですが、ほぼ「川口浩探検隊」のパロディというか、内情暴露映画で、よくもまぁ藤原竜也が主演したものだと、変な意味で感心してしまいます。

川口浩はもともとは、名門芸能人一家のしっかりとした硬派の印象の俳優さん。昭和人には「キーハンター」でおなじみ。それが昭和52年、テレビ朝日の「水曜スペシャル」に登場した探検隊シリーズが人気を博し、10年近くに全43回放送されたというから驚きます。

毎回秘境に赴き幾多の危険を顧みずに謎の生物などを探すのですが、もっともこれはすべて過剰な演出であって、最初から謎なんか無いことはわかって視聴者も楽しむのがお決まりでした。

「驚愕! 三つ首の巨獣ヤーガはベラン共和国秘境洞穴に実在した!」のテレビ企画の探検隊隊長役をすることになっている俳優の杉崎(藤原竜也)は、現地に先入りしていたスタッフと顔を合わします。プロデューサーの井坂(ユースケ・サンタマリア)、ディレクターの瀬川(小澤正悦)、カメラマンのの橋本(田中要次)、音声・証明の小宮山(川村陽介)、ADの赤田(佐野ひなこ)、そして現地通訳のマゼラン(岡安章介)らは、勝手がわからない杉崎を気にせずさっさと出発するのです。

杉崎は市場で怒鳴っている村人に近づくように言われますが、内容と関係なく「ヤーガは恐ろしい!! 近寄ってはダメだ!!」というナレーションがかぶせられていきます。占い師らしき老婆がいると、同じように「ヤーガを守る3つの守り神を見つけよ。聖なる戦が行われれば神々の化身が姿を現す」とナレーションがつけられます。

ついに巨大洞窟に到着し、杉崎もこの番組制作の意図がわかってきたところでした。ところが、何とそこは現地反政府ゲリラ組織がアジトにしていた場所だったのです。カメラを持っていたので政府側のスパイと勘違いされます。

録画してきたテープを踏みつけられてしまった杉崎は、くだらないことだがこの映像を撮るためにどんだけ本気でやっているか大演説。その結果、ゲリラたちは、ヤーガの守り神の原始猿人役をやることに。ところが、そこへ政府軍がやって来るという情報にヤーガどころではなくなってしまいます。 

探検隊のフィナーレを飾るべく、彼らは急場づくりの偽物の巨大蛇を作り政府軍を驚かして、あわてふためくところを撮影しようとするのでした・・・が、その時!! 何と本物の・・・

ぶっちゃけ、こんなにくだらない話に、お金を出して映画館に行くというのは・・・よほど、テレビの探検隊シリーズにはまっていた人くらいかと。まぁ、後からビデオで見てる自分も同類みたいなもんですが。

ここまでくだらなさに振り切っているなら文句のつけようがありません。出演者は、少なくともこの映画に出たことで名声を得られることは・・・無い。にもかかわらず、よくぞ頑張りました、パチパチ。

2023年10月16日月曜日

忍びの国 (2017)

現在の三重県の西部山間に伊賀国があり、農耕に厳しい土地であったため鎌倉時代から人々は傭兵として各地に出向くことが多かったらしい。その中で、厳しい修練が行われ忍者と呼ばれるゲリラ戦格闘集団が形成されます。


伊賀のすぐ北方には甲賀があり、ここにでも忍者が養成されていましたが、彼らは一人の長の元に結束しつつも多数決を重んじたのに対し、伊賀では金銭契約により主従が決まり実力者による決定が重んじられました。

織田信長の次男、信雄(のぶかつ)は1558年生まれで、信長が伊勢に攻め込んだ際に領主北畠家に養子として入り、その後1576年に北畠一族を粛清しています。1579年に、信長に無断で伊賀出兵を行い大敗を期し、信雄は信長から大叱責を受ける。1581年にあらためて信長より伊賀平定を命じられ、大軍勢により鎮圧に成功しています。

1582年、本能寺の変により信長と長男信忠が討たれると、信雄は伊勢から北上しますが、伊賀残党の抵抗に合い、明智光秀の成敗は三男信孝と羽柴秀吉により遂げられます。その結果、織田家の家督を決める清須会議では、信雄と信孝が対立。のちに信雄は秀吉と結託して、柴田勝家と組む信孝を攻め滅ぼすのです。

このくらいの史実を知っておいて・・・映画です。ある程度、事実に基づいていますが、時系列は必ずしも正しくはありませんし、主人公は完全なフィクション。和田竜がもともと脚本として執筆した小説が原作。監督は中村義広です。

伊賀の忍者は、グループごとに小競り合いを繰り返し、有力者の一人である下山甲斐(でんでん)の息子、下山平兵衛(鈴木亮平)は、弟を同じ伊賀の無門(大野智)に殺されたことで、金によって仲間であっても殺す伊賀人に疑問を感じます。平兵衛は、義父である伊勢国の北林具教(国村隼)を討った織田信勝(知念侑李)に伊賀攻めを進言するのです。

無門は幼児の時にどこからともなく買われてきて、徹底的に伊賀流を教え込まれた優秀な忍者でした。よそからさらってきたお国(石原さとみ)を妻としていましたが、お国は金が溜まるまでは一切手出しをさせてくれません。

信勝は伊賀に金で軍門に下ることを提案し、受け入れた伊賀流は信勝のために城を整備しますが、信勝軍勢が到着したとたんに城を焼き払い、金だけをせしめるのでした。怒った信勝は、ついに大軍勢で伊賀攻めを開始。自衛のためどこからも金が出ないと知った大多数の伊賀人は逃亡します。無門もお国を連れて逃げようとしますが、お国の言葉によって思い直しすのでした。

歴史をもとにしたエンターテイメントですから、細かいことを気にしていたらとても見ていられませんが、ある意味伊賀忍者の本来の姿を浮き彫りにすることは成功していますし、出演者の頑張りでそこそこアクション・シーンも見れる。

鈴木亮平の他、伊勢谷友介、マキタスポーツ、満島新之助らの脇役陣が盛り立てて、逆に主演の大野智のふだんの「冷めた」雰囲気がより強調されている感じで、それはそれで悪いキャスティングではありません。ただ、昨今問題視されているいわゆる「ジャニーズ枠」であろう知念侑李の信勝は、偉大な父に対するコンプレックスによる空威張りとしても弱々しすぎます。

お国の行動も理解しにくいのですが、最後の行動などにつながる無門に対する心情をもう少し盛り込めるとよかったように思います。いずれにしても、伊賀人の宿命みたいなところに焦点が当たればよかったんですが、ところとごろでマンガ的な展開が挟まれたのは残念というところ。

2023年10月15日日曜日

バクマン。 (2015)

前年に敵味方に分かれ死闘を繰り広げた佐藤健と神木隆之介が、タッグを組んでマンガ家を目指すというだけで、実に興味をそそられる映画です。

原作は2008~12年に少年ジャンプに連載された大場つぐみのマンガで、映画化に当たっても集英社のジャンプ編集部がかなり協力しているようです。監督・脚本は主としてテレビで活躍する大根仁。なお音楽はSAKANACTIONが担当しています。

高校生の真城最高(佐藤健)は、クラスの亜豆美保(小松菜奈)をモデルしたイラストを書き溜めていました。偶然にそれを見たマンガ家志望の高木秋人(神木隆之介)は、自分はストーリーを作るのは自信があるが絵がだめなので、一緒にマンガを描こうと誘います。最高は声優志望の亜豆と、自分たちのマンガが世に出たらヒロインの役をやってもらうことを約束します。

二人は出来上がった作品を持って少年ジャンプ編集部に乗り込みます。編集員の服部(山田孝之)は才能を認めるものの、たくさんのダメ出しをして二人に書き直しをするように言います。そして出来上がった作品は、手塚治虫賞のコンテストに出したところ、準優勝の成績を収めます。しかし、優勝は、同じく高校生マンガ家の新妻エイジ(染谷将太)でした。

ジャンプ王道路線では勝負できないと考えた最高と秋人は、高校生としての実物大の作品を提出し、ついに連載を勝ち取ることができました。ジャンプでは、毎週の読者投票による人気順位が分かる仕組みがあり、二人の作品は新妻を超えるどころか、じりじりと順位を下げてしまいます。

しかし、亜豆そっくりの美少女キャラを登場させたことで、順位が急上昇しついに読者投票で一位も獲得しました。そんな中で、毎週の締め切りに追われる無理がたたって最高は体調を崩し入院してしまうのです。

実際には、編集者にまったく見向きもされないマンガ家が履いて捨てるほどいるのでしょうから、これはあくまでも稀な成功例の話。世の中そんなにうまくいくわけがない。それでも、マンガ家として世に出るためにはどうすればいいのかという、一つの参考にはなりそうです。

ただ、ほぼマンガを読まない自分からすると、この手の業界の楽屋話についてはあまりピンとこない。マンガという一つの手段の中で、勝ち上がっていく「スポ根」という見方をすると、中心となる二人がよほどの天才でもない限り都合が良すぎる展開と思えてしまいます。

映画化するということは、原作ファン以外に、自分のような原作を知らない者も見ることになるので、マンガの成功法だけでなく人としての成長にももう少し重点を置いてほしかったというところでしょうか。

2023年10月14日土曜日

更科 @ すすき野


街のお蕎麦屋さんの更科です。いろいろと蕎麦屋を探して出歩きましたが、結局、手打ちの本格的な蕎麦を食べたいときはセンター南の「おおつか」、そして普通に食べるならここに落ち着きました。

更科はリーズナブルな値段で、いかにも更科らしい白い細麺が喉越しの良さが嬉しい。そして何よりも、ここの蕎麦つゆの美味しさは圧倒的。冷たくても暖かくても、その美味しさに変わりはありません。

今回もセット物。たぬき蕎麦とかつ丼です。どちらも、単品で頼む場合の2/3くらいの量で、満腹感ばっちりで1000円です。

何がどのように美味しいのか、あまり言葉で説明しにくいのですが、だまされたと思って是非一度は行ってみてください。

そば処 更科
〒225-0021 神奈川県横浜市青葉区すすき野3丁目8−3
営業時間  昼 11:00-15:00  夜 17:30-20:30  定休日 木曜日  (要確認)

2023年10月13日金曜日

ホームランバー


食べたことある?

ありますよね。絶対ある。

ホームランバーです。昔のお菓子屋さんの店頭に、夏になると置いてあるアイス用の冷蔵庫。

必ず手に取るのはホームランバー。

たって安いから。自分がこども頃、確か1本10円だったと思います。今でも売っています。

食べていくと、露出してきたバーに「当たり」が出ればもう1本もらえる・・・くぅ~、たまらん。

今は・・・「ホームラン(大当たり)」が出たらホームランバーの形をした抱き枕(20cm×20cm×72cm)をもらえます。

「一塁打」、「二塁打」、「三塁打」が出れば、それぞれポイントになって、4ポイント集めれば抽選で抱き枕です。

まぁ、その場でもう1本もらえればいいんですけどね。

2023年10月12日木曜日

護られなかった者たちへ (2021)

大多数の日本人にとって、まだまだ過去の記憶となっていない東日本大震災。被災10年を超えて、映画としても題材に選ばれることが出てきました。この映画もその一つ。未曾有の災害によって、人生を大きく狂わせられたわけで、原作は中山千里著の2016~2017年に新聞連載された推理小説。監督は「64」、「楽園」などの社会派推理映画で活躍する瀬々敬久。脚本は「ゴールデンスランバー」の林民夫です。

宮城県警の笘篠(阿部寛)は、震災の津波によって妻と一人息子を失いました。当時、避難所や遺体安置所を駆け回ったのですが、その時、天涯孤独の被災者、利根(佐藤健)や、親を失った少女、かんちゃんらも同じ時間・場所を経験していました。

家が何とか無事だった一人住まいの年老いた遠島けい(倍賞美津子)は、そんな二人を家に泊まらせ食事の世話などをしたのです。しかし、満足に年金も受け取れないけいの生活はひっ迫しており、二人は生活保護を受けるよう説得し役所に連れて行くのです。

しかし、役所ではあまり親身になってくれる感じではなく、結局けいは申請を取り下げてしまうのです。しばらくして、二人が家を訪ねるとけいは餓死していました。利根は怒りに任せ役所に放火し、逮捕・収監されたのです。

8年後、利根は出所しますが、同時に過去に福祉事務所で働いていた三雲(永山瑛太)、城之内(緒形直人)が相次いで緊縛され餓死させられた遺体が発見されます。ふたりはけいの生活保護申請に関係していた人物でした。

笘篠は生活保護がらみの怨恨が動機にあるとみて、現在の事務所職員の円山幹子(清原果耶)に生活保護にまつわるトラブルなどの話を聞くのです。捜査線上に利根の名前が浮上し、当時の関係職員で現在は国会議員をしている上崎(吉岡秀隆)も狙われると考え警備していると、講演会に利根が飛び出してきたため逮捕しました。

利根は自分の犯行だと自供しますが、その時上崎が行方不明になったという連絡が入るのでした。心当たりがあると言う利根を連れて、笘篠はかつて遠島けいが住んでいた廃屋に向かうのでした。

映画は過去と現在のシーンがランダムに登場するのでわかりにくいところはあるのですが、ちょっと見ていると利根の服装や髭の有無などで判別がつくので心配はありません。笘篠の震災から引きづる後悔は、本筋とは関係はありません。しかし、利根の経験とうまくリンクさせることで、ストーリーに奥深さを生み出すことに成功しています。

多くの死者・行方不明者が出て、物的損害については多くのニュースなどで知られましたが、その結果として持続的な被災者らの心的外傷や経済問題についてはあまり知られていません。しかし、この映画はフィクションとはいえ、現実的に起こりえた深刻な問題を考える機会を与えてくれます。

特に生活保護という問題は、震災とは別に様々な問題をはらんでいることが示されます。不正受給という事例はいろいろなパターンがあり、この映画のような公的機関側がはからずも受給を拒絶するケースはあくまでもフィクション。しかし、多忙を極める震災後の混乱の中では、まったく無かったとは想像しにくく、深刻な問題へと発展する可能性はあるかもしれません。

原作からはエピソードを絞り込んでいるようですが、映画の展開としては必要なところはしっかり残して簡略化され理解しやすくなったように思います。明るいところはない、絶えず重苦しさがつきまとう内容ですが、映画としてはうまく作られた作品といえそうです。

2023年10月11日水曜日

ピンポン (2002)

原作は松本大洋のマンガ。監督は曽利文彦、脚本は宮藤官九郎。主人公の挫折と復活を2時間弱の映画の中にうまくまとめ上げました。

舞台は神奈川県の藤沢市。小学生の時から通称ペコの星野(窪塚洋介)と通称スマイルの月本(井浦新)は、オババ(夏木マリ)が経営すると呼ばれる町のタムラ卓球場で切磋琢磨してきました。

ペコは前陣速攻型で攻めまくり、スマイルはカットマンという特徴があります。二人は片瀬高校の卓球部に所属していて、コーチはかつてバタフライジョーと呼ばれた優秀な選手だった小泉(竹中直人)です。小泉はとくに月本に目をかけていました。

インターハイに出場した二人でしたが、ペコは同じタムラで卓球を始め、今まではカモにしていた海王高校の佐久間(大倉孝二)に敗れ、意気消沈してラケットを燃やしてしまいました。スマイルは中国からの辻堂高校への留学生、卓球エリートのチャイナ(サム・リー)を追い詰めますが、相手にすぐ同情してしまう悪い癖によって敗れてしまいます。海王高校の主将の風間(中村獅童)はチャイナを簡単に下し優勝しますが、風間は月本に注目していました。

やっとやはり卓球が好きだと思えたペコは、あらためてオババに一から卓球を教えて欲しいと頭を下げます。オババは基礎体力作りからペコを鍛え直し、ペコの良いところを伸ばす戦法を伝授していくのでした。

そして、またインターハイの時期となり、ペコはチャイナを倒し、さらに風間の対戦しますが、膝を痛めておりピンチを招きます。しかし、楽しいから卓球をすることを理解したペコは、ついに風間を退け決勝に進むのです。決勝の相手はスマイルでした。

卓球の実演シーンは何度も出てきますが、もちろん俳優たちがそんなにプロ・レベルのラリーをできるはずはなく、ボールは全部CGで描かれています。地味なCGですが、それでも本当に派手なラリーに見えるので、なかなか楽しい。

スポ根ものの流れとしては挫折と復活は定番ですが、この映画の面白さは主人公のペコと同じか、時にはそれ以上にスマイルの存在がクローズアップされていること。スマイルはこどもの頃から、快活なペコとは対照的に物静か。卓球をしていても相手を蹴落とすのを好まず、実力があるのに抜いた試合をしてしまうのです。

スマイルはこどもの時にいつも助けてくれたペコが自分にとってヒーローであり、ペコが本当に実力を発揮するのを心待ちにしていたのです。この流れが、実に丁寧に描かれているので、ある意味スマイルが主役と思ってみても十分に楽しめると思います。

2023年10月10日火曜日

初鍋


この数日、あれだけ猛威を振るった猛暑が影を潜め、急速に秋になった感があります。

涼しくなれば、やはり「あれ」の季節到来、ということで、今シーズンの初の鍋にしました。

鍋用スープはいろいろスーパーに並んでいますが、今回は有名ラーメン店監修シリーズの一つで、博多とんこつの一風堂のものをチョイス。

意外にスープは白じゃない。ちょっとピンク色で、やや辛い印象ですが、食べてみると辛さはほとんど感じません。普通にとんこつ味というところ。

おすすめ野菜としてあがっていた白菜、もやし、長ネギ、椎茸、エノキ、そして当然豚肉が入ります。

正直に言うと、普通に美味しいという程度。どうしてもまた食べたいというほどではありませんが、特にダメということもありません。

とんこつなので、味変用に紅ショウガを用意したのは正解。鍋は同じ味が続くので、これは必須だと思います。

2023年10月9日月曜日

THE GUILTY/ギルティ (2018)

音だけが頼りという、かなり風変わりなデンマークのサスペンス映画。グスタフ・モーラー監督・脚本、主演はヤコブ・セーダーグレンという方ですが、情報はほとんどないのでよくわかりません。アカデミー外国語映画賞にノミネートされ、すぐさまハリウッドでもジェイク・ギレンホール主演でリメイクされました。

警察官のアスガー・ホルムは、今は緊急通報を受ける電話番の担当。おなじみのヤク中からの意味不明の電話の対応にうんざりしたり、娼婦にまんまとパソコンを盗まれた男の通報ににパトカーを手配したりするのが仕事。

次に入ってきた電話は、すこし勝手が違いました。興奮した女性からの電話で、登録情報から相手はイーベン・オスタゴーと判明。興奮して泣きながらですが、どうやら男に拉致されて車で移動中らしい。こどもにかけると嘘をついて電話をしている様子なので、アスガーはやっと白いバンに乗せられていることだけは聞き出せました。アスガーは指令室に連絡し、状況とGPS情報を伝えパトカーを急行させるように依頼します。

イーベンの自宅の電話番号も判明したので電話をすると、6歳の娘、マチルデが出ます。マチルデは母が元夫のミケルにナイフで脅され連れ出されたと話します。家には自分とまだ赤ちゃんの弟、オリバーだけだというので、アスガーは警察官を家に向かわせます。そして、ミケル・オスタゴーの情報を確認したアスガーは、仲間のラシッドにミケルの自宅に向かうように頼むのでした。

マチルダから誰かが来たとの電話が入ります。アスガーは、警察だから安心してと話す。アスガーは電話越しに、警察官が腹を切り裂かれて死んでいるオリバーを発見する音を耳にするのです。アスガーはイーベンに電話をかけると、イーベンはおそらく荷物室に押し込められた様子でした。

アスガーは手に触れたというレンガを持って、車が止まってミケルが扉を開けたらレンガで殴って飛び出しなさいと指示するのです。しかし興奮したイーベンは、オリバーのお腹の中に「ヘビ」がいて騒ぐので取り出してあげたと言い出します。呆然とするアスガー。

ラシッドから連絡が入り、ミケルの自宅にあった書類からイーベンが重度の精神障害があったことがわかり、GPS情報からミケルは精神疾患センターに向かっていると推察されました。アスガーはミケルの携帯に電話を掛けます。電話に出たミケルは、イーベンが逃げてしまい行方がわからないこと、今までいろいろなところに相談しても誰も助けてはくれなかったことを話します。しばらくして、イーベンから電話がかかってきました。

ビジネスライクに考えれば、緊急通報を受ける立場としてはアスガーの行為は越権行為であり、実際映画の中でもあちこちで顰蹙を買うことになる。ところどころに断片的に、アスガーが正当防衛とはいえ少年を射殺したことで裁判中であることが語られ、そのことで現場から配置換えされていたことがわかります。アスガーはその罪悪感に悩み、イーベンの電話を無視することができなかったわけで、それがアスガーの「ギルティ」に対する答えだったようです。

あらすじを書き出してみてわかるのは、通報室の同僚が数人いてわずかな会話はありますが、登場人物として映像に現れるのはほぼアスガーたった一人と言っていい。また舞台も通報室だけで、台詞のあるイーベン、ミケル、マチルダ、ラシッドらはすべて電話の音声だけという、ある意味かなり非映画的な状況です。

ストーリーの緊迫した展開で何とか見終わることができますが、もう少し映画としての工夫が欲しい印象は拭えません。このままだと、主人公の顔のアップが見放題の一幕物の舞台劇と変わらない。

ただ、独特の着眼点は十分に評価できるところですし、急がずにアスガーの状況に応じてにじみ出る感情の変化をうまく描き出しているところは、俳優の演技力と監督の演出力の賜物と言えます。少しずつタイトルの持つ意味が分かってくるところも悪くない。時間があれば、一度は見ておくべき映画の一つと言えそうです。

2023年10月8日日曜日

地獄の花園 (2021)

脚本はバカリズム、監督は多くの著名ミュージック・ビデオを手掛けてきた関和亮。一見普通のOLたち派閥争いを大々的に描くコメディで、女優陣のはちゃめちゃぶりを楽しむための映画。

平凡なOLを目指す田中直子(永野芽郁)は実際平凡な生活を送っていましたが、彼女の働く三富士株式会社の中には、安藤朱里(菜々緒)、神田悦子(大島美幸)、佐竹紫織(川栄李奈)がそれぞれ率いるヤンキー集団が覇権を争い抗争を繰り返していました。

そこへ入社してきたカリスマ・ヤンキーの北条蘭(広瀬アリス)は、あっという間に各派閥を制圧。自然と三富士のトップOLの地位に就き、蘭の強さは次第にほかの会社にも知られるようになるのです。しかし蘭は仕事についてはイマイチで、面倒を見てくれる直子とは普通に仲良しになっていきます。

地上最強のOLであるトムスン総務部の鬼丸麗奈(小池栄子)の配下には、赤城麗子(遠藤憲一)率いるトムスン三銃士と呼ばれる集団がいて、直子を拉致して蘭を呼び出し叩き潰そうとしました。さすがの蘭も圧倒的多勢にはかなわず気を失ってしまいます。しかたがなく直子はついに本性を露わにし、全員を倒してしまうのでした。

蘭は気が付くと自分が全員をやっつけたことになっていて、以来会社に姿を見せなくなりました。やっと戦い甲斐がある相手が見つかった鬼丸は、三富士の社屋に出向き、直子との壮絶な一騎打ちを繰り広げますが、直子に倒されてしまいます。

蘭は最強OLの頂点に立つことだけが目標であったため、山奥に住む日本最初のOLである伝説と化した七瀬小夜(室井滋)のもとに入門し、自分に欠けていたものを知り修行に励みます。そしてついに極意を会得した蘭は、会社に戻ると直子に対決を申し出るのでした。

・・・と、まぁ、めちゃくちゃの話。ごく当たり障りのないOLと喧嘩命のヤンキーとのギャップを会社という器の中に同居させたらどうなるのかという、ほぼ現実味のないストーリーですが、深く考えずその混沌としたぐちゃぐちゃな感じを楽しめばよいという映画。

女優陣(+男優)はド派手なメイクで、普段メディアで見る姿との違いが楽しいわけですが、そこが別人になりきって実に楽しそう。永野芽郁と広瀬アリスはメイクは普通ですが、やたらと喧嘩が強いこととの落差がすさまじい。アクションもそれなりに作られていて、まぁまぁすごいことが伝わるようになっています。

2023年10月7日土曜日

ソロモンの偽証 (2015)

原作は宮部みゆきによるミステリーで、連載は足掛け10年、原稿用紙4700枚に及ぶ超大作です。「事件」、「決意」、「法廷」の三部構成になっていますが、映画は「前編・事件」、「後編・裁判」の二部構成で2015年3月と4月に続けて公開され、こちらも合わせて4時間半の大作になりました。

監督は成島出、脚本は真辺克彦が担当し、出演者の生徒たちはオーディションによって、ほとんどが演技経験が無い者が選ばれました。特に主人公の一人、藤野涼子は役名がそのまま芸名となっています。

1990年、クリスマスの朝、江東区立城東第三中学校の校庭に雪に埋もれて柏木卓也の遺体が発見されます。警察は屋上からの飛び降り自殺と断定しますが、不良の大出俊次に殺されたという匿名の告発状が届きます。担当刑事の佐々木玲子と校長の津崎は、告発状を表沙汰にせずに調査をします。

告発状を書いたのは大出のいじめ被害を受けていた同級生の三宅樹里と浅井松子でしたが、マスコミに知れるところとなり、担任の森内恵美子は攻撃の矢面に立たされ辞職、校長も辞めざるを得ないことになります。しかし、佐々木刑事は保護者会で告発状が虚偽であると説明したため、浅井は三宅に会うため家を出たところ交通事故で死んでしまいます。

柏木の遺体の第一発見者であった学級委員長の藤野涼子、野田健一は真実をはっきりさせるため、卒業制作の一環として学校内で陪審員形式の裁判で関係者を一堂に集めることを提案します。そこへ柏木と小学校での同級生だった神原和彦が、弁護士役をやりたいと名乗り出てきたため、藤野は検察官を務めることになりました。

いよいよ4日間に渡る裁判が始まりました。判事、陪審員、検事、弁護士、被告である大出らのすべてが生徒たちです。証人には、佐々木刑事、辞めた森内らも証言し、さまざまな仮説が検証されていきます。しかし、藤野は神原の裁判に参加した真意を測りかね、裁判開始後もいろいろな状況証拠を調べていました。そして、最終日。藤野は弁護人であるはずの神原を検察側証人として証言させることにしたのです。

映画は藤野涼子が教師として城東第三中に赴任してきたところ、現校長に過去の伝説となっている校内裁判のことを尋ねられるて答えるところから始まります。大人になった涼子を演じるのは尾野真千子、涼子の両親は佐々木蔵之介、夏川結衣。校長は小日向文世、森内は黒木華、佐々木刑事は田畑智子、大出の母に江口のり子、三宅の母に永作博美、神崎の母に森口遥子などのベテランが固めています。

生徒役は、神崎役の板垣瑞生、三宅役の石井杏奈、野田役の前田航基くらいが知られているだけで、他はほぼ演技初めてというのはすごいこと。主役の藤野涼子を演じた藤野涼子は、その後も俳優として現在も活動しています。

内容として、確かに2時間の1本の映画に納めるのは無理がある内容で、前後編に分かれたのは正しい判断だと思います。ただし、やはり長い。本物の犯罪事件の映画のようなアクション部分が無いし、生徒たちの捜査も現実的で地味ですから、なかなか盛り上がりが少ないのが難点。

やはりその中で、生徒が裁判をするという過程が映画だけ見ている自分には現実的ではないではないし、法的拘束力が無い中で真相が暴かれるのか懐疑的にならざるを得ません。警察が間違うということがフィクションの世界ではありますが、警察が自殺としたものをひっくりかえそうとするには説得力不足は否めません。

それらの大前提が許容できるのなら、後編の裁判はそれなりの緊迫感があって興味が途切れない作りになっています。これは映画的なうまさというよりは、原作者の宮部みゆきの力が大きいように思います。

2023年10月6日金曜日

ポセイドン・アドベンチャー (1972)

原作は1969年の小説で作者はポール・ギャリコ。監督はロナルド・ニームで、当時流行したオールスター出演パニック映画の代表作となりました。多くの評論家から大絶賛され、テレビでも何度も放送されたので、記憶にある人が多い映画です。

年の瀬に出向した豪華客船ポセイドン号は、老朽化してこれが最後の航海でした。乗員・乗客は1400名で、皆さまざまな期待を込めて乗船していました。

新年のカウント・ダウンが終わり、大広間には多くの客が集まり新年をお祝いしていました。しかし、近海で巨大海底地震が発生し、山のような大津波がポセイドン号めがけて押し寄せてきます。船は転覆、上下がさかさまになってしまいました。

フランク・スコット牧師(ジーン・ハックマン)は、「神は弱きを助けるのではない。神に祈るのではなく、自分に祈れ。そして立ち向かえ」という独自の宗教観を持っています。浸水してくることを想像し、スコットは助かるためには船底に向かって登っていくしかないと言います。

一緒に行動を共にしたのはスコットを含めて全部で10人。マイク・ロゴ(アーネスト・ボーグナイン)は強面の警察官で、妻のリンダ(ステラ・スティーブンス)との新婚旅行の途中。ジェームズ・マーティン(レッド・バトンズ)は雑貨店を営み、結婚もせずひたすら働いてきました。マニー・ローゼン(ジャック・アルバートソン)と妻のベル(シェリー・ウィンタース)は孫に会うための旅で、ベルはかなり太っていますが、面倒見の良い性格。

スーザンとロビンの17歳と12歳の姉弟は活動的で、特にロビンは船に興味があり、この船のこともかなり詳しく知っています。ノニー(キャロル・リンレイ)は船内のステージで歌う歌手。エイカーズ(ロディ・マクドウォール)は、客の世話をするボーイです。彼らが上に部屋に着いた時、大広間には一気に海水がなだれ込んでしまうのでした。

換気口を伝って煙突に出た一行でしたが、梯子を上る途中で爆発がありエイカーズが落下してしまいます。機関室に抜ける通路が浸水していて潜って通り抜ける途中では、スコットを助けたベルが心臓発作で息を引き取ります。

最後の扉を抜ければ最も鉄板の薄いプロペラ室というところで、再び爆発がありリンダが転落。ロゴはお前のせいだとスコットに怒りと悲しみをぶつけるのでした。その時扉の前のバルブから蒸気が噴き出し、通れなくなってしまいます。スコットは通路からバルブに飛びつき、何とか蒸気を止めるのですが、力尽きてロゴに後のことは託して墜落していくのでした。

マーティンはリンダを失い呆然としているロゴに、文句ばかり言ってないで警察官らしく役に立てと檄を飛ばします。ロゴはやっと立ち上がると、先頭に立ちプロペラ室に皆を導きます。そして、外から鉄板を叩く音が聞こえてきたのでした。

最初の人物紹介は比較的簡単で、スコットと行動を共にする人々に関する最低限のエピソードが提示され、開始して30分もしないうちに船は転覆してしまいます。生き残るために行動していく中で、少しずつ各キャラクターの特徴が補強されていく脚本はうまくできています。

主役のスコット牧師は、どんな苦難にあっても前に進む選択しかしない。これはこの映画が伝えたい強烈なメッセージになっています。ただし、誰もがスコットになれるはずはなく、むしろ現実的な人物としてロゴのほうが普通に見えます。マーティンも気遣いの人で、さりげなく縁の下の力持ち的な働きをしています。

このような緊急時には、正しいかどうかは二の次で主観的な行動ができる人間は必要ですが、客観的にサポートする人々が周りにいて物事がうまく運ぶということ。何度見ても、長すぎず短すぎず、スリルのテンションが持続する作りは見事です。

2023年10月5日木曜日

セブンのおにぎり 12


昨今健康に良い食べ物は注目されがちで、とかく、コンビニ弁当などはやたらと体に悪いものが入っていると言う人が後を絶ちません。しかし、コンビニ業界もいろいろと努力をしているわけで、それらの噂を黙って良しとしているわけではありません。

セブンのおにぎりにも、健康志向を意識したものが登場していますが、今シーズンのラインナップに加わったのがこれ。共通のポイントは「もち麦もっちり!」ということで、もち麦は大麦の中でも「もち性」が強く、ぷちぷち・もちもちした食感があり、玄米よりも多くの食物繊維が含まれているのが特徴です。

見た目の雰囲気だと、米ともち麦の割合は10:1くらいでしょうか。食べると、あきらかに噛むとプチプチとした感じが新しい。味的には特に違いはわかりませんが、はまると癖になりそうな感じがします。

「ごま鮭」はもち麦ご飯にほぐした鮭の身が混ざり、表面をびっしりと白ゴマで覆ったもの。塩分も控えめで、その分ゴマの主張がかなり強い。「梅こんぶ」は梅もこんぶもこまかく混ぜてあり、統一された味がします。

で、何が健康へ良いのかというと、大麦に含まれるβ-グルカンの作用で、「食後血糖値の上昇をおだやかにする」ということらしい。

裏を見ると「1日当たりの摂取目安量」というのが記載してあり、1日1個としてあります。食べ過ぎると「お腹がゆるくなることがあります」と書いてありますが、まぁどんなものでも食べ過ぎはいけません。

2023年10月4日水曜日

ブラックボックス 音声分析捜査 (2021)

「ブラックボックス」という言葉がありますが、一般には中身がわからないようにしてある箱という意味で使われます。航空事故でもしばしば登場する言葉ですが、この場合は、飛行機が運航中の様々な状態を記録するフライト・レコーダー(FDR)と操縦室内の会話を録音したボイス・レコーダー(CVR)を格納するケースのことで、通常は目立つオレンジ色の耐荷性の高いケースに格納され、自動でビーコンを発して発見しやすい仕組みになっています。

このフランス映画は、CVRを分析する担当者が事故にまつわる陰謀に巻き込まれていくスリリングな展開の、一風かわった航空サスペンスです。監督・脚本はヤン・ゴズランという方。あくまでも音にこだわり、実際の事故映像などは登場しませんし、現代の人々が使う様々な情報ツールが登場します。

搭乗者全員死亡する最新鋭の旅客機墜落事故が発生しますが、フランス航空事故調査局の優秀な音声分析官マチュー(ビエール・ニネ)は、主任のポロック(オリヴィエ・ラブルダン)から担当を外されてしまいます。しかし、ブラック・ボックス回収後、ポロックは失踪。解析はマチューに委ねられることになります。

マチューは聞き取りにくい音声を解析して、テロリストらしき言葉を抽出することに成功しますが、事故の乗客の遺留品や事故直前に乗客が残した留守番電話の音声などから、CVRの記録が現実の事故の時間軸と一致していないことに気が付きます。

マチューの妻、ノエミ(ルー・ドゥ・ラージュ)は航空機製造認証機関の仕事をしていて、近く事故機の製造会社にヘッド・ハンティングで転職することになっていました。マチューは、製造会社が新型機の不具合を隠蔽するためにポロックを巻き込んでデータの改ざんを行ったと考え、ノエミのパソコンのデータを黙って持ち出してしまいます。しかし、問題を特定できるデータは見つからず、機密漏洩の責任をとらされたノエミは失職し、マチューも調査局を更迭されるのでした。

一人になってしまったマチューは、ラジコンのコントローラーが発生する電磁波が自分のワイヤレスイアホンと干渉して、CVRの記録と似た音が発生することに気がつき、事故がサイバー攻撃により操縦不能になったのではと考えます。ポロックの自宅に侵入し、友人のセキュリティ会社社長のグザヴィエ(セバスティアン・プドゥル)とポロックが共謀していた事実を確信したマチューは、ポロックの立ち回り先を調べついに隠してあった本物のCVRを発見します。

CVRを解析すると中身はまったく異なり、飛行機が遠隔操作により墜落させられたことが判明し、さらにその後にポロック自身の「これを見つけるのはマチューだけだ」という言葉から始まる告白も記録されていたのです。事故はグザヴィエの会社のシステムを売り込むためのものだったのです。しかし、グザヴィエの魔の手はマチューに迫っていました。

航空業界の闇に焦点を当てた、新感覚サスペンスという表現がびったりのような作品で、音声分析という技術が、雑音の中に埋もれた音を拾い出していく様は目が離せません。登場人物が情報を取得するのも、LINEだったりビデオ通話だったり、ドライブレコーダーの映像とか、ありとあらゆるものを利用するのも興味深いところです。

いつも細かい音に全神経を使う主人公が、雑踏の雑音で耳鳴りがしたりして苦しくなるというのも職業病としてありうる話で、イアホンで耳を塞ぐことで安息を得ると言うのも皮肉な話です。神経質ですが、いわゆる「オタク」系の人物として描かれますが、彼を通して知られざる世界を見せてくれるところは評価されるべきです。

言葉では説明しにくい、ハリウッドとは違う、いかにもフランス映画っぽい何でも説明しきらないところがミステリアスな感じです。飛行機はほぼ出てこないのに、立派な航空映画になっていて、フランス国内で大ヒットしたというのも納得です。

なお現時点でDVDなどは発売されていないようですが、Amazon Prime Videoで見ることができます。

2023年10月3日火曜日

エアポート '75 (1975)

1970年の「大空港(Airport)」の正規の続編・・・とは言っても、前作のグランドホテル形式の空港に集まる様々な人々の人間ドラマは影を潜め、当時ブームになっていたパニック・サスペンス調を押し出した作品になりました。

もともとの原作はアーサー・ヘイリーによるものでしたが、本作ではヘイリーは無関係。前作で整備士だったパトローニだけが続投されましたが、他の登場人物は一新しています。監督はテレビ出身のジャック・スマイトです。

コロンビア航空409便はロサンゼルスに向けてダレス空港を離陸します。搭乗客は女優のグロリア・スワンソン(本人)、腎移植を受ける予定の少女ジャニス(リンダ・ブレア)、修道女ルース(ヘレン・レディ)、コロンビア航空の重役パトローニ(ジョージ・ケネディ)の妻子らです。

濃霧のためやむを得ずソルトレイクに着陸することになりましたが、そこへ続いて着陸を予定していた小型機がパイロットの急病により、機首を変え空中で409便と正面衝突してしまいました。操縦室の上が大破し、副操縦士は機外に放り出され、機関士は死亡、機長も重傷になり自動操縦のスイッチを入れるのが精一杯でした。

CAのナンシー(カレン・ブラック)は、パイロットに代わって操縦席に座り、ベテラン・パイロットである恋人のマードック(チャールトン・ヘストン)から無線指示により何とか機体を安定させます。しかし、無線システムがダウンしてしまい、連絡が取れなくなったナンシーの目前には飛行機の高度よりも高い山が迫っていたのです。

ナンシーは、それまでの操作法と機長のアドバイスにより、何とか高度を上げることに成功します。マードックとパトローニは、空軍のレスキューに出動を要請し、ジェットヘリからパイロットが乗り移る作戦を開始します。燃料漏れも起こしている409便に残された時間はわずかでした。

結局人間ドラマは形式だけで、登場客の紹介の域を超えていません。にも拘わらず、そこだけで100分の映画の30分以上費やされるので、事件が発生するまでは正直に言うと退屈。全カットでも構わないくらいです。

ただし、事故が発生してからのスリルはかなりのもの。そもそも素人にジャンボ・ジェット機を操縦できるわけないと思いますが、あくまでも指示通りにやる範囲を超えないので、設定としては無理は感じません。無線が使用不能になっても機長のサジェストがあってのことなので、まぁ必死になれば可能だろうと思いました。

であれば、何とか無線に代わる連絡手段を使って、そのままナンシーが自力で着陸させて何とか全員助かったというのもありかなと思います。ジェットヘリ(300km/h以下)からジャンボ(800km/h以上)にパイロットが乗り移るというのはかなり無理があるし、実際最初のレスキュー隊員は失敗して飛んで行ってしまうという可哀そうな結果になっています。

まぁ、公開当時はさそれなりに話題になった映画ですし、あまり「続編」というような気持で見なければ、標準的なレベルで楽しめる作品に仕上がっています。

2023年10月2日月曜日

太平洋ひとりぼっち (1963)

堀江健一さんは、昭和人では知らない人はいないくらい有名人。1938年、大阪生まれで、1962年に小型ヨット(エンジン非搭載)による太平洋単独無寄港横断、1974年に小型ヨット単独無寄港世界一周を成し遂げた海洋冒険家です。

太平洋単独無寄港横断における手記が「太平洋独りぼっち」で、すぐさま石原裕次郎が企画し日活が映画化。石原プロモーションの初めての映画となりました。監督は石原からオファーされた市川崑が勤め、円谷プロダクションが特殊撮影を行い、音楽は芥川也寸志と武満徹という二大巨頭が担当しています。

小型ヨットでの領海外での航行は禁止されていて、堀江健一(石原裕次郎)は1962年5月12日、深夜に密出国を覚悟でマーメイド号で西宮港を出発します。しかし、なかなか風が吹かずいつまでたっても日本から出られません。

健一はマーメイド号の造船所の主人(大阪志郎)や父(森雅之)や母(田中絹代)との会話を思い出していました。健一は母にだけはヨットの話をしていました。母はどう説得してもあきらめない健一に、最期には「死ぬときはお母ちゃんと呼んでや」と言うのでした。

台風に遭遇して難破しかけたり、積み込んだ飲料水がダメになったり、ひとりぼっちの孤独に押しつぶされそうになったりします。食事は缶詰中心で、トイレは海に捨てるだけ。41日目に日付変更線を通過。ハワイの日本語放送を聞いて涙するのでした。

途中、アメリカ軍の哨戒機や貨物船と遭遇しますがやり過ごします。水の節約のためビールでご飯を炊く、ケーキの変わりにバターと脱脂粉乳に砂糖を混ぜて食べる。健一は出発前のことを思い出していました。母は少しでも足しにとお金を、妹(浅丘ルリ子)は手製のクッションを渡しました。

8月12日、ついにゴルーデンゲート・ブリッジを超え、サンフランシスコ湾に入りました。早速沿岸警備隊が近寄って来て、港に曳航されます。パスポート無しなので拘束されると覚悟していましたが、逆に歓迎され、日本領事館に連れていかれると家族からの国際電話にも関わらずひたすら眠り続けるのでした。

基本的に一人でひたすらヨットに乗っているだけの話ですが、石原によるナレーションを中心にヨット内での台詞(独り言)は少な目、映画として成立させるために主人公の様々な回想を織り交ぜています。 

市川崑は揺れ動くヨットに苦戦し、満足が行く出来にならなかったと考えているようですが、小さなエピソードをうまくつないで同じような映像に変化を持たせているのはさすがです。ただ、絶対的スターであった裕次郎ではありますが、一人芝居が一人相撲になっているところが多々あるのは否めません。

ただただこれが実話だという「真実の強さ」が映画を支えています。それにしても、日本では違法出国の犯罪者でしたが、アメリカでは英雄として称えられたという、60年前の日米の懐の深さの違いが印象的。名作とは言えない物の、高度経済成長に向かいつつあった日本の若者の力の一端を知ることができる良作だと感じました。

2023年10月1日日曜日

里見八犬伝 (1983)

1976年の「犬神家の一族」を手始めに日本映画界に旋風を起こした角川映画が、80年代はじめにピークを迎えた頃の映画。特に1978年に「野生の証明」でデヴューした薬師丸ひろ子は、1981年の「セーラー服と機関銃」、「ねらわれた学園」、1983年の「探偵物語」と本作など、角川ブームを牽引しました。


もともとの原作は江戸時代後期(1814~1842年)に曲亭馬琴による「南総里見八犬伝」で、室町時代後期を舞台に、安房里見家の伏姫と八犬士の伝奇小説です。その後、多くの派生作品を産んでおり、歌舞伎、新劇などでも数多く取り上げられています。映画化も多数ありますが、この映画は鎌田敏夫が書いた「新・里見八犬伝」をもとにしています。

監督は深作欣二、特殊撮影を駆使し、音楽は角川得意の英語歌詞によるロックを使用するという、一般的な時代劇とはまったく異なるアプローチが話題になりました。全体の音楽を担当したのは矢沢永吉のバックバンドをしていたNOBODY、松田優作の諸作や、ここまでの角川映画を担当した仙元誠三が撮影をしました。

領主、蟇田定包(ひきたさだかね)は玉梓(たまづさ)の色香に迷い民衆の怒りを買います。里見義実(さとみよしざね)はついに定包を討ちますが、断末魔に玉梓は里見一族を呪うのです。そのため隣国から攻め込まれた里見は飼い犬の八房(やつふさ)に助けられ、義実の娘、伏姫は八房と共に城を出ます。追ってきた里見の配下の八房を狙った矢は伏姫を射抜き、死ぬ間際に8つの光る玉が飛び散りました・・・というのが100年前の話。

そして、魔物の力で蘇った玉梓(夏木マリ)、その息子、蟇田素藤(目黒祐樹)は、里見一族を皆殺しにしますが、静姫(薬師丸ひろ子)だけを取り逃がしてしまいます。逃げ延びた静姫のもとに犬山道節(千葉真一)と犬村大角(寺田農)が現れ、光の玉を示し姫を守って魔物と化した玉梓らを倒すと話します。そのために、あと6人の光の玉に導かれる同志を探さなければなりませんでした。

もともと百姓で武士になりたいと思っていた犬江親兵衛(真田広之)は、褒美欲しさに静姫をさらいますが、蟇田軍のあまりの非道を目の当たりにして、静姫を連れて洞窟に逃げ込みます。そこで、道節、大角らと相対しますが、犬塚信乃(京本政樹)、犬坂毛野(志穂美悦子)、犬田小文吾(苅谷俊介)、犬川荘助(福原拓也)らが光る玉を持っていて次々に同志に加わっており、親兵衛は追い返されてしまいます。

そこへ玉梓が現れ、親兵衛は二人目の息子の生まれ変わりで、その証拠に自分と同じ痣があると話しアジトである館山城に連れて行きます。しかし、玉梓の部下である犬飼現八(大葉健二)は今までのの悪行から目が覚め、抵抗する親兵衛を助けて城を脱出するのです。そして、親兵衛と現八にも光る玉が現れるのでした。彼らを追ってきた玉梓は、静姫を拉致して消えていきます。

8つの光る玉がそろい、伏姫の霊から光る弓矢を授けられた八犬士は、館山城に向けて出発します。しかし、城の頑強な守りと大挙して押し寄せる敵との戦闘で、一人また一人と犬士は倒されていくのでした。そして親兵衛が最後の一人となり、静姫を助けると静姫が放った光の矢によって玉梓は絶命し、城は一気に崩れ去っていくのでした。

何しろ千葉真一率いるJapan Action Clubのトップスターだった志穂美悦子と真田広之が参加して、アナログな時代のアクションとしてはなかなか見応えがあります。とは言え、全体的に前時代的な大袈裟な演技と妙な間が空くセリフ回しは、やはり古さを感じさせます。

135分の映画で犬士がそろうまで100分を使うのはしょうがないのですが、それでも各犬士のいろいろな因縁が駆け足過ぎて、集まった即決戦という流れはバタバタした感じです。その中で、薬師丸と真田のラブ・シーンだけは、何しろまだ十代だった薬師丸ですから、直接的な演技はなくて官能的な顔だけ延々と見せられるのには興覚めします。反対に夏木マリの全裸がちょっと出てくるのも、サービスし過ぎという感じ。

とは言っても、もう40年前の作品ですから、当時はそれなりに新しい時代劇を感じさせるいろいろな工夫は評価すべきポイントです。この映画の数年前に、日本でも大ヒットした「スター・ウォーズ」と「レイダース 失われた聖柩」へのオマージュ的なシーンも随所にあり、単なる薬師丸&真田のアイドル映画にしなかったところも愉快です。