2023年5月22日月曜日

イン・ザ・ヒーロー (2014)

この映画は、戦隊物などの裏の主役、仮面をつけてアクションをする、いわゆるスーツ・アクターに注目した武正晴監督による「楽屋ネタ」的なストーリーです。

主役の本城渉を演じるのは、自らキャリアの初期にスーツ・アクターをしていた唐沢寿明です。ブルース・リーに憧れて16歳で東映アクションクラブに入り、「仮面ライダー」シリーズの敵役などをしていたのは有名な話。しかし、このままでは俳優として成長できないと口にしたことで辞めさせられました。

同じような立場で、当初アクション・スタントをバカにし、撮影スタッフに対しても敬意をもたない若手イケメン俳優、一ノ瀬リョウを福士蒼汰が演じています。唐沢もおそらく昔の自分を思い出すようなところもあったでしょうから、相当この映画に対しては思い入れがありそうです。

戦隊物のスーツ・アクターをしている本城は、下落合ヒーローアクションクラブのリーダーで、いつかは顔を出して自分の名前がクレジットされる映画に出ることが夢でした。ハリウッド映画に出れるかもという話は、売り出し中の一ノ瀬に決まってしまいます。

アクションを覚えなければならない一ノ瀬は本城のもとを訪れますが、初めはクラブのメンバーと対立し、無理をしてケガまでさせてしまいます。本城は「アクションは斬るだけでなく斬られる側がいて成り立つ。映画も多くの裏方がいてできるもの」と説きます。

ハリウッド映画の主役俳優が、クライマックスの立ち回りがあまりに危険すぎるという理由で降板してしまい、困ったプロデューサーはついに本城に出演をオファー。本城はいろいろな想いを背負って引き受けるのでした。

おそらく40代くらいまでの人は戦隊物を、それ以上の人はウルトラ・シリーズの怪獣とかでスーツ・アクターに馴染んできました。ウルトラマンを演じた人が、ウルトラセブンではウルトラ警備隊で顔出したという話は当時から有名でした。

顔が画面に出ず、名前もクレジットされない影の俳優さんはたくさんいて、時代劇での斬られ役の人たちも同じようなもの。彼らがうまく斬られてくれないと主役が引き立たないわけですから、このような存在が物凄く大事というものです。

クラブのメンバーは、黒谷友香、寺島進など。本城の元妻は和久井映見、娘は杉下花。特別出演の松方弘樹が、最後に本城の一世一代のアクションに斬られ役の中にいて、「今度は俺が斬られるよ」というのは泣かせる話です。

映画好きの方、戦隊物が好きな方、夢を追いかけるロマン好きな方・・・など、気負わず楽しめる良作となっています。