この「空母いぶき」も、作者の得意な世界的危機を扱った壮大なストーリーなんですが、実はまったく原作を読んでいないので、そもそも135分の映画にまとめ上げるのは無理があるでしょうし、原作を知る人からは物足りないという意見も出るかもしれません。
ただ、原作を知らない強みは、限られた時間で起承転結を無理なく進め、説明に頼り過ぎずに映像として説得力のある展開さえあれば、映画としての合格点を与えられるというところです。
ネットのいろいろの批評をみると、あまりに現実の自衛隊の装備と違うとか、戦い方にも疑問があるとか、政府の対応がお粗末すぎるとか・・・まあ、罵詈雑言の嵐みたいなところがあるんですが、そもそも原作は架空の世界の漫画ですから。
あまり、そのあたりに目くじらを立てていたら、ノンフィクション風のフィクションは成立しません。某テレビ局の「ドクターなんちゃら」とかいう医療ドラマも大うけして、何度も何度も登場しますが、自分に言わせれば、あまりにも荒唐無稽で嘘過ぎてあきれてしまいます。
監督はテレビで人気ドラマをたくさん生み出した若松節朗で、「ホワイト・アウト」、「沈まぬ太陽」、近作では「Fukushima 50」があります。
日本の専守防衛という観点から、艦載機を持つ空母いぶきの就航は、積極的な攻撃型戦艦として議論を呼びました。しかし、東亜連邦(架空の太平洋の国)が日本の領土である離島を占拠し、自国旗を立てたところから物語が始まります。
近くで訓練航海をしていた第5護衛隊群に出動し、捕縛された海上保安庁職員の救出が命じられました。中心にあるのが空母いぶきで、護衛艦3隻、潜水艦1隻が向かいます。いぶきの艦長、秋山(西島秀俊)は航空自衛隊出身で、副長の新波(佐々木蔵之介)とは防衛大学の同期。
しかし、人命尊重、防衛に専念するという考え方の新波に対し、秋山は必要ならば先制攻撃も辞さず、また相手に死者が出ることも仕方がないとし対立します。新波はいまだかつて自衛隊員に死者が出ていないことを誇りますが、秋山は誇るべきは国民に戦死者が出ていないことだというのです。
しかし、第5護衛隊群が目的地に接近するにしたがって、敵の波状攻撃は激しさを増し護衛艦1隻と潜水艦を失い、ついに戦闘機の出撃し空中戦まで行わざるをえない状況となるのでした。内閣総理大臣、垂水(佐藤浩市)は国連に働きかけ各国の協力を得ようと努力しますが、自衛隊に死傷者が出る事態についに全自衛隊への「防衛出動」を命じるのでした。
そもそも東亜連邦って・・・原作は中国が尖閣列島に上陸となっているらしいのですが、太平洋上の新興国が、戦闘機60機を搭載可能な大型空母を擁して進攻してくるという設定は、中国への配慮(?)とは言え、あまりにリアリティが(映画だとしても)無さ過ぎ。
映画としての出来は・・・何となく言いたいことはわかるんですが、無駄なシーンがあり、必要な場面が足りない印象はぬぐえません。一番よくわからないのは、中井貴一演じるコンビニの店長。途中何度も出てくるんですが、戦争一歩手前の緊張感と、国民の温度差を表したいのかなと思いますが、正直ワンクールのドラマなら許せますが映画では不要。
それより、国際問題に発展しかねない大事件ですから、政府の状況をもっとしっかり描いてもらいたいものだと思いますし、前半では総理大臣のどうしたものか迷いまくっている様子がちょっと寂しい感じ。
戦闘シーンのCGがやや安っぽいのはしょうがないとして、最大の問題はラストの解決。えっ、これで終わるのみたいなところで、映画オリジナルの〆らしいのですが、いくら何でも
そんなに簡単に終わるわけないだろうと・・・
結局、原作を読んでいない物にとっても、何かモヤモヤが残る映画かなという結論になってしまいました。おそらく原作を知っていたら怒りまくっているのかもしれません。
結局、原作を読んでいない物にとっても、何かモヤモヤが残る映画かなという結論になってしまいました。おそらく原作を知っていたら怒りまくっているのかもしれません。