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2023年5月3日水曜日

Konrad Junghanel / Schutz Symphoniae Sacrae (2005)

ドイツでバロック初期の代表的な作曲家として思いつくのが、ハインリヒ・シュツだと思います。1585年生まれですから、イタリアのモンテヴェルディよりも18歳ほど若い。

当然、この頃の音楽は「=教会」ですから、少年シュッツも教会で歌うことから音楽に関わり、オルガンや作曲を学ぶ一方で法律の勉強もしたようです。

24歳でイタリアでジョバンニ・ガブリエルに師事してオルガン演奏を磨きます。その後ドイツに戻り、ドレスデン宮廷楽団の楽長として活躍します。

三十年戦争(1618-1648)の半ばには、再びイタリアに渡り、モンテヴェルディからも音楽理論を吸収した後に、作曲活動も活発になり多くの受難曲を作り上げ。1672年に亡くなっています。

現在簡単に入手できる音源は、基本的に器楽曲はありません。ほとんどが多声声楽曲で、楽器による伴奏が伴うものはあまりありません。伴奏は、管楽器も含む華やかなイタリア的な物が多いような印象です。

特に重要なものは、ルカ受難曲(1653年頃)、ヨハネ受難曲(1665~66年)、マタイ受難曲(1666年)です。受難曲(passion)は聖書の記述を基にしたキリストの生涯を歌に託したもので、もちろんJ.S.バッハによる「マタイ受難曲」、「ヨハネ受難曲」が最も有名ですが、他の多くの音楽家がそれぞれに作っています。

シュッツの受難曲は、器楽伴奏が無い純粋な声楽曲で、キリストの物語をメロディに乗せ歌い上げ、時折合唱が混ざるというもの。ドイツ語がヒアリングできて理解できるなら、かなり楽しめると思いますが、正直に言うとそれができない自分としてはかなり聞いていて辛い所があります。

最初に、これらをまとめたArs Novaの歌唱によるボックスCDを買ったのですが、そうそう何度も聞き返すのは難しい。

そこでお勧めは、器楽伴奏が伴う「シンフォニアサクラ」です。意味は「神聖な交響曲」ということですが、J.S.バッハの曲でも一定の評価を得ているコンラート・ユンゲヘーネルが率いるカントゥス・ケルン&コンチェルト・パラティノの演奏。

「シンフォニアサクラ」は第3集までありますが、これは1650年に作曲された第3集です。国土を荒廃させ人口の1/3近くを失った三十年戦争が終わり、おそらくシュッツは国の再生のために神の力を借りて音楽で人々を勇気づけようと考えたのかもしれません。