2023年5月31日水曜日

ゴールデン・スランバー (2010)

今や人気俳優となった、堺雅人がブレイクのきっかけの一つになった映画。伊坂幸太郎原作の小説は、いろいろな賞を受賞しました。監督・脚本は中村義洋で、最近では珍しくテレビ出身ではありません。

クライム・サスペンスという位置づけになるかと思いますが、何か大きな権力の周到に仕組んだ罠に陥り、首相暗殺犯とされた青年が人との信頼だけを武器に逃げまくる話。

仙台に住む青柳雅春(堺雅人)は、以前、宅配業者の仕事をしていて、偶然に人気アイドル(貫地谷しほり)が襲われたのを助けました。ニュースによって顔が一般にも比較的知られる存在。学生時代の友人森田(吉岡秀隆)に久しぶりに呼び出され、首相の地元への凱旋パレードが行われる道路の脇道に停めた車の中で薬で眠らされてしまいます。

目を覚ますと、パレード中の首相がラジコンヘリによって爆殺されるのです。森田は「お前はオズワルドにされる。とにかく逃げろ」というのです。すぐさま近づいてきた警官がいきなり発砲し、青柳が車から転がり出た途端に車は爆発しました。

大学時代の仲間の一人、小野(劇団ひとり)のところに行くと、そこへの警察がやって来て、小野は暴行されます。青柳を連れ出した警視庁の佐々木(香川照之)はいくらでも証拠はあるから自首のチャンスをやると言いますが、ちょうどそのころ市内を賑わせていた通り魔のキルオ(濱田岳)に助けられます。

もう一人の大学時代の仲間で、一時は恋人同士だった樋口晴子(竹内結子)はニュースで事件を知りますが、訪ねてきた警察の様子も腑に落ちない。キルオは整形して青柳に似せた人物が、いろいろな防犯カメラにわざと映るようにしていたことから、その人物を突き止めますが相討ちになり絶命してしまいます。

たまたま知り合った入院患者の保土ヶ谷(柄本明)と晴子のお膳立てで、テレビ生中継をしている場所で投降することにしますが、中継は警察によって妨害され、たくさんの狙撃手が一斉に青柳に照準を合わせるのでした。

オズワルドは、ケネディ大統領暗殺犯のこと。周到な計画によって犯人に仕立て上げられた可能性は今でも議論になっています。青柳も、犯人として権力者の罠にはめられたのです。

はっきりしているのは、この陰謀を仕掛けた犯人を探し出すことがこの映画の目的ではありません。ある意味、青柳の敗北で映画は終了しますが、これは少しのコメディ・タッチの交えて、青春時代の思い出をたどりつつ、人を信頼することを大切さを描くことが主眼にある逃亡劇ということ。

また映画の中で繰り返し出てくるワードに「イメージ」というのがあります。青柳という人物はアイドルを助けた人物のイメージとして市民に定着している。警察が犯人だと発表すると、すべてのメディアは悪者のイメージのもとに報道をする。一見、唐突に登場する通り魔のキルオも、実物とだいぶ違う悪そうなイメージの人相書きが出回っていたりします。

一度作られたイメージからは、人はなかなか抜け出せないものなので、悪用されればどんどん深みにはまりますが、以前からその人となりを知る者とはしっかりとした信頼関係で結ばれる・・・いや、結ばれていたものですよね。

2023年5月30日火曜日

戦国自衛隊1549 (2005)

角川グループ60周年記念として、25年ぶりに再び戦国時代に自衛隊を送り込む映画が作られました。前作とのストーリーとしての直接的な関連はありません。半村良の前作の原作をある程度下敷きに、福井晴敏がストーリーを組み上げました。

太陽のフレアの影響を避けるための人口磁場シールド実験中に、シールド内にいた的場(鹿賀丈史)が率いる中隊が忽然と消えてしまいました。そして、72時間後に同じ場所に一人の戦国武者、七兵衛(北村一輝)が出現します。

実験の責任者だった神崎(鈴木京香)は、中隊が時空の歪みによってタイムスリップし、その揺れ戻しが起こったものと推察。その後各地に「虚数空間」と呼ぶ様々なものを吸い込んでしまうホールが出現、次第に大きくなることで現代が消滅する危機が迫って来ます。

これは的場らが積極的に歴史の改変を行っていることが原因と考えられたため、再び太陽フレア活動が活発化した2年後、森(生瀬勝久)が指揮するロメオ隊が、的場らの救出とホールの拡大を食い止めるために1549年にタイム・スリップするのでした。ロメオ隊には神崎の他に、かつて的場の部下で彼をよく知る鹿島(江口洋介)も参加していました。彼らはミッションを完了して、到着した場所に72時間以内に戻らなければなりません。

的場は戦国時代では織田信長を名乗り、美濃の蝮こと斎藤道三(伊武雅刀)を味方につけ、富士山の南西、天母山に築城し天導衆という武装集団を率いていました。この時代の人間を殺傷することを禁じられているロメオ隊は、なすすべなく天導衆に捕らえられてしまいます。

的場は、富士山ごと壊滅できる強力な爆弾を準備し、一から国を作り替えようとしていたのです。しかし、ロメオ隊と一緒に戻った七兵衛、ロメオ隊が助けた少年、藤介(中尾明慶)らが、実は狂いだした時間軸を自然と元に戻そうとする鍵となる人物でした。

最も異なるのは、今回は自衛隊が全面協力した点です。場所も東富士演習場が使われ、登場する車両などは本物です。ただし使用できる期限が限られていたため、悪天候でも撮影が強行され、それはそれで映画の要素としてうまく機能しているように思います。

さらに前作と違い、今回はタイム・スリップする原理らしきものは一応設定されています。また、タイム・パラドックスも考慮され、先にスリップした的場ら以外には実弾を使用しないなど、ある程度科学的な拠り所を用意しています。また、CGを取り入れ全体的に派手な画面となりました。

しかし、理論的な正当性を出そうとすると、逆に細かいところが気になってしまいます。所詮、リアリティは度外視した話なので、もう少しエンターテイメントに徹しても良かったように思いました。

ちなみに、斎藤道三の娘で信長に嫁ぐ濃姫を演じるのは、まだ初々しい綾瀬はるかで、近作「レジェンド&バタフライ」の濃姫役は18年ぶりでした。

2023年5月29日月曜日

戦国自衛隊 (1979)

1980年前後は、いわゆるタイム・スリップ物の映画が随分と話題になり、日本では原田知世主演、大林信彦監督の「時をかける少女(1983)」、アメリカではマイケル・J・フォックス主演、ロバート・ゼメキス監督の「バック・トゥ・ザ・フューチャー(1985)」などが有名です。

とりわけ、軍隊が丸ごと過去に戻ってしまうという大かがりな話題作も忘れられません。アメリカでは原子力空母が真珠湾攻撃の前日にタイム・スリップするカーク・ダグラス主演の「ファイナル・カウントダウン(1980)」が有名でしょう。

日本では、さらにもっと昔、戦国時代に自衛隊がタイム・スリップしてしまうというのが、半村良原作のこの映画。5本目の角川映画で、監督は、70~80年代の多くの人気テレビ・ドラマに携わった斎藤光正、脚本は鎌田敏夫、主演した千葉真一がアクション全体を統括して、当時としては俳優自ら危険なスタントをたくさんこなしたことでも有名です。

自衛隊の協力は取り付けられなかったため、すべての車両、武器、ユニフォームなどはレプリカであったり、アメリカ軍のものを流用したりしていますが、もともとフィクションですから、そこらをあまりとやかく言うのは野暮というものかもしれません。

演習中の自衛隊の1個中隊が、突然タイム・スリップしてしまいます。到着した途端に戦国武士の軍勢に攻撃され、彼らは否応なしに自分たちが戦国時代にいることを知るのです。トップの伊庭(千葉真一)は、やって来た長尾景虎、後の上杉謙信(夏木勲)に味方になるように勧められます。

自衛官の中には、精神的に病んでいく者、村で知り合った娘と逃げ出す者、さらには山賊化して村々を襲う者などが出てくるのです。景虎から「戦国の世で生きろ」と言われた伊庭は、共に天下を取る気持ちに傾き、京都に向かい川中島で武田信玄と対峙します。

近代兵器があっても、人海戦術と機転に勝る武田軍に苦しめられ、何とか信玄を倒すものの多くの犠牲を払い、やっとのことで京都の荒れ寺までたどり着きます。しかし、先に京に入った景虎は、御所に呼び出され大きな決断を迫られていたのでした。

一般にタイムスリップ物で過去に飛んでしまった場合、過去のいかなることにも介入してしまうことは未来を変えてしまうと考えられていて、人々と関わることなどご法度とされています。このあたりは「タイムパラドックス」というキーワードでいくらでも興味深い話が見つかります。

この映画では、伊庭が積極的にその時代に入り込んでしまうので、タイムパラドックスの問題は、ほぼ考えないで見るしかありませんが、単なるアクション映画、あるいは戦争映画として見るには相当頭の中で意識を改変していかないとついていけなくなりそうです。

2023年5月28日日曜日

真夏のオリオン (2009)

終戦間際の南方海域での、日本軍潜水艦とアメリカ軍駆逐艦との緊迫した駆け引きが中心の戦争フィクション映画です。「死ぬために戦うのではなく、生きるために戦っている」ということをテーマにしています。

監督は「月とキャベツ」、「地下鉄に乗って」などの話題作の篠原哲雄。脚本は福井晴敏です。平成ガメラ・シリーズに携わった松本肇が特撮監督をしていて、4年前の「ローレライ」よりもはるかにリアルなCGを駆使しています。

イ-77潜水艦で出撃した倉本(玉木宏)は、航海長の中津(吹越満)、水雷長の田村(益岡徹)、機関長の桑田(吉田栄作)ら、信頼できる部下や、新任の軍医長の坪田(平岡祐太)、人間魚雷回天の搭乗員と共にアメリカ軍輸送船を効果的に打撃を与えていました。回天搭乗員は度々出撃を進言するのですが、倉本はその都度「もったいない」と言うだけで取り合いません。

しかし、しかし防衛線を作っていた僚艦3隻からの音信が途絶え、その中には倉本の親友、有沢(堂珍嘉邦)が艦長を務めるイ-81もいました。倉本は日本軍潜水艦を仕留めたアメリカの駆逐艦パーシバルとの戦いに挑むことになります。

パーシバルのスチュワート艦長は、弟が回天の攻撃で戦死したため、誇り高いはずの日本海軍が特攻兵器を使うことに感情的に許すことができず、イ-77を仕留める強い決意を持っていました。

パーシバルの爆雷攻撃で、深海で身動きができないイ-77でしたが、酸素が尽きようとしても、回天に搭載されていた圧縮酸素を転用して潜航を続けます。一進一退の攻防の末、ついにタンクを破損したイ-77は、耐圧深度を超える海底に着床してしまいます。

残る魚雷は1本のみ。一度浮上したら、二度と潜航できない状況の中、イ-77はついに最後の勝負に挑むのでした。

映画では、倉本艦長の孫、倉本いずみが戦いの最中にスチュワート艦長が拾い上げた祖母、有沢志津子が書いた楽譜の由来を知るために、イ-77の生還した乗組員(鈴木穂積)を訪ねる現代のプロローグから始まり、鈴木の回想として本編が始まる形になっています。

志津子の書いた「オリオン」という曲の楽譜には、「真夏のオリオンが目標となって無事に帰還して欲しい」という願いが込められた詩が添えられていて、倉本にお守りとして渡されていたもので、映画のタイトルの由来になっています。

いずみ役は名が知られるようになったばかりの北川景子で、祖母の倉本志津子(戦死した有沢の妹)と二役を演じます。かなり薄めのメイクで、すっぴんに近い北川景子が見れるというのもちょっと嬉しいかもしれません。

潜水艦対駆逐艦という構図は、すでに駆逐艦側が主役の「眼下の敵(1957)」という名作映画がありますので、多少二番煎じ的な所はありますが、潜水艦側に視点を持ってきたことで新鮮味があり、なかなか緊迫したリアルな映像表現が出来ているように思いました。

ただ、敵同士、正々堂々と戦うみたいな武士道というか騎士道みたいなところが、ちょっと甘い。現実の戦いの中で、簡単に相手を信じるみたいな成り行きには、かなり意図的なドラマ性を感じてしまいます。さぁ泣け、と言わんばかりのいずみが登場するプロローグとエピローグについては賛否両論があるかもしれません。

とは言え、今風の玉木宏の髪型を除けば、戦争フィクションの映画としては、なかなか良く出来たものだと思います。

2023年5月27日土曜日

ローレライ (2005)

「亡国のイージス」の福井晴敏原作の戦記物が、同じ年にもう一つ映画化されました。こちらは終戦間際の時代に出撃した潜水艦が主役。


こちらは時代設定以外は完全なフィクション。監督は平成「ガメラ」の特撮をはじめとして、「シン・ゴジラ」、「シン・ウルトラマン」、「進撃の巨人」などの監督をした人。制作は亀山千広、庵野秀明、押井守、他現代のアニメ映画で活躍する多くの人材が協力しました(富野由悠季は出演までしてます)。

広島に原爆が投下され、敗戦が濃厚になった時、海軍大佐、朝倉(堤真一)は、絹見少佐(役所広司)を呼び出し、ドイツから譲られた潜水艦「伊五〇七」で第二の原爆投下を阻止するために独断で出航させます。

副長は信頼する木崎(柳葉敏郎)でしたが、急場で不足する乗員の中、絹見の知らないところで特攻兵器である回天の操縦士、折笠(妻夫木聡)、清水(佐藤隆太)らも乗船していました。艦には驚異的な索敵能力を持った新兵器ローレライが搭載され、その秘密を知る朝倉直属の軍属技師、高須(石黒その賢)も乗船していました。

回天操縦士が乗り込んでいたのは本線から離れてローレライの目の役割をするためでした。アメリカ軍駆逐艦に遭遇した伊五〇七は、ローレライを起動し正確な攻撃で敵に大打撃を与えることに成功します。折笠は、そこでローレライの中枢がドイツ軍の生体実験により感覚増幅能力を持った少女、パウラ(香椎由宇)であることに驚きます。ローレライの使用はパウラに、多大な精神的負荷をかけるものでした。

しかし、長崎への第二の原爆投下が行われたところで、高須らが謀反を起こします。朝倉はローレライをアメリカに引き渡し、日本軍の高官たちを排除することが目的でした。しかし、折笠が活躍で何とか制圧します。

さらなる第三の原爆が東京に落とされることを知った絹見は、搭載機の出発する島の飛行場の破壊を目指してさらに前進するのです。

この映画の評価は、ほぼアニメと言って良い荒唐無稽な戦争アクションを是とするか、あくまでもリアリティにこだわって非とするかで分かれます。潜水艦との戦い、駆逐艦と戦い、飛行機を対空砲で仕留めたりとやりたい放題ですが、邦画としては初期のCGが大活躍で、それなりに迫力があって見所になっています。

潜水艦を舞台にしたリアリティ重視の映画なら「Uボート(1981)」という名作があり、それから四半世紀立っている今作でも到底越えられるものではありません。基本的に史実の時系列だけは参考にしても、内容はまったくのフィクションですから、どのちみリアリティを求める方が無粋というものかと思います。そもそも秘密兵器が少女の超能力ですからね。

そういう意味でも、第二次世界大戦末期の雰囲気だけ使ったアニメ風SF架空戦記アクションと思えば、なかなか良く出来ている。それも、結局のところはさすがの名優たちの演技によるものが大きいようです。本当に役所広司は何をやっても様になるのは素晴らしいし、柳葉、石黒、國村隼、小野武彦、鶴見慎吾、伊武雅刀らの脇役がしっかりしている。

ちなみに、無線で絹見に反乱を断られた朝倉がいう「残念だよ」は、後の「SP野望編」の最期の台詞と同じ感じなので、ちょっと愉快になってしまいました。

2023年5月26日金曜日

亡国のイージス (2005)

原作は福井晴敏の小説。福井晴敏は、他に「終戦のローレライ」、「戦国自衛隊1549」などの架空戦記物で有名で、「ガンダム」のシリーズにも関わっている人。

イージス・システムはアメリカが開発した防空戦闘システムのことで、これを搭載した戦艦はイージス艦と呼ばれます。レーダーからミサイル発射までをコンピュータ制御して、目標の識別・判断・攻撃の流れが格段と迅速に行われるらしい。

原作は長大で、文庫でも500ページ以上ありますから、当然映画化に当たっては相当はしょれるところをはしょり、テーマを絞り込まないと収まるわけがない。

訓練航海に出発したイージス艦、いそかぜ。しかし、出航してすぐさま艦内に不穏な動きがあり、艦を熟知する先任伍長、仙谷(真田広之)は、副長の宮部(寺尾聡)から新人の如月(勝地涼)が亡国の工作員ヨンファ(中井貴一)の協力者で艦を爆破しようとしていると教えられます。

如月が機関室に籠って爆弾を仕掛けてたところに、仙谷は如月の知らないハッチから侵入し格闘になりますが、如月は防衛庁情報局(DAIS)の指令によって、ヨンファが持ち込んだ強力な化学兵器GUSOHを使わせないために動いていると話します。

仙谷が如月を確保した途端に、海上訓練指導隊として乗り込んでいたメンバーがなだれ込み二人とも拘束され、仙谷は如月の言うことが正しいことを確信したのです。

副長以下、幹部士官(吉田栄作、豊原功補、谷原章介など)は全員、危機意識のあまりにない日本国に幻滅し、ヨンファに協力しいそかぜを東京湾に進めて東京都各所に化学兵器を搭載したミサイルの照準を合わせ、政府が隠蔽してきた様々な危機を公表することを目的としていました。

政府は内閣総理大臣、梶本(原田芳雄)以下閣僚、防衛庁幹部が招集され、DAISの本部長、渥美(佐藤浩市)らが必死に情報収集にあたります。宮部の命令により、仙谷を含めた一般自衛官は退艦させられますが、仙谷は一人ひそかに艦に戻り孤独な闘いが始まりました。

・・・と、まあ、そんな感じのストーリーなんですが、自衛隊が全面協力して、本物のイージス艦で撮影が行われたそうで、なかなかリアリティがあるはずなんですが、実際のところせっかくのイージス艦なのに、全体が写るようなアングルはなく、ほとんどセットでいいんじゃないかという感じが寂しい。

艦内での仙谷・如月対亡国工作員という肉弾戦のアクションが中心なのでしょうがないと言えばそれまでですが、僚艦を先制攻撃で撃沈させてしまうような本来派手な場面も、レーダー上でシグナルが消えるだけという見せ方なので、何ともお粗末な印象です。

原作ではヨンファの義理の妹で強い絆で結ばれたジェンヒが、映画にも登場するのですが、あまりに唐突な登場で何故いるのか意味不明というところ。原作をかなり省略しているようなので、いなくてもいいように思いました。

宮部と下士官たちも、これだけのことをするならそれなりの覚悟があるだろうに、妙に自衛隊員の死者が出ることにびびっているのも情けない。誰も死なずに国を変えられるとか、本気で考えていたのでしょうか。

まぁ、そんなもやもやはありますが、冷徹な中井貴一、人間愛に溢れる真田広之、仙谷の人柄にしだいに引き込まれる勝地涼らの演技がなかなか素晴らしいので、何とか最後まで見続けることができます。

監督は阪本順治で、代表作は「大鹿村騒動記」、「北のカナリア」などがあります。国家として存在意義を失いつつある日本は、守る価値があるのだろうかというかなり硬派なテーマが根底にあるのですが、国に絶望した人たちの起こしたアクション映画以上にはなっていないようです。

2023年5月25日木曜日

別の意味で話題


さて、困った。

発売したばかり。ホットな話題となっている・・・シェイクうどん

別の意味で話題になってしまい、何ともさて、困った。

話を進めにくくなってしまいました。

・・・・・・

さらに困ったことに、bloggerの具合がおかしくて、写真をアップできません。これもまたどうしたことか。どこかにカエルが混入したわけでもあるましい。

というわけで、これ以上書くことができない・・・・


追記

3日間写真アップロードが出来なかったのが回復していました。でもいまさら、この話題に書き加える気力はないなぁ・・・・




2023年5月24日水曜日

アジアンビストロDai @ あざみ野


あざみ野駅から数分のところにあるお店で、実に2009年にクリニックの飲み会をやって以来、ランチをしに入りました。

南国風料理の店で、どっちかと言うと南太平洋よりのイメージだったのですが、まったくいつからかはわかりませんけど、東南アジア料理の店になっていました。この界隈ではMonsoon Cafeというのがありましたが、コロナ渦で(?)閉店してしまったので、もしかしたらDaiは、タイ料理を食べれる数少ない店かもしれません。

ランチ・コースは基本¥1,900ですが、なかなかボリュームたっぷりで食べ応えがありました。

食前ドリンク & サラダに続いて出てきた最初のプレートが前菜5種盛り合わせというもの。生春巻き、四川風よだれ鶏、トムヤンクン、海老トースト、揚げ春巻きが並んでいますが、どれも美味しい。ソースはナンプラー、チリソース、トリュフを基にしたものが付きます。

もうこれだけでも、けっこうお腹が満たされます。


続いてメイン・プレートは、いろいろ選べるのですが、今回はガパオ炒めご飯 & グリーンカレーです。さらにデザートと食後ドリンクに出てくるので、いやいやかなりの量でした。

味付けは・・・全体に甘い。おそらく若い女性などをターゲットにしているのか、かなり食べやすい味付け。もう少しピリっとした味を想像していると、ややガッカリするかもしれませんが、まぁ雰囲気はしっかり出ていますのでこれはこれでありというところ。

海老トーストはけっこういけます。単品で注文できるので、飲み会ならマストかもしれません。昔あったサワー・クリーム添えのフライド・ポテトが無くなって、ただの普通のポテトになっていたのはがっかりでした。


2023年5月23日火曜日

いちど死んでみた (2020)

何と、広瀬すずのイメージをひっくり返して、日本アカデミー賞主演女優賞となったはちゃめちゃコメディ映画です。伏線がどうとか、リアリティがどうとか、細かいことは言ってはいけません。


監督は浜崎慎治という人。CM中心に仕事をした来た人で、auの「三太郎シリーズ」などを担当していて、映画はこれが最初。

化学者であり製薬会社社長の父親、野畑計(堤真一)は、研究に没頭するあまり妻の死に目に会えず、娘の七瀬(広瀬すず)はそんな父親にし反発し、仲間とヘヴィメタル・バンドを結成し「父親なんて死ね死ね」を叫びまくる毎日。

計の会社では若返りの「ロミオ」と呼ぶ薬と、2日間だけ死ねる「ジュリエット」を開発していました。「ロミオ」を狙うライバル会社からスパイとして送り込まれた渡部(小澤征悦)は、計を丸め込み「ジュリエット」を飲ませてしまいます。

渡部は、生き帰る前にさっさと火葬にしてしまおうとやっきになる。日頃から「死ね」と叫んでいた七瀬もさすがにびっくりしますが、計と渡部のやり取りを知った存在感の薄い計の秘書、松岡(吉沢亮)から事情を教えられます。

七瀬と松岡は、火葬の時間を遅らせ、渡部の悪事を何とか留まらせようと四苦八苦するのでした。計は無事に生き返ることができるでしょうか。

亡くなった計の妻は木村多江、三途の川の案内人がリリー・フランキー、「ジュリエット」を開発した研究員は松田翔太。特に松田翔太は藤井という役名で、計から「じいさん」と呼ばれてしまうのが、最後の最期で効いてくる仕掛けになっているのはうける。

他にもチョイ役ででんでん、原日出子、城田優、加藤諒、佐藤健、池田エライザ、古田新太、大友康平、竹中直人、妻夫木聡、西野七瀬、志尊淳、さらには野口聡一さんまで登場するので、なかなか画面から目を離せません。

もう、どうのこうの言ってもしょうがない映画。ひたすら、くだらないシチュエーションに疑問を挟まず楽しむ映画。監督もCMという短い時間で盛り上げることを得意とする人ですから、1時間半の間ほとんどだれる感じはありません。出演者たちも、おそらく出番を楽しんだことでしょう。

2023年5月22日月曜日

イン・ザ・ヒーロー (2014)

この映画は、戦隊物などの裏の主役、仮面をつけてアクションをする、いわゆるスーツ・アクターに注目した武正晴監督による「楽屋ネタ」的なストーリーです。

主役の本城渉を演じるのは、自らキャリアの初期にスーツ・アクターをしていた唐沢寿明です。ブルース・リーに憧れて16歳で東映アクションクラブに入り、「仮面ライダー」シリーズの敵役などをしていたのは有名な話。しかし、このままでは俳優として成長できないと口にしたことで辞めさせられました。

同じような立場で、当初アクション・スタントをバカにし、撮影スタッフに対しても敬意をもたない若手イケメン俳優、一ノ瀬リョウを福士蒼汰が演じています。唐沢もおそらく昔の自分を思い出すようなところもあったでしょうから、相当この映画に対しては思い入れがありそうです。

戦隊物のスーツ・アクターをしている本城は、下落合ヒーローアクションクラブのリーダーで、いつかは顔を出して自分の名前がクレジットされる映画に出ることが夢でした。ハリウッド映画に出れるかもという話は、売り出し中の一ノ瀬に決まってしまいます。

アクションを覚えなければならない一ノ瀬は本城のもとを訪れますが、初めはクラブのメンバーと対立し、無理をしてケガまでさせてしまいます。本城は「アクションは斬るだけでなく斬られる側がいて成り立つ。映画も多くの裏方がいてできるもの」と説きます。

ハリウッド映画の主役俳優が、クライマックスの立ち回りがあまりに危険すぎるという理由で降板してしまい、困ったプロデューサーはついに本城に出演をオファー。本城はいろいろな想いを背負って引き受けるのでした。

おそらく40代くらいまでの人は戦隊物を、それ以上の人はウルトラ・シリーズの怪獣とかでスーツ・アクターに馴染んできました。ウルトラマンを演じた人が、ウルトラセブンではウルトラ警備隊で顔出したという話は当時から有名でした。

顔が画面に出ず、名前もクレジットされない影の俳優さんはたくさんいて、時代劇での斬られ役の人たちも同じようなもの。彼らがうまく斬られてくれないと主役が引き立たないわけですから、このような存在が物凄く大事というものです。

クラブのメンバーは、黒谷友香、寺島進など。本城の元妻は和久井映見、娘は杉下花。特別出演の松方弘樹が、最後に本城の一世一代のアクションに斬られ役の中にいて、「今度は俺が斬られるよ」というのは泣かせる話です。

映画好きの方、戦隊物が好きな方、夢を追いかけるロマン好きな方・・・など、気負わず楽しめる良作となっています。

2023年5月21日日曜日

家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。 (2018)

長めのタイトルなんですが、はっきり言ってこれがあらすじをほぼすべて表しています。

監督は李闘士男(り としお)という人で、基本的にはバラエティやドラマ中心のテレビ業界の方で、脚本の坪田文もテレビ・ドラマやアニメの仕事が中心のようです。

そもそも、この一風変わったタイトルは、2010年に「Yahoo!知恵袋」に投稿されたkkajunskyさんから質問そのもの。あまりに奇抜な質問なので、ネット上で知る人ぞ知る有名なネタになりました。特に「ほぼ日P」さんがこの話を楽曲に仕上げニコニコ動画にアップしたことで知名度がさらにアップし、コミックまで登場。そして今回の映画化というアゲアゲの展開をしました。

話の基本はタイトルそのままですが、映画ですから、膨らませて起承転結をつけて不思議な妻の行動に一定の回答を提供しています。

×イチの加賀美じゅん(安田顕)は、ちえ(榮倉奈々)と結婚して3年目を迎えます。結婚する時に、3年経ったら結婚生活を継続するか一度話し合うという約束をしていました。で、じゅんが「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています」状態に突入するわけです。

最初は口からケチャップを垂れ流し「死んでいる妻」を見てあわてふためくじゅんでしたが、ちえはネタばらしの後普通に夕食を用意するのでした。翌日は大きなワニの模型の口に頭を挟まれて死んでいる。頭に矢が刺さっていたり、射殺された兵士だったりと、ちえの死んだふりはどんどんエスカレートするのです。

じゅんは仕事仲間の佐野壮馬(大谷亮平)に相談してみますが、もちろんまともな答えはわからないまま。佐野の妻、由美子(野々すみ花)はちえとも仲良くなりますが、「結婚生活の壁」みたいなものを感じていました。

中盤以降は、この二組の夫婦の絡みに、ちえのバイト先のクリーニング店の妻に先立たれた老店主(品川徹)、そしてちえを男手ひとつで育てた父親(螢雪次朗)の話が加わってきます。

基本的には、そこそこ笑えるほのぼのとしたエピソードの積み重ねの中に「夫婦って何だろう」という根源的なテーマを探っているような感じに仕上がっていますが、本当の正解はわからないし、それぞれの夫婦で答えは違うものだろうと思います。

映画でも、妻の奇行のそもそものきっかけみたいなところは説明されますが、死んだふりをする本当のところ理由はよくわからないままです。まあ、それでいいのかもしれません。

ちょっと気になったのは、最初はテンポよくコメディ調だったのが、後半でテーマが重くなってコメディ部分が減って間延びした印象があるところ。どうせ正解がはっきりしないのですから、夫のリアクションもいろいろエスカレートさせ、テンポを上げてドタバタさせても良かったかも。

まぁ、可愛らしい榮倉奈々の様々なコスプレを楽しめばいいだけなのかもしれませんけどね。


2023年5月20日土曜日

鮭のクリーム・パスタ


基本的な部分を覚えれば、応用が効くのがイタリア料理の良い所。

今回はクリーム・パスタなので、ニンニクは少な目。あくまでも、鮭の生臭さを抑えるのが目的です。フライパンにオリーブ・オイル、ニンニクのみじん切りを入れ、泡が立つまで加熱します。そこへ火を通した鮭をほぐして入れる。

鮭はよくスーパーで売っている切り身です。一切れでだいたい二人前という目安。普通に焼いても良いし、フライパンで先に焼いてもかまいません。今回は、同時にできるので、電子レンジでチンしました(500Wで4分程度)。

ぶなしめじをおまけに使いました。多少彩を良く出来るので、ピーマンを薄くスライスしたものを少々合わせて入れています。

同時におゆを沸かしてパスタを茹でます。お湯に対して10%程度を目安の塩を入れることをお忘れなく。茹で時間は、指定されている時間より1~2分早めです。

フライパンに生クリーム(二人前で100ml)を投入して、軽く沸騰したら茹で上がったパスタを入れて、全体にからめてパスタにも味が入るように1分程度煮る感じ。

茹で汁に塩が入っていて、かつ鮭は塩味が付いているので、追加の調味料はほぼいりません。今回は、サラダのつもりでレタスを下に敷きました。単純に洗い物を増やすのが面倒という理由。

鮭の代わりに他の魚を使っても美味しく頂けますので、いろいろ試してみてください。


2023年5月19日金曜日

空母いぶき (2019)

原作はかわぐちかいじの漫画。かわぐちかいじと言えば、「沈黙の艦隊」は大ファンで、大人になって買いそろえた唯一の漫画でした。

この「空母いぶき」も、作者の得意な世界的危機を扱った壮大なストーリーなんですが、実はまったく原作を読んでいないので、そもそも135分の映画にまとめ上げるのは無理があるでしょうし、原作を知る人からは物足りないという意見も出るかもしれません。

ただ、原作を知らない強みは、限られた時間で起承転結を無理なく進め、説明に頼り過ぎずに映像として説得力のある展開さえあれば、映画としての合格点を与えられるというところです。

ネットのいろいろの批評をみると、あまりに現実の自衛隊の装備と違うとか、戦い方にも疑問があるとか、政府の対応がお粗末すぎるとか・・・まあ、罵詈雑言の嵐みたいなところがあるんですが、そもそも原作は架空の世界の漫画ですから。

あまり、そのあたりに目くじらを立てていたら、ノンフィクション風のフィクションは成立しません。某テレビ局の「ドクターなんちゃら」とかいう医療ドラマも大うけして、何度も何度も登場しますが、自分に言わせれば、あまりにも荒唐無稽で嘘過ぎてあきれてしまいます。

監督はテレビで人気ドラマをたくさん生み出した若松節朗で、「ホワイト・アウト」、「沈まぬ太陽」、近作では「Fukushima 50」があります。

日本の専守防衛という観点から、艦載機を持つ空母いぶきの就航は、積極的な攻撃型戦艦として議論を呼びました。しかし、東亜連邦(架空の太平洋の国)が日本の領土である離島を占拠し、自国旗を立てたところから物語が始まります。

近くで訓練航海をしていた第5護衛隊群に出動し、捕縛された海上保安庁職員の救出が命じられました。中心にあるのが空母いぶきで、護衛艦3隻、潜水艦1隻が向かいます。いぶきの艦長、秋山(西島秀俊)は航空自衛隊出身で、副長の新波(佐々木蔵之介)とは防衛大学の同期。

しかし、人命尊重、防衛に専念するという考え方の新波に対し、秋山は必要ならば先制攻撃も辞さず、また相手に死者が出ることも仕方がないとし対立します。新波はいまだかつて自衛隊員に死者が出ていないことを誇りますが、秋山は誇るべきは国民に戦死者が出ていないことだというのです。

しかし、第5護衛隊群が目的地に接近するにしたがって、敵の波状攻撃は激しさを増し護衛艦1隻と潜水艦を失い、ついに戦闘機の出撃し空中戦まで行わざるをえない状況となるのでした。内閣総理大臣、垂水(佐藤浩市)は国連に働きかけ各国の協力を得ようと努力しますが、自衛隊に死傷者が出る事態についに全自衛隊への「防衛出動」を命じるのでした。

そもそも東亜連邦って・・・原作は中国が尖閣列島に上陸となっているらしいのですが、太平洋上の新興国が、戦闘機60機を搭載可能な大型空母を擁して進攻してくるという設定は、中国への配慮(?)とは言え、あまりにリアリティが(映画だとしても)無さ過ぎ。

映画としての出来は・・・何となく言いたいことはわかるんですが、無駄なシーンがあり、必要な場面が足りない印象はぬぐえません。一番よくわからないのは、中井貴一演じるコンビニの店長。途中何度も出てくるんですが、戦争一歩手前の緊張感と、国民の温度差を表したいのかなと思いますが、正直ワンクールのドラマなら許せますが映画では不要。

それより、国際問題に発展しかねない大事件ですから、政府の状況をもっとしっかり描いてもらいたいものだと思いますし、前半では総理大臣のどうしたものか迷いまくっている様子がちょっと寂しい感じ。

戦闘シーンのCGがやや安っぽいのはしょうがないとして、最大の問題はラストの解決。えっ、これで終わるのみたいなところで、映画オリジナルの〆らしいのですが、いくら何でも
そんなに簡単に終わるわけないだろうと・・・

結局、原作を読んでいない物にとっても、何かモヤモヤが残る映画かなという結論になってしまいました。おそらく原作を知っていたら怒りまくっているのかもしれません。

2023年5月18日木曜日

紫陽花


昨日は、横浜でも早くも気温が30゜に達しました。まだ熱帯夜にはならないので、何とか我慢できますが、今年の夏はどうなるのか考えると憂鬱です。そもそも、その前に梅雨入りというのもありますしね。

おっと、その前にツツジが終わった街中のあちらこちらでも、そろそろ紫陽花が咲き出す頃です。

季節感が薄れている昨今ですが、季節の変化を少しでも感じることは大事。ちょっと立ち止まっていろいろな色、いろいろな形が楽しめる紫陽花を探してみるのも良いかもしれません。

2023年5月17日水曜日

SP The Motion Picture 革命編 (2011)

さて、いよいよ最終話です。Episode IV 「革命編」です。

革命当日の朝。議員らを警備するたくさんのSPが国会議事堂へ集まってきます。もともとそのメンバーから外れていた井上(岡田准一)、石田(神尾佑)、山本(松尾諭)、笹本(真木よう子)の第4係のメンバーも、尾形(堤真一)の直前の警護計画変更により国会に集合しますが、国会が始まると尾形の指示により誰もいない大部屋の調査に回されます。

見学者にまぎれたテロリスト、尾形に賛同したSPが議場の外を囲み緊張が高まる中、テロリストの別動隊は議事堂と地下通路でつながる議員宿舎を制圧し、爆薬を仕掛けたうえで武器を議事堂に運び込みました。

麻田首相(山本圭)に対して不信任案が提出されその主旨が説明される中、ついに尾形を先頭にテロリストは議場に入っていきました。騒然とする議会を一発の銃弾で黙らせた尾形は、「政治家がいかに腐敗し、日本国民を裏切っているか証明する。テレビはすべてを中継するように」と要求し、本気であることを示すために議員宿舎を爆破します。

異変に気がついた井上らはテレビで状況を把握しますが、何故尾形が急遽ここに自分たちを集めたのかという疑問に対し、井上は「我々によって止めてほしい」と思っていると話します。踏み込んできた尾形の息がかかった新第4係のメンバーを制圧した井上らは、各階、各廊下を見張るテロリストを一人一人制圧し、ついに議場入口に集まりました。

閣僚一人一人の悪事を暴いた尾形の最期の標的は首相の麻田でした。尾形は、麻田の不正の身代わりとして亡くなった父親の件を問いただしますが、麻田はあくまで否定します。銃口を向けて尾形が首相に詰め寄った時、幹事長の伊達(香川照之)が立ち上がり、尾形ら行為を否定・糾弾するのです。

伊達は尾形の兄で、今回の「革命」も長い時間をかけて積み上げてきた彼らの「復讐」だったはず。土壇場で兄に裏切られた尾形は、「お前が目指していたのは偽物たちの王様か」とつぶやき、伊達に向けて銃を構え直します。しかし、両脇にいたテロリストは「銃を捨てろ。目指したものが違うようだな」と言って尾形に銃を向けるのでした。

その瞬間、井上らは議場になだれ込み、混乱の中、次々にテロリストを制圧しますが、議場の裏へと逃げる麻田首相を追って尾形は姿を消します。井上も後に続き、麻田を追い詰めた尾形と井上はついに直接対峙するのでした。

本編のほとんどを占める、絶対にロケが許可されない国会議事堂内のシーンが素晴らしい。本物を精巧に真似た幅1/2、高さ1/2のセットを作り、そこへCGをかぶせてまさに衆議院議会場を再現しているところは見事です。似たような複数の施設でのロケを組み合わせ、まさに議事堂内の廊下、部屋なども含めて違和感なくシームレスにつなげた撮影・編集もうまい。

そして、テレビ版から通して全体のアクションを自ら統括した岡田准一らのアクションもすごい。もちろん、壊すための小道具類も周到に準備されているわけですが、ギリギリを狙った俳優らの動きは、CGなどでは表しようがないリアルさを画面に刻みました。

原案・脚本の金城と、出演した岡田、堤は、2003年の映画「フライ、ダディ、フライ」以来のタッグ。この映画では堤のダメな父親を岡田が鍛えて、娘との絆を取り戻すという内容でしたが、岡田の身体能力の高さはその片鱗がすでに見えていました。

エピローグ的な場面では、いかにも事件は真の終わりを迎えていないことを匂わせており、簡単には解決されない巨悪の大きさを想像すると、さまざまな憶測が余韻に残ります。場合によっては、続編もあるのかもしれません。

ちなみに、綾野剛、ダイアモンドユカイ、柄本佑などが本筋と関わりないところでカメオ出演しているので、注意深く見ていてください。

2023年5月16日火曜日

SP The Motion Picture 野望編 (2010)

話題となったテレビ・ドラマ「SP 警視庁警備部警護課第四係」が、3年ぶりに劇場用映画となって、いよいよドラマの疑惑の決着がつくことになりました。前後編の2部作になっていまて、完全にドラマからの連続したストーリーなので、ドラマから知らないとかなり面白さが半減してしまいます。

監督はドラマ版の演出を務めた波多野貴文。主なスタッフも同じなので、出演者のみならず、見る側も違和感なくストーリーに入り込めます。相変わらず、岡田准一のキレキレのアクションも見物ですが、映画となって一番ステップアップしたのはハリウッドに協力してもらったCG合成などの特殊効果。

2010年10月に封切られたEpisode Vとなる「野望編」は、六本木ヒルズの特設会場でのイベントからスタート。来賓の国交省大臣を狙ったテロを未然に防いだ井上(岡田准一)でしたが、あきらかに上司、尾形(堤真一)を睨みつける井上の目は猜疑心で溢れていました。

最近連続して発生しているテロ事件は、実は尾形が強く関与していて、さらに与党幹事長の伊達(香川照之)や、若手官僚たちも仲間だったのです。彼らは大学の政治サークルの先輩・後輩の間柄で、警察組織の改革をはじめとして腐りきった日本の政治体制の改革のために、今がテロの時代であり、いかに簡単にテロを引き起こせるかを見せつけるために事件を起こしていたのです。

尾形は井上をグループに引き込もうとしますが決裂し、グループは計画実行に邪魔な存在である井上の排除を計画します。深夜の北朝鮮のミサイル発射で、急遽官邸に呼び出された官房長官(螢雪次朗)を警護することになった第4係でしたが、テロリストの波状攻撃を受け石田(神尾佑)と山本(松尾諭)はナイフで刺され、笹本(真木よう子)はボウガンよって倒されます。

犯人たちは、官房長官襲撃と見せて、それよりも明らかに第4係のメンバーへの攻撃が目的であるように見えました。一人になった井上は、何とか官邸入口で警備の警官に官房長官を引き渡しますが、シンクロの力によって背後のビルの屋上にいる狙撃者の気配を察知します。

ビルに向かって「撃てよ、撃ってみろよ」と叫ぶ井上。狙撃者はドラマ最終話で麻田首相(山本圭)を模擬弾で狙撃した犯人で、しかも尾形があたらしく第4係に引き込んだ新人SPでした。しかし、近づいた尾形がライフルを取り上げ撤退を命じます。

代わってビルの屋上から井上を見つめる尾形の口からは、「残念だよ、本当に残念だ」という言葉が・・・

さて、次に行く前に、後編封切り前にテレビで放送されたスペシャル・ドラマがあります。それが「革命前日 (Episode Pre VI)」です。「野望編」で全員が負傷した第4係の面々が、数か月ぶりに休日を過ごしている様子と、着々と大きな計画を準備している尾形らのグループの様子が交互に描かれる形です。

あくまでも幕間劇ですから、見ていなくてもほとんど問題なく映画2作品を楽しめるのですが、登場人物の休日を通して人柄などが伝わり、作品を楽しむ上でより感情移入しやすくなるという仕掛けになっています。ただし、映画では簡単な回想と会話の中での説明だけになっているのですが、公安の田中(野間口徹)が、尾形の出自を調べに岡山に行くところは重要なポイント。

本物の尾形はまったくの別人で、尾形と呼んでいる人物は20年近く他人に成りすまし、警察官になっていたことが判明します。本当の姓は成瀬で、実は父親は衆議院議員でしたが自殺したのでした。尾形(あえてそのまま呼びます)は、高校生で父親の死の第一発見者でした。父の自殺(もしかしたら他殺)は麻田と関係があると疑い、それらの証拠を掴むことが尾形の最大の目的だったのです。

さて、最終のEpisode VI 「革命編」です。


2023年5月15日月曜日

SP 警視庁警備部警護課第四係 (2007)

実は過去にも取り上げているんですが、大変良く出来たドラマだと思うので、何度か見直しています。

もともとはフジテレビのドラマですが、2007年11月から年をまたいで2008年1月に放送された全11回。ただし、放送時間は土曜日の23:10-24:00という、ほぼ深夜帯。にもかかわらず、14~19%程度の高視聴率を獲得しました。

原案・脚本を手掛けたのは金城一紀。主演をした岡田准一と制作されるだいぶ前から、今までにないアクション物を作ろうと相談していたそうで、後に劇場映画が作られますが、そこまでのストーリーがしっかり最初から組みあがっていたことに驚きます。

金城はこの作品で成功し、後に「BORDER 警視庁捜査一課殺人犯捜査第4係」、「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」といった似たような傾向のドラマを作っています。近作は、綾瀬はるか主演の映画にもなった「奥様は、取り扱い注意」で、それまでの世界観を一家庭に移し替えて驚かせました。

全体の総監督となっているのが「踊る大走査線」を大ヒットさせた本広克行で、「踊る~」ほどではない遊びが随所に見られるのはご愛敬。演出したのは 波多野貴文と藤本周の二人。菅野祐悟のスタイリッシュな音楽、特にテーマ曲は多くの人の記憶に残りました。

警護課第四係の係長は尾形総一郎(堤真一)で、まさに冷静・沈着で仕事一筋という頼れる上司。SPの任務は、場合によっては身を挺して警護対象者の身を守ることなんですが、命の危険に晒されるだけというのを問題視して、上としばしば衝突しています。

部下はベテランの石田(神尾佑)、男勝りの笹本(真木よう子)、やや体型に難がある山本(松本諭)の三人。そこへ尾形自らリクルートした井上(岡田准一)が加わるところから物語がスタートします。

初回のEpisode I は、東京都の女性知事(大場久美子)を襲撃しようとする犯人を察知して井上が逮捕するという活躍の話。逮捕した井上が尾形に「このあとどうすればいいでしょうか」と尋ねると、尾形は「犯人を逮捕したSPはお前が初めてなので、とうしたらいいかわからん」と答えます。井上にはシンクロと呼ばれる一種の特殊能力があり、驚異的な記憶力・直観力・推察力があることが紹介されます。

Episode II (第2~4話)は、元首相が手術を受けている最中に病院がテロリストの占拠され脅迫される話。首相の警護に当たっていた井上と笹本を中心に、テロリストを撃退していくところがかっこいい。

Episode III (第5~7話)は、地検特捜部が捜査中の大型証券取引事件の証人が警備対象者。口を塞ごうと暗殺者が迫って来ますが、SPを信用せず放漫な非協力的な態度でSPを困らせます。最終的に地検が起訴を断念したため、SPは任務終了となりますが、殺されるとわかっているのに警備対象者を放り出すことの是非が問われました。

Episode 0 (第8話)は、井上がSPになった動機の話。こどもの時に、現在首相となった浅田を衝撃した男によって両親が刺殺されたことが紹介され、そのトラウマが井上の脳に大きなストレスとなってシンクロを引き起こしているのです。井上は、事件直後に浅田が薄笑いしたことがずっとひっかかっています。井上は尾形に「自分のような境遇のこどもが増えないためにSPを目指した」と話します。

Episode IV (第9~11話)は、イベント会場で浅田首相の警護に当たる第四係の前に、都知事を襲おうとして証拠不十分で釈放された犯人、出所して警察官を襲い銃を手に入れたかつて浅田を襲った犯人西田(平田満)が現れます。しかし、首相は謎の狙撃者によって狙撃されるも、模擬弾で首相の胸は赤い染料で染まるだけでした。西田は混乱に乗じて首相に近づき銃を向けましたが、身を挺して浅田を守る井上を思い出します。

続けざまに起こるテロ行為に、今のような守るだけのSPでは対応が不十分であることを訴える尾形。公安の捜査員(野間口徹)らは続けざまに起こるテロ事件は、警備情報を漏洩した警護課理事官、西島(飯田基祐)の関与を疑い自宅に踏み込みますが西島は拳銃で自殺(にみせかけて)していました。

新しく赴任した若い理事官、梶山は尾形に廊下ですれ違い際に「西島さんは残念でした」と話し、尾形は「大義のためにはしかたがない」と答えます。シンクロによってその会話を聞きとれた井上は尾形に対する疑念が膨らんでいくのでした・・・というところで連続ドラマは終了。

2008年4月に追加の新撮を加えたスペシャル・ドラマがEpisode IVex として放送されました。これはここまでのEpisodeを、井上が公安の取り調べを受ける形でおさらいする2時間半のダイジェスト版です。発売されたDVD、ブルーレイのBOXに収録されました。全部見直すのは面倒という方は、このスペシャル・アンコール特別編でも映画につながっていく伏線はすべておさえることができます。

2023年5月14日日曜日

自宅居酒屋 #68 レタス炒め


これはイタリアン料理の作り方の応用というか、冷蔵庫の残り物整理的なもの。何なら、単純にパスタを加えても美味しくいただけます。

鍋に入れた生タラの切り身が少しだけ残って冷凍してたのですが、そろそろ使い切りたい。でも、それだけで何とかするほどの大きさでもない・・・というわけで、解凍して一口大に切ったら軽く小麦粉をまぶします。

フライパンにオリーブ・オイル。ニンニクを好きなだけ入れた加熱。泡が出たら、輪切りの鷹の爪少々。用意したタラを表面が軽く焦げるまで炒めます。

今回はタラが少ないので、ムキエビも追加。2個だけ余っていたマッシュルームもスライスして混ぜてしまいました。

タラに塩気があるので、味付けはあまり必要でないのですが、雰囲気で塩を少々。お好みで、醤油を使ってもかまいません。

最後にザク切りにしたレタスを、ドドドーンと入れてささっと炒め合わせたら出来上がり。写真は少し時間がたったので、レタスがしんなりしていますが、あまり炒めすぎずにシャキシャキ感が残っているくらいが丁度良い。

シンプルですが、ビールが進む。生レタスのサラダに飽きたら、一度は試してみてください。タラの代わりにサーモンとか、牡蠣とか、いろいろなもので試せます。


2023年5月13日土曜日

××なズワイガニ


カニです(喜)。楽しみです(笑)。

大きさは胴体部分で直径15cm程度で、あまり大きくはありません。

小ぶりなせいか、値段は・・・何と300円!! (驚)

一番太い脚の部分を割ってみました。

・・・ん? ・・・あれ? ・・・

身が・・・あるにはあるけど、太さが5mmくらい(泣)。

何とか、まともにつまっているのはカニ爪のところだけ。全部かきだして、思わず重さを測ってみたら、たったの10gです(悲)。

これでは300円で納得・・・というより300円でも高いやないかい!! (怒)

というわけで、「残念な」ズワイガニでした。


2023年5月12日金曜日

るろうに剣心 伝説の最期編 (2014)

前編は、志々雄の巨大軍艦「煉獄」から薫が突き落とされ、それを追いかけて剣心も海に飛び込みました。そして、薫の行方もわからぬまま、浜に打ち上げられた剣心を謎の人物が助け起こすところでエンド・ロールに突入という幕切れ。

さて、後編の「伝説の最期編」に突入します。剣心を助けたのは少年のころに剣術を教わった、剣心にとっては師匠にあたるる比古清十郎でした。清十郎を演じるのは、なんと福山雅治という豪華なキャスティングで、いよいよこの物語の登場人物がすべてそろいました。

逆刃刀・真打を手にしても、宗次郎にすら勝てないと感じる剣心は、清十郎に奥義を伝授して欲しいと願い出ます。清十郎は、「今の自分に足りない物が何かわかったら教える」と答えますが、剣心はそれが何か答えが見出せぬままに清十郎との真剣勝負に挑みます。剣心はその戦いの中で、「死にたくない。まだ、生きたい」という気持ちが今まで無かったことに気がつきます。そして、ついに奥義を伝授されるのでした。

志々雄は、東京に沖合に到着すると伊藤博文(小澤征悦)と会見。剣心を見せしめに斬首刑にしなければ政府を潰すと脅し、伊藤も了承し剣心を指名手配するのでした。京都から神谷道場に戻った剣心を、先に助けられていた薫らが出迎えますが、それも束の間警官隊が踏み込み剣心は捕縛されます。

伊藤や斎藤と面会した剣心は、志々雄に近づくことさえできれば勝機はあると訴え、煉獄が停泊している近くの浜で処刑される芝居をして、多くの警官隊と共に一気に煉獄に乗り込んでいくのでした。

と、まあ、当然のこと「主役は死なない」ということになるんですが、やはり第1作よりさらにパワーアップした出演者自身によるアクション・シーンは前後編を通して最大の見所です。武井咲の長刀を振り回すところは、さすがにちょっと残念感はありますが、特に神木隆之介の2度ある佐藤健との長めの殺陣シーンはなかなかたいしたもの。可愛い顔して、なかなか切れ味の有る動きを披露しています。

佐藤もワイヤーアクションを駆使して、人並外れたスピードの中で難易度高いアクションを次から次へとこなしているのはさすが。剣心が使うのは逆刃刀ですから、普通に斬っても相手を倒せないので、必然的には刀を叩きつけるように使いますので、より運動量も多くなると想像されます。

そして、本作でさすがの存在感を放っているのが、志々雄を演じる藤原竜也です。志々雄は全身包帯巻ですから、ほとんど目と口以外は表情はうかがい知れません。それでも、裏切られ死にかけたことによる政府への恨み、どんなものでも犠牲にできる復讐心を全身で演じています。

実際には、包帯の巻いたように見える全身ラバー・スーツを着用していて、暑くて動きにくいものだったようですが、見ていてそんなことは微塵も感じさせないくらいキレキレのアクションを見せてくれました。悪役の存在感無くしては、正義が引き立たない好例になっていると思います。

その他の悪役については、かなり端折っているのは、映画という制約の中ではいたしかたがないのかもしれません。来歴が一言だけ紹介されるのは、志々雄の愛人、駒形由美(高橋メアリジュン)と、十本刀と呼ばれる10人の手兵の集団の中の、瀬田宗次郎、佐渡島方治くらいで、それ以外はほとんど名前すらわかりません。一人一人のかなり濃厚なキャラ設定があるらしいので、映画での存在感の無さがもったいないというところもあります。

江戸から明治といういろいろな価値観がひっくり返る動乱期に、歴史上の実在の人物も少なからず絡めることで、こんな苦しみを背負った若者もいたかもしれないと思わせるところがうまい。暗い話で地味になりやすいところを、華々しいアクションと豪華なキャスティングで映画的に盛り上げている作品としては成功していると思います。

2023年5月11日木曜日

るろうに剣心 京都大火編 (2014)

「るろうに剣心」実写映画第2弾は、「 京都大火編」と「伝説の最期編」の前後編の2部作で、ストーリーとしては完全に続きもので、合わせて4時間半にも及ぶ大作です。

実際、封切りも京都大火編が2014年8月1日、伝説の最期編が同年9月13日で、一気に見ることができました。監督をはじめメインのスタッフ、キャストはほぼ変更無し。当然、撮影もぶっ続けで半年かかっています。

かつて「人斬り抜刀斎」として恐れられた幕府の刺客、緋村剣心(佐藤健)、そして、神谷流剣術道場の師範代、神谷薫(武井咲)、剣心と共に道場に居候するのは、医者の高荷恵(蒼井優)、怪力で喧嘩早い相楽左之助(青木崇高)、神谷流の少年門弟の明神弥彦(田中偉登から大八木凱斗にチェンジ)らが登場します。

少しずつ神谷道場にも門弟が戻り、静かな新しい明治の世の中になってきた矢先、元新選組で今は警察官の斎藤一(江口洋介)は、京都で不穏な動きを続ける志々雄真実(藤原竜也)を追っていましたが、逆に多くの部下を失いました。

志々雄は、維新派に腕を見込まれ剣心と同じように暗殺者となった人物。しかし、仲間の裏切りで斬られ焼かれたものの一命をとりとめ、明治政府への復讐だけのために次第に一大勢力を集めていました。

志々雄に手を焼いた大久保利通は旧知の剣心と面会し、志々雄討伐を依頼するのです。剣心が依頼の返事をする日、紀尾井町を通りかかった大久保を乗せた馬車を、志々雄の部下、瀬田宗次郎(神木隆之介)が遅い大久保を殺害します。自らの過去の清算を決意した剣心は、ついに京都に向け出立するのです。それを知った薫、左之助、弥彦も急いで後を追いかけます。

道中、元隠密御庭番衆(幕府の忍)の少女、巻町操(土屋太鳳)の案内で京都に向かう剣心を、志々雄は支配する村で剣心を待ち受けます。剣心は宗次郎との一騎打ちとなり、何と逆刃刀を折られてしまうのでした。京都に到着した剣心は、操らの隠れ家となっている料亭「葵屋」に匿われます。

御庭番衆の頭だったのは四乃森蒼紫(伊勢谷友介)ですが、蒼紫は幕府が倒れた際に、幕府の手によって仲間が抹殺されたことで修羅に堕ちて「人斬り抜刀斎」を倒すことだけが、死んだ仲間への手向けになるという妄執にかられ剣心を追いかけていました。

剣心は逆刃刀を作った名匠、新井赤空のもとに向かいますがすでに他界しており、息子の青空にも新たな剣を打つことを断られてしまいます。しかし、志々雄の部下、沢下条張(三浦涼介)が赤空の打った最後の名刀を手に入れようと襲ってきたため、青空は奉納し隠していた「逆刃刀・真打」を剣心に託します。

捕らえられた沢下条張から、志々雄が京都に火を放ち廃墟にする計画が明るみに出ます。剣心、斎藤、そして京都に到着した薫、左之助、弥彦、さらに操ら御庭番衆が待ち構える中、ついに志々雄一派が炎と共に京の町に突入してきて、激しい戦闘が開始されました。しかし、その中に志々雄本人や側近の部下がいないことから、剣心たちは志々雄の真の目的が東京であると気がつきます。

そして戦いの最中に、薫は宗次郎によて拉致され、それを追う剣心の前に現れたのは巨大な鋼鉄製軍艦「煉獄」でした。剣心は何とか乗り込むものの、志々雄のブレインである佐渡島方治(滝藤賢一)によって海に蹴り落された薫を助けるために荒れた海に海に飛び込むのでした。

そして、本編最後に大物の隠れキャラが登場して前編は終了します。誰なのかは、とっくに知られているのですが、「お~、やっとここで出たか」という感じ。前編は、各キャラクターの紹介みたいなところですが、うまく緩急、緊張と緩和を盛り込んでテンポよく話が進んでいくので、あまりだれるところはありません。後編への期待が高まりますね。

2023年5月10日水曜日

るろうに剣心 (2012)

このタイトルのコミックがあることは、だいぶ前から知っていました。ただ、基本的にあまりコミックには興味が無いし、しかも明治維新前後の話というので、あえて手に取ったことはありません。

ですから、あくまでも現代的なのアクション時代劇として、純粋に映画を楽しむことができました。監督は、この作品を皮切りに全5作品になったシリーズすべてを担当した大友啓史。

そもそもこのタイトルは一体どんな意味なの? って以前から思っていたのですが、映画を見て初めてわかりました。流れ者という意味の流浪人(るろうにん)の剣心という意味だったんですね。

幕末の時代、幕府に雇われた暗殺者として多くの人を切り殺し、「人斬り抜刀斎」として恐れられた緋村剣心(佐藤健)が主人公。幕府が倒れたことで、剣心は人を殺めることを止めます。代わりに手にしたのが、逆刃刀(さかばとう)でした。研がれているのが通常の逆側で、人を斬ることができず、刃が自分に向いているというもの。また、新選組に所属していた斎藤一(江口洋介)も、維新政府で警察官となっていました

明治となり、元武士たちは急に落ちぶれ、金を持つ商人たちが力を付けていきます。武田観柳(香川照之)は、医業を生業とする家系の高荷恵(蒼井優)に強力なアヘンを作らせ、武器商人として富を築いていました。

観柳が集めた用心棒の一人、鵜堂刃衛(吉川晃司)は、江戸で神谷流「人斬り抜刀斎」を名乗り人を殺し続けていました。警察は手配書を各所に配布して警戒に当たっていますが、剣心を知る斎藤は、この「人斬り抜刀斎」が偽物であること確信していました。

江戸の町で鵜堂を発見した神谷薫(武井咲)は、危うい所を江戸に流れてきた剣心に助けられます。薫は鵜堂が神谷流を名乗ったため、門弟が去ってしまった神谷流剣術道場の師範代で、剣心を道場に連れていき、神谷流は「剣は人を活かすもの」を信念としていると話します。

不要な仲間を簡単に殺してしまう観柳のやり方から逃げ出した高荷恵も、神谷流のたった一人になった少年門弟、明神弥彦(田中偉登)に助けられ道場に匿われます。また喧嘩自慢の相楽左之助(青木崇高)も、一度は剣心に挑むも「人を斬らない」剣心に感心し、行動を共にするようになり、いよいよ剣心の仲間たちが勢ぞろいしました。

観柳は武器の輸出入の港を作るため、神谷道場周囲の土地を手に入れようと画策。その非道なやり方に対して、ついに剣心と左之助は観柳の屋敷に乗り込んでいくのでした。

この映画・・・というか原作の魅力だと思いますが、単なる勧善懲悪で斬った張ったの時代劇で終わらないのが魅力のようです。剣心が何故人斬りになったのか、そして何故剣を置いたのかという主人公の心の動きが、時代の空気をからめてファンの共感をうまく呼び起こしている。

周囲の人々のキャラクター配置が、少なすぎず、多すぎずのバランスが絶妙です。原作コミックは、さすがにもっとも多くの人々が登場しているようですが、映画という限られた時間内に収めるために、脚本を作った藤井清美・大友啓史の整理整頓がうまいということでしょう。

アクションが最大の見所になっているのは間違いないのですが、それは主演の佐藤武をはじめ、ほとんどの俳優が今まで無いほどのスピードと激しさで殺陣を実演しているからです。ワイヤー・アクションを除けば、おそらくCGのような作り物はほとんど紛れ込んでいないように思えます。

あえてケチをつけるとしたら、本来最大の敵であるはずの鵜堂の存在が浮いてしまったところ。何しろ香川照之の観柳が、例によって強烈なキャラクターで演じられていますから、静かに燃える吉川晃司とのラスト・マッチは別ストーリーの展開のように見えなくもない。

それはともかく、第一作のヒットにより、シリーズはさらに大きく膨らんでいくわけで、剣心から目を離せないことは間違いありません。

2023年5月9日火曜日

セブンのおにぎり 4


またまた、セブンイレブンの新作おにぎりが登場しています。

今回は韓国グルメフェアということらしく、「かに味噌醤油まぜめし カンジャンケジャン仕立て」と「ごま油香る4種具材まぜめし チュモッパ」というめいめいがされている。

それだけではどんな味なのかよくわからない。

カンジャンは、古くからある韓国の醤油みたいなもの。ケジャンというのは、生のワタリガニを塩、漬け込みダレに漬けて熟成させたもの。

食べてみると・・・かに味噌ってこんな味だっけ? と思うのですが、まぁ、普通に食べれます。真ん中に、少し具材が入っているんですが、食べただけでは何だかよくわからない。裏のラベルの原材料を確認すると、「葱入りたらこマヨかに和え」というものらしい。

チュモッパは伝統的な家庭料理で、漬物や野菜、韓国のりなどの具材を混ぜ合わせた一口サイズのおにぎりで、韓国のりの風味と酸味が特徴。

混ざっている具材は、大根塩漬、カツオ油水煮、ごま、海苔の4つということらしい。食べてみると・・・これも普通に食べれます。ごまの風味はかなり強めで、ごま以外の味は感じられません。具材の食感の違いはよくわからない。

・・・と、まぁ、本場の味を知らないので、おにぎりしたことの良し悪しがわからないのですが、おにぎりとしては美味しいことは否定しませんが、あえてこれを食べたいかと聞かれると・・・というところでしょうか。



2023年5月8日月曜日

ミュージアム (2016)

監督は、「るろうに剣心」シリーズの大友啓史。TV出身ですが、珍しいことに在籍していたのはNHKで、代表作「ハゲタカ(2007)」で一躍脚光を浴びる存在になります。大河ドラマ「龍馬伝」 でもメインの演出家として活躍し、2011年にNHKを退職。

2012年の「るろうに剣心」を皮切りに同シリーズのすべてを手掛けたほか、「ブラチナ・データ(2013)」、「三月のライオン(2017)」などの話題作を監督し、最新作は木村拓哉・綾瀬はるかのW主演「Legend & Butterfly (2023)」です。

この映画は、原作は巴亮介によるコミックですが、連続猟奇殺人事件を扱ったサスペンス・ホラーで、同系統のデヴィッド・フィンチャー監督の「セブン(1995)」をかなり意識した作品だろうと思います。

「セブン」は、キリスト教における7つの大罪をモチーフにして、キリスト教圏の人々には潜在的に理解できるある種の背徳感を好みに扱っていました。しかし、形骸化した側面に強い仏教国である日本では、同じようなモチーフはなかなか見つけにくい。

そのため、ここでは連続殺人を犯す犯人の動機は、一個人の歪んだ美意識となった点が映画の弱点となったことは否めない。そのかわり、犯人を追う刑事の側に、犯人と共鳴する「父と息子」の関係性の葛藤を強く盛り込んで、映画としての深みを作り出そうとしているようです。

生きたまま猛犬にかみ殺された女性、たくさんの針を口に詰め込まれて殺された男性、殺されて体を盾に半分にされた男性・・・いずれも、遺体を見せびらかすように公開していく異様な手口が続きます。映画の早い段階で、犯人はカエルの仮装した男であることが示されます。

立て続けに起こる異様な連続殺人事件を追うのは沢村刑事(小栗旬)で、つい先ごろ家庭を顧みない夫に愛想をつかした妻(尾野真千子)が息子を連れて家を出てしまったばかりでした。

立て続けに起こる殺人事件の被害者は、しだいにある裁判の裁判官と裁判員であったことがわかってきます。沢村の妻もその事件で裁判員を務めていたため、沢村は行方を捜しますが、時すでに遅く妻子は犯人に拉致された後でした。

何故、カエル男は雨の日にばかり姿を現すのか。沢村は、犯人か陽の光を浴びることが出来ない日光過敏症であると推理し、病院を探し回り、ついに容疑者と思われる人物を特定して乗り込むのでした。

最後までカエル男は異様なメーキャップと奇怪な声のせいで、演じているのが誰かわかりません。エンドロールで、最後に登場する名前を見て驚くことは間違いない(とはいえ、とっくに知れ渡っているとは思います)。

ホラーよりもサスペンス調の方が強めではありますが、猟奇的な殺戮シーンはかなり目を覆いたくなるところがあるので、鑑賞する方は要注意です。

2023年5月7日日曜日

映画 HERO (2015)

2014年夏、伝説のドラマ「HERO」が帰ってきました。もちろん主役は久利生公平を演じる木村拓哉。事件の大小に関わらず、真実をとことん知る努力を惜しまない型破りな検事を再演しました。

実に愉快な仲間たちのうち検事は前作から刷新され、東京地検城西支部刑事部長は川尻(松重豊)、検事は田村(杉本哲太)、宇野(濱田岳)、馬場(吉田羊)です。事務官は前作から続投の遠藤(八嶋智人)、末次(小日向文世)、そして警備員から転身した井戸(正名僕蔵)です。

久利生の理解者だった、東京地検次席検事の鍋島を演じた児玉清が亡くなったため、牛丸(角野卓造)が次席として転出しています。ちなみに、田村と馬場は過去に恋愛関係にありましたが、出世のため田村は牛丸の娘と結婚したという設定。ちなみにちなみに、牛丸の娘は(写真出演だけですが)近藤春奈という笑わずにはいられないキャスティング。

前シリーズで、いいところまで行ったはずの久利生と事務官の雨宮舞子(松たか子)でしたが、久利生の転勤、雨宮が司法試験に合格し検事になったことで・・・で、今回の久利生の担当事務官は北川景子が演じる麻木千佳です。ドラマの最初では、かなり自信たっぷりの「できる子」キャラで、鋭い眼力に久利生もちょっと引いていました。

そんなメンバーで、翌年公開の映画版第2作が作られました。監督は前作に続いて鈴木雅之。ここで、ちょっと混乱するのは2つの映画版のタイトルがどちらも同じというところ。副題が付いていないのでわかりにくい。まぁ、どうでもいいんですけどね。

さて第2弾のポイントは治外法権の外交官特権を持つ他国の外交官の犯罪を暴くというもの。現実的に手が出せないところなので、あくまでも映画と割り切ってみるしかありません。実在の国名を使うわけにはいかないので、架空のネウストリア公国が設定されていて、雰囲気としてはヨーロッパのどこか。

ネウストリア公国との貿易交渉の真っ只中で、久利生の動きにぴりぴりする外務省欧州局長、松葉を演じるのは佐藤浩市。そして、久利生の事件と関係が判明したため大阪から出張してくる大阪地検難波支部の検事が・・・雨宮です。

過去に久利生に振り回されつつ、しだいに検察の仕事を理解して成長するという点で雨宮と麻木は共通点があり、麻木は検事になれた雨宮に憧れ慕います。麻木は、テレビの時よりも、かなり丸くなっている。雨宮には結婚を申し込まれた男性がいますが、やはり久利生のことが頭から離れない・・・と言って進展もしない。

大使館に踏み込むことができない久利生たちは、周囲から少しずつ事実を明らかにしていきますが、今回の映画の最大の弱点はやはり自分たちの手で犯罪者を起訴するという、検事としての完結が出来ないところ。設定を大きくしたけど、大きすぎる設定に振り回された感があります。

そこで、全てが終わった・・・はずですが、久利生と麻木は直接犯人に話を聞きたくて、わざわざ休暇を取ってネウストリア公国にいってしまうというシーンで映画が終わります。この最後のシーンは感心しました。

店の中で会話する二人が店から出るところをカメラは後ずさりしてとらえていきますが、そのまま店の前の路地が写り、さらに空撮の俯瞰へ移動していくというまさに映画ならではのショットです。おそらく店の外からズーム・アウトし、クレーン撮影、ドローン撮影にシームレスに連結させているのでしょうが、風景がはっきりするにつれ明らかに日本ではないことがわかる仕掛けです。このシーンのためだけにフランス・ロケを行なったというから驚きです。

それにしても、ジャニーズの肖像権管理の厳しさは度を越している。「HERO」シリーズは当然DVDやBlurayのジャケットに木村拓哉が写っているので、Amazonでリンクを張ることができない。文字だけのリンクも不可という厳しさ。メディアに露出してこそのタレントですから、もう「古い」作品なのでこういうところから改革しないと・・・

2023年5月6日土曜日

映画 HERO (2007)

木村拓哉が演じる、大ヒットキャラクター、真実を知るためにとことん調べ上げる型破りな検事、久利生公平が活躍する「HERO」の初めての映画版。

2001年のテレビ・ドラマから5年、2006年7月にテレビで放映された単発のスペシャル・ドラマに続いて翌年9月に劇場公開され、この年の邦画興行収入でぶっちぎりの第一位を獲得しています。

スペシャルでは、久利生は山口県の虹ヶ浦支部から東京の城西支部に戻され、懐かしのメンバーと再会して終わっていました。城西支部の刑事部長の牛丸(角野卓造)以下、検事は芝山貢(阿部寛)、中村美鈴(大塚寧々)、江上達夫(勝村政信)、そして事務官には末次隆之(小日向文世)、遠藤賢司(八嶋智人)、そして雨宮舞子(松たか子)が、ドラマの時を彷彿とさせる絶妙な駆け引きで楽しませてくれます。

今回は、久利生が公判検事を担当した裁判で、当初自供していた単純な傷害致死事件と思われていた犯人が、供述を翻し事件の時のアリバイを主張するのです。そして、そのアリバイの証人となるのが、何と贈収賄事件の渦中にいる代議士の花岡練三郎だったのです。

スペシャルで、虹ヶ浦で久利生が担当したのは、花岡の罠によって引き起こされた事件でした。スペシャルと映画の間に事件の共通性は無いので、両者には少なからず因縁があるということだけ知っていれば問題はありません。

花岡は贈収賄の現場にいなかったアリバイとして、久利生の事件の犯人を証人としていたため、彼が犯人となることを防ぐ必要が生じ、凄腕の蒲生弁護士を付けることにします。演じるのは、当時は松本幸四郎だった、現在の松本白鷗、つまり松たか子のお父さん。

久利生と雨宮は韓国にまで渡り、韓国のカン検事(イ・ビョンホン)の助けで証拠の一つを探し出します。しかし、蒲生は「われわれは無罪を証明する必要はなく、有罪を証明するのは検事の義務だ」と久利生にせまり、検察側の主張を崩していくのです。

久利生は最後の切り札として、犯人のアリバイの証人である花岡代議士を証人として申請します。花岡を演じるのは木村拓哉が直々にオファーした森田一義(タモリ)というから、これも公開時ものすごく話題になりました。

検察の東京地検特捜部の黛(香川照之)らや、多数の報道陣が見守る中、いよいよ裁判が始まり、花岡が証人として出廷してくるのです。その頃、城西支部のメンバーは、必死に最後の証拠を探して街を走り回っていたのです。

もちろん、この映画版の最大の見所は、この裁判シーン。くだらない裁判と言い放つ花岡に、久利生は新聞でたったの数行の事件でも、どれだけの人が関わり、そして事件で亡くなった被害者の「命の重さを知るための裁判」であることを熱弁するのです。

さすがに映画版ともなると、出演者も豪華ですが、海外ロケも行われスケールアップした展開は大変楽しめる。スペシャルからは中井貴一と綾瀬はるかが、少しだけ登場するのも嬉しいポイント。例によって、レギュラーのコントめいたおふざけはやややりすぎという感じも無いわけではありませんが、久利生と雨宮の関係にも一定の答えが出たところも安心します。

2023年5月5日金曜日

HERO 特別編 (2006)

2001年に1月からのクールで放映された連続ドラマの「HERO」は、木村拓哉の代表作の一つと言える大ヒット作でした。すぐさま続編が期待されたのですが、イメージが固まることを嫌った木村拓哉がなかなかウンと言わなかったらしく、ついに第2弾が登場したのは5年たってからのことでした。

「特別編」と題して、2時間半枠のスペシャル・ドラマとして復活。しかも、これは翌年公開された映画版への伏線となっていました。もちろん、単独でそれぞれを楽しめるようにもうまく作られているのには感心しました。

木村拓哉が演じるのは、事件の大小に関わらずとことこ真実を追求する型破りな検事、久利生公平で、ドラマ版での東京の検察庁城西支部から北海道、石垣島と渡り歩いて、山口県の虹ヶ浦支部に転勤してくるところから始まります。

虹ヶ浦支部の検事は東京と大事件担当に憧れる新米の泉谷りり子と支部長の西山吾一の二人。事務官は小森拓郎、村上健太郎、津軽保の三人。木村と絡む準主役は津軽を演じる堤真一と泉谷を演じる綾瀬はるか。そして犯人役で木村の取り調べを受けるのが、虹ヶ浦を支える鴨井産業専務で町の人々から絶大な信頼を寄せられている専務の滝田明彦で、演じるのは中井貴一です。

滝田が町にやってきたフリー・ジャーナリストを刺殺したことから、何故、誰からも尊敬される滝田が人を殺してしまったのか。彼が何を守ろうとしていたのか。久利生の小さな疑念ももらさず調査し真実を知ろうとする態度を見て、津軽は次第に心を開き、泉谷も検事として成長していきます。

滝田が調べつくされた事実を前に、ついに本当の動機を話し出すくだりは、20分ほどの長いシーンで、ほとんどカットがない長回しで、中井貴一の俳優としての見せ場です。そもそも殺されたジャーナリストが町に来たのは国会議員、花岡の描いたレールに乗っかってしまったからで、花岡は鴨井産業を潰して、町を思い通りに再開発しようとしているらしい。久利生と花岡の対決は映画版で描かれます。

個人的には、この後、「プリンセス・トヨトミ」で再び共演する中井・堤・綾瀬の三人が注目です。綾瀬はここまで連続ドラマの主役はありませんが、この作品後からドラマでも映画でも単独で主役として活躍するようになります。おそらく、一つの契機になったドラマと言えそうです。

残念なのはいまだにDVDしか発売されていないこと。せっかくの美しい海のシーンが多いのですが、やや露出オーバー気味で色が飛んでしまい、屋外シーンがイマイチな所。このあたりはリマスターしてほしいのですが、ドラマなのでそこまでは期待できないですかね。

2023年5月4日木曜日

大怪獣ガメラ (1965)

映画で活躍する怪獣と言えば、東宝のゴジラ、大映のガメラ。先行したゴジラにどうしても人気が行ってしまい、ガメラはリアルタイムにも二匹目のどじょうという扱われ方をされることが多い。

そもそも見た目が亀ですから、ゴジラと比べて存在そのものがジョークという感じ。ところが、何故か自分がこどもの時、映画館に連れて行って見せてもらえたのはガメラ。東宝より大映の映画館の方が、少しだけ家から近かったせいなのかもしれません。

実際に映画館で見たのは、人気となったギャオスが登場した後、バイラス、ギロンあたりが記憶に残っていて、ガメラもどちらかというと人類の味方という扱いで。

第1作は1965年、昭和40年、東京オリンピックの翌年に公開されたもので、白黒映画です。監督は湯浅憲明で、昭和ガメラ・シリーズは全部を手がています。テレビでは「東京警備指令 ザ・ガートマン」、「おくさまは18歳」、「刑事犬カール」、コメットさん」など多くのヒット作の演出をしました。

南太平洋で水爆実験によって登場するゴジラを意識してか、ガメラは北極の氷の中に閉ざされていたアトランティス大陸にいたガメラが、墜落した国籍不明機の核爆弾によって覚醒するという設定。

一般にはアトランティス大陸は大西洋、スペインとアメリカの間くらいにあったと考えられているので、何で北極? という感じだし、そもそも国籍不明機って何? みたいな突っ込み所は出だしから満載です。

ガメラに襲われた船が、SOSのモールス信号を発信するんですが、「SOS 60メートルの亀が現れた」というのですから、様にならない。それから日本に上陸して、いきなり亀好きの少年を助ける・・って、少年の危険の原因はガメラなんですけどね。

ガメラを追跡する動物学者に船越英二、助手に霧立はるみ、新聞社カメラマンに山下洵一郎。彼らの出たとこ勝負のアイデアを自衛隊が鵜呑みにして、ついに軍事機密(!)の冷凍爆弾を使ってガメラを裏返しにすることに成功しますが、飛んで消えてしまいました。

石油コンビナートに居座って火力のエネルギーを補給するガメラ。今度は伊豆大島に誘導し、火星探査用ロケットに乗せて宇宙にとばしてしまおうというZ計画を発動します。

と、まぁ、この頃の映画を正面切って理屈を言うのも野暮というもの。ガメラを殺さず、人類が勝利するという結末も、今後のシリーズ化を狙ってのことでしょうからよしとしましょう。特撮は大映の築地米三郎という人。監督らは事前準備で東宝に出向いて、特撮の神様と呼ばれる円谷英二のスタッフからいろいろ教わったらしい。

ちょっと気になったのは、原子爆弾に神経質なはずの日本人なのに、きっかけの事故はいいちとしても、ガメラを倒すために安易にアメリカに原爆発射を依頼するところ。ガメラが火力エネルギーで力を得ることに気がついて直前で中止したからいいようなものの、このあたりはいかがなものかと言いたくなります。

2023年5月3日水曜日

Konrad Junghanel / Schutz Symphoniae Sacrae (2005)

ドイツでバロック初期の代表的な作曲家として思いつくのが、ハインリヒ・シュツだと思います。1585年生まれですから、イタリアのモンテヴェルディよりも18歳ほど若い。

当然、この頃の音楽は「=教会」ですから、少年シュッツも教会で歌うことから音楽に関わり、オルガンや作曲を学ぶ一方で法律の勉強もしたようです。

24歳でイタリアでジョバンニ・ガブリエルに師事してオルガン演奏を磨きます。その後ドイツに戻り、ドレスデン宮廷楽団の楽長として活躍します。

三十年戦争(1618-1648)の半ばには、再びイタリアに渡り、モンテヴェルディからも音楽理論を吸収した後に、作曲活動も活発になり多くの受難曲を作り上げ。1672年に亡くなっています。

現在簡単に入手できる音源は、基本的に器楽曲はありません。ほとんどが多声声楽曲で、楽器による伴奏が伴うものはあまりありません。伴奏は、管楽器も含む華やかなイタリア的な物が多いような印象です。

特に重要なものは、ルカ受難曲(1653年頃)、ヨハネ受難曲(1665~66年)、マタイ受難曲(1666年)です。受難曲(passion)は聖書の記述を基にしたキリストの生涯を歌に託したもので、もちろんJ.S.バッハによる「マタイ受難曲」、「ヨハネ受難曲」が最も有名ですが、他の多くの音楽家がそれぞれに作っています。

シュッツの受難曲は、器楽伴奏が無い純粋な声楽曲で、キリストの物語をメロディに乗せ歌い上げ、時折合唱が混ざるというもの。ドイツ語がヒアリングできて理解できるなら、かなり楽しめると思いますが、正直に言うとそれができない自分としてはかなり聞いていて辛い所があります。

最初に、これらをまとめたArs Novaの歌唱によるボックスCDを買ったのですが、そうそう何度も聞き返すのは難しい。

そこでお勧めは、器楽伴奏が伴う「シンフォニアサクラ」です。意味は「神聖な交響曲」ということですが、J.S.バッハの曲でも一定の評価を得ているコンラート・ユンゲヘーネルが率いるカントゥス・ケルン&コンチェルト・パラティノの演奏。

「シンフォニアサクラ」は第3集までありますが、これは1650年に作曲された第3集です。国土を荒廃させ人口の1/3近くを失った三十年戦争が終わり、おそらくシュッツは国の再生のために神の力を借りて音楽で人々を勇気づけようと考えたのかもしれません。

2023年5月2日火曜日

自宅居酒屋 #67 チヂミ


チヂミも韓国料理の定番の一つ。わからない人に説明する時は、生地多めのキャベツの入っていないお好み焼きと言うとイメージは伝わりやすい。

作り方はそれほど難しくないのですが、生地の作り方はいろいろあって、どれが正解なのか迷います。

小麦粉だけ、小麦粉+片栗粉、小麦粉+片栗粉+卵など、いろいろ。基本的に外側がカリっと焼き上がり、中はもっちりとさせたい。

うちのレシピは、近くにあった韓国の方が経営していた韓国料理の店で教えてもらった、一応「本場の作り方」と言えそうなものです。

基本は小麦と片栗粉は1:1の比率で混ぜますが、ここでポイントは片栗粉の半分はじゃがいもをすりおろして使うところ。重さできっちり合わせるのは難しいので、見た目の量として同じくらいでかまいません。

塩を少々加えることをお忘れなく。辛くていいなら、キムチをいれるのもあり。

今回は海鮮チヂミなので、野菜は無し。イカゲソ、ムキエビ、アサリ、ホタテ貝柱などを5mm大に刻んで混ぜ合わせます。まぁ、それぞれを用意するのは大変なので、冷凍シーフードでだいたい間に合います。

これらから水分がけっこう出ますので、生地を混ぜる時に加える水の量に注意が必要。ゆっくり崩れる団子状くらいに捏ねておく感じ。具材を加えたらフライパンに油をひいて、できるだけ薄く延ばして両面を5分程度焼けば出来上がり。

まさに外カリ中モチ。めちゃめちゃ美味しいです。おっと、忘れてはならないのがタレ。これもお手軽に、焼き肉のたれにお酢とコチュジャンを少々加えればOKです。

2023年5月1日月曜日

自宅居酒屋 #66 チャプチェ


韓国料理の定番の一つがチャプチェ。

主役は春雨。簡単ですが、ちょっとだけこだわるのは、韓国の本場の春雨を使いたいというところ。

韓国の春雨は、日本の物に比べて太目でしっかりしています。日本の物を使うと汁を吸い過ぎてしまい、てろてろになってしまいます。

入れる野菜は何でもいいので、冷蔵庫に余っている炒められる野菜を一気に消費するチャンスです。

本当はニラがあると良かったんですが、今回はありません。ピーマン、ニンジン、椎茸、玉ネギ、長ネギ、もやし・・・どれも、半分使い残していたものばかり。

新たに買い足したのは豚肉くらいです。鶏肉はいつも冷蔵庫にあるんですが、豚肉はめったに買わなくなったので、うちでは珍しい食材です。

さて味付けはどうするの? 簡単です。焼肉のたれをつかいます。普通の味のものなら何でも構いません。これも冷蔵庫に余っていることが多いと思います。

後はお好みで、コチュジャンとか、唐辛子とか入れましょう。ゴマを振れば完璧です。

野菜から水が出るので、味を付ける前に水分を捨てておいた方がすっきり食べれます。