前編は、志々雄の巨大軍艦「煉獄」から薫が突き落とされ、それを追いかけて剣心も海に飛び込みました。そして、薫の行方もわからぬまま、浜に打ち上げられた剣心を謎の人物が助け起こすところでエンド・ロールに突入という幕切れ。
さて、後編の「伝説の最期編」に突入します。剣心を助けたのは少年のころに剣術を教わった、剣心にとっては師匠にあたるる比古清十郎でした。清十郎を演じるのは、なんと福山雅治という豪華なキャスティングで、いよいよこの物語の登場人物がすべてそろいました。
逆刃刀・真打を手にしても、宗次郎にすら勝てないと感じる剣心は、清十郎に奥義を伝授して欲しいと願い出ます。清十郎は、「今の自分に足りない物が何かわかったら教える」と答えますが、剣心はそれが何か答えが見出せぬままに清十郎との真剣勝負に挑みます。剣心はその戦いの中で、「死にたくない。まだ、生きたい」という気持ちが今まで無かったことに気がつきます。そして、ついに奥義を伝授されるのでした。
志々雄は、東京に沖合に到着すると伊藤博文(小澤征悦)と会見。剣心を見せしめに斬首刑にしなければ政府を潰すと脅し、伊藤も了承し剣心を指名手配するのでした。京都から神谷道場に戻った剣心を、先に助けられていた薫らが出迎えますが、それも束の間警官隊が踏み込み剣心は捕縛されます。
伊藤や斎藤と面会した剣心は、志々雄に近づくことさえできれば勝機はあると訴え、煉獄が停泊している近くの浜で処刑される芝居をして、多くの警官隊と共に一気に煉獄に乗り込んでいくのでした。
と、まあ、当然のこと「主役は死なない」ということになるんですが、やはり第1作よりさらにパワーアップした出演者自身によるアクション・シーンは前後編を通して最大の見所です。武井咲の長刀を振り回すところは、さすがにちょっと残念感はありますが、特に神木隆之介の2度ある佐藤健との長めの殺陣シーンはなかなかたいしたもの。可愛い顔して、なかなか切れ味の有る動きを披露しています。
佐藤もワイヤーアクションを駆使して、人並外れたスピードの中で難易度高いアクションを次から次へとこなしているのはさすが。剣心が使うのは逆刃刀ですから、普通に斬っても相手を倒せないので、必然的には刀を叩きつけるように使いますので、より運動量も多くなると想像されます。
そして、本作でさすがの存在感を放っているのが、志々雄を演じる藤原竜也です。志々雄は全身包帯巻ですから、ほとんど目と口以外は表情はうかがい知れません。それでも、裏切られ死にかけたことによる政府への恨み、どんなものでも犠牲にできる復讐心を全身で演じています。
実際には、包帯の巻いたように見える全身ラバー・スーツを着用していて、暑くて動きにくいものだったようですが、見ていてそんなことは微塵も感じさせないくらいキレキレのアクションを見せてくれました。悪役の存在感無くしては、正義が引き立たない好例になっていると思います。
その他の悪役については、かなり端折っているのは、映画という制約の中ではいたしかたがないのかもしれません。来歴が一言だけ紹介されるのは、志々雄の愛人、駒形由美(高橋メアリジュン)と、十本刀と呼ばれる10人の手兵の集団の中の、瀬田宗次郎、佐渡島方治くらいで、それ以外はほとんど名前すらわかりません。一人一人のかなり濃厚なキャラ設定があるらしいので、映画での存在感の無さがもったいないというところもあります。
江戸から明治といういろいろな価値観がひっくり返る動乱期に、歴史上の実在の人物も少なからず絡めることで、こんな苦しみを背負った若者もいたかもしれないと思わせるところがうまい。暗い話で地味になりやすいところを、華々しいアクションと豪華なキャスティングで映画的に盛り上げている作品としては成功していると思います。