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2023年5月27日土曜日

ローレライ (2005)

「亡国のイージス」の福井晴敏原作の戦記物が、同じ年にもう一つ映画化されました。こちらは終戦間際の時代に出撃した潜水艦が主役。


こちらは時代設定以外は完全なフィクション。監督は平成「ガメラ」の特撮をはじめとして、「シン・ゴジラ」、「シン・ウルトラマン」、「進撃の巨人」などの監督をした人。制作は亀山千広、庵野秀明、押井守、他現代のアニメ映画で活躍する多くの人材が協力しました(富野由悠季は出演までしてます)。

広島に原爆が投下され、敗戦が濃厚になった時、海軍大佐、朝倉(堤真一)は、絹見少佐(役所広司)を呼び出し、ドイツから譲られた潜水艦「伊五〇七」で第二の原爆投下を阻止するために独断で出航させます。

副長は信頼する木崎(柳葉敏郎)でしたが、急場で不足する乗員の中、絹見の知らないところで特攻兵器である回天の操縦士、折笠(妻夫木聡)、清水(佐藤隆太)らも乗船していました。艦には驚異的な索敵能力を持った新兵器ローレライが搭載され、その秘密を知る朝倉直属の軍属技師、高須(石黒その賢)も乗船していました。

回天操縦士が乗り込んでいたのは本線から離れてローレライの目の役割をするためでした。アメリカ軍駆逐艦に遭遇した伊五〇七は、ローレライを起動し正確な攻撃で敵に大打撃を与えることに成功します。折笠は、そこでローレライの中枢がドイツ軍の生体実験により感覚増幅能力を持った少女、パウラ(香椎由宇)であることに驚きます。ローレライの使用はパウラに、多大な精神的負荷をかけるものでした。

しかし、長崎への第二の原爆投下が行われたところで、高須らが謀反を起こします。朝倉はローレライをアメリカに引き渡し、日本軍の高官たちを排除することが目的でした。しかし、折笠が活躍で何とか制圧します。

さらなる第三の原爆が東京に落とされることを知った絹見は、搭載機の出発する島の飛行場の破壊を目指してさらに前進するのです。

この映画の評価は、ほぼアニメと言って良い荒唐無稽な戦争アクションを是とするか、あくまでもリアリティにこだわって非とするかで分かれます。潜水艦との戦い、駆逐艦と戦い、飛行機を対空砲で仕留めたりとやりたい放題ですが、邦画としては初期のCGが大活躍で、それなりに迫力があって見所になっています。

潜水艦を舞台にしたリアリティ重視の映画なら「Uボート(1981)」という名作があり、それから四半世紀立っている今作でも到底越えられるものではありません。基本的に史実の時系列だけは参考にしても、内容はまったくのフィクションですから、どのちみリアリティを求める方が無粋というものかと思います。そもそも秘密兵器が少女の超能力ですからね。

そういう意味でも、第二次世界大戦末期の雰囲気だけ使ったアニメ風SF架空戦記アクションと思えば、なかなか良く出来ている。それも、結局のところはさすがの名優たちの演技によるものが大きいようです。本当に役所広司は何をやっても様になるのは素晴らしいし、柳葉、石黒、國村隼、小野武彦、鶴見慎吾、伊武雅刀らの脇役がしっかりしている。

ちなみに、無線で絹見に反乱を断られた朝倉がいう「残念だよ」は、後の「SP野望編」の最期の台詞と同じ感じなので、ちょっと愉快になってしまいました。