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2023年5月10日水曜日

るろうに剣心 (2012)

このタイトルのコミックがあることは、だいぶ前から知っていました。ただ、基本的にあまりコミックには興味が無いし、しかも明治維新前後の話というので、あえて手に取ったことはありません。

ですから、あくまでも現代的なのアクション時代劇として、純粋に映画を楽しむことができました。監督は、この作品を皮切りに全5作品になったシリーズすべてを担当した大友啓史。

そもそもこのタイトルは一体どんな意味なの? って以前から思っていたのですが、映画を見て初めてわかりました。流れ者という意味の流浪人(るろうにん)の剣心という意味だったんですね。

幕末の時代、幕府に雇われた暗殺者として多くの人を切り殺し、「人斬り抜刀斎」として恐れられた緋村剣心(佐藤健)が主人公。幕府が倒れたことで、剣心は人を殺めることを止めます。代わりに手にしたのが、逆刃刀(さかばとう)でした。研がれているのが通常の逆側で、人を斬ることができず、刃が自分に向いているというもの。また、新選組に所属していた斎藤一(江口洋介)も、維新政府で警察官となっていました

明治となり、元武士たちは急に落ちぶれ、金を持つ商人たちが力を付けていきます。武田観柳(香川照之)は、医業を生業とする家系の高荷恵(蒼井優)に強力なアヘンを作らせ、武器商人として富を築いていました。

観柳が集めた用心棒の一人、鵜堂刃衛(吉川晃司)は、江戸で神谷流「人斬り抜刀斎」を名乗り人を殺し続けていました。警察は手配書を各所に配布して警戒に当たっていますが、剣心を知る斎藤は、この「人斬り抜刀斎」が偽物であること確信していました。

江戸の町で鵜堂を発見した神谷薫(武井咲)は、危うい所を江戸に流れてきた剣心に助けられます。薫は鵜堂が神谷流を名乗ったため、門弟が去ってしまった神谷流剣術道場の師範代で、剣心を道場に連れていき、神谷流は「剣は人を活かすもの」を信念としていると話します。

不要な仲間を簡単に殺してしまう観柳のやり方から逃げ出した高荷恵も、神谷流のたった一人になった少年門弟、明神弥彦(田中偉登)に助けられ道場に匿われます。また喧嘩自慢の相楽左之助(青木崇高)も、一度は剣心に挑むも「人を斬らない」剣心に感心し、行動を共にするようになり、いよいよ剣心の仲間たちが勢ぞろいしました。

観柳は武器の輸出入の港を作るため、神谷道場周囲の土地を手に入れようと画策。その非道なやり方に対して、ついに剣心と左之助は観柳の屋敷に乗り込んでいくのでした。

この映画・・・というか原作の魅力だと思いますが、単なる勧善懲悪で斬った張ったの時代劇で終わらないのが魅力のようです。剣心が何故人斬りになったのか、そして何故剣を置いたのかという主人公の心の動きが、時代の空気をからめてファンの共感をうまく呼び起こしている。

周囲の人々のキャラクター配置が、少なすぎず、多すぎずのバランスが絶妙です。原作コミックは、さすがにもっとも多くの人々が登場しているようですが、映画という限られた時間内に収めるために、脚本を作った藤井清美・大友啓史の整理整頓がうまいということでしょう。

アクションが最大の見所になっているのは間違いないのですが、それは主演の佐藤武をはじめ、ほとんどの俳優が今まで無いほどのスピードと激しさで殺陣を実演しているからです。ワイヤー・アクションを除けば、おそらくCGのような作り物はほとんど紛れ込んでいないように思えます。

あえてケチをつけるとしたら、本来最大の敵であるはずの鵜堂の存在が浮いてしまったところ。何しろ香川照之の観柳が、例によって強烈なキャラクターで演じられていますから、静かに燃える吉川晃司とのラスト・マッチは別ストーリーの展開のように見えなくもない。

それはともかく、第一作のヒットにより、シリーズはさらに大きく膨らんでいくわけで、剣心から目を離せないことは間違いありません。