1972年のUNESCO総会にて採択された世界遺産条約では、世界の各地域の21か国から選出されたメンバーにより世界遺産委員会が年に1回開催され、その場で遺産の審議や世界遺産基金の運用について検討を行います。なお、条約締結国が参加する世界遺産条約締約国会議はUNESCO総会に合わせて2年に1度の開催となっています。
世界遺産委員会で推薦を受けた遺産を登録するためには、「顕著な普遍的価値」があることが前提条件にあり、その上で10ある登録基準の最低1個以上を満たす必要があります。ここでは順番に登録基準についてまとめます。
文化遺産の登録基準
(i) 人類の創造的資質や人間の才能を示す遺産
世界で知られた文化遺産の大多数がこれにあたり、製作者は問わない。(i)のみで登録されているのは、タージ・マハール(インド)、シドニー・オペラハウス(オーストラリア)、プレア・ビヒア寺院(カンボジア)の3つだけ。
(ii) 文化の価値観の相互交流を示す遺産
交易路や大きな文化・文明の接する位置に存在するもので、建築物・記念碑の他に都市計画・景観設計・科学技術も対象としている。
(iii) 文化的伝統や文明の存在に関する証拠を示す遺産
古代文明に多いが、人類史に残る帝国や時代についても対象となる。
(iv) 建築様式や建築技術、科学技術の発展段階を示す遺産
特徴的な建築の多くが対象となるが、人類の歴史上「代表的な段階」と結びついていることが重視される。
(v) 独自の伝統的集落や、人類と環境の交流を示す遺産
存続が危ぶまれている集落や景観、伝統的な土地利用、さらには人類と環境の交流も含まれる。
(vi) 人類の歴史上の出来事や伝統、宗教、芸術などと強く結びつく遺産
信仰の対象であったり、芸術家に着想を与えたり、歴史上の重要な出来事と強く関連するような、無形の要素が重視されるもの。無形要素の影響は証明する必要はないが、他の基準と合わせて用いることが望ましい。
自然遺産の登録基準
自然遺産には、無生物または生物の生成物・生成物群からなる特徴的な自然の地域、地質学的または地形学的形成物及び脅威にさらされている動植物の生息域・自生地として区域が明確なもの、自然の風景地及び区域が明確な自然の地域が含まれる。
(vii) 自然美や景観美、独特な自然現象を示す遺産
有名な自然遺産の多くはこれにあたる。客観的な現象と評価の難しい主観的な美が混在している。
(viii) 地球の歴史の主要段階を示す遺産
恐竜や古代生物の化石遺跡、現在進行中の重要な地質学的プロセスを含む地層や地形が対象となる。
(ix) 動植物の進化や発展の過程、独自の生態系を示す遺産
現在進行中の生態学、生物学の代表例が含まれる。
(x) 絶滅危惧種の生息域でもある、生物多様性を示す遺産
自然環境の変化や開発などの影響を受けやすいため、危機遺産リストに収載される自然遺産の多くはこれにあたる。
複合遺産
(i)~(vi)のうち1つ以上、および(vii)~(x)のうち1つ以上が認められる遺産は複合遺産とみなされる。事前調査は文化遺産要素についてはICOMOS、自然遺産要素についてはIUCNが行っている。
危機遺産
世界遺産リストに登録され危機に晒されているもの。その脅威が人間の関与により改善可能であり、保全のために大規模な作業が必要で、世界遺産条約に基づく援助が養成されている場合に、世界遺産委員会はその遺産を危機遺産リストに収載する。
負の遺産
世界遺産条約では「負の遺産」は定義されていない。近現代の戦争・紛争、人種差別など、人類が犯した非人道的な過ちを記憶にとどめ将来への教訓とする遺産を便宜上「負の遺産」と呼んでいる。













