2023年5月7日日曜日

映画 HERO (2015)

2014年夏、伝説のドラマ「HERO」が帰ってきました。もちろん主役は久利生公平を演じる木村拓哉。事件の大小に関わらず、真実をとことん知る努力を惜しまない型破りな検事を再演しました。

実に愉快な仲間たちのうち検事は前作から刷新され、東京地検城西支部刑事部長は川尻(松重豊)、検事は田村(杉本哲太)、宇野(濱田岳)、馬場(吉田羊)です。事務官は前作から続投の遠藤(八嶋智人)、末次(小日向文世)、そして警備員から転身した井戸(正名僕蔵)です。

久利生の理解者だった、東京地検次席検事の鍋島を演じた児玉清が亡くなったため、牛丸(角野卓造)が次席として転出しています。ちなみに、田村と馬場は過去に恋愛関係にありましたが、出世のため田村は牛丸の娘と結婚したという設定。ちなみにちなみに、牛丸の娘は(写真出演だけですが)近藤春奈という笑わずにはいられないキャスティング。

前シリーズで、いいところまで行ったはずの久利生と事務官の雨宮舞子(松たか子)でしたが、久利生の転勤、雨宮が司法試験に合格し検事になったことで・・・で、今回の久利生の担当事務官は北川景子が演じる麻木千佳です。ドラマの最初では、かなり自信たっぷりの「できる子」キャラで、鋭い眼力に久利生もちょっと引いていました。

そんなメンバーで、翌年公開の映画版第2作が作られました。監督は前作に続いて鈴木雅之。ここで、ちょっと混乱するのは2つの映画版のタイトルがどちらも同じというところ。副題が付いていないのでわかりにくい。まぁ、どうでもいいんですけどね。

さて第2弾のポイントは治外法権の外交官特権を持つ他国の外交官の犯罪を暴くというもの。現実的に手が出せないところなので、あくまでも映画と割り切ってみるしかありません。実在の国名を使うわけにはいかないので、架空のネウストリア公国が設定されていて、雰囲気としてはヨーロッパのどこか。

ネウストリア公国との貿易交渉の真っ只中で、久利生の動きにぴりぴりする外務省欧州局長、松葉を演じるのは佐藤浩市。そして、久利生の事件と関係が判明したため大阪から出張してくる大阪地検難波支部の検事が・・・雨宮です。

過去に久利生に振り回されつつ、しだいに検察の仕事を理解して成長するという点で雨宮と麻木は共通点があり、麻木は検事になれた雨宮に憧れ慕います。麻木は、テレビの時よりも、かなり丸くなっている。雨宮には結婚を申し込まれた男性がいますが、やはり久利生のことが頭から離れない・・・と言って進展もしない。

大使館に踏み込むことができない久利生たちは、周囲から少しずつ事実を明らかにしていきますが、今回の映画の最大の弱点はやはり自分たちの手で犯罪者を起訴するという、検事としての完結が出来ないところ。設定を大きくしたけど、大きすぎる設定に振り回された感があります。

そこで、全てが終わった・・・はずですが、久利生と麻木は直接犯人に話を聞きたくて、わざわざ休暇を取ってネウストリア公国にいってしまうというシーンで映画が終わります。この最後のシーンは感心しました。

店の中で会話する二人が店から出るところをカメラは後ずさりしてとらえていきますが、そのまま店の前の路地が写り、さらに空撮の俯瞰へ移動していくというまさに映画ならではのショットです。おそらく店の外からズーム・アウトし、クレーン撮影、ドローン撮影にシームレスに連結させているのでしょうが、風景がはっきりするにつれ明らかに日本ではないことがわかる仕掛けです。このシーンのためだけにフランス・ロケを行なったというから驚きです。

それにしても、ジャニーズの肖像権管理の厳しさは度を越している。「HERO」シリーズは当然DVDやBlurayのジャケットに木村拓哉が写っているので、Amazonでリンクを張ることができない。文字だけのリンクも不可という厳しさ。メディアに露出してこそのタレントですから、もう「古い」作品なのでこういうところから改革しないと・・・