2026年9月29日火曜日

The Bootleg Series


ボブ・ディランの「The Bootleg Series」については、関連するアルバムの項目で度々触れてきましたが、あらためて全体を整理しておきたいと思います。

本来、アーティストが世間に聴いてもらう、見てもらうために収録・制作・承認し、正規のレコード会社が公式に発売するものだけが、法的にも著作物として守られていきます。このような過程を無視して発売されるメディアが、一般に「海賊盤 (bootleg)」と呼ばれます。ディランのこのシリーズは、SME (Sony Music Entertainment)からコロムビア・レーベルの下に発売されているもので、当然海賊盤ではありません。

ディランの場合、1969年に「Great White Wonder」と呼ばれる、おそらくポピュラー音楽界で世界初となる海賊盤が登場して以来、コロムビア・レコードは数多くの次から次へと現れる多くの海賊盤に頭を悩ませてきました。

コンサート会場で密かにマイクで収録された音源は、一般に周囲の客の歓声が混ざっていたり、籠った音質で聞き取りにくく劣悪なものが多く、よほどのマニアでないと手を出さないものでした。ところが、会場の音響を調節するためのPA機器から出力されたもの(サウンドボード録音と呼ばれます)は、通常のライブ録音と変わりがない良好な音質なので、比較的誰でも聴いて楽しめるのです。これはコンサート・スタッフに協力者がいることになります。

また、一番困るのはスタジオでの正規のセッション・テープの流出です。通常、20世紀には磁気テープに録音するアナログ方式が主流でしたが、セッションが始まるとテープは回しっぱなしで、リハーサルやミス・テイク、途中の会話なども収録されています。最終的にはこの中からマスター・テイクが決められ、各楽器などの音量を調節してミックスする工程を経て完成になります。

収録時のディランは、当初から繰り返し同じ曲を演奏するのが好きではありませんでしたが、発表されたもの以外に演奏はしたけどボツにした楽曲(いわゆるアウトテイク)がたくさんあることが知られています。流出したテープには、誰も聴いたことが無かった未発表の楽曲や、発表されたものとはアレンジが異なる演奏がたくさんあり、当然これらも海賊盤の格好の餌食になるのです。会社の中に裏切り者がいるわけですが、これがマニアには当然喜ばれることになります。

コロムビア・レコードは、1970年の「Self Portrait」、1971年の「Greatest Hits Vol.2」、1973年の「DYLAN」などに、未発表だった音源を収録して好評を得ていましたが、1985年の「Biograph」で多くの蔵出し未発表音源をまとめて投入したところ、このような楽曲に対するマニアだけでなく、一般のニーズがかなりあることがはっきりしました。

であれば、手元にある膨大な未発表音源からすでに海賊盤として出回っているものも含めて、きちんとマスタリングして少しでも聴きやすくしたものを公式に発売することで、海賊盤の価値を無くし駆逐できるだろうと考えました。そうして登場したのが「The Bootleg Series」、つまり公式の「海賊盤」というわけです。

コロムビア・レコードでは、同様の企画はマイルス・デイビスでも行われていますが、ディランの場合は質的・量的に圧倒的です。しかも単なる未発表だったライブ音源よりも、スタジオでの未発表アウトテイクが中心になっているため、場合によっては公式アルバムと同等か、それ以上に価値がある音源の宝庫と言えます。


▶ The Bootleg Series Volumes 1–3 (Rare & Unreleased) 1961–1991
リリース: 1991年3月26日 規格: 3×CD、3×カセット、5×LP、ダウンロード

シリーズ第1弾。特別なテーマで選曲されたわけでなく、その時点での様々なセッションからアウトテイクを数曲ずつ集めたもの。CD3枚組で、それぞれがVol.1、2、3とカウントされています。登場した時は、ファンが狂喜する内容でしたが、今となっては、アウトテイクの「目次」みたいなものなので価値はだいぶさがってしまいました。


▶ The Bootleg Series Vol. 4: Bob Dylan Live 1966, The "Royal Albert Hall" Concert
リリース: 1998年10月13日 規格: 2×CD、2×LP、ダウンロード

1966年、The Hawks(後のThe Band)を引き連れてのイギリス・ツアーで、伝説となっている観客から「ユダ!!」と野次が飛んだ時のライブです。タイトルで会場がロイヤル・アルバート・ホールとなっているのは、初出の海賊盤からの間違いで、実際はマンチェスターのフリー・トレード・ホールで収録されたものです。海賊盤を尊重してか、そのままにしているところが面白い。この時の本当のロイヤル・アルバート・ホールでのライブを含めて、このツアーのすべてがボックスで発売されています。


▶ The Bootleg Series Vol. 5: Bob Dylan Live 1975, The Rolling Thunder Revue
リリース: 2002年11月26日 規格: 2×CD、2×CD+DVD、3×LP+7インチ、ダウンロード



▶ The Bootleg Series Vol. 6: Bob Dylan Live 1964, Concert at Philharmonic Hall
リリース: 2004年3月30日 規格: 2×CD、2×SACD、3×LP、ダウンロード

1964年10月のいわゆる「ハロウィン・ライブ」で、海賊盤として人気があったもの。ジョーン・バエズとのデュエット・パートも含み、エレキ化する前の最後のアコースティック・ライブとして有名です。


▶ The Bootleg Series Vol. 7: No Direction Home: The Soundtrack
リリース: 2005年8月30日 規格: 2×CD、4×LP、ダウンロード

交通事故で隠遁生活に入るまでを克明に追ったドキュメンタリーのサウンドトラックとして登場したもので、映像の中では断片的に使われた演奏をフルレングスで聴くことができます。


▶ The Bootleg Series Vol. 8: Tell Tale Signs (Standard Edition)
リリース: 2008年10月6日 規格: 2×CD、4×LP、ダウンロード

▶ The Bootleg Series Vol. 8: Tell Tale Signs: Rare and Unreleased 1989–2006 (Deluxe Edition)
リリース: 2010年10月19日 規格: 3×CD+7インチ、ダウンロード

ここからはテーマ別にそれぞれのセッションのアウトテイクを網羅的に集めたものになりました。またできるだけたくさん収録したデラックスとCD2枚を基本としたベスト盤的なスタンダードが同時に発売されています。

ここでは1989年から2006年、「Oh Mercy」から「Modern Times」までのセッション、および映画のサウンドトラック用のセッションなどからアウトテイクが収録されました。未発表だった曲の中に高い評価を得るものも含まれています。


▶ The Bootleg Series Vol. 9: The Witmark Demos: 1962-1964
リリース: 2010年10月19日 規格: 2×CD、4×LP、ダウンロード

キャリア初期に自作曲を取り急ぎ楽譜にして出版できるようにと、デモ音源を録音したものを集成しています。ウィットマークは出版社の名前です。しっかりとしたレコーディングではないですが、若い者の勢いが感じられる録音になっています。

▶ The Bootleg Series Vol. 10: Another Self Portrait (1969–1971) (Deluxe Edition)
リリース: 2013年8月23日 規格: 4×CD、ダウンロード

▶ The Bootleg Series Vol. 10: Another Self Portrait (Standard Edition)
リリース: 2013年8月27日 規格: 2×CD、3×LP+2×CD、ダウンロード

一般には、いろいろな曲がとっちらかったような印象を与え、あまり評判が良くなかった「Self Portrait」を復権させたシリーズです。特にワイト島でのライブの全貌が収録されたことは大きく、この時期のディランを語るうえで重要な音源になりました。ただし、4枚組CDの一枚はオリジナルのリマスターを丸々収録というのは、枚数かせぎとして批判されたのが残念です。


▶ The Bootleg Series Vol. 11: The Basement Tapes Complete (Deluxe Edition)
リリース: 2014年11月4日 規格: 6×CD、ダウンロード

▶ The Bootleg Series Vol. 11: The Basement Tapes Complete (Standard Edition)
リリース: 2014年11月4日 規格: 2×CD、3×LP+2×CD、ダウンロード

ウッドストックでの隠遁生活の最中に、The Bandのメンバーと自由なセッションを繰り広げていたのは有名な話です。すでに2枚組の公式アルバムとしてリリースされていましたが、それはロビー・ロバートソンが、ある程度商品として成り立つように多くのオーバーダビングを施したものでした。

家庭用テープレコーダーでの録音なので、最低限のリマスターはしてありますが、追加の音はいっさい排除した生のセッション音源として6枚のCDにほぼその全貌が収録されたことは、大きな意義がありました。


▶ The Bootleg Series Vol. 12: The Cutting Edge 1965–1966 (Deluxe Edition)
リリース: 2015年11月6日 規格: 6×CD、ダウンロード

▶ The Bootleg Series Vol. 12: The Cutting Edge 1965–1966 (Standard Edition)
リリース: 2015年11月6日 規格: 2×CD、3×LP+2×CD、ダウンロード

▶ The Bootleg Series Vol. 12: The Cutting Edge 1965–1966 (Collector's Edition)
リリース: 2015年11月6日 規格: 18×CD

アコースティックからエレクトリックに移行した「Bringing It All Back Home」、「Highway 61 Revisited」、「Blonde on Blonde」の、ディランにとって最重要時期のアウトテイク集です。特にCD1枚に丸々「Like A Rolling Stone」が形になっていくセッションの一部始終が納められたのは貴重です。

このVol.12だけは、他の曲のセッションでも、途中の打ち合わせなどの会話も含めた、何と18枚組という巨大な限定生産されたエディションも登場しています。ただし、どうしてもなんでも揃えないと気が済まない人を除けば、デラックスの6枚だけでも十分すぎる楽しさがあります。


▶ The Bootleg Series Vol. 13: Trouble No More 1979–1981 (Deluxe Edition)
リリース: 2017年11月3日 規格: 8×CD、ダウンロード

▶ The Bootleg Series Vol. 13: Trouble No More 1979–1981 (Standard Edition)
リリース: 2017年11月3日 規格: 2×CD、4×LP+2×CD、ダウンロード

ディランがキリスト教にのめり込んでいた時期のアウトテイク集。リアルタイムには賛否両論でしたが、この時期でも目を見張る素晴らしい曲が眠っていたことがわかり、またライブも素晴らしく、再評価されるきっかけを作りました。

これのみDVD「Trouble No More」が付属し、視覚的にも理解できるのは助かります。


▶ The Bootleg Series Vol. 14: More Blood, More Tracks (Deluxe Edition)
リリース: 2018年11月2日 規格: 6×CD、ダウンロード

▶ The Bootleg Series Vol. 14: More Blood, More Tracks (Standard Edition)
リリース: 2018年11月2日 規格: CD、2×LP

ディランの最高傑作アルバムに推す人が多い「Blood on the Tracks」は、主としてミネソタでのセッションで録音されたバンドをバックにした音源が収録されています。しかし、その直前にニューヨークで、アコースティックな音作りをした丸々1枚のアルバムが完成していたことは知られていて、これらも海賊盤として様々なものが出回っていました。

この巻では、お蔵入りになっていたニューヨーク・セッションの全貌をすべて公開したことで、あらためてどちらのバージョンも素晴らしい出来であることを再確認させてくれました。


▶ The Bootleg Series Vol. 15: Travelin' Thru, 1967–1969
リリース: 2019年11月1日 規格: 3×CD、3×LP、ダウンロード

久しぶりにデラックス・エディションは無し。正規にはアルバムに1曲しか収録されなかったジョニー・キャッシュとのセッションがすべて納められています。発声法を変えたディランの集大成というところです。


▶ The Bootleg Series Vol. 16: Springtime in New York 1980–1985 (Deluxe Edition)
リリース: 2021年9月17日 規格: 5×CD、4×LP、ダウンロード

▶ The Bootleg Series Vol. 16: Springtime in New York 1980–1985 (Standard Edition)
リリース: 2021年9月17日 規格: 2×CD、2×LP、ダウンロード

これもやたらと流行に乗ったリミックスでひんしゅくを買った「Empire Burlesque」のセッションのオリジナル音源や、評判の良かった「Infeldes」のアウトテイクを中心に集められました。


▶ The Bootleg Series Vol. 17: Fragments – Time Out of Mind Sessions (1996–1997) (Deluxe Edition)
リリース: 2023年1月27日 規格: 5×CD、10×LP、ダウンロード

▶ The Bootleg Series Vol. 17: Fragments – Time Out of Mind Sessions (1996–1997) (Standard Edition)
リリース: 2023年1月27日 規格: 2×CD、4×LP、ダウンロード

「Time out of Mind」のセッションのアウトテイク集。またこの時期の豊富なライブ演奏も多数含まれていて、ここから再び快進撃するディランの様子が集大成されています。


▶ The Bootleg Series Vol. 18: Through the Open Window 1956–1963 (Deluxe Edition)
リリース: 2025年10月31日 規格: 8×CD、ダウンロード

▶ The Bootleg Series Vol. 18: Through the Open Window 1956–1963 (Standard Edition)
リリース: 2025年10月31日 規格: 2×CD、4×LP、ダウンロード

明快なコメントは出ていませんが、このシリーズの最終巻の予定となっているのがこのVol.18です。時代がいっきに遡り、ロバート・ジンマーマン少年が「ボブ・ディラン」に変貌していく過程を多くの音源を用いて克明にあぶり出しました。


基本的にはリアルタイムには聴くことが叶わなかった音源ですから、ディランの評価は正規に発売されたオリジナル・アルバムだけでも足りるはず。ですが、これらの内容がディランの音楽家としての歩んできた道の中で外しようがないピースばかりなので、できれば聴いてもらいたい、いや是非聴いてください。

はっきり言って、ディランも高齢ですから、新しいアルバムは・・・そしてツアー活動もいつまでもできるわけではありません。それでも、この偉大な音楽家と同時代を生きていることには、ある意味感謝の気持ちが湧いてきます。

全部合わせたら公式にリリースされたものだけでもCD150枚くらいになるわけですが、これからもふと瞬間に繰り返し聴き直し、これらの時代の空気とともにディランの世界に浸りたいと思います。

2026年9月28日月曜日

CAFE WATER


コカ・コーラのコーヒー・ブランド、GEORGIAから新発売の商品です。

最近は、比較的水っぽい、というか薄めの味のコーヒー飲料がたくさん売られていて、コーヒー好きとしては、やや物足りない。

それでも、だんだん慣れてくるもんですし、そもそも使う豆の量が少ない(?)からか、価格も抑えられているので手に取りやすい。

そんな傾向を逆手に取って、むしろもっともっと水っぽくした商品がこれかと、ネーミングを見た時は思いました。試しに一度は飲んでみようと買ってみて、、、驚いた。

品名には「清涼飲料水」とあって、原材料の表示の中には「コーヒー」という単語がひとつも無い。ラベルをよく見ると「カフェイン控えめ」の下に小さく「コーヒー豆不使用」と記載されているじゃありませんか。

色はコーヒーっぽい黒さです。匂いは・・・何か違う。甘ったるいような、何とも言えない香りがします。

飲んでみる。匂いと同じで、少し甘みを感じる、コーヒーに寄せた味・・・なのかもしれないのですが、少なくともコーヒーじゃない。

飲み物として「これはあかんやつ」とは言いませんけど、名前に「CAFE」と付けるのは誤解を招くだけで、まがい物扱いしたくなります。「COFFEE」としなかったところは、作る側もちょっと気が引けているのもしれません。

見た目がコーヒーよりも、コーヒーの香りがする水の方がまだましかもしれません。いつのまにか消えている商品の予感がします(売れたらゴメン)。

2026年9月27日日曜日

転がる石のように (Like a Rolling Stone)


何も言うことが無い、未来に確実に残る名曲です。2004年「Rolling Stone」誌が選出した「史上最も偉大な曲500曲」において第1位、最新の2021年版でも第4位です。ノーベル文学賞受賞の理由の一つとしても指摘されています。

初出は1965年リリースの「Highway 61 Revisited」で、試行錯誤の末に曲が出来上がった過程は、「The Bootleg Series Vol.12 The Cutting Edge」で明らかになっていて、大変興味深い。

もともと1965年春に精神的疲労が極まった時期に長大な散文詩を書き、それをもとにしてまとめたもので、自分が進むべき道が開かれた曲とされています。また6分13秒という曲の長さは、当時のラジオの常識を覆したことでも知られています。

幾多の名訳があるので、今更、ここで稚拙な日本語にする必要は無いかもしれませんが、より深い理解のために自分で原文を訳してみることは大事な事だと思います。


昔は上等なドレスを着て、羽振り良く浮浪者に小銭を投げてたよね
お嬢さん気をつけな、必ず落ちぶれるよ 皆はそう言ってた
君は冗談だと思ってた 街をたむろする者を笑い飛ばしてた
今じゃ大きな声も出さないし 今じゃ自信もなくしたみたいだ
明日の食事すら困っているみたいだね

どんな気分だい? どう思っているのかな?
寝る場所すら無い 誰にも知られず、転がる石みたいだよね

名門校に通ったミス・ロンリー、酒浸りで浮かれていただけ
誰も道端での生き方は教えてくれない 慣れるしかないと気がついたかい
謎の浮浪者とは妥協はしないと言っていたけど、気づいたかな?
彼は一切言い訳なんかしない 彼の瞳は何も見ちゃいない
何かを頼もうしても無駄な事さ

どんな気分だい? どう思っているのかな?
帰る家すら無い 誰にも知られず、転がる石みたいだよね

大道芸人や道化師を見向きもしなかった 彼らは君を楽しませたかったのに
それが良くない事だと気づかなかった 誰かに楽しさを代ってもらっちゃいけない
外交官とハーレーに乗ってたね 彼のシャム猫は肩に乗ってた
でも気づくのは辛いよね 彼が本物じゃない事に
すべてを奪われた後じゃ手遅れさ

どんな気分だい? どう思っているのかな?
帰る家すら無い 誰にも知られず、転がる石みたいだよね 

高嶺の花と着飾った人々 酒を酌み交わし上流階級だと思っている
高級品をやり取りしてたけど、君のダイヤの指輪は売った方がよいよ
君は面白がってたね ナポレオンの汚れた服や彼の言葉を
彼が呼んでいるよ 断れないさ 失うものは何も無いんだからね
誰も君を見ちゃいないし、興味もないんだ

どんな気分だい? どう思っているのかな?
帰る家すら無い 誰にも知られず、転がる石みたいだよね

(意訳 : 亜沙郎)


ディランにしては、これはわかりやすい・・・と言うと、申し訳ないのですが、英語も比較的難しくはありません。ただし、いわゆるスラングは混ざっているので、その辺りだけは調べる必要があります。

ここでは主役は「ミス・ロンリー」、つまり寂しがり屋の、昔はとても羽振りの良かった女性です。何をしくじったかは歌われていませんが、今は下手すると路上生活者というくらい落ちぶれてしまったらしい。

もっとも、そんなボロボロの女性というのは、現実には想像しにくいところがあるので、今は絶好調で金回りが良く、周りに気を回すことが無いような人々全般に向けて歌われているのだろうと思います。

人の親切をないがしろにしたり、見た目だけで物事を判断することは、いつか必ず周り回って自分に帰ってくるという警告として、「How does it feel?」というキーワードが繰り返されます。

「帰る家がない」というところは原文は「No Direction Home」、「誰も知らない」は「A Complete Unknown」で、いずれも動画のタイトルになりました。

ディラン最高の歌詞という評価をする人もいるくらいですが、誰にも伝わりやすく、社会的な要素も市井の人々の誰もが共感できる内容は、まさに文学の詩と歌の歌詞の両立したものだと思います。時代を超えて通用することは間違いなく、多くのカバーが存在することも納得ですが、ディラン自身にもいつまでも歌い続けることを強く願います。

2026年9月26日土曜日

出た出た月が、


まあるい、まあるい、まんまるい。
盆のような月が・・・♪♪

昨日は昼間は晴れ間が出ましたが、午後から雲が多くなり、夜には雨。

十五夜の満月が見れるはずでしたが、この天気じゃ無理だとあきらめるしかない。

・・・のですが、何と奇跡的にほんの少しの時間、一時的に広がった雲の間隙を縫って月が現れました。

薄い雲がかかって、ぼやーっとしてはいますが、確かに満月です。

今回は、実はスマートホンで撮影した写真です。

スマホでも、ここまで撮れるようになったと、ちょっと感動しました。露出やシャッター速度をマニュアルで設定できるので、月の表面の模様がわかるように撮影ができるんです。

さすがにズームはこれが限界。こればかりはしょうがない。

少なくとも自分が知っているiPhoneでは、簡単にはこのような写真は撮れません。

Android\(^o^)/

2026年9月25日金曜日

American Graffiti


右側は、1964〜1965年頃のシボレー・C10(Chevrolet C10)ピックアップトラック。

真ん中は、1947年から1955年頃に製造されたシボレー・アドバンス・デザインシリーズ(主に3100などのピックアップトラック)。

そして、左側が、1959年式のキャデラック(Cadillac)シリーズ62またはデ・ビル(DeVille)です。

クラシックカーが大好きな人にはたまらないラインナップでしょうけど、保存状態はあまりよくなくて、ほとんどスクラップ状態なのが残念。

70年代頃までのアメリカ映画では、しばしば登場していたので、けっこう馴染みがあるものです。特に1973年の「American Graffiti」は、1962年の高校生を描いた青春映画で、このような車がアイコンとして大挙して走り回ります。監督は「スター・ウォーズ」のジョージ・ルーカスでした。

日本車でこんな並びがあったら、どうなんでしょう。車の大きさが小さいので、見栄えが劣ることは間違いない。ガソリン大国だったアメリカを象徴する、これらの大きな車体が圧巻です。

そこで、Google Gemini (AI)に頼んで、新車のようにしてもらいました。

スタートの検索画面に写真をドロップして、右上の「Geminiに相談」をクリック。右側にチャット・ウインドウが開くので、ここに「ピカピカの新車のようにしてください」と入力しました。

満点ではないのですが、こういうところはなかなかの力を発揮しています。


2026年9月24日木曜日

激しい雨が降る (A Hard Rain's A-Gonna Fall)


ボブ・ディランがノーベル文学賞を2016年に受賞した時、その受賞対象となったのはそれまでに発表していたすべての歌詞でした。ただ、積極的なアナウンスはありませんが、特に初期のいくつかの曲の歌詞は特に注目されたらしい。

その一つが「A Hard Rain's A-Gonna Fall」で、1963年リリースの「The Freewheelin'」が初出で、演奏時間は6分55秒です。今でもステージのセットリストに加わることがあり、ファンからもディラン自身からも長く愛されている曲と言えます。

青い目の子はどこにいる、何を見た、何を聞いた、誰と会った、何をしている、という問いかけの後に、私はどうしているかという答えがいくつも続き、最後に「激しい雨が降る」で締めるという構造の曲です。

私はどうしているかという答えの部分はかなり自由度が高く、5節以上を好きなだけつなげている感じで、実際のライブでも歌ったり歌わなかったりしています。繰り返される「It's a hard」がポイントですが、これを「激しい」と訳するのが一般的のようですが、ここではあえて「辛い」という日本語を当ててみました。


青い目の私の息子はどこに? 可愛い幼子はどこに?
12の霧の山をよろよろと進み 6つのハイウェイを歩き
7つの悲しみの森を抜けて 12の淀んだ海の淵に立ち
墓場まで1万マイル 辛い、辛い、辛い、辛い
そして、激しい雨が降り出す

青い目の息子は何を見た? 可愛い幼子は何を見た?
野生の狼の群の中に赤ん坊を見た 無人のダイアモンドの道を見た
血がしたたる黒い樹を見た 血だらけでハンマーを持つ男たちを見た
凍り付いた白い梯子を見た 舌が動かない大勢の語り部を見た
若者が銃や剣を手にする 辛い、辛い、辛い、辛い
そして、激しい雨が降り出す

青い目の息子は何を聞いた? 可愛い幼子は何を聞いた?
雷鳴と警告を聞いた 世界中を飲み込む波のうねりを聞いた
凄まじい100人の太鼓を聞いた 誰も気にしない1万人の囁きを聞いた
一人が飢え大勢が笑うのを聞いた 行き倒れた詩人の歌を聞いた
路地裏で道化師が泣いている 辛い、辛い、辛い、辛い
そして、激しい雨が降り出す

青い目の私の息子は誰と会った? 可愛い幼子は誰と会った?
死んだ仔馬の傍らでこどもと会った 黒犬を連れた白い男と会った
燃えるような娘に会った 虹をくれた少女に会った
恋に傷ついた男に会った 憎しみに傷ついた男にも会った
辛い、辛い、辛い、辛い そして、激しい雨が降り出す

青い目の私の息子は何してる? 可愛い幼子は何してる?
雨が降り出す前に出かけよう 真っ暗な森の中へと出かけよう
何も持たない多くの人がいる所 毒の粒子が流れ出す所
汚れた刑務所の隣の家がある所 顔を隠した処刑人がいる所
飢えて魂が忘れ去られる所 色は黒だけで数が無い所
話し、考え、喋り、そして息を吐く
すると山から吹き戻され、すべての魂に伝わるのだ
それから沈み始めるまで海に立ち続ける
しかし歌い出す前にその歌をよくわかっていたいものだ
辛い、辛い、辛い、辛い そして、激しい雨が降り出す

(意訳 : 亜沙郎)


そう思って訳を作っているからというのもあるかもしれませんが、少なくともかなり文学的な表現が頻出します。詩と歌詞は違うとは言え、これを文学ととらえる事には何ら抵抗を感じません。

文学だから難解というわけでもないでしょうけど、ディランの独特の感性というものが、常人にはたいへん理解しづらい。英語圏の人々でも、すぐにこの歌詞の内容を理解した人がどれくらいいるのでしょうか。この歌詞が作られた当時は、キューバ危機直前の緊張の時期にで、アメリカ国民は核兵器で攻撃されるかもしれないという恐怖を持っていました。

おそらく大部分は、世界、世間の不条理みたいなものをいろいろなものに例えて並べているのかと思います。最終的に、最後の5行が、最もこの歌で言いたかったことで、様々のことを誰もがしっかり考えて行動すれば、必ず良い方向に行くに違いないという前向きな結論だと思います。

ノーベル文学賞の授賞式では、欠席したディランに代わってパティ・スミスがこの曲をステージで歌いあげました。スミスはこの曲を選んだ理由として「彼の一番美しい曲のひとつで、卓越した言葉によって、人々の苦しみの原因や人々の反発への深い理解が表現されている」と述べています。

2026年9月23日水曜日

月が出た出た、


月が出たあ~、よいよい。

炭坑節を歌いたくなる・・・というのも、昭和人だからこそ。

でも、何と言っても、一体、何日ぶりだろうか、月が見えるのは。

何か月夜が、めっちゃ新鮮。

十五夜は25日、金曜日なんで、まだ満月じゃないですが、25日に満月が見える保証もありませんしね。

どことなく有難味を感じてしまいました。

2026年9月22日火曜日

最も卑劣な殺人 (Murder Most Foul)


2012年の「Tempest」以来、8年ぶりのボブ・ディランのオリジナル新作が、2020年リリースの「Rough and Rowdy Ways」です。

その中で、きわめて異彩を放ったのがこの曲で、そもそも長さが16分54秒で、「Highlands」の16分31秒を抜いてディラン史上最長です。また、アルバムは全10曲収録ですが、この曲だけが2枚目のCDに単独で収録されるという特別な扱いをされています。



1963年11月、ダラスの悪名高く記憶に残る暗い日だった
ケネディ大統領は絶好調で、生きるにも死ぬにも良い日だった
彼は生贄の子羊のように導かれ、「待て、私を知っているのか」と聞く
「もちろん。あなたが誰か知っています」それから奴らは白昼堂々、
車に乗っていた彼の頭を犬でも扱うように吹っ飛ばしたのだ
タイミングが重要だった そしてそれは最適だった

貸しを返してもらうため、憎いから、軽蔑をもって殺させてもらった
あなたを嘲笑い、ショックを与え突きつけるために
代わりの人はすでに決まっているんですよ

王の脳が吹き飛ぶのを大勢の人が見ていたが誰もわからなかった
目の前で起こったことが驚くほど素早かったから
太陽の下での最高の魔術のように完璧だった
狼男が、狼男が、狼男が吠えている そいつは最も卑劣な殺人だ

静かに、いい子だから いつかわかるよ
ビートルズがやって来て「抱きしめたい」 手すりを滑り降りてコートを手にする
「マージー河のフェリーボート」で虜になる 浮浪者が三人やって来る
みんなボロを着ている 後始末したら降伏しよう

ウッドストックに行こう 今はアクエリアスの時代
オルタモントまで行ってステージの近くに陣取ろう さあ一緒に楽しもう
グラッシー・ノールの後ろでパーティ レンガを積んでセメントで固めよう

大統領、ダラスが悪いわけじゃない 戦車に乗って高架の一番下に行く
黒い顔の歌手、白い顔の道化師 暗くなったら顔を見せない方が良い
赤線地帯にいると警官のようになる 「エルム街の悪夢」にうなされる
エルム街に深入りしたら靴に金を入れなさい 国が何をしてくれるか問うな
樽の上に使い果たす金 ディーレイ・プラザを左折して交差点で合図した
信仰も希望も慈善も死んだ場所だ さっさと今のうちに彼を撃ちぬくんだ

透明人間を撃てるか試してごらん さよならチャーリー、さよならアンクル・トム
ミス・スカーレットなんてどうでも良い 真実って何、どこにある
オズワルドとルビーなら知っているさ 黙ってろと聡明な年寄が言った
単なる仕事だったけど そいつは最も卑劣な殺人だ

トミー、聞こえる? 私はアシッド・クイーン リムジンに乗っているところ
妻を隣に後ろの座席にいる あの世に一直線 妻の膝に頭をのせてしまった
ちょっと待て、何かの罠だ 少しも助けてとも助けるとも言わない
私たちはあなたの住んでいる通りのすぐ横にいる
彼らは体を刻んで脳を取り出した これ以上痛がらせることはない
彼の魂はあるべき場所にない 50年間も探し続けてきた
自由を、自由を、私に自由を 残念だけど自由なのは死んだ人だけ
愛がほしい 嘘はつかないで 銃は捨てて消えてください

スージー、起きて ドライブに行くよ 希望を捨てずにトリニティ川を渡ろう
ラジオをつけて ダイアルはそのまま パークランド病院まであと6マイル
ミス・リジー、あなたの魔法の銃弾が頭に当たって私はめまいがする
私はパッツィー・クラインみたいなただのパッツィー どこからも撃っちゃだめだ
目や耳に出血した 新しいフロンティアには決して着くことは無い

以前33回、いやもっと見たザプルーダーの映画は卑劣で欺瞞、残酷で意地悪
今まで見た中で最も醜いものだ 彼らは彼を生贄として一度、いや二度殺した
あの日、誰かが「反キリストの時代は始まったばかりだ」と言った
エア・フォース・ワンがゲートに入って来た ジョンソンは2時38分に宣誓した
あきらめる決心をしたら教えてくれ そいつは最も卑劣な殺人だ

何かいいことないか、子猫ちゃん? 何て言った? 国の魂が引き裂かれたと言ったのさ
そしてゆっくりと衰退していく そしてもう審判の日からは36時間すぎたんだ
ウルフマンジャックが変なことを言っているけど元気一杯だ 何か曲をかけて
私のキャデラックで聴きたいんだ 「若死にするのは善人だけ」をかけてくれ
トム・ドゥーリーが吊るされた場所にいってみたい
「セント・ジェームス病院」と「キング・ジェームスの港」も頼むよ
忘れそうならメモをして エタ・ジェームスの「見えない方がまし」もだよ 
ジョン・リー・フッカーや「背中を掻いて」をよろしく
気持ちが通じ合える男やジャックという名のストリップ小屋のために
ゆっくりとしたギター・スリムは私とマリリン・モンローのために

悲しむ大統領夫人には「悲しき願い」を
ドン・ヘンリーもグレン・フライも、カール・ウィルソンのためにやっちゃって
ガワー通りを遠くに見ながら「悲劇」や「トワイライト・タイム」を聴きたい
タルサの暴動の現場に連れていって 別の「地獄へ道連れ」を聴きたいね
「丘に立てる荒削りの十字架」や「我ら神を信ず」も聴こえる
長く孤独な道をピンクの馬に乗って下り、彼の頭がはじけ飛ぶのを待つんだ
Mr.ミステリーの「ミステリー・トレイン」をかけてくれ
彼は根が腐った倒木のように死んだ 神父のために聴かせてくれ

野良犬のために オスカー・ピーターソンやスタン・ゲッツを
ディッキー・ベッツで「ブルー・スカイ」、ホット・ペッパー、セロニス・モンク
チャーリー・パーカーなどもろもろ そして「オール・ザット・ジャズ」
アルカトラズの鳥人間のためにはバスター・キートン、ハロルド・ロイド
バグジー・シーゲル、プリティ・ボーイ・フロイド
数字を決めてオッズを計算しよう 創造主には「クライ・ミー・ア・リバー」
9番と6番がいい リンジーとスティービー・ニックスのために
「ネイチャー・ボーイ」はナット・キング・コールで
テリー・マロイには「人里離れた場所」、「或る夜の出来事」、「罪の一夜」も
1200万人の魂が注目している ベニスの商人には「死の商人」
マクベス夫人には「星影のステラ」 大統領、助けはもうすぐです
地獄の代償を払って兄弟たちがやって来る
兄弟? 何の? 地獄の何? 彼らに来るのを待っていると伝えてくれ
彼の飛行機はラブ・フィールドに着陸し二度と飛ぶことはなかった
後戻りはできない そして日が昇る祭壇で彼を殺したのだ
私には「ミスティ」、「オールド・デビル・ムーン」、「エニイシング・ゴーズ」
「6月のメンフィス」、「ロンリー・アット・ザ・トップ」
そして「ロンリー・アー・ザ・ブレイブ」をかけてくれ
墓をうろつくフーディーニのためにジェリー・ロール・モートンで「ルシール」
「ディープ・イン・ア・ドリーム」、「ドライビング・ウィール」、「月光ソナタ」
ハープのキングで「キー・トゥ・ザ・ハイウェイ」、「ジョージア行進曲」、
「ダンバートンズ・ドラムス」、「ダークネス」もだ いつかは皆死ぬんだ
偉大なバド・パウエルで「ラブ・ミー・オア・リーブ・ミー」を聴きたい
「ブラッド・ステインド・バナー」をかけてくれ
そして「最も卑劣な殺人」を聴かせてくれ

(意訳 : 亜沙郎)


これはかなり難解、というかケネディ大統領が暗殺された事件そのものは理解できますが、次から次へと登場するアメリカのポップ・カルチャーについて、ディランと同等の知識を持っていないとほとんど謎の呪文のような詞が延々と続きます。

すぐに理解できたのは、せいぜい1/3くらいで、仕方がないのであとはネット検索に頼りました。これはと思うものについて補足説明をしますので、かなり膨大なものになりますが参考にしてみてください。


抱きしめたい : ビートルズのヒット曲
マージー河のフェリーボート : ジェリー&ザ・ペースメイカーズの1964年のヒット曲
ウッドストック : 1969年に歴史的な音楽イベントが開催された
アクエリアス : ヒッピーが中心のミュージカル「ヘアー」の主題歌
オルタモント : 1969年にフリーコンサートが開催された
グラッシー・ノール : ケネディの車列が通った場所の草地
エルム街の悪夢 : 映画のタイトル、グラッシー・ノールが面する通りの名前
ディーレイ・プラザ : ダラスの発祥地とされる地名
国が何をしてくれるか問うな : 演説の中のケネディの言葉
樽の上に使い果たす金 : アメリカの慣用句、現金払いのこと

チャーリー、アンクル・トム、ミス・スカーレット : 有名なポップ・アイコン
オズワルド : リー・ハーヴェイ・オズワルド、ケネディ暗殺の容疑者
ルビー : ジャック・ルビー、オズワルドを射殺した犯人
トミー : ロック・オペラのタイトル アシッド・クイーンも登場
スージー、起きて : エヴァリー・ブラザーズの1957年の代表曲
トリニティ川 : ダラスを流れる河川
パークランド記念病院 ケネディが死亡宣告された病院
ミス・リジー : 1958年のラリー・ウィリアムズのロックンロール
パッツィー・クライン : 女性歌手、名前が一緒というだけの身代わり(patsy)
新しいフロンティア : ケネディのスローガン、スター・トレックでも有名

ザプルーダー : ケネディ暗殺の瞬間を撮影していた人物
何かいいことないか、子猫ちゃん : コメディ映画
何て言った : レイ・チャールズの1959年のヒット曲「What'd I say」
ウルフマンジャック : 大人気だったラジオのDJ
若死にするのは善人だけ : ビリー・ジョエル、1977年のヒット曲
トム・ドゥーリー : 1958年のキングストン・トリオの曲 殺人事件がテーマ
セント・ジェームス病院 : ブルースの古典的なトラディショナル
キング・ジェームスの港 : トラディショナルの曲の異名かも?
エタ・ジェームス : 歌手、「見えない方がまし」はヒット曲
ジョン・リー・フッカー : ブルース歌手、「背中を掻いて」はスリム・ハーポの曲

ギター・スリム : 50年代に活躍したブルース歌手・ギター奏者
ジャックという名のストリップ小屋 : ジャック・ルビーはストリップ劇場の経営者だった
マリリン・モンロー : 言わずと知れた女優、セックス・シンボル、ケネディとも噂あり
悲しき願い : ニーナ・シモンの1964年のヒット曲
ドン・ヘンリー、グレン・フライ : イーグルスのメンバー
カール・ウィルソン: ビーチボーイズのメンバー
ガワー通り : ロサンゼルスの通り、イギリス、ロンドンにも同名あり
タルサの暴動 : 1921年大勢の黒人が虐殺された事件、それを基にした歌
丘に立てる荒削りの十字架、我ら神を信ず : 讃美歌
ミステリー・トレイン : 1953年のブルース曲、歌詞にMr.ミステリーが登場

ホット・ペッパー : おそらく1933年の映画
ブルー・スカイ : ディッキー・ベッツが所属したオールマン・ブラザース・バンドの曲
オスカー・ピーターソン : カナダ出身のジャズ・ピアニスト
スタン・ゲッツ : ウエスト・コーストで活躍したジャズ・サックス奏者
セロニス・モンク : 孤高のジャズ・ピアニスト
チャーリー・パーカー : モダン・ジャズの頂点に君臨するサックス奏者
オール・ザット・ジャズ : ブロードウェイ・ミュージカル「シカゴ」の曲で映画化もあり
アルカトラズの鳥人間 : 収監中に鳥の研究で有名になったロバート・ストラウド
バスター・キートン、ハロルド・ロイド : 無声映画のコメディアン
バグジー・シーゲル : 30~40年代のギャング

プリティ・ボーイ・フロイド : 30年代の銀行強盗、ウディ・ガスリーの曲名
クライ・ミー・ア・リバー : 1955年のジュリー・ロンドンのヒット曲
9番と6番 : ビートルズの「Revolution No.9」と反転した「6」をイメージ?
リンジーとスティービー・ニックス : フリートウッド・マックの主要メンバー
ネイチャー・ボーイ : 1948年のナット・キング・コールのヒット曲
テリー・マロイ: 1954年の映画「波止場」でマーロン・ブラントの役名
人里離れた場所 : 1965年のビリー・ジョー・ローヤルのヒット曲
或る夜の出来事 : 1934年のアカデミー賞受賞の映画
罪の一夜 : 1957年E.プレスリーの曲
ベニスの商人、マクベス : シェイクスピアの戯曲

星影のステラ : 有名なジャズのスタンダード
地獄の代償 : 慣用句 hell to pay、大混乱になるといった意味
ラブ・フィールド : ダラス空港の別名、暗殺事件を題材にした1992年の映画
ミスティ: ジャズ・スタンダード、C.イーストウッドの初監督作の原題
オールド・デビル・ムーン、エニイシング・ゴーズ : いずれもジャズの名曲
6月のメンフィス、ロンリー・アット・ザ・トップ : 曲名
ロンリー・アー・ザ・ブレイブ : 1962年の映画、カーク・ダグラス主演
フーディーニ : 20世紀初めに脱出王と呼ばれた奇術師
ジェリー・ロール・モートン : スイング黎明期のピアニスト
ルシール : ロックンロールのスタンダード

ディープ・イン・ア・ドリーム : 1955年のフランク・シナトラの曲
ドライビング・ウィール : 1936年のポピュラー・ソング
月光ソナタ : ベートーヴェン作曲のピアノ・ソナタ第14番
ハープのキング : ブルース・ハーモニカの巨匠、リトル・ウォルターの別名
キー・トゥ・ザ・ハイウェイ : ブルースのスタンダード
ジョージア行進曲 : 南北戦争時の行進曲
ダンバートンズ・ドラムス : スコットランドの兵隊行進曲
ダークネス: ブルース・スプリングスティーンの「闇に吠える街」の可能性あり
バド・パウエル : ジャズ・ピアノ巨人の一人、Love me or Leave Meの正規録音はない
ブラッド・ステインド・バナー : 讃美歌、あるいは南北戦争で南軍の旗の一つ


この注釈リストを作るだけでへとへとだし、読むほうももっと疲れただろうと思います。不足や間違いはあると思いますが、ご容赦いただきたい。これらのすべてがアメリカ人の常識とは思えないので、あくまでもディラン自身の個人的な記憶にしまわれていた、アメリカの近代文化史を、思いつくままに並べたみたいなところがあります。しかも、多くの言葉に二重の意味を持たせているようで、すべてを紐解くのは不可能とあきらめるしかありません。

少なくとも、1963年の「ダラスの暑い日」は当時のすべてのアメリカ人に強い衝撃を与え、ディランもまったく何も感じなかったということはないはずです。しかし、彼は50年以上の間、この事件に言及したことはありませんでした。

80代を目前としたディランは、自分のルーツとなるブルース、カントリー、ロックンロール、フォークなど、あらゆるアメリカの音楽を総括する作業を繰り返してきました。この曲も、それらの過程の一つだろうと思いますが、あえてダラスから始まるのは、心の底のどこかでずっと引っかかっていたことは間違いありません。

曲としては・・・メロディがあるのかないのかよくわからない。ディランが得意とする、ウッディ・ガスリー譲りの喋り主体のトーキング・ブルースとも違う。コード主体のピアノのゆったりとした伴奏に合わせてか、合わせてないのかディランが少しだけ節をつけて歌う、喋る、語る、呟く・・・みたいな、何と表現してよいのかわからない。

当然、批評家や音楽雑誌には賛否両論が巻き起こるわけですが、多くのミュージシャン仲間は絶賛しているし、なんとブルースシンガーのロリー・ブロックはこの曲のカバーを発表しています。

2026年9月21日月曜日

インフルエンザ情報


このところ、巷の話題の一つはインフルエンザです。

例年、10月後半からはやりだし、A型インフルエンザを中心に年末にピークを迎え、年明けはB型が主役で3月ごろまで続きます。

とは言っても、世相を反映して様々なパターン変化はあるもので、新型コロナウイルス感染症が広まった際には、世界中が感染予防に注力したこともあって、インフルエンザ感染数も減少していました。

その後、人々の活動が活発になるにしたがって、しだいに元に戻った印象ですし、そもそも流行のパターンも、流行入りが早まったり、ピークが分散したりとかなり変化したように思います。

今年は、8月中からインフルエンザの報告が目立ち始め、早くから流行が始まりそうだと話題になっていましたが、9月になって各地で流行入りが宣言されるようになりました。

これは定点医療機関と呼ばれる、全国で指定された約5千カ所の病院・診療所からのインフルエンザの感染数の報告をもとにしています。

週に1人以上で「流行開始」、10人以上で「注意報」、週に30人以上で「警報」とするのが一般的で、9月7日~13日の週で東京都は9.53、神奈川県は9.45。横浜市だけでは11.06となっています。いずれも前の週からほぼ倍増しており、急激に増加していることは間違いありません。

ウイルスの種類は、2009年に流行って「新型インフルエンザ」と呼ばれたウイルスが圧倒的に多く、従来流行の主体になっていた「香港型」は少数、またB型は現時点では出ていません。

いろいろな早期流行の理由が推察されていますが、厳しい暑さによる体力低下、エアコン使用による換気不足、南半球からのインバウンド観光客による持ち込みなどが原因とされています。

これらの動きを受けて、各自治体はそれぞれが定めているワクチン接種期間を早めています。
ワクチン自体は、通常10月以降に医療機関に届くのですが、ワクチン製造元の各製薬会社や医薬品問屋もそれに応じた対応をしています。

ワクチンさえあればいつでも接種することは可能ですが、その場合は公的補助対象者であっても全額自費になってしまいます。横浜市では、公的補助ができる接種期間開始を、10月1日から9月16日に前倒ししました。

当院では、通常10月の第2週頃から通院中の方を対象にワクチン接種を行っていますが、このような流れを受けて9月28日(月)から始められるように準備をしています。なお、使用するワクチンは通常のもので、高用量、点鼻タイプなどの取り扱いはありません。

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横浜市高齢者インフルエンザ定期予防接種

対象者 : 横浜市内に住民登録があり、接種日現在で次の1・2いずれかに該当する方
1. 65歳以上の方
2. 60歳から64歳までの方で、心臓、じん臓、呼吸器の機能、又はヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能に1級相当の障害のある方

接種に必要なもの :
住所、氏名、年齢を確認できるもの(マイナンバーカード、運転免許証など)
※60歳から64歳までの方は、身体障害者手帳や診断書など、障害の程度を確認できる書類

接種費用 : 自己負担額:2,300円

接種費用免除 : 
1. ご本人を含む同じ世帯にいる方全員が市民税非課税の方
2. 生活保護を受けている方(生活扶助基準の見直しにより保護廃止となった方を含む)
3. 中国残留邦人等の方で、支援給付を受けている方
※接種を受けようとする時に、それらを証明する書類の提出が必要です。後から提出されても自己負担分の返金はできません。詳しくは区役所等にお問い合わせください。

2026年9月20日日曜日

嵐 (Tempest)


「Tempest」は2012年リリースの同名アルバムに収録された、13分54秒におよぶ長大な叙事詩です。アルバム全体が高く評価されている一方で、この曲に関しては初めて聴くと長すぎると言う評もありますが、聴き進めていくとしだいにこの世界観にはまって興味が湧いてきます。


西の町に青白い月が上り 彼女は沈みゆく大きな船の悲劇を語った
4月14日のことだった 船は予言された輝く未来に向かって船出した
星空は明るく海は澄み渡り影の間を進むが約束された時間が迫っていた

灯りは静かで船は滑るようだ 紳士淑女たちは永遠の住処に向かっていた
頭上のシャンデリアが静かに揺れて 楽団が終わった恋の歌を奏でる
舞踏室で皆が楽しむ間 見張り番は居眠りをしてタイタニックが沈む夢を見た

いつものようにレオはスケッチブックに心に浮かぶ景色を描こうとしていた
その時キューピットの矢が胸に刺さると 彼は近くにいた女性の膝に崩れ落ちた
その時騒がしくなり良くない予感が彼の心に告げた ここにいてはいけないと
急いで後ろの甲板に行くと 水は3フィートの深さにもなろうとしていた

煙突が傾き足が重たく彼は渦巻く風の中を歩くが空は回って見えた
宇宙の口が開いたように船は沈んでいく 天国が呼ぶが天使たちは顔を背けた
通路の明かりは弱々しく点滅し すでに死んだ人の体が浮いていた

エンジンが爆発してスクリューが止まった ボイラーが破裂して船体が割れた
乗客は四方に飛ばされ呻いたりもがいたりしている 誰もが疲れ切っていた
わずかな時間ですべてが引き裂かれ 奇蹟に見放されてなすがままだった
船が45度に傾いた時 見張り番は船が膝をつくように沈む夢を見ていた

ベッドが滑り出した時ウェリントンは寝ていたがなんとかテーブルを押しやった
砕けたガラスが散らばり 彼は拳銃を手に取ったがいつまでもつか
部下や仲間の姿はなく 事の成り行きを静観していた
闇に包まれた通路は狭く 様々な悲しみを見たり聞いたりした
警報が鳴り押し寄せる波を押し戻そうと 人々は互いにしがみついた

母親と娘は愛と悲しみの祈りをささげ、氷のような海に飛び込んだ
富豪のアスターは妻に口づけをした これが人生最後の旅だとも知らずに
3人の男が暗闇で賭けをしていた 誰もその結果は語れなかった
兄弟がいろいろなことで争っていた 死のダンスをするかのように戦った
沈みゆく瓦礫から救命艇が下ろされ 人々は他人を押しのけて我先と殺到した

司教は人々に手を差し伸べたが、天に向かってこの者たちを救い給えと言った
娼館の主人は女たちを逃がしたが すでに世界が終わるのを目の当たりにした
泳げないジムは笑うしかなかった そして足の不自由な子に場所を譲った
彼は東に流れ星を見た 死があたり一面に広がっていたが少し心が安らいだ

水が閉めたハッチを破ってきて金色に輝く階段の下で人々は溺れた
レオはクレオに「おかしくなりそうだ」と言ったがすでに理性は失われていた
皆を救うために出入口を塞ごうとしたが、怪我した腕からは出血していた
花びらが散るようにすべてが消えた 魔術師が呪いが続く長い時間だった

船主はブランデーと共に沈んでいった 誰よりも遅い最後だった
他にも永遠に名を残せない多くの人々がいた 彼らは初めての旅だった
手遅れの事態の中で見張り番は夢を見ながら誰かに伝えようとしていた

船長は舵を握りしめ何とか息をしていた 彼は5万トンの鉄屑の中にいた
羅針盤を見ると針は下向きになっていて、船長は敗北を悟った
薄暗い光で「ヨハネの黙示録」を読みながら過去を想い涙した
善悪、貧富に関係なく、1600もの命が消え死神の仕事もやっとおちついた

魂は事を理解しようとしたが 神のなさることなどわかるはずがなかった
衝撃の報はすぐに世界に広まり、愛の炎は消えすべてが終わったのだった
見張り番はタイタニックが青く暗い海の底に消えていく夢を見ていた

(意訳 : 亜沙郎)


6/8拍子で、たったの12小節のメロディが延々と繰り返されるという、実にシンプルな構成の曲。サビは無く、転調とかテンポを変えるとか技巧的なことも一切ない。ディランの作曲能力に疑問を持ちそうになりますが、多少は歌い方というか、音符の取り方が変わるところがあるだけですが、これで14分近くもたせてしまうところが逆に凄い。

便宜上、適当なところで改行を入れましたが、実際は1行が一つのコーラスなので、歌詞は45番まであることになります。居眠りをしている見張り番が度々登場し、彼の夢の中の出来事かのようにストーリーが進行していきます。

ヒントになったものの一つは、ウィリアム・シェイクスピア。そうです、有名な戯曲のひとつである「テンペスト」です。内容は、弟に国を奪われ娘と孤島へ流された元ミラノ公が、魔術で嵐を起こし仇敵の船を難破させ島へ誘い出す。彼は様々な策略で復讐を果たそうとしますが、やがて相手を許し、和解して帰国を選ぶというもの。

そしてもう一つが当然「タイタニック号の悲劇」です。1912年、当時世界最大の豪華客船タイタニック号が処女航海中に北大西洋で氷山と衝突し沈没しました。救命ボートの不足などから1500人以上の乗客乗員が犠牲となり、世界に大きな衝撃を与えた事件です。1920年代に書かれたタイタニックについての古い曲のメロディを下敷きにしていることはディラン自身が認めています。

また、登場するレオは、レオナルド・ディカプリオのことで、1997年の映画「タイタニック」の映像イメージに強くインスパイアされています。他には史実に基づく実在の人物や逸話も登場しますが、大半はディランの創作です。このことについて、ディランは「真実かどうかより、何が起こるべきだったのか、何が起こりえたのかを語ることが歌を作るものとして大事にしている」と述べています。

2026年9月19日土曜日

高地 (Highlands)


ボブ・ディランは、不調の時期は自作曲は少ないし、作っても長い歌詞を考えることはほぼありませんでした。1997年リリース「Time out of Mind」は、長く続いたスランプから抜け出たことを宣言したようなアルバムでしたが、アルバムの最後に置かれたのが「Highlands」でした。

長さは16分31秒で、ディラン史上第2位の長さです。抑揚の少ないシンプルなブルース・コードにのせて、ひたすら語るように歌い続けられます。


僕の心があるのは優美なハイランド 森にはスイカズラ
アバディーンの小川の岸にはブルーベルが咲く
その気になったら行くつもりだ

夢で夜通し窓が音をたてた すべては見たままだ
朝、目覚めると、いつもの古いページを見つめる
それはいつもの永遠の競争であり、いつもの束縛された生活

欲しいものは無いし奪いたいものも無い
ブロンドと偽物の違いはわからない 謎だらけの囚人の気分
誰か時計の針を戻してくれないか

旅をしていてもあの場所を忘れられない 「家」に着いたらそこにいる
風がリズムに乗ってトチノキに呟く 心はハイランドにある
一歩ずつ向かっていこう

大きな音でニール・ヤングを聴く 誰かがうるさいと怒鳴る
次の場面からその次へと漂うような気分だ
これは一体どうしたことかと考えてしまう

狂気が魂を揺さぶり 君は僕がまともじゃないと言うだろう
良心があったらおかしくなっていた どうすればいいんだ
たぶん質屋にでも預けるしかないな

僕の心があるのは夜明けのハイランド 美しい湖には黒鳥
大きな雲は揺れる荷車みたいだ 心はハイランドにある
行き先はそこしかない

ボストンのレストランで どうしたいのかわからないでいた
わかっているのかもしれないけれど確信がない
店にはウエイトレスと僕しかいない

誰もいないのは祝日のせい 僕が座ると彼女がやってきた
彼女は可愛くてスタイルが良く、注文は? と聞いてきた
うーん、半熟卵あるかな、と僕は言った

お持ちしたいけど売り切れ、来るのが遅かったわ、と彼女
あなたは絵描きでしょう 私を描いてとも言った
でも、僕は想像だけで描くことはできないんだ

あら、私はあなたの目の前にいるのよ 悪いけどスケッチブックが無い
彼女はナプキンを取り出して、じゃあ、これになら描けるわねと言う
悪いけど鉛筆が無いんだ

彼女は耳に引っかけていた鉛筆を取り出した さあ描いてみて
いくつか線を描いてから彼女に渡したが投げ返してきた
これ全然私に似てないじゃないの

お嬢さん、これは間違いなく君なんだ
冗談はやめて あなたは女性作家の本なんて読まないのね
なんでわかるんだい それとこれとは関係はないさ

あなたは読書家にはみえないわ 何か読んだことがあるの
エリカ・ジョングなら読んだよ、と言ったら彼女は行ってしまった
店から出たが、誰もどこへも行こうとしていなかった

僕の心があるのは馬や猟犬と共にハイランド
町から離れた国境より遠い 矢が放たれる音と弓が弾ける音がする
そこへ行く道はひとつしかない

毎日同じことばかり かつてないほど遠くなった気がする
人生には学ぶには遅すぎることがある 僕は道に迷ったらしい
何度か角を間違って曲がったのだろう

苦悩を忘れた人々が公園にいる 彼らは派手な服を着て飲み歌っている
魅力的な女性を連れた若い男たちだ 彼らと入れ替わりたい
できるものなら今すぐに

自分で独り言を言いながら 野犬を避けて通りを横切る
今の自分には革でできたロング・コートが必要だ
誰かが有権者登録したか聞いてきた

太陽が昇ってきて僕を照らす でもいつもとは何か違う
楽しい時間は過ぎ去り話したいことも無くなった
見直すとすべてがはるか遠くになってしまった

僕の心があるのは夜明けのハイランド あの丘の遥か向こう
たどり着く道はいつか必ず見つけることができるだろう
でもすでに心の中にあるから、今は満足している

(意訳 : 亜沙郎)


この歌詞で繰り返される「私の心はハイランドにある (My heart's in the Highlands...)というフレーズは、18世紀後半のスコットランドの国民的詩人ロバート・バーンズ(Robert Burns)の有名な詩「My Heart's in the Highlands」をモチーフとして引用されています。37歳で早世したバーンズの原詩は、故郷の高地(highland)への郷愁を、理想郷として謳ったものとされています。

アバディーンは、スコットランド北東部の地名。そもそもスコットランド北部は、一般にハイランド地方と呼ばれています。ニール・ヤングは、言わずと知れたフォーク・ロック歌手。エリカ・ジョングはディランと同世代の作家で、処女作「飛ぶのが怖い」が有名です。スイカズラ、ブルーベル、トチノキはいずれも、比較的気温が低い地域の森を作る植物です。

自分の不満だらけの今の生活から抜け出したいわけですが、おそらくレストランに入って妄想の世界に引き込まれてしまったようです。店から出ると「誰もどこへも行こうとしない」、つまり夢みたいなハイランドにこだわっているのは自分だけということ。そして夜明けとともに夢は消え、現実を受け入れるしかないことに気が付くのです。

とにかく長い。さすがにディランもライブで披露するときは、歌詞が抜けたり忘れたりしてその場で「作詞」したりと苦労したようです。内容的には、ディラン自身の境遇が重なっているように思えますが、理想的な生活(心のハイランド)を目指したいが、なかなかたどり着けない男のストーリーとゆったりしたブルースが見事にはまっています。

ディランの別バージョンは、「The Bootleg Series Vol.17」に同曲のスタジオ・アウトテイクとライブでの演奏が収録されています。また、これだけ長い曲にもかかわらずギタリストのスティーブン・マイケル、ノルウェー語に翻訳したアルヴェ=グンナー・ヘロイ、ポーランド語に翻訳したdylan .plの3組のアーティストによるカバーがあります。

2026年9月18日金曜日

リリーとローズマリーとハートのジャック (Lily, Rosemary and the Jack of Hearts)


1975年リリースの「Blood on the Tracks」は、ボブ・ディランの名盤として不動の地位を保っていますが、何しろディランの創作意欲が極限に高まった時期のアルバムです。だからというわけではないでしょうが、収録曲は全般に長めのものが多い。

「Idiot Wind」が7分48秒で、主として妻との関係が悪化したことに端を発する内容のように思われてしまうのですが、ディラン自身はやり過ぎたと反省しているらしい。もう一つ長尺なのが8分51秒のこの曲で、ある意味典型的なディランの寓話型の歌詞になっています。


祭が終わりギャングは次の計画を始めていた 壁を壊す音以外はキャバレーは静かだ
外出禁止令は解除され賭博場は閉店 まともな奴は皆町から出ていった
彼は入口に立っている まるでハートのジャックのように

彼は鏡の間の奥に行くと、全員の席を用意するように言った
全員が一瞬だけ振り返った 彼は見知らぬ男にショーの時間を尋ねた
彼は角に行き顔を伏せた まるでハートのジャックのように

舞台裏で女たちがポーカーをしている リリーの手にはクイーンが2枚
通りに人が集まり始め窓は開いている 穏やかな風は室内でも感じた
リリーが引いた次のカードはハートのジャックだった

ダイヤ鉱山の持ち主ビッグ・ジムは馬鹿じゃない いつも立派な身なりだ
用心棒を連れ銀のステッキを持ち髪型はきまってる 欲しければ何でも手に入る
だが用心棒も銀ステッキもかなわない ハートのジャックには

ローズマリーは馬車で町に向かう 王冠を外した女王みたいに裏から忍び込んだ
派手なつけまつげでジムに遅れて御免なさいと囁く でも彼は聞いちゃいない
彼がぼんやりと宙を見つめている先にはハートのジャック

メキシコで見たか、あるいは指名手配写真の中の顔だとジムは考えた 
その時観衆が足を鳴らし灯りが消えた 暗闇に残ったのは彼とジム
彼らが見ていたのは蝶が引き当てたカード それはハートのジャック

リリーは王女のように可愛い やるべき事をして微笑みは輝いた
家庭は複雑でいろいろな恋を経験した いろいろな男たちといろいろな場所で
でも彼女はこんな男は初めて会った それはハートのジャック

いつのまにか判事が食事をしていた 壁を壊す音は相変わらず続いている
リリーの指輪はジムからの贈り物 リリーと王様の間を裂くものはない
いや、ないはずだった ハートのジャックを除いて

酔ったローズマリーは自分が映るナイフを見る ジムの妻役に疲れ果てたのだ
死のうとしたこともあるけれど、その前に一つでも善いことをしたかった
彼女は未来をみていた ハートのジャック次第で

ドレスを脱いだリリーは彼に言う 運命ね、わかってたでしょう?
ペンキ塗りたての壁に注意して 聖人みたいなあなたに生きて会えてよかった
廊下の向こうから足音がする ハートのジャックを追いかけて

舞台監督はいらついていた 何か変だ 嫌な予感がする
判事を呼びに行ったが彼は酔いつぶれていた 修道士役の俳優が通り過ぎた
他にまともな俳優はいない ハートのジャックを除いて

リリーは愛する男に抱きついた 彼女を追いまわす嫌な男は忘れていた
彼は会いたかったという彼女の言葉を信じたが、ドア越しの嫉妬は知らなかった
それもまたありふれた出来事にすぎない ハートのジャックの人生にとって

詳しくはわからないけど事態は急展開 ドアが開いて拳銃が向けられた
落ち着いた様子のビッグ・ジムだった 隣には目が据わったローズマリー
でもローズマリーの心はジムから離れていた ハートのジャックへと

二部屋向こうでついにギャングは壁を壊して隣の銀行から大金を手に入れた
ギャングたちはまっ暗な川辺で、もう一人の仲間を待っていた
やるべきことがあったが動けない ハートのジャック抜きでは

明日は死刑執行の日 ナイフが刺さったビッグ・ジムの死体が横たわっていた
絞首台のローズマリーは落ち着いていた 今日の判事はしらふだ
その場から姿を消していたものが一人いた ハートのジャックだ

キャバレーは空っぽで修理のため休業中という看板が出ていた
素に戻ったリリーは、忘れていた父親、ローズマリー、そして法のことを考えた
でも何よりも心にあったのはハートのジャックのことだった

(意訳 : 亜沙郎)


読んでみると、これはさすがにわかりやすい。完璧なストーリーがあって、起承転結がはっきりしています。軽快なリズムに乗って、この長い話がするすると語られていきます。

イメージとしては、まさに西部劇の世界。埃が舞うメインストリートの両側に、酒場、雑貨屋、保安官事務所、ホテル、売春宿、賭博場とキャバレー、そしてその隣には銀行が並んでいる。

ギャングたちは今では閉店している賭博場の壁をぶち抜いて隣の銀行から金を奪おうとしている。その時、町の名士であるビッグ・ボスが妻のローズマリーを伴って店にやって来るのですが、ローズマリーは夫がキャバレーの踊り子のリリーにご執心なのが面白くない。しかしリリーが夢中なのはハートのジャック。そして悲劇が起こってしまいます。

ここで気になるのは、ハートのジャックとは何者なのかという点です。おそらくギャングのボスで、リリーとローズマリーが一目ぼれしたくらいですから、おそらく相当なイケメンで恐ろしく腕っぷしのきく男。これだけのストーリーが作れるのに、実際の映画の脚本となるとからっきしダメなのがディランの不思議な所です。

深読みする必要はありませんが、印象派絵画みたいな歌詞だけでなく、こういうのもあるという良い見本かなと思います。そのわかりやすさもあってか、長い歌のわりには何人かによってカバーされています。ジョーン・バエズはライブ・アルバムに収録し、他にもメアリー・リーズ・コルベット、トム・ラッセルらによって聴くことができます。

2026年9月17日木曜日

ヨハンナの幻影 (Visions of Johanna)


1966年リリースされたボブ・ディランの名作「Blonde on Blonde」は、2枚組というだけあって長い曲が多い。何と言っても、レコードの最後の1面を占める「Sad Eyed Lady of the Lowlands」は11分23秒で、新婚の妻サラへの賛歌。7分5秒の「Stuck Inside of Mobile with the Memphis Blues Again」も、ディランの哲学がよく表れていると言われていますが、ここでは「Visions of Johanna」を取り上げます。時間は7分33秒です。


不穏な夜に、皆は認めようとはしないが、俺たちは行き詰っていた
ルイーズは雨を両手ですくって抗って見せてと君に言う
屋根裏の灯が漏れてきて、部屋の暖房のパイプが音を立てている
ラジオから静かに懐かしい音楽が流れ、まったく止める気にはならない
ルイーズは彼女の恋人と抱き合うけど、俺の心はヨハンナの幻影で一杯

目隠し鬼をして空き地で遊ぶ女たち、地下鉄ではしゃぐ娼婦たち
夜間の警備員がライトをつける音が聞こえた
彼は、自分と彼女たちのどっちが狂っているのか考えているようだ
ルイーズはそばにいて大丈夫、でもきっぱりとヨハンナがいないと言う
電気の亡霊が吠えて、ヨハンナの幻影が俺の場所に居座っている

本気で困っている迷子が自分の不幸を自慢して、むしろ楽しんでいるようだ
彼女の名を口にすると、迷子は去り際のキスの話をしてきた
役に立たないわりに図々しく、壁に向かってどうでもいいことを呟いている
何て言えばいい? 本当に生きていくのは大変だ
夜が明けるというのにヨハンナの幻影が俺を眠らせてくれない

美術館では無限について議論され、救いなんてこんなもんさと聞こえてくる
でもモナリザは憂鬱な旅をしていたことは、あの微笑みを見ればわかる
能面のような女たちがくしゃみをすると壁際の花が凍ってしまう
俺の膝はどこだと口髭男が言い、ラバの首には宝石と双眼鏡がかかっている
そのすべてが残酷に見えるのはヨハンナの幻影のせいなのだ

伯爵夫人のお気に入りの商人は、独りで生きてる奴がいたら祈ってやると言う
でも、あんたは何も見えてないというのが、彼を迎える時のルイーズの口癖
マドンナの姿はなく舞台衣装があった場所には、錆びた空の檻がある
バイオリン弾きが通りで魚を運搬する車の後ろに「借金完済」と書き込んだ
俺はハーモニカの音に気持ちが昂りヨハンナの幻影だけが残されていた

(意訳 : 亜沙郎)


この曲の歌詞は、作詞家としてのディランの最高傑作とまで称賛する評論家もいるくらいですが、やはり凡人にはその真の意味を簡単には理解させてくれそうもありません。

最初の節は今の現実。ルイーズという身近な女性と一緒に安ホテルかどこかにいる情景ですが、おそらくルイーズは実際の結婚したばかりの妻のサラがモデルでしょうか。ヨハンナは目の前には実在しない理想の象徴で、この時はすでに別れた元恋人(おそらくジョーン・バエズ)が想定されます。

となると、結婚しておきながら元カノが忘れられないという、常人ならかなり我儘な男のうじうじしたボヤキみたいなことになる。そこに芸術性が生まれてくるのがアーティストなんですが、話を複雑にしているのはルイーズ、ヨハンナ、俺の三人以外に「君」とか「ルイーズの恋人」とかまで出てきて、登場人物が多いところ。

これらの場面をキリストの「最後の晩餐」に例えて深読みしている方もいたりしますが、少なくとも人物が多いことで「俺」の罪を分散して、直接的にルイーズから非難されないようにしているように思えます。

とは言え、現実から始まり、次第に幻影に支配されていく割合が増えていくので、後半になるほど不思議な情景が広がっていて、単純な三角関係では読み解けません。現実の女性によって助けられることはなく、迷子になったりするのも自分、美術館も慰みにならないのも自分ということでしょう。これらの隠喩的な表現は、ディラン独自の感性から来る物で、それまでのポピュラー音楽史にはなかったものとして評価されてしかるべきと思います。

もともとニューヨーク・セッションでThe Bandを従えて録音されたのですが、「The Bootleg Series Vol.12 Cutting Edge」にいくつものテイクが含まれていて、ミディアム・テンポ、アップ・テンポ、ブルース風、スロー・テンポ、カントリー・ロック調など、いろいろなパターンが17テイクも試されました。進捗状況に業を煮やしたプロデューサーの提案で、ナッシュビルに移動して、ようやく納得のテイクが仕上がったというエピソードが有名です。

1966年のイギリス・ツアーでは、ほぼすべての公演で前半のアコースティック・ステージで弾き語りで演奏されていて、現在ではすべてがリリースされています。複雑で長い歌詞をどうやって覚えられるのか尋ねられたディランは、この曲については言葉ではなくイメージで覚えているので簡単だと答えています。

2026年9月16日水曜日

冷やしかきたまにんにく辛口スタミナラーメン @ セブンイレブン


とにかくタイトルが長い。

中身の説明を全部書き出したらこれになったみたいな感じです。

で、結局、これを短く言えば。。。

元祖ニュータンタンメンの冷たいバージョン。

川崎、横浜北部ではけっこう知られたラーメンで、自分も好きなんですが、サンヨー食品が味を再現したインスタントの袋麺とカップ麺も発売されています。

特徴は・・・まさにこのタイトル通りです。

ただし、辛いといっても、それほどではない。

また、熱々で食べると味も際立つのですが、冷たいのはどうなのか・・・正直、いまいちです。

まず、辛さが目立たない。にんにんくも真ん中にドカンっとありますが、万人向けにそれほど匂わないタイプを使っているのか、あまり主張してきません。

味が悪いわけではないのですが、元祖ニュータンタンメンだとおもって食べると「あれっ?」となる。

もっともどこにも元祖ニュータンタンメンとは書いてないので、こっちの勝手な思い込みがわるいわけですけどね。