夏季臨時休診

夏季臨時休診のお知らせ 8月14日(金)~8月19日(水)臨時休診します。
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2026年5月13日水曜日

カーペンターズ/ 動物と子供たちの詩 (1972)


これはサウンド・トラック盤で、本来は「動物と子供たちの詩 (Bless the Beasts and Children)」という映画のための音楽が入ったレコードでした。

映画は「真昼の決闘」や「ケイン号の叛乱」などで有名なスタンリー・クレイマーが監督した、こどもたちのひと夏の冒険を描いたものですが、まったく見たことは無いし、ビデオとして発売もされていないようです。

60~70年代前半というと、アメリカから大挙して入って来たポップスが、日本の音楽界を席巻していた時期で、その中でもダントツに人気と実力を誇ったのがカーペンターズでした。カレンとリチャードの兄妹によるデュオで、カレン・カーペンターの本当に美しい声、見事な歌唱力は、一度聞くと誰もが夢中になったものです。

残念ながらカレンが1983年に32歳の若さで突然亡くなったため、その後は忘れ去られたような存在になりました。ただ最も人気があった時期が自分がいろいろと音楽を聞くようになった時と一致していたので、とても音楽の嗜好に影響したと思っています。

で、買ったカーペンターズのレコードが「動物と子供たちの詩」というわけ。

映画は知らないけど、カーペンターズのアルバムだから、という理由なんですが、当然サウンドトラック盤なら普通の事ですが、カーペンターズの歌は主題歌1曲のみで、後はバリー・デ・ヴォーソンという人が作曲したBGMばかり。

主題歌「動物と子供たちの詩」自体はとても良い曲で、単独でヒットもしましたし、数あるベスト盤でも外されることは無い曲です。

定価2000円のレコードを1曲だけのために買うか? 買いません。単なる勘違いです。これというのも当時レコードを安く買うことができたからですが(理由は以前に書きました)、それでもかなりがっかりしたのは後の祭り。

そのショックのせいか、カーペンターズはとても好きだったのにもかかわらず、後にも先にも一枚もレコードを買うことなく終わってしまいました。

その後は大人になってからベスト盤のCDを買って、カーペンターズは今でも時々聞き続けているので、この一枚は自部の音楽史の中では「事件」の一つだったように思います。

2026年5月7日木曜日

007 / ダイ・アナザー・デイ (2002)

ついにイーオン・プロダクションの映画「007シリーズ」は、本作で40周年を迎え、20作品目となります。前作でほぼ完成形と言えるピアース・ブロナンスのジェームス・ボンドは4本目ですが、プロナンスは本作を最後に役を降りることなりました。もともとの契約は5本だったようですが、製作サイドがキャストの若返りを狙ったということらしい。

監督は大島渚監督の「戦場のメリークリスマス」で助監督を務めたリー・タマホリで、主題歌はマドンナが歌い、作品中にも少し出演しています。イギリスとアメリカが協力し、北朝鮮を敵国とするのは久々の国家間の争いの設定です。ただし、表立っては悪者には出来ないのか、あくまでも北朝鮮軍部の中に壮大な野望を持った独立した存在がいることになっています。イアン・フレミングの原作ではなく、オリジナル脚本となっています。

北朝鮮の非武装地帯の基地を根城にして、武器の密輸を行っていたムーン大佐を抹殺するためにジェームス・ボンドが送り込まれました。しかし、側近のザオが顔写真を照会し、何者かの情報によって身元が露見してしまいます。それでも、ムーン大佐を滝壺に落下させますが、父親のムーン将軍に捕らえられ、14か月に渡って尋問・拷問を受けることになってしまいました。しかし中国と韓国の外交交渉の場にテロを仕掛けたザオが捕らえられると、捕虜交換によってやっと解放されるのです。

しかし、ザオを追っていたCIA工作員がボンドが捕らえられていた収容所からの発信によって殺されたため、情報を漏洩した疑いをかけられたボンドは00ナンバーを失い、香港沖に停泊するイギリス工作船に軟禁されるのです。ボンドは疑いを晴らすべく船から逃亡し、旧知の中国公安の助けを借りて、ザオがキューバの孤島に潜伏していることを知るとただちに出発します。

島には人を別人に生まれ変わらせられるDND変換術を行っている病院があり、武装した警備員が配置されていました。病院に侵入したボンドは、アメリカ国家安全保障局(NSA)の女スパイ、ジンクスに遭遇し、まだ別人になりきれていないザオを発見するものの逃げられてしまいます。ザオとの格闘で掴んだ彼の弾丸のネックレスを調べると、中にはアイスランドのダイアモンド王、グスタフ・グレーブスの刻印の入ったダイヤが入っていましたが、その品質は南アフリカ産とまったく同じでした。

秘密裏に連絡を受けたボンドは、旧地下鉄構内にあるMI6分室でMと再会します。両者が情報を交換すると、アイスランドでダイアモンド鉱山を発見し短期間で巨万の富を築いたというグレーブスの履歴が怪しいことがわかってきます。Mはボンドが再び007を名乗ることを黙認するのです。

ボンドはグレーブスの計画を暴くため、アイスランドで行われる彼の世紀の発明、イカロスの発表会に潜り込みます。イカロスは宇宙空間で太陽光を集めて地上に照射することができる装置でした。いつでも必要なだけ光と熱を供給できるので食糧危機のない繁栄を期待できるという触れ込みでしたが、実は強力な熱線をピンポイントで放射することで強力な武器として使えるものでした。

ボンドはグレーブスの立ち居振る舞いから、グレーブスがDND変換された死んだ思っていたムーン大佐であることを見抜き、銃を突きつけます。そこへMの指令によってグレーブス社に潜入して秘書を務めていたミランダが現れ、逆にボンドに銃口を向けるのでした。一方、別行動をしていたジンクスも捕らえられ監禁されてしまうのでした。

ボンドガールは、ジンクス役には初めての黒人女性としてハル・ベリー、敵側の二重スパイだったミランダにはロサムンド・パイクが選ばれました。こう言っては怒られそうですが、ボンドガールで出演後も活躍した人は意外に少ないのですが、この二人はその後も大活躍で多くの映画に出演しています。ジュディ・デンチのM、サマンサ・ボンドのマネーペニーは続投。Q役は、前作で後釜として紹介された新たなQが登場しますが、初めてなのであまり印象は残りません。

40周年記念企画として、過去の作品の印象的なシーンが次から次へとオマージュされて登場するのも大きな楽しみ。ジンクス登場シーンは、まさに第1作「ドクター・ノオ」のウルスラ・アンドレスの初登場シーンそのまま。第2作「ロシアより愛をこめて」からは、葉巻の合言葉や毒針付きの靴。第3作「ゴールド・フィンガー」からは迫りくるレーザー光線など。Mと再会する地下鉄は「007は二度死ぬ」だし、パラシュートのユニオン・ジャック、ホバークラフトによる追いかけっこなどなど、あれ、これどこかで見たというシーンが次から次へと出てきます。

また、ロジャー・ムーア版ボンドまでは、冒頭のシークエンスはボンドの流儀を知るための短い活劇で、本編とは直接関係しなかったのですが、ティモシー・ダルトンからは、本編へのイントロダクションとしての役割が持たせられていました。しかも、この作品では冒頭シークエンスに続く、テーマ曲パートでなまめかしい動きの女性だけでなく、拷問され続けるボンドのシーンも何度も挟まり長い時間が経過していることを示すのも初めての試みだろうと思います。

まぁ、いろいろ試行錯誤されて出来上がったジェームス・ボンド像でしたが、ある意味それもここまでで、次回作ではシリーズがリブートされハードボイルド化したボンドが登場することになります。

2026年5月6日水曜日

007 / ワールド・イズ・ノット・イナフ (1999)

イギリスの諜報局MI6の007が活躍するシリーズ第19作目。ジェームス・ボンド役は、これで3作目となるピアース・ブロナンス。今回は内容はシリアスなのに、やや往年のボンド・カラーが強めで、ジョークと女性に弱いところが目立ちます。監督はマイケル・アプテッド。主題歌を歌うのはガービッジというロックバンドですが、自分は不勉強で聞いたことが無い。

Mとは学生時代から親交があるキング卿は、石油産業で莫大な権益を得ていて、さらにアゼルバイジャンで新たな石油のパイプラインを建設中です。しかし、娘のエレクトラが元KGBのテロリスト、レナードに誘拐され、キング卿はMに救出を依頼してきます。Mはレナードを捕獲するチャンスだとして、キング卿に身代金要求を断るように進言しますが、エレクトラは、何とか自力で脱出したのでした。

しばらくして、MI6の機密文書が奪われ、キング卿が巨額の資金を提供しますが、ボンドの活躍によって機密文書も資金も回収されました。MI6本部で、キング卿に資金が返還されましたが、実は特殊爆弾で、キング卿は爆死してしまいます。エレクトラを一度見捨てたことを引け目に感じているMは、ボンドにレナードからエレクトラを警護するように命じるのです。

父の仕事を引き継いでパイプライン建設を目指しているエレクトラは、最初はMI6に対して不信感を抱いていましたが、武装集団に襲われたところをボンドに助けられ信用するようになります。エレクトラは元KGB、今はカジノ経営などで一儲けしているズコフスキーの元を訪れ、簡単に賭けで負けて大金を失いますが、「人生にはスリルが必要」とうそぶく様子にボンドは疑いを向けます。

エレクトラの警備主任が怪しい行動をしていたので、ボンドは彼を倒してなりすまし、迎えに来た飛行機に搭乗します。行き先は、旧ソビエト連邦の核弾頭の廃棄作業が行われているカザフスタンで、旧ミサイル基地内ではレナードとその一味が核弾頭を奪取しようとしていました。ボンドはレナードに銃を突きつけたものの、形勢逆転で「人生にはスリルが必要」と言い残して逃げられてしまいます。ボンドは、核弾頭解体の専門家、女性科学者のクリスマスと伴に何とか爆発する基地から脱出しました。

エレクトラはM自身に守ってもらいたいと懇願したため、Mは石油備蓄基地に向かいます。ボンドはエレクトラが一味に加担していると推測しますが、Mは信じません。その時、石油備蓄基地に向かってくるパイプラインの中のメンテナンス用のピグが暴走し、そこには核弾頭が仕掛けてあることがわかります。ボンドとクリスマスは核弾頭解除のため、別のピグに乗って先行するピグを追いかけるのでした。

しかし、弾頭内のプルトニウムは少量で、時限爆弾によってパイプラインが損傷するだけの破壊力だったのです。爆発によりボンドは死んだと思ったエレクトラは本性を現し、Mを拘束するとレナードが待つイスタンブールに向かうのでした。彼らは黒海からエーゲ海に抜けるためのイスタンブールを縦断するボスポラス海峡を核汚染によって通行不能にして、石油の多くがエレクトラのパイプラインを使うしかならなくなるという計画だったのです。そして、それが自分を見捨てたキング卿やMI6に対する復讐でもあったのでした。

ボンドガールはエレクトラにソフィー・マルソー、クリスマスにデニス・リチャーズです。ソフィー・マルソーは「ラ・ブーム」で日本でも人気者になりましたが、その後はあまりぱっとしません。ボンド・ガールが悪者というのは今までにもありましたが、その最後はおそらく初めてのケースになっています。エンディングのラブ・シーンを務めたのはデニス・リチャーズですが、それまでは男勝りの強気な科学者という役柄でお色気は封印しています。

Mの心情が深く関わってくるという設定も初めてで、出番がかなり多め。ズコフスキーは「ゴールデン・アイ」にも登場した、ちょっと憎めないキャラの悪党で、同じ俳優が演じています。今回のキャスティングで一番話題になったのは、これまでシリーズすべてでQを演じてきたデスモンド・リュウェリンの引退でしょう。作品中で、代わりの人物を紹介していますが、この映画が公開された直後に、交通事故で85歳で亡くなりました。

父親に対する復讐、人質を捨て石にした自責の念、今まで以上に非情になり切らなければならないスパイといった、シリーズの中にこれまでなかった心的な要素が複雑に絡み合うことで、ストーリーは深みが増しています。いつも余裕しゃくしゃくのボンドが、焦りの色を見せると言うのは珍しい。

冷戦時代のような国と国の駆け引きではありませんが、諜報部員が出ていって活躍する土台は、十分に納得できる内容になりました。もちろん恒例のアクション・シーンも秀逸で、特に水上のモーターボートによるカーチェイス(ボートチェイス?)は圧巻ですし、スピード感のあるスキーのシーンも見応えがあります。さらには潜水艦まで登場するというサービス振りもあって、最後まで楽しく見れる内容になっています。

2026年5月4日月曜日

トゥモロー・ネバー・ダイ (1997)

公開されると大きな話題になる「007シリーズ」の第18作目。前作に続きジェームス・ボンド役は五代目のピアース・ブロスナンが努めます。監督はロジャー・スポティスウッド、主題歌を歌うのはシェリル・クロウ。

ロシア国境で開かれていた武器商人たちによる大かがりな取引を調査していたジェームス・ボンドは、現場の映像を本部に送っていました。映像を確認した海軍提督の決断により、巡行ミサイルが発射されますが、ボンドは間一髪で核魚雷を搭載した攻撃機で脱出に成功しました。しかし、テロリストのグプタはアメリカ製のGPS暗号解析器を持って逃亡します。

それからしばらくして、南シナ海の公海上を航行していたイギリス海軍フリゲート艦が、中国軍機から領海侵犯の警告を受けます。そこへ密かに近づいたステルス艦が特殊魚雷を発射し、フリゲート艦を沈没させ、搭載していた核ミサイルが盗まれました。海上に投げ出された生存者は、ステルス艦からの中国製機関樹により射殺されました。実はグプタがGPS信号を操作してフリゲート艦に誤った位置情報を送り、中国から攻撃されたように偽装していたのです。

グプタを操っていたのは、世界的なメディア王であるエリオット・カーヴァーでした。カーヴァーはニュースを配信するだけでなく、世界中が目を見張るような情報を作り出そうともしていたのです。カーヴァーが発行している新聞に発表前にもかかわらず事件が報道されため、公海上の艦船が攻撃されたと信じるイギリス国防省は、中国に対して艦隊の派遣を容認します。しかし、事件の直前に謎のGPS信号が発せられていたことを察知したMI6のMは、48時間の猶予をえてボンドに調査を命じるのです。

カーヴァーのパーティに潜入したボンドは、過去に関係を持ったことがあるカーヴァーの妻、パリスに近づきますが、二人の会話を怪しむカーヴァーの命令で捕らえられます。ボンドはパーティ会場を停電にしてカーヴァーの自慢の演説を台無しにして脱出します。研究所に忍び込んだボンドはGPS暗号解析器を奪還し、中国の公安から派遣されたウェイ・リンと鉢合わせするもののカーヴァーの野望の証拠をつかみます。

カーヴァーはイギリス艦隊を出動させたところで、盗んだミサイルで北京を破壊、世界的な戦争を勃発させ独占的にメディアを操作することで巨万の富をえようとしていたのでした。ボンドは、ステルス艦の基地はベトナムと考え、CIAの協力のもとベトナムのカーヴァーの拠点となるビルに向かい、ウェイ・リンと合流するのでした。

前作よりも高評価であったことから、ブロスナンのジェームス・ボンドが受け入れられたということ。もともとボンドのキャラクターは、一仕事の後で、あるいは最中でもちょっとした洒落たセリフを言う「キザ」なところが面白いわけで、ロジャー・ムーアは露骨に遊び過ぎてジャグになってましたし、ティモトー・ダルトンは余裕が無さ過ぎたかもしれません。

ソビエト連邦が崩壊し、東西冷戦の構図が無くなってしまうと、国のために働くスパイの存在意義が薄くなってしまいます。そこで、この作品でもイギリスとロシアは仲良しで、新たに中国が仮想敵国になりそうな雰囲気を出していますが、実際の敵は大物犯罪者です。中国が絡むことをスパイ活動の根拠としていますが、ややメディア王が情報を作り出して世界の覇権を得ようとするという動機はやや弱いと言わざるを得ない。

ボンド・ガールは中国公安のミシェル・ヨーと、ボンドと過去に関係があったことがばれて殺されてしまうパリスのテリー・ハッチャーの二人。パリスは多少お色気シーンがありますが、メインのウェイ・リンは、役柄からしてもボンド顔負けのお得意のアクションを見せて、なかなかかっこいい見せ場を提供してくれます。

お馴染みのM、Q、マネーペニー、CIAのウェイドらは前作から引き続き同じ俳優が登場。ジュディ・デンチのMは前作では数字市場主義みたいな感じでしたが、今作ではあまり毒気は感じられませんでした。悪役陣はカーヴァーにジョナサン・プライス、グプタにリッキー・ジェイ、一番の用心棒スタンパーにゲッツ・オットーとなっています。

2026年5月3日日曜日

007 / ゴールデンアイ (1995)

007シリーズとしては、第17作目。この作品で、今までのシリーズの印象を大きく変えました。まず、制作陣からアルバート・R・プロッコリが高齢のため濡れました。ブロッコリは、ハリー・ザルツマンとイーオン・プロダクションを立ち上げ、シリーズ第1作から制作に携わっていましたが、1975年にザルツマンと決裂しています。

キャストも大幅に変更されています。主役のジェームス・ボンドには、ティモシー・ダルトンに代わって5代目としてピアース・ブロスナンが抜擢されました。ずっとMを演じたロバート・ブラウンも退き、この作品から女性のジュディ・デンチが、古臭い勘などは信じない情報分析によって導き出される数字を信じる上司として登場します。

秘書のマネーペニーも前2作と変わっていますし、とりあえずレギュラーで変わらないのはQのデスモンド・リュウェリン翁だけです。また、長らくお馴染みだったオープニングでのガンバレル・シークエンス(銃口の先にボンドが入り込んでくるやつです)がなくなりました。監督は、5作連続で担当したジョン・グレンからマーティン・キャンベルに代わりました。オープニング・テーマは007らしい曲で、ティナ・ターナーが歌っています。内容はイアン・フレミングの原作はネタ切れで、映画オリジナルのストーリーです。

ジェームス・ボンドは、モナコでゼニア・オナトップと名乗る美女に目をつけていました。彼女は、元ソ連戦闘機パイロットで犯罪組織ヤヌスのメンバーであることが判明し追跡するものの、オナトップとロシア軍のウルモフ将軍によって、NATOの最新鋭の対電磁波戦闘ヘリコプターを奪われてしまうのです。

ソビエト連邦が崩壊し、廃棄されたはずの北極海近くの軍事基地ではロシアが「ゴルデンアイ」と呼ばれる宇宙から強力な電磁波を放出して都市を壊滅させることができる兵器の研究が進んでいました。奪ったヘリコプターで研究所に現れたウルモフとオナトップは、所員を皆殺しにしてゴールデンアイの基盤を奪取し、2基あるうちの1基を研究所に向けて発射し一帯のすべてを破壊しますが、コンピュータ技師のナターリア・シミョノヴァだけが生き残ります。

これらの様子を衛星などの映像で見ていたボンドは、Mからヤヌスのアジトがあると考えられたサンクトペテルブルクで事態の収束にあたるよう命じられました。何とか再びオナトップと接触し、ヤヌスのアジトに到着したボンドは、登場したヤヌスのボスを見て驚きます。9年前に一緒にソ連の兵器工場爆破作戦を実行した際、まだ所長にすぎなかったウルモフに射殺されたはずの006、アレックだったのです。

捕らえられたボンドは、先に捕まっていたナターリアと用済みになったヘリコプターと伴に爆破されそうになりますが、間一髪脱出。しかし、今度はロシア側に捕まり、防衛大臣の尋問を受けます。そこへウルモフが現れ、大臣らをボンドの銃で射殺しナターリアを連れ去ります。ボンドは戦車で追跡し、ヤヌスが拠点にしている軍用列車を発見。戦車を衝突させ、列車を止めるとボンドは乗り込んでいくのでした。

悪役アレックを演じるのはショーン・ビーン。ボンドガールはナターリアに「バーティカル・リミット」のイザベラ・スコルプコ、お色気ムンムンですがサイコな殺戮者オナトップには「X-メン」シリーズでおなじみのファムケ・ヤンセンが起用されています。ナターリアも単なるカワイ子ちゃんではなく、ボンドに負けずに行動力ある女性として描かれています。

話のきっかけはまだ冷戦時代末期ですが、本編は冷戦が終結しソビエト連邦が崩壊した後という時代の空気を強く反映し設定です。ロシアも一部で絡んでくるものの、メインの敵は金銭目的の犯罪組織。ただ、そこにかつての信頼していた同僚が絡んでくることで、ストーリーに厚みが出ていると言えそうです。

また「合言葉なんて古臭い」というセリフがあるわけで、ここでは世間一般に浸透し始めたパソコン関連の用語が頻出し、インターネット、ハッキング、パスコードといった単語が登場するハシリの映画かもしれません。

ティモシー・ダルトンのボンドが、真面目一辺倒で義理人情に厚い人物だったのに比べると、ブロスナンは外見もかっこいいのですが、数字至上主義の新Mに対抗して、臨機応変にユーモアを少しだけ交えて現代風のボンド像を見せてくれます。

2026年4月28日火曜日

007 / 消されたライセンス (1989)

四代目ジェームス・ボンド役のティモシー・ダルトンが活躍する「007シリーズ」第16作目。内容的には大変面白く、脚本もうまくできていると思いますが、ここではスパイという肩書はまったく関係なく、ボンド対犯罪組織のクライム・アクション映画になっています。

今まで度々登場していますが、いろいろな俳優が演じてきたジェームス・ボンドの盟友であるCIAのフェリックス・ライターが話の起点になっています。監督は引き続きジュン・グレンで、テーマ曲はグラディス・ナイトが歌う、往年のテーマ曲を思い出すような仕上がりです。

ジェームス・ボンドとフェリックス・ライターは、ライターの結婚式に向かう途中で、中南米の巨大麻薬組織のボスであるサンチェスがアメリカ国内に現れたと麻薬取締局から一報が入ります。長年追いかけてきましたが、多くの政治家、警察を買収していてなかなか捕まえられなかったので、ライターとボンドはすぐにヘリコプターに乗り換え、ボンドの活躍で何とかサンチェス逮捕に成功します。

しかし、ここでも買収された捜査官の裏切りでサンチェスは逃亡に成功し、復讐のためライターに瀕死の重傷を負わせ、新婦は殺されてしまうのです。ボンドはライターの無念をはらす決意をし、サンチェスの組織のNo.2であるクレストの研究所に忍び込んでアヘンを発見し、裏切った捜査官を殺すのです。

権限を逸脱した行為にMは、本来の任務に戻るように強く叱責しますが、ボンドはライターへの義理を果たすべく、「殺しのライセンス」を返上してその場から消えるのでした。ボンドはクレストの船に潜入し、水上飛行機との間で麻薬と金銭の交換を阻止します。ライターの残したサンチェスに関するデータから、元サンチェスの飛行機のパイロットで麻薬取締局への協力者であるパメラに会いに行きますが、そこへサンチェスの部下が現れ格闘になります。パメラは元陸軍所属で、こういう場面でも物おじしないので、二人は何とか逃げることができました。

パメラの飛行機で、サンチェスの母国に飛んだボンドは、サンチェスの経営する銀行に大金を預け口座を開設し、カジノで大勝負をして見せました。その様子を監視カメラで見ていたサンチェスはボンドを事務所には招き入れますが、ボンドは仕事を探していると自分を売り込むのです。ホテルに戻ると、ボンドを心配したマネーペニーの頼みでQがいろいろな仕掛けのある小道具を揃えて待っていました。

サンチェスは複数の中国系組織を招いて販路を拡大する相談をしていましたが、ボンドが狙撃しようとすると、忍者姿の二人組に襲われ彼らの隠れ家に連れていかれます。中国系組織の一つが、実は長い時間をかけて潜入していた香港の麻薬取締官でボンドの行動が邪魔だったのです。しかし、サンチェスの息がかかった軍隊の攻撃を受け、ボンド以外は全滅してしまいます。

束縛された状態のボンドを見たサンチェスは、かえってボンドを信用し自分の邸宅に招きます。ボンドは組織内に裏切り者がいて、サンチェスを殺そうとしていると吹き込み、クレストに疑いが向くように仕掛けます。中国系組織を信用させるため、郊外の麻薬精製工場に案内することになり、ボンドも同行することになるのでした。

前作に続き義理人情に厚いジェームス・ボンド像が描かれ、今回は英国諜報部員としてではなく、個人的な恨みをはらすために私腹を肥やす犯罪組織を追い詰めるという内容。Qが今まで以上に活躍するのも面白い所です。Mとマネーペニーは、ワン・シーンだけの登場です。

ボンドガールはパメラ役にキャリー・ローウェル、サンチェスの愛人でしだいにボンドに惹かれていくルぺにタリサ・ソトの二人が登場します。ダルトンの007では、ボンドカールには従来のお色気調は求められていなようで、まぁ普通と言えば普通の女性たちです。ただ、パメラに関しては、ボンドのバディとしてかなり危険なことも実動部隊として関わってくるのは珍しい。

全体的に残酷なシーンが多めで、スパイ物とは呼べない内容だったので、「007シリーズ」の中ではあまり人気がありません。ダルトンは3作目にも意欲をみせていたようですが、製作サイドはもっと多くの数をこなしてほしかったらしく、ボンドカラーに染まり過ぎるのを嫌って、前作と本作の2作だけでボンド役から降板します。

・・・にしても、香港からで忍者はないよなぁ。

2026年4月27日月曜日

007 / リビング・デイライツ (1987)

数年前に集中的に「007 ジェームス・ボンド」シリーズの映画を見ましたが、その時、自分にとってはショーン・コネリーとロジャー・ムーアだけで十分とか言った覚えがあります。もっとも、ムーアは最後の方ではロートルぶりが顕著になり、ギャグが多すぎてちょっとあきれていました。

1985年にムーアがボンドを引退し、製作陣は新たなボンド役者を探し始めるのですが、そこで白羽の矢がたったのがディモシー・ダルトンでした。この25周年記念の第15作目で4代目に就任するわけですが、映画が作られたときに40歳くらいなので、だいぶ若返って溌溂とした感じがします。内容的にも、おふざけ部分がだいぶ少なくなって、ボンドにかっこよさが戻り、もっとも原作に近いキャラクターと評価されました。

イアン・フレミングの原作は主だった長編はほとんど使っていたので、短編の「ベルリン脱出」をもとに脚本が練られました。監督は、4作品続けて起用されたジョン・グレン。テーマ曲は、当時人気だったa-haが担当したことも話題になりました。ボンド・カールにはイングランド出身のマリアム・ダボが選ばれましたが、この作品以外ではとくに目立った活躍はしていません。

ジェームス・ボンドの今度の仕事は、チェコスロバキアでソビエト連邦の要人、コスコフの西側への亡命に際して、暗殺者からコスコフを守ることでした。コンサート会場から脱出したコスコフを狙う狙撃手を発見したボンドは、スコープで相手を見て驚きます。なんと、先ほどまでオーケストラでチェロを弾いていた女性、カーラ・ミロヴィだったのです。ボンドはカーラがスナイパーとしては素人と感じ、とっさにカーラが手にしていたライフルの銃身を撃って狙撃を失敗させます。

無事にオーストリアに脱出したコスコフがもたらした情報は、KGBのゴーゴル将軍に代わって実権を握ったプーシキン将軍が、西側のスパイを全員暗殺して復讐の連鎖から世界大戦を引き起こそうとしているというものでした。コスコフは、プーシキンを倒さないと大変なことになると言うのです。ボンドはプーシキン暗殺を命令されますが、何か裏があると感じるのです。しかし、何者かによってコスコフは連れ去られてしまうのでした。

ボンドはカーラに接近して、カーラがコスコフの恋人で、狙われている芝居のために空砲を詰めたライフルで狙撃者のふりをしていたことをつかみます。同時にKGBもコスコフを追いかけているようで、カーラはKGBにマークされていました。ボンドはコスコフの友人としてカーラを迎えに来たと説明して、KGBをまいてウィーンに向かいます。

仲間からの情報で、コスコフは世界的に武器商人のウィテカーと手を組んでいることを知らされます。プーシキンはウィテカーから武器を購入することになっていましたが、話を怪しみ購入を中止しようとしていました。ボンドはプーシキンが滞在するホテルに侵入し、コスコフは公金横領でモスクワから逃亡していることを教えられます。ボンドは人目の付く所でプーシキンを射殺する芝居を打つことにして、コスコフを安心させ、ウィテカーの本当の目的を明らかにすることにします。

しかし、コスコフとの電話が通じてたカーラが協力したことで、ボンドは捕らえられアフガニスタンのソビエトの空軍基地に移されてしまうのでした。

確かにボンド像が、今までになく人情味があって、ほとんどギャグは口にしない。スパイの実像にやや近づいているのかもしれません。ただ、007と言えばスタイル抜群のボンドガールも、ストーリーに花を添える大事な要素。今回のカーラは、ただただコスコフの捨て駒であり、線の細い一般人女性なので、だいぶ物足りなさを感じてしまいます。そのくせ、最後には急に行動的になったりして違和感もある。

お馴染みのM(ロバート・ブラウン)、グレイ国防長官(ジョフリー・キーン)、Q(デスモンド・リュウェリン)は、今作でもちょっとだけ顔をだしています。マネーペニーは今までのロイス・マクスウェルからすごく若返ってキャロライン・ブリスが演じています。

コメディ系だったり、アクション系だったり、あるいは現実的だったり、いろいろなスパイ映画がありますが、「007シリーズ」はそれらの要素をすべて盛り込んだ元祖的なシリーズですから、今作はそこそこ楽しめます。悪役が小者過ぎるのも、現実的な設定なのかもしれません。

2026年4月20日月曜日

ニキータ (1990)

リュック・ベッソンは、現代フランスを代表するエンターテイメント映画の監督奥の作品も制作しています。最初に注目されたのは1984年の「サブウェイ」で、続く1988年の「グラン・ブルー」も高い評価を受けました。それらの次の作品が「ニキータ」で、いずれも現在でもカルト的な人気を誇っています。

チンピラが店に押し入りますが、駈けつけた警官によって射殺されます。唯一生きたまま逮捕されたのは、20歳前のニキータ(アンヌ・パリロー)と名乗る女子で、重度の薬物中毒で粗暴で言葉使いもひどいものでした。裁判で、彼女は終身刑を言い渡されますが、刑務所ではありませんでした。

ニキータが連れてこられたのは、政府機関の秘密組織で、説明に現れたボブ(チェッキー・カリョ)は、黄身はすでに死んだことになっているので、我々の言うとおりにするか、本当に死ぬかを選べと言います。しかたがなく承諾したニキータは、スパイとして様々にテクニックに関する訓練を受けることになります。

格闘にしても射撃にしても十分に素質があるニキータでしたが、反抗的な態度を続けボブを困らせます。ある日、ボブはニキータを食事に誘い、久しぶりに外界に出れるニキータはとても喜びますが、レストランでボブから拳銃を渡され後ろで食事をしている男を殺して、トイレの窓から逃げてこいと言われるのです。

殺すことは成功しますが、脱出ルートの窓はふさがっていて、殺した男の手下からやっとのことで逃げ出すことができました。戻ってボブを責めますが、ボブはこれでいよいよ訓練は終了だと言うのです。

ニキータには、「ジョセフィーヌ」というコード・ネームが与えられ、マリーと言う名の看護師として町での生活を始めます。ニキータはマルコ(ジャン=ユーグ・アングラード)という青年と知り合い、同棲を始めます。その生活の中にも、ときどきボブから仕事の連絡が入り、ニキータは暗殺の仕事をこなすのですが、しだいにこの仕事を続ける気持ちが揺らいでいきます。そこへ、ソビエト大使館に潜入して極秘情報を奪取するという大きな仕事が持ち込まれてくるのでした。

女として素養を教える教官役で、大女優ジャンヌ・モローが少しだけ登場したり、ベッソン作品の常連ジャン・レノも顔を出しています。主役のアンヌ・バリノーは、当時ベッソン監督と結婚していました。

フランス映画というと、独特の陰のある人物が主役で小難しい雰囲気があるという印象がありますが、この映画では昔のフィルム・ノワール的な人物が登場しますが、20世紀末のモダンな感覚が見事に融合していて高い評価をえました。

最初は暴れまくって暴言を吐きまくるニキータが、少しづつ毒気が抜けていくところが面白いのですが、どこかで怒りを抑えられない性分は変わらない。しかし、マルコとの間に愛情が芽生えたことで、人としての弱さが垣間見えるようになっていくところが見所になっています。

この映画の大ヒットにより、その後アメリカでリメイク作が作られたり、連続テレビドラマになったりして、継続的に話題になっています。

2026年4月17日金曜日

裏切りのサーカス (2011)

世界の国々には諜報機関が必ずあって、秘密裏に情報収集をしているわけですが、日本だといわゆる警察の中の組織である公安、その中の外事課が主として「スパイ活動」をしているという理解でいいと思います。

アメリカだとアメリカ中央情報局、いわゆるCIAがその任に当たっています。イスラエルだとモサドと呼ばれる諜報特務庁ですが、特に過激な行動で世界中から恐れられています。フランスでは、DGSE(対外治安総局)とDGSI(国内治安総局)で、ロシアならソ連時代のKGBから派生した連邦保安庁(FSB)、対外情報庁(SVR)、軍参謀本部情報総局(GRU)の3つ。

007のコード・ネームで知られるジェームス・ボンドは架空の人物ですが、彼が在籍したのはイギリスの対外的な諜報機関であるMI6で、イギリス国内中心の活動をしているのがMI5です。MI6の正式名称は、イギリス秘密情報部(SIS)ですが、「サーカス」の呼び名でも知られ、トップはコントロールと呼ばれていました。007の原作者イアン・フレミングも元MI6職員でした。

この映画は、同じく元MI6で活動していた「寒い国から帰ったスパイ」のジョン・ル・カレの小説が原作。MI6の内部にソビエト連邦の二重スパイ(通称モグラと呼ばれます)がいて、これをあぶり出そうという内容の作品。監督はトーマス・アルフレッドソン。スパイ映画としては高い評価を得ています。

1970年代初め、MI6では多くの情報がソ連に漏洩し、アメリカからも信用されなくなっていました。コントロール(ジョン・ハート)は、内部にモグラがいることを確信し、一人の部下を裏切り者を突き止めるためにハンガリーに向かわせますが、その情報すら筒抜けで部下は殺されてしまいます。

この事件の責任を取る形で、コントロールと右腕のジョージ・スマイリー(ゲイリー・オールドマン)が辞任することになりました。その後、MI6を管轄する外務次官はある情報によりモグラの存在を認めざるをえなくなり、ひそかにスマイリーを復帰させ調査を命じるのでした。

スマイリーはコントロールの調査記録をもとに、幹部4人に目標を絞ります。彼らは、コード・ネームでティンカー(鋳掛け屋)、テイラー(仕立て屋)、ソルジャー(兵隊)、プアマン(貧乏人)、と呼ばれ、スマイリー自身もベガマン(乞食)と呼ばれていたのです。

コントロールが去った後、リーダーはティンカーが勤めていて、彼がソ連の二重スパイから得た情報をもとにウィッチクラフト作戦が始まっていましたが、スマイリーはその情報そのものが偽物であると考え、それをソ連大物スパイであるカーラという人物が仕組んだもので、モグラによって情報がさらにソ連に渡ることになっていたのです。

若い元気はつらつのスパイが活躍するわけではなく、渋い中年のベテランたちが、心理戦的な駆け引きをする内容です。全体に暗い映像で、地味な印象。インサート・シーンが多いので、かなり緊張して見ていないと訳がわからなくなります。

とは言え、現実のスパイの世界はこうなんだろうという、リアルな緊張感が持続するので、最後まで目が離せません。同じMI6出身でも、フレミングはカッコよさを目一杯誇張しましたが、ル・カレは堅実にリアルな世界を表現したというところが対照的です。

2026年4月14日火曜日

ゼロ・ダーク・サーティ (2012)

監督のキャスリン・ビグローは、元ジェームズ・キャメロンの妻で、2008年の「ハート・ロッカー」でアカデミー賞の作品賞、監督賞など6部門を受賞し、一躍有名になりました。それの次作となったこの映画では、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件の首謀者とされる、イスラーム過激派アルカーイダの指導者ウサーマ・ビン・ラーディンを10年に渡って追跡したCIAの女性分析官に焦点を当てています。

基本的にはフィクションですが、事実に基づいてドキュメンタリー様に作られたもので、ストーリーは淡々と進みますが、ラストのビン・ラーディン殺害で一気にカタルシスに達するのです。

ビン・ラーディンは、当初アフガニスタンのタリバン政権の庇護を受けていましたが、911後にアメリカのビン・ラーディン引き渡し要求をタリバンが拒否したため、アフガン戦争となるも行方は謎のままになっていました(これは事実)。

2003年、CIAパキスタン支局に配属されたマヤ(ジェシカ・チャスティン)は、当初はアルカーイダの資金調達係だったアンマルの尋問に同席しますが、その拷問のような手法に気後れしてしまいます。しかし、マヤのアイデアによりビン・ラーディンの連絡係として「アブ・アフメド」という人物がいることを聞き出すことができました。

マヤは、様々な資料からアブ・アフメドを特定しようと試みますが、情報があまりに少なく、かつばらばらのため時間が過ぎ去るばかりでした。そんな中で、同僚のジェシカ(ジェニファー・イーリー)が、ビン・ラーディンと接触しうるアルカーイダの医師から情報提供できることになりますが、その人物の自爆により6人のCIA職員と共に死亡します(2009年12月30日 キャンプ・チャップマン攻撃)。

マヤはアブ・アフメドがカギだと信じ、さらなる追求をしますが、上司は本当に存在するのかもわからない人物の調査より日々のテロリズムを優先するのです。さらにアブ・アフメドはすでに死亡しているという情報まで出てくるのですが、イブラヒム・サイードという人物がアブ・アフメドと同一人物であり、現在も生存している可能性が浮上してきます。

サイードの実家の電話番号から、時々サイードから電話がかかっていることを突き止めたマヤは、パキスタン領内でサイードをついに発見し、彼の動向を徹底的に監視するのです。そして、サイードの住まいがパキスタン郊外であり、まるで要塞のような屋敷であることを突き止めます。

衛星画像の解析から、絶対に姿を見せない男がいることを確認したマヤは、それがビン・ラーディンであると確信しますが、数か月だっても絶対的な確証が得られないため、上層部は屋敷への直接行動を承認しようとしませんでした。しかし、マヤの強い説得により、ついに2011年5月2日、アフガニスタンの基地から2基のステルス・ヘリコプターが海軍特殊部隊を乗せて飛び立ちました。作戦のスタートは、夜中の0時30分(ゼロ・ダーク・サーティ)でした。

映画では一部実在の人物を名を変えて登場させていますが、主役のマヤについては多くのCIA局員を取り込んだ人物像のようです。中盤までは、CIAの地道な仕事を描き、映画としての盛り上がりはあまりありません。ただ、これが事実に基づいていることを考えながら見ると、一定の緊張感が持続します。

マヤを通して、実際のCIA職員の成長、危険との隣り合わせの非情な世界を知ることができます。それはエンターテイメントのアクション映画とはほど遠いもので、おそらく真のスパイの世界に近いものなのかもしれません。

ビン・ラーディン殺害のニュースは朝になると世界中を駆け巡りました。パキスタンはアメリカから何の事前連絡も無かったことに強く反発しましたが、おおむね日本を含む各国の反応は対テロリズムへの前進として評価し、批判はほとんどありませんでした。

アメリカ国内では、当然絶賛されましたが、多くの映画賞ではノミネートにとどまったものが多い。映画の中で、CIAが拷問をすることに対する批判か巻き起こったことなどは、マイナス要素になったかもしれません。リアルタイムでこれらの事件を知っている自分としては、その裏で起こっていたことの一端を垣間見ることができたことは重要かもしれません。

2026年4月10日金曜日

Mr.&Mrs. スパイ (2016)

これはハイテンション・コメディ・スパイ映画です。監督はグレッグ・モットーラ。それほど評判になったわけではないのですが、「ワンダー・ウーマン」のガル・ガドットが、その一つ前に出演していた作品というだけで、まぁ、見ておいてもいいかなという作品。

アメリカのとある郊外の町に住むジェフ・ギャフニー(ギャフニー - ザック・ガリフィアナキス)とカレン・ギャフニー( アイラ・フィッシャー)夫妻は、結婚16年目にしていまだ熱々で、男の子二人がサマー・キャンプに出かけてしまいます。ジェフは宇宙開発に関わる最先端企業の人事部で、従業員の様々な悩みを聞いてあげるのが仕事でした。

そのタイミングで向かいの家を新しく購入したディム・ジョーンズ(ジョン・ハム)とナタリー・ジョーンズ(ガル・ガドット)の夫婦が引っ越してきます。ジョーンズ夫妻は御近所の挨拶としてギャフニー家を訪れ、記念にとティムが作ったという不思議な形のガラスの置物をおみやげに渡しました。

何事にも完璧なジョーンズ夫妻でしたが、町の親睦会の時にティムがこっそりジェフの部屋に入ろうとしていたのを見つけたカレンは、二人に疑問を持ち始め夫婦の行動を監視するようになるのです。ディムはジェフを食事に誘い酔わせて、会社のほとんどの従業員の事を深く知っているジェフからいろいろなことを聞き出すのです。カレンはナタリーを尾行して、怪しげな行動を取っていることを確認しました。

素晴らしい隣人だと言い張るジェフでしたが、カレンの勢いに負けて、二人はジョーンズ家に忍び込みました。すると、たくさんの通信装置やコンピュータを発見し、そこには会社のたくさんの人々のデータや、ロケットの設計図のようなものが映し出されていたのです。二人はジョーンズ夫妻がスパイであることを確信しました。

ジェフは社長にそのことを報告しようと、夫婦で出かけていきますが、二人の目の前で社長が銃撃され殺されます。二人にもマシンガンの銃弾が飛んでくるのですが、その時ジョーンズ夫妻が乗った車が猛然と突っ込んできて、二人に車にのるようにいいつつ、銃を取り出し暗殺者たちに向け発砲するのです。

高速カーチェイスによって、何とか相手を倒して、4人で食事を取ることになりますが、ジェフの山ほどある質問に対してジョーンズ夫妻はほとんど黙秘するだけですが、どうやら政府機関の潜入捜査官らしいことだけはわかりました。でも、やはり隣人として仲よくしようと言って家の前で別れるのですが、その直後ジョーンズ家が大爆発をするのです。

ジェフを演じたギャフニー - ザック・ガリフィアナキスはアメリカのコメディアンとして多くの映画に出演しています。ティムを演じたジョン・ハムも、多数の映画に出演している中堅どころの俳優です。ガル・ガドットは2009年の「ワイルド・スピードMAX」でデヴューし、2016年から演じたワンダー・ウーマンが当たり役となって、一躍名が知られるようになりました。

展開はものすごく早くて、だれるところはありません。ギャフニー夫妻のコントのようなやり取りが適度に挟まって、緩急がうまく効いているように思います。偽物の隣人だった二組の夫婦が、だんだん信頼関係を作っていくところは、本来は無理があるように思いますが、人の話をよく聞くことで信頼を築くジェフの仕事が説得力を持たせています。

アクションはそれほど大したことはありませんし、事件のプロットも単純で平凡です。ただ、隣人がスパイで、彼らの仕事に巻き込まれる一般人が主役という視点は珍しいので、一度は見ておいて損はしないと思います。

2026年4月7日火曜日

コンドル (1975)

CIA というのはアメリカの中央情報局のことで、正確にはCentral Intelligence Agencyですが、ようするにアメリカの対外的情報の収集・分析・・・って、スパイ組織ってことですね。この映画は、CIAが舞台になっていて内部の裏切り者を探っていくストーリーです。

原作はジェイムズ・グレイディの小説で「コンドルの六日間」というタイトルですが、映画では半分に縮めて英題は「Three Days of the Condor」になっています。監督は名匠シドニー・ポラックで、多くのポラック作品で主演に抜擢されたロバート・レッドフォードがここでも主演しています。

ニューヨークの一角にこじんまりと入口をかまえるアメリカ文学士協会。実はCIAの末端組織の一つで、部局の人数は総勢で7人。彼らは、世界中の本、雑誌、新聞、学術報告など、活字になったものをすべて読んで、情報漏洩の有無、何らかの未知の情報交換などの痕跡が無いか分析することが仕事でした。

ある日、コード・ネーム、「コンドル」のジョセフ・ターナー(ロバート・レッドフォード)は、皆のランチを受け取るため裏から外出します。しかし、戻ってみると全員が射殺されていて、驚いたコンドルは、CIA本部に緊急連絡を入れます。次官のヒギンスからの指示で路地で待っていると、ヒギンズの部下であるウィックスに銃撃を受けるのです。

何とか逃げ出したターナーは、偶然通りかかった写真家のキャサリン・ヘイル(フェイ・ダナウェイ)の車に乗り込み、とりあえずキャサリンのアパートに隠れるのです。教会を襲ったフリーランスの殺し屋ジョベア(マックス・フォン・シドー)は、引き続きターナーの処分を依頼されるものの、プロのスパイではない知識だけはたくさん持っているターナーの行動が読み切れず、何度かチャンスを失います。

それでも、乗っていた車から潜伏場所を確定したジョベアは、キャサリンのアパートに刺客を送りこみますが失敗。キャサリンは、しだいにターナーが嘘をついていなことを信じて、協力するようになります。そして、ターナーも断片的な情報から、かつて本部に送った報告書の一つが、CIA内部で石油利権に関わる影の組織が存在することを示唆していたことが事の発端であるという結論に達するのでした。

ロバート・レッドフォードが乗りに乗っている70年代ですから、とにかくかっこいい。頭でっかちで、スパイとしての活動歴がない主人公ですが、おどおどしているのは最初だけ。レッドフォードの魅力全開になっています。レッドフォードは翌年には、CIAが起こしたウォーターゲート事件を題材にした「大統領の陰謀」にも主演しました。

フェイ・ダナウェイも、けっこうきついメイクで登場することが多いのですが、ここではちょっと陰のある女性をチャーミングに演じています。殺し屋ジョベアを演じたマックス・フォン・シドーはこの後「エクソシスト」で、メリル神父を演じますが、メイクで超高齢に変身してますので、同じ人とは思えない。

いわゆるスパイ物とは言えないかもしれませんが、スパイの世界の暗部を描いていて、斬り込み方がなかなか面白い映画です。大きな賞は獲得しませんでしたが、監督のポラックと主演のレッドフォードのコンビの作品としては、見応えのある傑作として良いと思います。

2026年4月6日月曜日

寒い国から帰ったスパイ (1965)

戦後にスパイをテーマにした映画としては、最初期の傑作。イギリスとアメリカの合作で、監督はマーティン・リットです。原作者はジョン・ル・カレ。ル・カレはイギリスの外交官であり、MI6(イギリス秘密情報部)に所属していました。ル・カレの書いたスパイ小説はリアリティがあり、その多くが映像化されています。

第2次世界大戦後には、ソビエト連邦を中心とした共産主義経済圏と欧米諸国を中心とした資本主義経済圏に世界は大別されました。いわゆる西側と東側の冷戦の構図です。その象徴的な国がドイツであり、その代表的な存在と言えるのがベルリンでした。

ベルリンは東ベルリン、西ベルリンに分断され、いつの間にか境界部には155kmに渡って高い壁が作られ、東から西への越境者がいないか日夜監視されていました。1989年の「ベルリンの壁崩壊」は、東ドイツ政府の失言から、市民らによって一気呵成に突発的に起こったことでしたが、壁が無くなったことは冷戦時代の終焉の始まりとなったのです。

長年、イギリス情報部の西ベルリン駐在の局員であるリーマス(リチャード・バートン)は、東側の協力者を境界部で殺されてしまいます。イギリスに戻ったリーマスは、責任を取らされて、コントロールと呼ばれる長官から解雇されてしまいます。

それから酒浸りになり、やっと職業安定所から紹介された図書館の仕事に就くことになりました。そこで、英国共産党員のナンシー(クレア・ブルーム)と親しくなりますが、酔って傷害事件を起こし警察に逮捕され、再び職を失ってしまいます。勾留を解かれたリーマスに、東ドイツ側の男が接触してきます。男は大金を餌に、情報部員だった時の話を聞こうとするのでした。

実はこれらのリーマスの行動は、東ドイツ諜報部のNO.1のムントを消すための芝居だったのです。ムントを二重スパイに仕立て上げて、NO.2のフィードラーによって粛清させようというもので、巧妙なリーマスの証言によりフィードラーはムントを告発するのです。査問会が開かれ、リーマスは証人として証言をしますが、ムント側は思ってもいない証人を用意していたのです。

リチャード・バートンは50~70年代に活躍したイギリスの代表的な俳優で、エリザベス・テイラーの「クレオパトラ」でのアントニウス、「荒鷲の要塞」でのクリント・イーストウッドとの共演などが思い出されます。クレア・ブルームは、チツヤプリンの「ライムライト」の他、多くのシェークスピ物に出演しています。

カラーが普通になった時代の白黒映画ですが、かえって寒々とした緊張感が増していて違和感はありません。また、ゆったりした暗い曲調のオリジナルのテーマ曲が。いろいろな演奏でときどき流れるのが、ストーリーを台無しにせずに雰囲気を強調しているところも好感が持てます。

最近のような派手なアクションはありませんが、淡々とスパイとはどういうものかを描いている映画で、静かなスリルが全編を貫いています。誰が真実を言っているのか、誰が嘘をついているのか、本当は誰が誰をどうしようとしているのか、最後まで謎が多く視聴者を釘付けにします。

2026年3月31日火曜日

ナイト&デイ (2010)

トム・クルーズとキャメロン・ディアスの人気者がW主演したスパイ・アクション映画・・・と言っても、はちゃめちゃなラブコメ要素満載で、最初から最後までオシャレな作品です。監督は「グレーテスト・ショーマン」のジェームズ・マンゴールド。トム・クルーズは「ソルト」に主演する準備をしていたのですが、製作サイドとの意見が合わずにこちらに乗り換えました。

ジューン・ヘイヴンス(キャメロン・ディアス)は、空港でロイ・ミラー(トム・クルーズ)と偶然出会います。飛行機に搭乗すると、乗客は数人。ジューンがトイレに入ると、乗客全員がロイに襲い掛かってきます。さらに客室乗務員や操縦士までもが敵という状況でした。ジューンがトイレから戻ると。ロイは申し訳なさそうに、「全員やっつけちゃったので操縦士がいない」と話し、トウモロコシ畑に強引に着陸させます。

ロイはジューンに、政府の人間を装った危険な悪者が近づいてくるから、僕のことは知らないと言うこと、奴らの車に乗らないこと、安全・安心・保証と言ったら逃げろと説明して睡眠薬を飲ませます。ジューンは気がつくと自宅にいました。外出すると、CIAのフィッツと名乗る人物がジューンを無理やり車に乗せます。

フィッツは、ロイもCIAの人間だが、凶悪で仲間を裏切ったため我々が追いかけていると説明します。その時、何者かの集団により車が銃撃され、フィッツは車外に投げ出され運転手は撃たれて死んでしまいます。ジューンは、暴走する車内で後ろの座席から何とハンドルを動かしていると、何とロイがどこからともなく飛び移ってくるのです。何とか危機を脱しましたが、ジューンは怖くなって逃げ出します。

レストランでジューンが地元の友人にこれまでの出来事を話していると、ロイが再び現れ監視カメラがあることを承知で暴れて強引にジューンを連れ去ります。ロイはこれまでのいきさつを説明し始めます。自分はCIAのエージェントだが、フィッツと共に世界を変える大発明をしたサイモンという若者を護衛していたが、フィッツが裏切ってサイモンと発明品を武器商人のアントニオに渡そうとしていることがわかった。そこでサイモンを誰も知らない場所に匿ったところ、CIAから追われる身になったというのです。

二人はサイモンの隠れ家に向かいますが、到着が遅くなったためサイモンはいません。そこにアントニオの部隊が襲撃してきて危険な状況になったため、ロイは再びジューンに睡眠薬を飲ませるのでした。ジューンは今度は無人島で目を覚まします。そこはロイの隠れ家でしたが、ジューンにかかってきた携帯電話によって逆探知され、再びアントニオの襲撃を受けるのです。

サイモンの隠れ家に残された暗号を解読したロイは、鉄道好きのサイモンがオーストリアに向かったことがわかり、やっとサイモンと合流することができましたが、今度はCIAの殺し屋に襲われるのです。何とかザルツブルクに到着しホテルに落ち着くのも束の間、フィッツらのCIAに追跡され、銃撃されたロイは川に沈んでしまうのでした。

とにかく展開がスピーディでまったく飽きさせません。主役の二人は、「バニラ・スカイ」以来10年ぶりの共演ですが、「ミッション・インポッシブル」と「チャーリーズ・エンジェル」でアクションはお手の物なので、スタントマンの起用は最小限です。本人たちの派手な立ち回りはスリルがあって、まさに見ていて手に汗握るという感じ。

トム・クルーズだから悪人ではないだろうと思って見てしまうのですが、おそらく制作側はそんなことは百も承知で、裏切り者扱いされている理由は小出しにして謎をうまく引っ張ることで、視聴者の注意を釘づけにしています。また、随所にコメディ要素を散りばめて、緩急の変化も忘れていません。

・・・なんですが、興行的にはあまり振るわなかったようです。めちゃくちゃ楽しい映画なんですけどね。

2026年3月30日月曜日

ソルト (2010)

ハリソン・フォードが主演した「ジャック・ライアン・シリーズ」のフィリップ・ノイスが監督。アンジェリーナ・ジョリーを主演に、アメリカCIAとロシアの二重スパイという、かなりスリリングな追いかけっこを描いたシリアスなスパイ・アクション映画です。

ベテランCIA工作員のイブリン・ソルト(アンジェリーナ・ジョリー)は、北朝鮮に潜入中に拘束され、捕虜交換で解放されました。その後、開放に当たって尽力した蜘蛛学者のマイクと結婚しました。

その2年後、CIA本部にロシアから亡命を希望したオルロフが現れます。ソルトが事情聴取を行うと、ロシアには生まれてすぐから徹底的に洗脳・教育されたこどもたちが、アメリカに送り込まれていて、彼らは一斉蜂起するチャンスをうかがっていると話します。そして、もうじき行われるアメリカ副大統領の葬儀で、出席するロシア大統領を暗殺することになっていると話を続け、その任務を行う者の名前はイブリン・ソルトだと言うのです。

オルロフは建物内から逃亡したため、ソルトの上司のウィンター(リーヴ・シュレイバー)と諜報部のピーボディ(キウェテル・イジョフォー)は、とりあえずソルトを拘束して事実確認をしようとします。しかし、ソルトはマイクと連絡がつかないことを不審に思い、厳重な警備をかいくぐって彼女もまた逃亡するのでした。

副大統領の葬儀に現れたソルトは、ロシア大統領暗殺に成功し再び姿を消します。そして、アメリカ人としてずっと暮らしてきた仲間のアジトで、ソルトは再びオルロフと再会します。そこには捕らえられていたマイクも捕まっていて、オルロフはソルトの忠誠心を試すためにマイクをソルトの目の前で殺すのでした。

彼らの目的は、ロシアのアメリカに対する敵意を煽ると同時に、アメリカの核ミサイルでイスラムの都市を攻撃して、世界中からの一斉攻撃によってアメリカを潰すことにありました。そのために、ソルトの次の任務はホワイトハウスに侵入し、大統領を地下深くのシェルターに追い込むことでした。しかし、マイクを殺された怒りに燃えるソルトは、彼らを殲滅し計画を潰すためにホワイトハウスに向かうのです。

もともとは、トム・クルーズ主演で企画されていたのですが、内容に納得できないクルーズが途中降板したため、急遽主人公を女性に変更してアンジェリーナ・ジョリーを配役されたといういわくつきの作品です。

内容的には、全面を貫く緊迫感はかなりあるのですが、仕立て上げられた二重スパイが何十年も指令を待っているというところからして、ややリアリティが感じられません。またジョリー一人にアクションを頑張らせている感じで、周りが弱すぎる。まぁ、主役ですから、それはそれで良しとするしかありません。

色気抜きでアンジェリーナ・ジョリーのアクションを堪能するには丁度良い作品というところでしょうか。最後はいかにも続編ありきみたいな終わり方なんですが、今のところ確実な情報は特に無いようです。

2026年3月29日日曜日

Mr.&Mrs. スミス (2005)

サスペンス映画の巨匠、アルフレッド・ヒッチコック監督の1941年の映画に「スミス夫妻」というのがあり、ヒッチコックにしては珍しい夫婦喧嘩を描いた純然たるコメディです。本作の原題「Mr. & Mrs.Smith」というのは同じで、やはり夫婦喧嘩を描いていますが、(インスピレーションは得たかもしれませんが)基本的には別の作品です。

監督は「ジェイソン・ボーン・シリーズ」のダグ・リーマン、脚本は多くの「X-MENシリーズ」を手掛けたサイモン・キンバーグです。主演のブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーは本作で知り合い、のちに結婚(と離婚)するきっかけとなりました。

結婚して5年目、やや倦怠期に突入したジョン・スミスとジェーン・スミス夫妻。それぞれ建設会社、IT会社の経営者ですが、お互いに秘密にしていることがあって、二人ともそれぞれの会社を隠れ蓑にしている別々の組織に属するプロの殺し屋だったのです。

ジェーンがいつものようにターゲットを狙っていると、ジョンも同じターゲットを狙ってきたために、お互いが邪魔して仕事は失敗します。それぞれの組織から48時間以内に邪魔した奴を抹殺しろ、さもなければ失敗した責任を取ってもらうといわれた二人は、ついに邪魔した者が自分の妻であり夫であることが判明するのです。

ついに二人はお互いに拳銃、ショットガン、そして機関銃で武装して本気の殺し合いを始めてしまいます。そこへ組織が二人を始末するためのチームを送り込んでくる。何とかその場を逃げだした二人は、お互いにやっと本当の自分の話をするのです。

どうやら、殺し屋同士が結婚しているのに気がついたそれぞれの組織が、結託して二人を抹殺するために囮の仕事を回してきたらしい。こんなったら、もうド派手な夫婦喧嘩をしている場合じゃない。二人は協力して立ち向かうことにするのでした。

ジョン、ジェーン、スミスというのは、アメリカではもっともありふれた名前らしい。つまりこのタイトルは鈴木の太郎さんと花子さんみたいなもので、どこにでもいるような人たちということのようです。もっとも、それぞれがどっちも殺し屋という状況は普通ではない。

結局、一見どちらもスパイみたいな生活をしている夫婦の壮大な夫婦喧嘩というラブコメなんですが、人気俳優の二人がけっこう派手にアクションをこなすので、そんなめちゃくちゃなことも楽しんで見ていられるというものです。

2026年3月28日土曜日

スパイ・ゲーム (2001)

これは、一風変わった傑作スパイ映画で、スパイ活動のノウハウをいくつかの事例を通して明らかにしていきます。主演のロバート・レッドフォードは当時大ベテランの65才、ブラッド・ピットは40歳手前で人気俳優の仲間入りをしてまだ数年という時期です。監督は「トップ・ガン」のトニー・スコット。

ネイサン・ミュアー(ロバート・レッドフォード)はベテランのCIA工作員ですが、明日定年退職することになっていました。しかし、その日の朝、香港支局長のダンカンからの電話で、トム・ビショップ(ブラッド・ピット)が中国当局に逮捕されたという知らせを聞かされます。

目前に迫っていた米中通称会議に関わる盗聴の任務に就いていたはずのビショップが、独自に蘇州刑務所に収監されていた白人女性を救出しようとして失敗したのです。CIA本部では、ビショップが何故独断で行動したのかを調べるために、かつてビショップの上司であったミュアーを会議に同席させます。

ミュアーが初めてビショップと会ったのはベトナム戦争末期、敵将軍暗殺作戦でした。ミュアーは、狙撃手として見事に作戦を成功させたビショップの才能を評価してCIAに引き抜きます。ミュアーはビショップにスパイのイロハを教え込んでいきますが、東ドイツからの亡命を手助ける任務では、事態が発覚し亡命者を置き去りにするしかなくなります。その後亡命者は処刑され、ビショップはスパイの厳しい現実を突きつけられるのでした。

ミュアーはそれらの話を小出しにしながら、CIAがビショップを見捨てるつもりであることを察知し、退職後の生活に用意していた全財産を現金化しダンカンに送ります。ダンカンはその金で役人を買収し、刑務所を停電させるようにしました。ミュアーは、CIA長官のサインを偽造した指令書をアメリカ海軍に送り、蘇州刑務所襲撃・人質解放作戦を敢行させようとしていたのです。

アクションらしいアクションは冒頭のビショップの刑務所侵入のところくらいで、ほとんどはミュアーがビショップとの作戦を回想していく形でストーリーが進みます。この中で、スパイとして素人だったビショップが成長していく様子が描かれ、スパイとはどういうものかが見ている者に理解できるようになっている。

しかし、スパイが逮捕され処刑されるまで24時間というタイム・リミットがあるため、時々今の時刻が画面に表示され、緊張感を強くしていきます。また、直接現場で行動ができない状況で、ちょっと話しては会議室を抜け出すミュアーが、少しずつビショップ救出のために動くところが、サスペンスとして面白い。

非情に徹するミュアーに対して、人として情を捨てきれなかったビショップ。しかし、ミュアーも実は人であったことが、回想の中でのちょっとした会話を伏線として結末に大きく関わって来るのは、大変脚本がよく出来ていると思います。新旧イケメン俳優の競演も楽しめる作品です。

2026年3月24日火曜日

SPY/スパイ (2015)

実に潔いタイトルのコメディ系スパイ映画。監督はポール・フェイグ。こちらの作品は、骨格は王道のスパイ物なんですが、何しろ活躍するのが現場は初めてという、40歳過ぎの体重が多めの"おばちゃん"です。

CIAの分析官のスーザン・クーパー(メリッサ・マッカーシー)は、現場に出るファイン(ジュード・ロウ)と長年バディを組んで活躍してきました。ファインが付けたコンタクレンズ型カメラで送られてくる映像・音声と、スパイ衛星を使った標的の動きをキャッチすることで、ファインに的確な行動を指示するのです。

しかし、ファインは核爆弾の行方を追っているうちにターゲットのレイナ・ボヤノフ(ローズ・バーン)に射殺されてしまうのです。レイナが活動中のCIAエージェントはすべて知っていると言っていたことから、スーザンは敵に知られていない自分がファインの任務を引き継ぎ、そして彼の仇を討つと言うのです。スーザンに許可が出たことで、短気なフォード(ジェイソン・ステイサム)は、CIAを辞めてしまいました。

スーザンはまずパリに飛び、爆弾売買の仲介人であるセルジォ・デ・ルーカ(ボビー・カナヴェイル)を監視することになりますが、独自に捜査を始めていたフォードが現れ現場の仕事がどれほど危険な物か話し、スーザンには無理だと言うのでした。しかし、スーザンはフォードのバッグが爆弾入りにすり替えられたところを目撃し、間一髪でフォードを救うのでした。さらに一味を追跡し、デ・ルーカがローマに向かうことを確認しました。

ローマでは、デ・ルーカに接触しようとカジノに入りますが、偶然にレイナを発見するのです。レイナの酒に毒がいれられるところを目撃したスーザンは、レイナにそのことを知らせて助けることで信用され。これからブタペストに行くと言うレイナに同行することになりました。

しかし、ブライベートジェットの機内でも裏切り者の子分にレイナが襲われ、再びスーザンはレイナの命を救うことになります。ブタペストで、レイナはデ・ルーカを通して核爆弾の買い手と接触することになっていましたが、またもや襲撃を防いだスーザンは暗殺者と格闘になりますが、そこへ何と死んだはずのファインが姿を現し暗殺者を仕留めるのでした。

ファインを演じたのがジュード・ロウですから、最初にあっさりと殺され退場というのは怪しいなと思っていたら、そういう展開ですかと拍手したくなりました。スーザンがスパイとして覚醒するのが早すぎるようなところもありますが、最初にCIAの一員として多くの実践訓練も受けていたという説明があったので、まぁ許容範囲というところ。アクション・スターのジェイソン・ステイサムが、ここではちょっとマヌケな感じの役所というのが面白い。

スーザンが現場に出ることになって、本部でバディを組むのが親友のナンシーなんですが、縦に長いナンシーと横幅のあるスーザンは、まるでC3-POとR2-D2コンビみたいな感じがします。主演のメリッサ・マッカーシーは、実績のあるコメディエンヌのようですが、おそらく体型的にはどう見てもアクション向きではない。それでも、要所要所ではそこそこ頑張っていて、スリルを増大することに成功していると思いました。

なお、ちょっと引いてしまいそうな下ネタ満載のところは、見る人選ぶかもしれませんので、要注意です。特に、暗殺者の男の×××のアップは、はっきり言って悪乗りし過ぎで、せっかくの映画の評価を落としているとしか言いようがありません。

2026年3月23日月曜日

ゲット スマート (2008)

 1968年から1968年にかけて、日本でテレビ放送されたアメリカのテレビ・ドラマの一つに「それ行けスマート」というスパイ物がありました。秘密機関であるコントロールと悪の結社カオスの戦いを描いたもので、スパイ物と言ってもパロディをふんだんに取り入れたコメディでした・・・と言っても、タイトルは記憶にありますがほぼ見たことはありません。

タイトルと基本設定をそのままに、劇場版映画になったのが本作で、監督は「ロンゲスト・ヤード」のピーター・シーガル。アクションはあまりたいしたことはありませんが、ストーリーの中に無理なく詰め込まれたギャグを楽しむというのが正解の映画です。

主として冷戦時代に活動したアメリカの秘密諜報機関であるコントロールは、表向きは解体したことになっていますが、宿敵である悪の秘密結社カオスとの戦いは水面下で続いていました。

マックス・スマート(スティーヴ・カレル)はコントロールの優秀な分析官ですが、憧れのかっこいいエージェントになりたくて、何度も昇格試験を受けていました。今回もテストそのものは合格でしたが、上司から分析官は必要だからとエージェント昇格は見送られてがっかりするのです。本部に戻ると、驚いたことに内部はカオスによってめちゃくちゃに破壊され、各エージェントの個人情報が盗まれていました。

エージェントは素性がばれて次々と殺されていきます。顔バレしていないマックスが、急遽エージェント86に昇格し、美容整形で顔がまったく変わってしまったエージェント99(アン・ハサウェイ)と共に、情報を頼りにロシアに向かうことになります。

カオスが核爆弾を製造していることを突き止めた二人は、モスクワのパン工場に偽装した核施設に飛びます。最初は現場についてはド素人のマックスを煙たがっていたエージェント99でしたが、彼の鋭い観察眼と分析を目の当たりにして少しずつ信頼を寄せるようになりました。

モスクワの工場に忍び込み二手に分かれると、マックスは地下で核兵器工場を発見し、地上部分を爆破して工場を使い物にならなくしました。しかし、後始末に現地に着いたエージェント23(ドウェイン・ジョンソン)は、どこにも核施設の痕跡が無いと報告したため、マックスは二重スパイの疑いをかけられ拘束されてしまうのです。

スティーブ・カレルは、90年代から活躍するコメディ俳優で、映画とテレビで有名なようで、アメリカ版"内村光良"みたいな感じ。人気女優のアン・ハサウェイは、この映画の後に「ダーク・ナイト・シリーズ」でのキャット・ウーマン、「オーシャンズ8」などでそこそこアクション物にも出演しています。年齢的にはアメリカ版"綾瀬はるか"という感じでしょうか。

スパイ・アクションとしてはそれほどすごいシーンは無いのですが、ストーリーの進み方がうまい。あきさせない脚本と、スピーディな演出がうまくかみ合い、主役が現場素人という特徴がうまく盛り込まれた作品になりました。

2026年3月21日土曜日

キングスマン ゴールデン・サークル (2017)

前作に続きマシュー・ボーンが監督を務めたスパイ・アクション映画シリーズ第2作。前作が好調だったのか、ゲスト・スターがかなりパワーアップしました。

エグジー(タロン・エガートン)がヴァレンタインの野望を打ち砕いてから1年。エグジーはガラハットを襲名し、ヴァレンタインの事件から救い出したスウェーデン王女のティルデ(ハンナ・アルストロム)と恋人になっていました。エグジーは、元候補生のチャーリー(エドワード・ホルクロフト)に襲われ、キングスマンの基地やメンバーの住所を知られてしまいます。

チャーリーのボスはポピー・アダムス(ジュリアン・ムーア)という世界最大の麻薬組織を持つ女性で、これから行う大仕事の邪魔と考えただちにキングスマンを標的にミサイル攻撃を行うのです。この攻撃によって、壊滅的な状況になったキングスマンは、スウェーデン国王との会食に参加していて難を逃れたエグジーと下っ端で見逃されたマーリン(マーク・ストロング)だけになってしまいます。

二人はこのような場合のための「最後の審判」を実行し隠し金庫を開けますが、中に入っていたのは古いウイスキーだけでした。ステイツマンというブランドの酒で、製造場所のケンタッキーの「K」がキングスマンのマークと同じであることから、ケンタッキーに向かいます。

しかし、ステイツマン醸造所に忍び込んだところを捕えられ尋問されますが、ジンジャー(ハル・ベリー)と呼ばれる女性が二人の素性を確認したことで解放されます。ステイツマンは、キングスマンと似たような活動をしているアメリカの中立的な諜報機関でした。

そこには、1年前に死んだはずのハリー(コリン・ファース)がいて驚く二人に、ジンジャーは異常信号を感知して駆けつけ瀕死のハリーを助け出したと説明します。頭を撃たれたことで記憶がなくなっていたハリーでしたが、エグジーのショック療法で何とか記憶を回復しますが、体の動きには切れが無くなっていました。

その時、テレビをハッキングしたポピーが、アメリカ大統領を脅迫するビデオが流されました。ポピーは、あらゆる麻薬に特殊なウイルスを混ぜて流通させ、麻薬を使用したものは数日で自我を失い死亡すると言うのです。解毒剤が欲しければ、麻薬を合法化するようアメリカ大統領を脅迫したのです。

チャーリーの恋人クララの行動を監視していたステイツマンは、クララも感染したため解毒剤をもらうためにイタリアの研究施設に行くことを知ります。エグビーとハリー、そしてステイツマンのベテランであるウイスキー(ペドロ・パスカル)の三人はイタリアに向かい、一度は解毒剤のアンプルを手に入れますがウイスキーの不注意で割れてしまうのです。

ティルデも感染したことを知ったエグジーは、彼女を助けるためハリーとマーリンの三人で、カンボジアにあるポピーの本拠地に乗り込むのでした。

悪人のボスはジュリアン・ムーアが演じ、おそらくこんな役はやったことがないでしょうから、実に楽し気です。ハリーの再登場は嬉しいのですが、あれほどきっちりした紳士が、かなり落ちぶれた感じになっていたのはちょっと残念。ポピーに誘拐され専属ピアニストになっているのが本物のエルトン・ジョンというのは驚きます。ちなみにエルトン・ジョンの自伝的映画でエルトンを演じたのはエグジーを演じるタロン・エガートンでした。

前作でも気になったのですが、キングスマンにしてもステイツマンにしても、私設の非合法機関なので、街中で派手なカーチェイスをしたり、いろいろと目立つ行動が不自然という印象は変わりません。

予算が増えたのか、前作にもましてCGを多用したアクションは、作った側は苦労して頑張ったと自画自賛しているのですが、CGはさりげなく使ってこそ効果を上げるものです。最近の多くの映画にも言えることですが、これほど大々的に使われると、かえって嘘くささが倍増してしまい逆効果だと感じます。実写が無理なら、アニメでいいんじゃないかと言いたくなるのは自分だけでしょうか。