2022年1月31日月曜日

レッド・オクトーバーを追え! (1990)

トム・クランシーはアメリカのスリラー小説家で、スパイ物、軍事物を得意としました。彼の代表的なシリーズがCIAエージェントの活躍を描く「ジャック・ライアン」のシリーズで、自身の処女作であり、かつシリーズ第1作となったのが「レッド・オクトーバーを追え(1984)」です。

監督は「ダイ・ハード」シリーズに深く関与するジョン・マクティアナンで、比較的典型的な人の動きが限定されやすい潜水艦スリラーですが、全体の動きをうまく取り入れて展開を盛り上げることに成功しています。

旧ソビエト連邦時代末期、新たに建造されたモンスーン級の巨大潜水艦(大型核兵器を搭載)、レッド・オクトーバーが処女航海に出発します。ラミウス艦長(ショーン・コネリー)は、出航早々にKGBの同行員プーチンを殺害します。ラミウスとボロディン副長(サム・ニール)、そして一部の士官らは、この艦を奪ってアメリカに亡命する計画だったのです。

出航直前に、ラミウスはモスクワに亡命を宣言する手紙を出していたため、ソビエトの潜水艦、戦艦が後を追うために集結しました。しかし、レッド・オクトーバーにはスクリュー以外に水流を排出して進むキャタピラー装置が初めて組み込まれ、通常のソナー探査では発見できないのです。

アメリカ政府、軍関係者は、密かにアメリカに攻撃を仕掛けるのでは疑いますが、CIAの分析官、ジャック・ライアン(アレックス・ボールドウィン)は、新型潜水艦の情報を掴みさまざまな状況からラミウスが亡命希望なのではと考え接触を進言するのです。

一方、レッド・オクトーバー内には、正体不明のKGB工作員が妨害工作を仕掛けていました。何とか、レッド・オクトーバーの位置を掴んだアメリカの原潜ダラスに乗り込んだライアンは、うまく一般乗組員を下船させ、ダラスのマンキューソ艦長(スコット・グレン)らとついにレッド・オクトーバーに乗り込みますが、そこへソビエト原潜による魚雷攻撃を受けたり、妨害工作員との戦闘を余儀なくされるのでした。

冒頭、ソビエト艦内ではロシア語が話されていますが、本筋に入るところからは英語が使われています。どちらも母国語ではない日本人からすると、大きな違和感は有りませんが、アメリカ人からすれば少し気になるのかもしれません。

潜水艦同士の戦闘はうまくらしさが出ていて、それなりに緊迫感があります。地上での駆け引き、潜水艦内でのアクションなどを含めて、バランスの取れた配分で間延びした感じはほとんどありません。

ラミウス役は、当初予定されていた俳優がケガしたため、ショーン・コネリーに回ったもの。往年の007臭さを封印して銀髪の鬘で頑張っています。ライアン役は、当初ハリソン・フォードにオファーしましたが断られ、アレックス・ボールドウィンが起用されました。最近、撮影中の実弾誤射で名前がクローズ・アップされましたが、もともと渋い脇役が多いボールドウィンですから、ここでもちょっと存在が薄いかもしれません。

2022年1月30日日曜日

ボンバ米


ボンバ米は、スペインで主として栽培されている米。別名、バレンシア米とも呼ばれています。

一般的な日本の米に比べて、ちょっと小粒な感じで、丸っこい。一番の特徴はアミロペクチンの含有量が多い事・・・らしい。

アミロペクチンとは、ブドウ糖(グルコース)が枝分かれしながら多数つながった構造の事・・・らしい。

ブドウ糖はエネルギーの基本ですけど、六炭糖という炭素原子が六角形につながった基本構造を持っています。五炭糖の代表が果糖(フルクトース)で、ブドウ糖と果糖がつながった物がショ糖(スクロース)で、砂糖の主成分になる。

ブドウ糖が直線的に多数つながった物はアミロースで、でんぷん(片栗粉など)の主成分で、お湯に溶けます。ところがアミロペクチンは水分を多く吸収し温めても解けにくい性質がある・・・らしい。

と言うことは・・・煮ると日本米だと崩れてお粥になりますが、ボンバ米は煮崩れせずパラパラ感が残るので、そうです、パエリアに最適というわけ。

パエリアの話になると、以前放送された「嵐にしやがれ」のMJ倶楽部でのパエリアがしばしば話題になるんですが、自分もこの放送を見て開眼した一人。

ただし、今までは日本米を使っていました。何故? って、ボンバ米は、スーパーで売っていないし、そもそも割高だから。

先日、せっかくパエリア用の鉄鍋を用意したので、どうせならお米もML倶楽部で推奨された本場スペインの物を使ってみようということで、早速Amazonでポチリました。

高いのは2000円/kg以上するんですが、これは1600円/kgで比較的安い方。とは言え、日本米なら高級なものでも600円/kg程度ですから、やっばり値が張ります。

さてさて、これでどんなパエリアができるか、楽しみ、楽しみ。


2022年1月29日土曜日

めざし


目を刺すから目刺。

たくさんの小さいイワシを、目に藁を通して束ねて干したものです。少し大きめのイワシを束ねるときは、「頬刺(ほおざし)」と呼ばれていました。さらに大きいものは、一匹ごとに乾燥させる「丸干し」です。

昭和的なおかずで、しばしば貧しさの象徴みたいな扱われ方をしていましたが、自分もアパート暮らしを始めた頃は、魚屋さんの店先に並ぶイワシには随分とお世話になりました。

年々、漁獲量が減り、今ではイワシは高級魚並みの扱いに変わってきました。安い食材という固定観念から抜け出せない昭和人としては、イワシにそんなにお金を出すの? と思ってしまいます。

スーパーで、すでに焼いてある目刺のパックを見つけたので、久しぶりに食べてみたくなった。これで500円くらいで、やっぱり高いなと思いましたが・・・

頭から尾まで丸ごと全部食べれますし、固いけど噛めば噛むほど味が出てきて、やっぱり日本人的に美味しいです。栄養も豊富で、悪く言うところがありませんね。


2022年1月28日金曜日

ステキな金縛り (2011)

三谷幸喜が、演出家、脚本家から映画監督の世界に進出して、もしかしたら一番ノリノリの作品となったのがこちら。日常的な世界にありえないファンタジーを持ち込んだミタニ・ワールドの典型的な構図が見事に映像化された感じがします。

落ちこぼれ的な弁護士、宝生エミ(深津絵里)は、ボスの速水(阿部寛)から最後のチャンスとして、面倒な殺人事件の弁護の仕事をまわされます。何と被告人が主張するアリバイが、山奥の宿屋で幽霊にのしかかられて金縛りにあっていたというものだったのです。

エミは宿屋に出かけて夜になると、幽霊の更科六兵衛(西田敏行)が登場しました。エミは六兵衛に法廷で証言するように頼み込みます。しかし、幽霊ですから日が暮れないと現れることができない。しかも、裁判では、誰にも六兵衛の姿は見えず声は聞こえない。

裁判の検事は小佐野(中井貴一)は、超常現象などは一切信じないのですが、どうも六兵衛が見えているっぽい。エミは、六兵衛の姿が見える人は、最近ついていないことが多く、身近に死を感じていて、そしてどうやらシナモンの香りを好む人らしいとわかります。

小佐野が可愛がっていた最近死んでしまった愛犬の霊を連れてきて、ついに小佐野に幽霊の証言を認めさせたのですが、小佐野は冷静に六兵衛の証言の信憑性に疑いを投げかけます。さらにあの世の公安、段田(小日向文世)が登場して、この世を騒がしくしている六兵衛を連れ戻そうとしてくるのです。しかし、六兵衛に励まされ自信を持ったエミは、事件の真相そのものを探り出し六兵衛無しの裁判に臨むのでした。

竹内結子、山本耕史、浅野忠信、市村正親、草彅剛、戸田恵子、生瀬勝久、佐藤浩市、篠原涼子、唐沢寿明、深田恭子などなど・・・もう大勢の有名所がチョイ役で登場するのも見所。彼らの使い方は上手で、メインのキャラクターを霞めない程度に、それぞれが存在感をちゃんと残しています。

形式的には裁判を中心として法廷劇みたいなところなんですが、一定の条件を満たした人にしか見えない幽霊が証人というところから起こるドタバタのコメディ。特に、実に可愛らしい深津絵里と、無念を残し幽霊になった西田敏行の二人の演技が光ります。

ただし、見える人たちには一定の心の足かせみたいなものがあって、ドラマとしての深みを作っているところは脚本家としての三谷の真骨頂。ずっと六兵衛を見ることができていたエミが、裁判を通して自分に自信をつけたことで見ることができなくなったというところなんかうまいもんです。

ただ、(三谷らしい)こういう最初から笑わせるぞという意気込みも見え隠れして、はまる人とはまらない人がはっきり分かれるところなのかもしれません。この後の作品では、この意気込みだけで空回りしてしまう感じがありましたね。

2022年1月27日木曜日

自宅居酒屋 #48 ブロッコリーとベーコン


ブロッコリーは、ボリューム感のある野菜ですが、和風、中華でも洋風の味付けでもなじみやすく、いろいろと楽しめます。

今回は余っていたブロックのベーコンと一緒に炒めただけ。

ベーコンを炒めて、味と彩を良くする同じく余っていたトマト1個も追加。塩コショウとマヨネーズを適当に入れて味を整えます。

ブロッコリーは湯がきすぎるとへなへなになるので、お湯が沸騰して1分程度で取り出して水を切ります。

全部を混ぜたら、後は全体がなじむまで1分程度炒めるだけ。もう、わざわざ説明するまでもないようなレシピです。

調理時間も10分とかからない。簡単で時短のメニューは、冷蔵庫の整理にちょうどいいということですね。

2022年1月26日水曜日

ダンスウィズミー (2019)

ユーモアを盛り込んで人気の三谷幸喜は、劇団員から出発し、脚本家となり、自らメガホンを取るようになった人。それにに対して矢口は、アマチュアの映画製作から始めたので、自ら脚本も含めて何でも担当するのが普通のスタイル。

三谷と矢口の映画の中での「笑い」は似ていて、両者とも比較的自虐的なネタでシニカルなユーモアを作り出すことが多い。三谷は、笑いを作るためにその場のシーンを作り出し、しかもいかにもおかしな人物を登場させるのですが、矢口の場合の「笑い」は自然発生的で、ストーリーの中に溶け込んでいる感じがします。

現在のところ、矢口史靖監督の最新作がこれ。2016年に公開された多くのアカデミー部門賞を独占した「ラ・ラ・ランド」を見た矢口が、人が急に歌って踊りだすミュージカルのシチュエーションに違和感を感じたことがきっかけで、自分なりにその答えを探すのがテーマとなっています。

鈴木静香(三吉彩花)は大手商事会社に勤めるOLですが、人気者だった小学生の時に学芸会のミュージカルでの失敗がトラウマになっている。姪っ子も同じように学芸会のミュージカルが怖いと思っていたので、うらぶれた催眠術師、マーチン上田(宝田明)に自信が持てるようになる催眠術をかけてもらうことに。

ところが催眠術にかかったのは静香の方で、音楽が聞こえてくると場所・状況などおかまいなしに、歌って踊ってしまうようになってしまいました。人から笑われ、レストランでは多額の弁償金を請求され、なんとか上田を探し出し催眠を覚ましてもらうことにします。

上田を探すために興信所に行くと、上田のいんちき催眠術の助手をしていた斎藤千絵(やしろ優)と鉢合わせ。二人は探偵の渡辺(ムロツヨシ)の情報により新潟に向かいますが、一足遅く上田は秋田に。途中で知り合ったストリート・シンガーの山本洋子(chay)と路上ライブで小銭を稼ぎながら秋田に向かいますが、またまた間に合わない。

次の札幌で、ついに上田を捕まえ、全員がミュージカルのショーのようにステージで歌い踊りますが、上田の「音楽が終わると催眠が解ける」といった通り、歌い終わった静香はやっと歌と踊りから解放されるのでした。でも、静香はこの短い旅の中で、本当に大切なことは何かがわかったのでした。

主演した三吉彩花は、もともとアイドルから出発し、早くから女優業に転向したようです。映画中のダンス・シーンはすべて自ら踊っていて、身長が高く手足が長く見えるので見栄えが良い。前半は、まさに三吉のダンスを楽しむ映画というところ。

中盤からは、いわゆるロード・ムービーとなり、行く先々で出会う変わった人たちとの交流が描かれていきます。特に一緒に旅をすることになる、ものまねタレントのやしろ優とのコンビがGOOD。やしろ優のうらぶれた感がなかなか良く、俳優経験は多くないはずですが、三吉とのコントラストがうまく出ているようです。

昔は人気があったけど、今は落ちぶれたしがない催眠術師兼手品師という役どころを大御所、宝田明が演じているのもなかなかうまいキャスティングです。会社のOL連中の憧れの的だけど、実はちょっと怪しいイケメンに三浦貴大。ムロツヨシは、もう少し役に重要性を持たせてもよかったかもしれません。

そもそもの矢口監督の違和感は、催眠術で無理やりという理由なので、あまり解決にはなっていません。そもそも。ミュージカルとはそんなものだということなので正解は特に無くて当たり前。この映画はミュージカルではありませんが、旅を通して人として静香が成長していく物語という意味では一定の評価ができそうです。

2022年1月25日火曜日

スウィングガールズ (2004)

日本のエンタメ邦画の牽引する矢口史靖が、「ウォーター・ボーイズ(2001)」に続いて放つ夏青春コメディ。

岩手県が舞台。高校の吹奏楽部が野球部の応援で食中毒になって、落ちこぼれの鈴木友子(上野樹里)や斉藤良江(貫地谷しほり)は、夏休みの補習に出るかわりに臨時の楽団を始めます。でも、正規のメンバーが戻って来てお払い箱になってしまう。

一度楽器を手にした友子たちは、その楽しさに魅了されバイトで貯めたお金で中古の楽器を集めました。最初はグダグダだったんですが、ジャズが好きなだけで楽器ができない小澤先生(竹中直人)のアドバイスで、しだいにバンドらしくなってきました。

市の音楽祭に出場応募したものの、友子のミスで応募締め切りを過ぎてしまい出れなくなってしまいます。友子は出れないことをなかなか言い出せず、バンドは出発しますが、雪で出場辞退の学校が出たことでぎりぎり間に合いました。演奏を始めると、観客もしだいにノリノリになって会場全体が音楽に酔いしれ、友子たちも大満足で終わるのでした。

バンド唯一の男子は平岡祐太、大人しくて目立たないけど上達の早い詩論ボーンは本仮屋ユイカ、他にも吹奏楽部の先生に白石美帆、吹奏楽部リーダーに高橋一生、友子の父は小日向文世、母は渡辺えり子、楽器店店員は江口のりこ、音楽教室の先生に谷敬などなど、知られた反優さんがたくさん出てきます。

出演者のうち楽器がもともと扱える人はほぼ皆無だったため、撮影の3か月前から猛特訓があり、映画の中での演奏は実際に俳優たちが頑張って実演したらしい。確かにプロの演奏としては聴き劣りしますが、気持ちで乗り切った感じがあって十分に楽しめるレベルであることに拍手します。

最後は、音楽祭の審査結果とかまでやらず、感動の演奏が終わったところで幕というのも良い。こういうのは勝ち負けをはっきりさせると、どっちに転んでも不満が残るかもしれません。

2022年1月24日月曜日

ビルの修繕工事 エレベーター


クリニックのあるベルヴィル茅ヶ崎ビルは、只今、修繕工事中です。

それで、今回明らかに変わったことの一つは・・・

エレベーターの各階の扉が色分けして塗られたこと・・・だと、思うんですよね。

思う・・・というのは、実は以前がどうだったかはっきりと思い出せない。人間の記憶がいかに曖昧かということ。特にふだん日常的に見慣れてしまうものに対しては、注意力がまったく及ばない。

写真は左から地下、1階、赤い2階、緑の3階、そして青い4階です。

たぶん、以前は、どの階も地下と同じくすんだピンクだったような・・・気がするんですが、どうも思い出せません。

1階だけはステンレスで、しかも階表示が上に大きめに表示されるんですね。他の階は右横に小さいパネル表示です。

ふぅ~ん、だから何? というところですけど、まぁ、ご報告まで。

2022年1月23日日曜日

パエリアパンを買ってみた


実は、2年ほど前に一鉄製パアリア用の鍋を買ったんですが、底が歪んでしまい使えなくなりました。それ以後は、フライパンで調理していたんですが、やっぱりフライパンをドンっとテーブルに置くと言うのはあまり見た目がよろしくない。

見ての通り、うちはガスコンロが経年劣化で使えなくなって、もうずいぶん前からIHヒーターを二つ並べて使っています。

そもそもパンの底が歪むというのは、IHが急激な高温を作るせいらしい。最近は、パエリアを作る頻度が増えたので、やっぱり新たな専用鍋を使いたくなった。

最初にニトリで売ってた、右側の取っ手無しのフライパンが安かったので買ってみました。IH対応のアルミ製。普通にフライパンとして使うにはいいんでしょうけど、何しろ中心部でしか加熱されない。つまりヘリの部分がほぼ沸騰しない。

ということは、米が真ん中はお粥で、周囲は芯が残るという具合。やはり全体に熱が伝わり保持しやすい鉄製が欲しい。前回のは安さだけで選んだので、薄くていかにも安かろう悪かろうでした。

今回は左の奴で、左側の日本製のしっかりとした鉄製をチョイス。ただし、ダッチオーブンなどで経験済みなんですが、鉄製はメンテナンスを欠かせないところが面倒。慣れれば、それほど大変ではないのですが、油になじませ油膜のコーティングを維持することが大事。

まだ試していませんが、とりあえず普通のフライパンとして何度か使って油をなじませることから始めたいと思います。

2022年1月22日土曜日

どら焼き


どら焼きですが、今年の干支にちなんで「虎焼き」ということ。

表面を虎に似せてまだらに焼いたものとか、もう少し凝った「虎焼き」も巷にはいろいろありますが、これは外装のフィルムに虎のイラスト入り。

これは自由が丘の和菓子店、蜂の家のものです。

寅年だから特別に用意されたわけではなく、年始の進物用に毎年干支のイラストで包んだものを出しているようです。たまたま今年が「虎焼き」でゴロがいいだけ見たい。

例えばカステラの文明堂のどら焼きをスタンダードとするなら、これは生地がふかふかして柔らかい。あんこは、こし餡とつぶ餡の中間みたいな感じで、甘すぎないすっきり系。

重たくないので、何個でも食べれちゃう感じです。

2022年1月21日金曜日

39 刑法第三十九条 (1999)

日本の刑法第39条は、

(心神喪失及び心神耗弱)
第39条
1. 心神喪失者の行為は、罰しない。
2. 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

というもので、平たく言えば犯行時に精神的な病的な状態であれば罪を問わないというもの。

被害者、および被害者関係者にしてみれば、おそらくほとんど場合、到底納得できるものではなく、この条項が適用された場合は多くの禍根を残すことは容易に想像ができます。

近年の凶悪犯罪でも、しばしば被告人の精神鑑定が求められたと言う話はしばしば耳にしますし、犯罪事実を覆すことが不可能であれば、弁護側が使う常套手段のようなところもある印象です。

この映画は、この条項を逆手に取った犯人に対する裁判の過程で、精神鑑定の難しさがテーマになっています。監督は森田芳光、脚本は大森寿美男で、重厚なテーマをしっかりと描いた力作と言えます。

劇団員の柴田真樹(堤真一)は、畑田修・恵夫婦を刺殺したとして逮捕されます。弁護人となった長村時雨(樹木希林)は接見で、大人しい柴田が急に狂暴な表情に変わるのを目撃したため精神鑑定を請求します。

精神鑑定をすることになった藤代実行教授(杉浦直樹)は、助手の小川香深(鈴木京香)と共に拘置所を訪れ柴田と面会します。鑑定中に豹変した柴田は、香深を押さえつけ首を絞めようとします。教授は柴田を多重人格と鑑定しますが、香深は首を絞められたときに殺意を感じなかったことから、詐病を疑い草間検事(江守徹)にあらためて自分に鑑定をさせてほしいと願い出るのです。

殺された畑田修は、実は15年前に女児連続殺人の犯人として逮捕されながら、刑法第39条により罪を逃れていたのでした。柴田を逮捕した名越刑事(岸部一徳)も、香深に協力して柴田の足取りを調べたところ、15年前の被害者の兄、工藤啓輔の存在が浮かび上がってきました。

啓輔は別の男と戸籍を交換し、自分はホームレスだった柴田利光(國村隼)の死んだと思っていた息子として生活し、その間に徹底的に精神医学、心理学などの本を研究していたのです。香深の依頼を受けて草間検事は、裁判の場で、公開の精神鑑定を行うことを要請します。裁判官、検察、弁護人、そして傍聴人の見守る中、向き合って座った香深と柴田の静かな対決が始まるのでした。

森田芳光監督は、もともとはトレンディな商業映画で成功し、ユーモアを持った作品が多い人でしたが、90年代前半は自身の映画作りに悩み、沈黙した時期がありました。しかし1997年の「失楽園」で復活し、その次にメガホンをとったのが本作です。復活後は、重いテーマを扱うことが多くなり、作家性を強く出すようになりました。

この映画は、森田作品の中での注目度は高いとは言えないのですが、たくさんの達者な俳優による抑制された演技に支えられて、そして考え抜かれた編集によって実に見ごたえのある一本に仕上がっています。

主演の堤真一は、まだTVドラマの「やまとなでしこ(2000)」でブレークする直前ですが、舞台出身の確かな演技で二つの人格を表現しています。また、その別の人格が演技であるという演技も素晴らしい。鈴木京香は、すでに多くのドラマで人気女優の地位にありましたが、ここではこれまでにない自らも心理的トラウマを抱え、物静かですが芯の強い役柄を演じました。

映像は、俳優はアップが多い主観的なカットを多用して周りの雰囲気を意図的に消しているように思います。景色が入るときはカメラを傾けて、構図に不安感をにじませています。動く時は、手持ちカメラのようなブレもありドキュメンタリー的。銀塩残しと呼ばれるざらついた画面で彩度を抑えて、全編にわたって重圧感を出し続けています。

刑法第39条によって無罪放免された犯罪者に対して被害者家族が長年に渡って消えない傷をうけたこと、そして復讐のため自らが第39条を利用することによって、映画の中でこの法律の不合理さを訴えています。復讐を良しとするものではなく、法律そのものの是非を問うことが、被告人側だけでなくその精神を鑑定する側からも提起されるところが忘れてはいけないポイントになっています。

森田監督の代表作とは言えないかもしれませんが、ファンなら避けてはいけない作品であり、日本の法廷映画としてもしっかりと評価されるべきものだと思いました。いまだにブルーレイ化されていないのが残念です。

2022年1月20日木曜日

自宅居酒屋 #47 カキ炒め


柿じゃなくて牡蠣。牡蠣を炒めるだけ。

生食用より加熱用がちょっと安い。まず洗いましょう。ひだひだのところに汚れが残っています。

薄めの塩水でもにょもにょとすると、けっこう汚れが浮いてきます。水気はできるだけ切っておきます。

さて、炒め方は・・・こういう時はオリーブオイル+にんにくが最強です。熱くしたオイルにニンニクを入れて香りか立ったら、牡蠣を投入。

炒めすぎると、牡蠣が縮んじゃうし、せっかくの美味しいスープが出てしまいます。全体に熱が通るように混ぜながら、汁がでてきたらお終い。だいたい2分程度でしょうか。

最後にかなり少なめに塩を薄くパラっとかけて、レモン汁を回しかければ完成。イェィっ!!

2022年1月19日水曜日

ビルの修繕工事 経過報告


クリニックが入っているベルヴィル茅ヶ崎ビルの修繕工事が、昨年11月末から始まっています。12月なかばにビル全体を覆う足場が完成し、さぞかし窓の外を作業する人が行き交うのかと思ったら、意外にそうでもない。

確認していませんけど、常時作業しているのはビル全体で数人? という感じです。窓の外に人を見かけるのは日に1回有るか無いかというところ。どうも、そのために一日中ブラインドを閉じておくというも、暗くなりすぎて気が引ける。

年末・年始でテナントが休みの間は、内部の共用部分の塗装作業が一気に行われたようで、年明けから有機溶媒の独特の匂いがありました。

年明けからは、穴をあけるドリルなのか、ネジを締めるドライバーなのか、何かの電動工具を使った音が聞こえるようになりました。正直、けっこううるさく聞こえます。

どこでやっているのかと思って窓を開けて上下左右を眺めても・・・誰もいません。構造に振動が響いてくるせいか、どこにいてもよく聞こえるようです。

受診した方々には、引き続き御迷惑をおかけしますが、こればかりはどうしようもないのでご了承ください。

今週は、ビルの備え付けの天井のエアコンについて、取り換えのために調べるそうです。この手のエアコンはおよそ工事費込みで1台につき20万円くらいかかると思いますが、うちのクリニックだけで6台。たぶんビルのテナント部分で40台ちかくあると思うので、これだけでもけっこうな金額になりますよね。

2022年1月18日火曜日

オンライン資格確認


オンライン資格確認というのは、まだまだ耳慣れないとは思いますが、マイナンバーカードが保険証になるシステムと言うとわかるでしょうか。

日本は国民皆保険制度の国で、原則としてすべての国民は健康保険に加入し、病院を受診する際には保険証を提示することで、かかった医療費のうち自己負担分は0~3割ですみます。

そこで健康保険証とマイナンバーを紐づけして、マイナンバーカードを読み取ることでそれぞれの保険組合にネットを通じて照会をするというのがオンライン資格確認です。

マイナンバーカードに含まれているのは、顔写真とその人のマイナンバー、連絡先などですから、保険証情報が含まれるわけではありません。

これまでの保険証の手作業の確認は、ときどき間違いが発生することはゼロにできませんでしたが、このシステムによってご入力は限りなく減ると期待できます。

また、稀に勘違いや、大変残念なことですが時には意図的に無効の保険証を提示する方もいますが、これもその場でチェックできる。

うちのクリニックでは年末に準備を終え、年明けから運用を開始しましたが、マイナンバーカードを使用した方は、まだまだごくわずか。マイナンバーと保険証の紐づけは、設置している機械でその場で簡単にできます。

・・・ですが、実際使い始めると、まだまだ保険組合の方でマイナンバーとのデータ整合が完了していないのがかなりあります。オンライン照合しても、データなしで画面はくるくるするばかり。

こういうシステムをしっかり根付かせるためには、大元のデータをちゃっとしてくれないと意味がないんですけどね。

2022年1月17日月曜日

ザ・ファーム 法律事務所 (1993)

トム・クルーズが若手敏腕弁護士を演じていますが、裁判は特に無い。つまり法廷物ではなくて、弁護士事務所を舞台に陰謀に巻き込まれるサスペンス系の映画です。原作はジョン・グリシャムのベストセラー小説です。監督は名匠シドニー・ポラックで、ジーン・ハックマンが若いクルーズを盛り立てます。

ハーバード大学法科を優秀な成績で卒業したミッチ・マクディーア(トム・クルーズ)は、破格の条件でメンフィスの法律事務所に就職し、妻のアビー(ジーン・トリプルホーン)と共に新天地に向かいます。

所長のオリヴァー・ランバート(ハル・ホルブルック)、ミッチの指導に当たるエイヴァリー・トラー(ジーン・ハックマン)に歓迎され、最初は有頂天だったミッチでしたが、仲間の弁護士二人が謎の死を遂げ、ミッチの周囲にも謎の男たちが出没するようになりました。

この事務所はシカゴのマフィアと深いつながりがあり、彼らの資金を浄化して海外に貯える操作をしていたのです。ある程度中堅になって来るとマフィアの話を打ち明けられ共犯として抜けることができないようにしていました。

ミッチは就職時に収監されている兄がいることを隠していましたが、面会に行ったときに事務所の謎を調べるために私立探偵を紹介してもらいます、しかし、調査を開始した途端に探偵は殺されてしまい、謎の男たちが接近してきました。彼らはFBI(エド・ハリス)で、ミッチに事務所の不正、マフィアの資金源についてのファイルを渡すよう迫ってくるのです。

ミッチは兄の保釈と引き換えに了承しますが、いくら悪者とはいえ顧客の情報を開示してしまうことは弁護士資格を失うことになるのです。そこでミッチは、事務所が費用を顧客へ水増し請求していることに目を付け、自分は罪とならない方法で事務所の不正を暴くことにしたのです。

「ア・フュー・グッドメン」に続いて、クルーズは弁護士の役。今作では、裁判とかより弁護士の収入になる実務、つまりクライアントの資産管理・税金対策などに焦点が置かれていて、特に守秘義務が大きなポイントになっています。そして訴訟大国と言われるアメリカでは、いかに弁護士が高給取りの美味しい商売というところも見て取れる。

クルーズは「ミッション・インポッシブル」前夜にあたり、またもやジーン・ハックマンのような大物の名優と共演できる機会を得ましたが、欲を満たすことを優先して陰謀に巻き込まれ、しだいに何が大切なのかに気が付いていくところをうまく演じています。アクションは全力疾走くらいですが、演技で自分を映画の枠の中に目立たせることにかけては天才的という感じがしました。

ポラックの演出はもちろんあまり文句をつけるようなところはありませんが、2時間半という長さで、ややだれ気味のところも無いわけではありません。音楽を担当したのはフュージョン音楽畑で有名なデイブ・クルーシンで、全編にわたってブルージーなピアノを主体にした音楽が登場します。

2022年1月16日日曜日

裁判長!ここは懲役4年でどうすか (2010)

裁判、とか・・・法廷、とか・・・そんなキーワードで映画を探してみたんですが、外国と日本では司法のシステムの違いがあるので、邦画も含めてみた方が良いかと。

そんなわけで、ひっかかったのがこの映画。北尾トロ氏の裁判傍聴をテーマにした2003年のエッセイ集が原作で、それを元に2007年にマンガになり、2009年にテレビドラマ(主演・向井理)、そして2010年に映画になっちゃいました。

監督は豊島圭介という人で、最近だと「三島由紀夫vs東大全共闘〜50年目の真実〜(2020)」が話題になりましたが、主としてコメディタッチの怪談とかが得意みたい。

売れない脚本家の南波タモツ(設楽統)は、怪しげな映画プロデューサーの須藤(鈴木砂羽)に依頼され「愛と感動の裁判映画」の脚本を書くことになったため、実際の裁判を知るため裁判所に通うことになります。

南波は裁判を傍聴することを生きがいとする「傍聴マニア」の西村(螢雪次朗)、谷川(村上航)、永田(尾上寛之)らと知り合い、いろいろな法廷で被告だけでなく、それぞれが個性的な裁判官、検事、弁護士など裁判に関わる人々に興味が湧いてくるのでした。

しかし、美人で攻撃的な追及を身上とする長谷部真理検事(片瀬那奈)に、傍聴マニアは「他人の人生を楽しむ」だけと非難され、南波は落ち込んでしまいます。西村は、傍聴するだけで裁判に関われない自分たちでも、KOパンチは撃てなくてもジャブは出せると、冤罪かもしれない事件を紹介します。

彼らは協力して、事件の弁護士にディベートに勝利するアイデアを匿名で送ったり、担当検事が集中しにくい変人の傍聴人をそろえたり、裁判長の出勤に合わせて息子の無実を訴える母親を配置したりといった作戦を展開しました。めったにお目にかかれない逆転無罪を期待する裁判が開廷しましたが、その冒頭で何と被告は自ら自分が犯人だと自白してしまうのでした。

原作はもとよりマンガもドラマも知りませんので、あくまでもこの映画だけについてのことですが、軽いタッチで裁判のシステムを紹介することには成功していますが、映画としてはテーマが希薄。笑わせ方も、俳優たちの大袈裟な演技だけに頼っているだけという感じです。

バナナマン設楽が主役で初の演技をしていますが、演技達者な脇役で固めてそつなく自然な演技を見せています。ただし、南波というキャラ自体は笑えるところがほとんど無いので、コメディアンを起用した意図がよくわからない。いろいろな裁判を傍聴するため小さなドラマを積み重ねた群像劇みたいなところがあるのですが、わざわざ映画にするほどではないかと・・・

2022年1月15日土曜日

自宅居酒屋 #46 肉じゃが



家庭料理としてはド定番の肉じゃがです。


それぞれの家にそれぞれの味があってもいいので、逆に絶対的なレシピなんて無くて当然。食べなれた味が一番というもの。

ただし、必要不可欠な材料はじゃがいもと肉。肉はたぶん普通は豚肉ですが、牛肉を使う人もいるかもしれない。

できるだけ入れる物としては、たまねぎ。それと、コンニャクまたはしらたき・・・今回は無かったので、代わりと言っては何ですが余っていた椎茸を使っちゃいました。ニンジンが入っていることもありますよね。

味付けは、ひと頃、醤油のCMで「醤油とみりんを1対1」なんてやってましたけど、実際やってみると何か物足りない。やはり、少し出しがあった方が格段に美味しい。

煮方は、ずっと煮続けてじゃがいもがぐすぐすになったのが好きという人もいるでしょうけど、自分は煮崩れたのはあまり好きじゃない。

10分くらい煮たら、味付けして一度火を止めます。冷えたらもう一度沸騰させて、また火を止める。冷める時に味が染み込みます。時間があるときは、さらにもう一度温め直すして冷ます。

とか、ぐすぐす言っていないで、まぁ、好きなように作ればいいんじゃないでしょうか。

2022年1月14日金曜日

自宅居酒屋 #45 アクアパッツア



居酒屋メニューですから、簡単で早く作れることが大事。

それにしては、ずいぶんとシャレたものを出すと思うでしょうが、これがまさに簡単で早く出来上がるんですよ。

アクアパッツアはイタリアの代表的な魚料理ですけど、aqua pazza は英語だと crazy water。つまり「狂った水」ということ。魚を水で煮るだけの料理。

切り身の魚なら何でもOKですが、白身が合うので、鯛とかヒラメとか・・・今回は鰆(サワラ)を使いました。あとは冷凍シーフードです。

まずオリーブオイルでニンニクを炒めます。香りが出たら、エビ、アサリ、カキなどを投入。魚は焦げ目がつく程度に焼いたところで、カップ一杯程度の水を入れて10分間程度煮るだけ。

今回はトマト、しめじ、そして正月に余った三つ葉も使いました。調理時間は15分程度です。

あれっ? 味付けは?

そうなんです。何もしてません。魚介から染み出る塩味だけなんです。どうしても薄いと思う方は、ちょっと塩を追加してもいいんですが、スープが煮詰まりますので注意しないと塩辛くなります。

基本は水だけでOKですけど、白ワインが余っているなら、これを使えばさらに美味。

ワイン飲みた~い!!

2022年1月13日木曜日

ア・フュー・グッドメン (1992)

法廷物と言っても、ちょっと毛色が違う映画です。これはアメリカの軍事法廷の話。アメリカ軍内部での司法は、一般の物とは独立したものですが、同じような仕組みがある。

軍内での犯罪に対してはMP(Military Police)が捜査・犯人逮捕までを行います。軍の中の法務部に検察と弁護を担当する係がいて、軍事法廷で裁きを決定します。そこには軍関係者からなる裁判官と陪審員もいる。

主演のトム・クルーズにとっては、演技派俳優として成長の過程における重要な作品の一つであり、共演した名優ジャック・ニコルソンから多くのことを学ぶ機会を得た映画となったはずです。

監督はスマッシュ・ヒット作が多いロブ・ライナーで、脚本はアーロン・キーソン。元々はキーソンの書いた舞台劇が原作。アカデミー賞の多くの部門にノミネートされましたが、イーストウッドの「許されざる者」に敗れ残念ながら受賞は逃しました。

キューバの海兵隊基地でリンチによる殺人が発生し、表向きは禁止されている体罰を意味する「コード・レッド(Code R)」が発令されていました。犯人として逮捕された二人の兵士は、上官からの命令に従ったもので、海兵隊としての義務を履行したと主張します。

彼らの軍事裁判で弁護士に任命されたのは、海軍法務官であるダニエル・キャフィ中尉(トム・クルーズ)で、補佐にはジョアン・ギャロウェイ少佐(デミ・ムーア)がつくことになります。キャフィは事前の司法取引ばかりで、実際の法廷に立つ経験はありませんでしたが、有能な弁護士だった故人である父親に対する対抗心がありました。

キューバに飛んだキャフィーらは、基地の司令官、ネイサン・R・ジェセップ大佐(ジャック・ニコルソン)と面会しますが、彼は軍に対して誇り高く、兵士を強くするために神のような存在となっていました。

裁判が始まり、検事側のジャック・ロス大尉(ケヴィン・ベーコン)の巧妙な進行に苦戦します。ジェセップの副官であるマーキンソン中佐がコード・レッドを隠蔽する工作をしたことをキャフィーらに話しますが、彼は証言前に自らの責任を死をもって償います。

切り札の証人を失ったキャフィーはついにジェセップ大佐を喚問する決意をしますが、上級士官に偽証の疑いをかけることは自らも軍事裁判にかけられる危険もはらんでいました。しかも、証拠はすべて消されていて、ジェセップ大佐にコード・レッドを発令したことを自白させるしか方法は無いのです。

主演は確かにトム・クルーズなんですが、ジャック・ニコルソンの存在感たるや半端ない。法廷の扉が開き、ニコルソンが入って来ただけで、画面に物凄い緊張感が走るのはさすがです。実際、本読みでも全開の演技で共演者をびびらせたらしい。最終対決での「お前に真実などわからん!! (You can't handle the truth)」は名セリフとして記憶されています。

元は舞台劇ですが、ここでは映画として屋外でのロケもあり、野球好きのキャフィーが度々グランドにいたり、キャフィーらの作戦会議が彼のアパートだったりと場面転換をうまく使っています。裁判の緊迫するシーンとのバランスがうまく取れていて、大変重たいテーマの映画ですが窮屈感を軽減しています。

一つ、当たり前ですが驚いたのは、本編終了時に「The End」と画面の真ん中に表示されたこと。70年代くらいまでは、スタッフ、キャストは冒頭に紹介され、最後に「The End (フランスならFin、日本なら完または終)」が表示され終了が普通でした。最近のように、本編終了後に延々とスタッフ・ロールが流れる(10分近いものもある)ことはまずありませんでした。この映画では「The End」の後にスタッフ・ロールもあるので、何か特別な意図があるのかもしれません。

2022年1月12日水曜日

告発 (1995)

アルカトラズ・・・サンフランシスコ湾のなかにある小島で、連邦政府刑務所があったことで有名です。禁酒法時代に整備され、アル・カポネなどの有名な犯罪者が収容されたことでも有名で、周囲を流れのはやい潮流で囲まれた小島は自然の要塞と化し、脱獄不可能と言われていました。

しかし、1963年に閉鎖されるまでに、14回、延べ36人が脱獄を試み、23人は拘束、6人は射殺、2人は溺死、そして5人は行方不明(おそらく溺死)とされています。

クリント・イーストウッドが演じた「アルカトラズからの脱出(1979)」では、ほぼ事実に基づいた1962年のフランク・モリスの脱獄が映画化されています。もとから施設の維持費用が他の刑務所に比べて高い事などが問題視され、モリスの脱獄により、施設の老朽化などが明らかになり閉鎖に至ったとされています。

強盗、殺人などを繰り返していたヘンリー・ヤングは、1933年にアルカトラズに収容され、1939年1月に脱獄の失敗により22か月間の独房収容となり、独房から出された1940年12月に脱獄の仲間だった囚人を刺殺しました。ヤングの裁判により、アルカトラズにおける非人道的な囚人の扱いが明らかになりました。

この映画はヘンリー・ヤングをモデルとし、マーク・ロッソが監督した、映画冒頭に示される自称「真実の物語をもとにしている」ストーリーです。自称としたのは、ヘンリー・ヤングのキャラクター設定を、あからさまに観客が同情できるように改変していることによります。

映画ではヘンリーはたった5ドルを盗んだだけで収監されたことになっていて、脱獄失敗後に3年半の間独房に入れられたことになっています。そして殺人罪の裁判で事実上の勝利(傷害致死罪)を得るのですが、絶望のアルカトラズに戻されたことで(おそらく)自殺してしまいます。

ヘンリー・ヤングはたった5ドルを盗んだだけではなく、銀行強盗もしているし殺人も犯している。独房に入っていたのは22か月(それでも長いですが)、そして裁判の後は別の刑務所に移され後年保釈されています(Wikipediaより)。フィクションとして多くの非人道的な扱いに屈することが無い人間のストーリーならばわかりますが、明らかに「事実に基づく」とすることで、より大きな感動を呼び起こそうとする作為は反則です。

それでも感動のストーリーとして絶賛する声も理解できますが、話を作り過ぎという気持ちはかなり興味をそがれることも否定できません。ただし、ヘンリー・ヤングを演じたケヴィン・ベーコンの熱演は見事で、彼にとっても代表作の一つに数えることができるものだろうと思います。また、囚人を苛め抜くグレン副所長を演じたゲイリー・オールドマンのサディスティックな演技も凄まじい。

もっとも、この映画の見所はヤングの裁判を通して、アルカトラズの囚人に対する虐待行為を告発することにあります。ヤングの弁護士となったジェームズ・スタンフィル(クリスチャン・スレーター)は、ある意味政府の犯罪を明るみにしようとしているので多くの妨害を受けることになります。ヤングとスタンフィルの間にはしだいに友情のようなものが芽生えてくるのですが、事実がどうだったかは判断できません。

この事件は、世間がこの刑務所に疑惑の目を向けるきっかけにはなったかもしれません。しかし、実際この事件のあとモリスの脱獄まで20年もアルカトラズは刑務所として使われたわけですから、映画的にこの事件が閉鎖に追い込んだという見方に誘導するような終わり方にも問題があるかもしれません。

2022年1月11日火曜日

チョイ見え


自宅付近からは富士山は見えます。

と言っても、立派な富士山ではありませんけど。上の方だけ、丹沢の山なみから頭だけ出している感じ。

坂道の上側ではこんな感じですが、坂道の下だとたいてい見えません。

全国に「富士見」という地名は山ほどありますが、調べた人がいて、37都道県で419件あるらしい。

結局、ビルが建ったりしてその全部で見えるわけじゃないでしょうが、そのくらいあちこちから富士山がランドマークとして認知されているということ。

もっとも、富士山が富士山らしく見えるのは、せいぜい100km圏内くらいでしょうか。

2022年1月10日月曜日

12人の優しい日本人 (1991)

日本にはこの映画の時点では陪審員制度もありませんし、裁判員制度も始まっていません。これは「十二人の怒れる男(1957)」に触発されて、もしも日本の裁判に陪審員の仕組みがあったらという三谷幸喜が書いた舞台劇(1990年初演)を映画化したもの。監督は、日活ロマンポルノ出身の中原俊。

陪審員1号 塩見三省
 陪審員長。有罪とする責任から逃げたい。
陪審員2号 相島一之
 妻と別居中の会社員。「話し合いがしたい」と言って強硬に有罪を主張。
陪審員3号 上田耕一
 喫茶店経営。アル中で議論や会議が苦手。
陪審員4号 二瓶鮫一
 元信用金庫職員。何となく無罪という意見を変えない。
陪審員5号 中村まり子
 独身OLで、几帳面なメモ魔。
陪審員6号 大河内浩
 セールスマン。仕事が気になりやる気がない。
陪審員7号 梶原善
 職人。気性が荒く、被害者を嫌悪する気持ちから無罪を主張。
陪審員8号 山下容莉枝
 若い主婦。優柔不断で意見は二転三転。
陪審員9号 村松克己
 歯科医。議論好きな自信家で、議論のために有罪説を展開する。
陪審員10号 林美智子
 クリーニング店経営者。気が弱いが、何となく無罪を変えない。
陪審員11号 豊川悦司
 役者。 最初は無関心だったが、途中から弁護士と称して無罪に味方する。
陪審員12号 加藤善博
 スーパーの課長。仕切りたがり、合理的な考え方をする。

何ともあっけない始まり。陪審員として集まった12人。じゃあ、最初に被告人が有罪か無罪かで決を採ると、全員無罪ということで会議は終了(怒男ではヘンリー・フォンダ一人を除いて有罪)。ちなみに、事件というのは21歳の女が復縁を迫る元夫を突き飛ばしてトラックに轢かれて死亡させたというもの。

・・・と思ったら、2号が「話し合いがしたい」と言い出し、有罪を主張。やたらと議論を吹っかけてくるのです。いろいろとぐちゃぐちゃな議論の末、被告人には殺意があった可能性が出てきて、有罪と無罪が6対6で同数になってしまいました。無罪派は被告が可哀そうとか、若くて綺麗だからとか、死んで当然の男だからとか、人情論・同情論で譲らない。

結局、殺意ありだと計画殺人で場合によっては極刑もあるので、有罪派は殺意があったことは忘れるから、無罪派は傷害致死での有罪で妥協してくれということになります。ところが、4号と10号だけがどうしても無罪と言い張り、その根拠は・・・無い。しかし、それまで無関心だった弁護士だと名乗る11号が、急に有罪の根拠を崩し始めるのです。

当然「怒男」のパロディ的な側面が多く、三谷幸喜らしいひねくれたシュールな笑いが随所にみられる作品です。当然、元々舞台用ですし、ほとんど会議室の中だけの会話劇ですが、元ネタと相反するような展開を見事に作り上げた脚本の良さは認めないわけにはいきません。

とはいえ、2号が一人有罪を強く主張し、次から次へと無罪派の根拠が曖昧であることを指摘していきますが、有罪を主張する側にも確固たる根拠は無いというところを誰も指摘しません。結局最後のオチみたいな所に持っていくためにあえて触れなかったのかもしれませんが、そこが見ていてイライラする感じがします。

今では11号の豊川悦司だけが主役級ですが、その他の出演者は力を持ったバイプレーヤーばかりで、映画と演劇の中間地点での落としどころを良くわきまえたセリフ回しが素晴らしい。演劇を目指す方にはとても参考になる演技ではないかと思います。

2022年1月9日日曜日

十二の怒れる男 (1957)

今更言うまでもなく、アメリカ裁判関連映画としては最高傑作とされる映画。もともとは1954年にテレビ・ドラマとして作られました。脚本は原作者レジナルド・ローズで、監督は名匠シドニー・ルメットが初めてメガホンを取りました。

陪審員制度は日本では昭和初期に実施されたことがありますが、一般化せず立ち消えています。しかし、平成21年から裁判員制度が始まり、様式は異なりますが国民の裁判への参加が実現しました。アメリカの陪審員制度では、法廷で示された証拠だけから陪審員は裁判官の手助け無しに「有罪か無罪か」だけを決定します。決定は全員一致である必要があり、量刑を決めるのは裁判官に任されます。

96分の本編のうち、最初と最後の数分間を除いて一室の中で話が成立する「密室劇」の体裁をとっており、非映画的な会話劇として進行します。この映画では、裁判そのものは終了し、無作為に選ばれた12人の陪審員が討議するために移動するところから始まります。

陪審員1番 マーティン・バルサム
 陪審員長として司会を行い公正を期そうとする
陪審員2番 ジョン・フィードラー
 積極性はなく流されるタイプ
陪審員3番 リー・J・コッブ
 息子との確執があり有罪に固執する
陪審員4番 E・G・マーシャル
 客観的な信念を持ち証拠を受け入れる
陪審員5番 ジャック・クラグマン
 この中で若く、多勢に従う
陪審員6番 エドワード・ビンズ
 動機に注目するが他には無関心
陪審員7番 ジャック・ウォーデン
 先入観が強く、野球の試合に早く行きたい
陪審員8番 ヘンリー・フォンダ
 有罪の確信がなく話し合いを希望
陪審員9番 ジョセフ・スィーニー
 最年長で、物事を公平に見る
陪審員10番 エド・ベグリー
 自分の正義を信じるあまり偏見が強く時に攻撃的
陪審員11番 ジョージ・ヴォスコヴェック
 冷静で客観的に疑問を受け入れる
陪審員12番 ロバート・ウェッバー
 裁判より自分が開発中の商品のことが気になる

父親をナイフで刺し殺したとされる18歳の少年に対する裁判の陪審員に選ばれた12人は、蒸し暑い一室に集まり審議を始めます。提示された目撃証言や証拠から、少年の犯行は明白と考えられたので、一人の提案ですぐさま結論を挙手で決めることになります。

12人中11人が有罪とする中、8番だけが疑問を口にして無罪と主張しました。彼は、証拠に確実性が無いことを説明し、有罪になれば死刑が予想される一人の少年の運命を簡単に決めること危険性を話します。

現代の目から見れば、全員が男性で白人ばかりですから、アメリカ国民を均等に代表しているとは言えませんが、いろいろな職業、年齢の陪審員が揃うことで、社会的・経済的に多種多様なアメリカを象徴しようと試みていたと思います。

それぞれには、有罪・無罪の決定には個人的な思いもかなり入っていて、全員が冷静にかつ客観的に判断できていないところも示され、民主的な陪審員制度の問題点も指摘されています。話し合いの中で、少しずつ確定していると思われた「事実」が疑問だらけであることがわかり、何度か行われる投票で少しずつ有罪から無罪に変更する人が増えていきます。

犯罪者を逃すかもしれないが、筋の通る疑問が残る以上有罪にできない・・・ヘンリー・フォンダの台詞が、陪審員制度ひいてはアメリカの司法の基本を語っています。日本の裁判員制度は、裁判官も混ざって量刑まで判断する制度であり、陪審員制度とは同じではありませんが、私たちもいつ裁判員に選ばれるやも知れません。そういう意味でも、一度は見ておくべき映画と言えそうです。

2022年1月8日土曜日

自宅居酒屋 #44 ピーマン炒め


もう、何てことは無い。

スーパーで安売りのピーマン大袋を買って余ってしまった時、とりあえずしなびてしまう前に炒めて食べようというだけの物。

筍とかもあれば青椒肉絲もどきにもなるところですが、ただ炒めるだけでなのでレシピも何も無い。

ただ、ピーマンは生でサラダでも食べれるので、軽く火を通してシャキシャキという食感は残した方がいい感じがします。

味付けはシンプルに塩と胡椒でいいのですが、今回はマヨネーズ。マヨネーズを使うと、まろやかな味わいになります。

正月とかだといつもと違うメニューが多くなり、胃が疲れた感じになるので、こういうメニューはありがたい・・・と勝手に思っています。

2022年1月7日金曜日

初雪


今シーズンは、ちらちらと雪が舞ったと言うのはあったみたいですが、雪らしい雪は昨日が初めて。自分的にはまさに「初雪」です。

去年はほぼほぼ降らなかっので、積もる雪というのは2020年3月の遅い雪以来かも。

クリニックは横浜市都筑区。うちは横浜市青葉区。10kmと離れていないのですが、明らかにいつもうちの方が雪はたくさん降る。

今回は10cmまではいかないにしても、日が暮れるまでにそれに近いくらい積もってしまいました。たぶん、丹沢山系の壁から吹き返してくるためではないかと、勝手に思っています。

とりあえず・・・空に向かって降って来る雪の写真を撮影してみました。


実は、雪の粒を撮影するのはけっこう難しい。写真を撮っても、降っている雪がちゃんと写りこむには相当吹雪いていないとわからない。

そこでトリビア的な話ですが、雪を視覚化するためのヒントはフラッシュをたくということ。光に反射して比較的少ない雪でも写真にとらえやすくなります。

2022年1月6日木曜日

初詣


新年になって最初にやることは何でも「初××・・・」ですが、初日の出、初夢などと共に誰もが体験しやすい三大初物の一つが初詣。

有名な参拝客数で話題になるような大きなところに行ったこともあれば、足柄の奥山の中の神社に恒例行事のように出向いていたこともあります。

でも、本来は氏神と言って、住んでいるところの地元の神社、あるいは恵方にあたる場所に詣でるのが正しい。明治以降、鉄道の普及によって遠くの有名所にでかけようと宣伝が盛んになったことで、離れた所にある大きな神社仏閣に詣でるのが普通になったらしい。

確かに有名だからといって普段、まったく縁のないところに行っても、御利益は少ないかもしれません。神様からすれば「あんた誰?」というところです。

そんなわけで、数年前からは初詣は、家から一番近い普段は常駐する宮司もいないような小さな神社です。一年間無事に過ごした報告と、この一年を良い年にしてくださいとお願いしてきました。

・・・って、実際、遠くまで出かけるパワーが無くなってきたというのも本音ですけどね。

2022年1月5日水曜日

ジャック・リーチャー Never Go Back (2016)

トム・クルーズ制作・主演で、元陸軍憲兵隊捜査官で今は一匹狼の流れ者のジャック・リーチャーの活躍する映画の第2弾。原作の小説「ジャック・リーチャー・シリーズ」はたくさんの作品がありますが、トム・クルーズとはいえさすがにイーサン・ハントとの掛け持ちはきついのか、今後は参加しないと表明しています。

今回の監督は「恋に落ちたシェークスピア(1998)」のエドワード・ズウィックで、脚本も手掛けました。トム・クルーズとは「ラスト・サムライ(2003)」で旧知の仲。また前作の監督をしたクリストファー・マッカリーは製作に名を連ねています。

さて、今回は昔からの知り合いだった憲兵隊の女性士官、ターナー少佐(コビー・スマルダーズ)が、スパイ容疑て逮捕されたことが始まり。リーチャーはターナーの弁護をすることになったモアクロフト大佐に面会しますが、身に覚えのないサマンサという娘の養育費不払いの訴えがあると告げられます。さらに、その直後から軍事会社のパラソース社の尾行が付くのでした。

さらにモアトロフトは何者かによってリーチャーに何か話したと疑われ殺され、リーチャーはその容疑者としてモーガン大佐によって逮捕されます。軍刑務所に収容されたリーチャーは、バラソース社の殺し屋が基地内にいることを知り、ターナーと共に脱走しました。

バラソース社はアフガン撤退時の多くの武器の行方不明に関係があるらしく、それを調べていたターナーらを闇に葬ろうとし、モーガンの一味でした。何故かサマンサにも暗殺者が迫っており、リーチャー、ターナー、そしてサマンサはバラソース社の本社のある、そして暗殺者たちが待ち構えているニューオリンズに向かうのでした。

前作に比べると、相手がかなりの大物。リーチャーは大がかりな陰謀に立ち向かい、女性とは言え現役憲兵隊のパートナーと共に謎を解明していきます。ターナーにもそれなりの見せ場が用意されていて、クルーズのアクションも前作よりも多めになった感じがします。

一匹狼のはずが仲間と共同作戦というのは、ジャック・リーチャーのキャラとしては異質な設定かもしれません。また、もしかしたらサマンサは本当に自分の娘かもしれないという思いから、ついつい「お父さん」的な行動・言動がでてしまうのも、キャラ変に通じます。

そういう意味では、原作シリーズを良く知るファン、あるいは前作を高評価した人ほど、この2作目は不評だったのかもしれません。しかし、ただの男女が無実を晴らすための逃避行というのなら、ありふれたものになっていたかもしれませんが、そこに女の子が入り込むだけで物語の次元が増えることは間違いない。

ヒッチコックの映画は、自然に犯罪に巻き込まれる幾多のパターンの教科書。一方、この映画では元軍人とは言え民間人のリーチャーが、簡単に巻き込まれすぎというか、自分から飛び込んでしまう。そこんとこは目をつぶったとして、容易に軍の内部の情報に近づくのはやりすぎかと。でも、それを可能にするのは現役憲兵隊のターナーの存在ということ。

その後テレビ・シリーズとして「ジャック・リーチャー」が復活していて、こちらは原作通りの大男が登場しているらしい。クルーズとしては、もうやらないということらしいのですが、イーサン・ハントより実年齢で無理が少ないこっちのキャラの方が続けやすいんじゃないかと思ってしまいました。

2022年1月4日火曜日

アウトロー (2012)

このタイトルだと、まず最初に思い出すのはクリント・イーストウッド監督・主演の西部劇です。アウトローは「outlaw」、つまり法律(law)の外(out)にいる人、法律を無視する人、法律を気にしない人などなど・・・日本語では「無法者」という訳が使われることが多い。

この映画の原題は「Jack Reacher」であって、アウトローは日本で勝手につけたもの。イギリスの作家、リー・チャイルドの代表作が「ジャック・リーチャー・シリーズ」で、「One Shot (2013)」がこの映画の原作。米陸軍憲兵隊捜査官だったジャック・リーチャーが、今では流れ者になり事件に関わって来る展開なので、確かにアウトローというのもあながち間違いではありません。

主演のトム・クルーズは製作にも名を連ね、監督・脚本のクリストファー・マッカリーとはこのあと「ミッション・インポッシブル・シリーズ」で立て続けにタッグを組んでいます。トム・クルーズはここでは、徹底的に冷静な主人公を演じ、基本的にド派手なアクション、ユーモアやロマンスは封印しています。

ピッツバーグの川沿いの公園で、対岸の駐車場から狙撃され5人が殺害される事件が発生。無差別殺人犯として、遺留品などから元陸軍の狙撃兵バーが逮捕されました。しかし、バーは警察で「ジャック・リーチャーを呼べ」と書いて、その後他の拘留者の暴力により昏睡に陥ってしまいます。

バーの事件を知ったジャック・リーチャー(トム・クルーズ)は、自らピッツバーグに赴きバーの弁護を引き受けたヘレン・ロディン( ロザムンド・パイク)の調査員として捜査を始めます。

リーチャーは、かつて陸軍憲兵隊の捜査員として無差別殺人を起こしたバーを捕えたことがありましたが、遺留品が多い事、狙撃の場所などからバーのような訓練を受けた狙撃者の計画とは考えられませんでした。リーチャーはヘレンに被害者を調べろと言い、一見無差別殺人と思われた事件が一人を殺すための偽装であることがわかってきました。

リーチャーは到着直後から、尾行され内部にも犯人側と通じる者がいる疑いもあります。リーチャーが犯人の決定的な証拠を得るため遠出したところを、ヘレンが犯人たちに拉致され、リーチャーは彼らのアジトに乗り込むのでした。

犯人を追い詰めていくスリラーとしては、うまくストーリーはまとまっていて及第点の映画。普通ならリーチャーとヘレンがいちゃいちゃしたくなるところですが、うまくドライにかわしているところも好感が持てます。クルーズも、イーサン・ハントのイメージと被らないことを意識していたでしょうから、このあたりはマッカリーのうまさでしょうか。

ロムサンド・パイクは2002年にボンド・ガールでデヴューし、2014年の「ゴーン・カール」でその演技が賞賛されました。ここでも、弁護士という役柄もあり、年齢以上に落ち着いた雰囲気でいい味を出しているように思います。リーチャーに協力する老人役で、往年の名優ロバート・デュバルが活躍するのは嬉しいところ。

ただ、やはりイーサン・ハントのイメージが強いトム・クルーズが、「ミッション・インポッシブル・シリーズ」と掛け持ちでやる役としては、評価が下がるのはしょうがない。もう少し、リーチャーが軍を離れて「アウトロー」になるまでの経緯や、アウトローとしてどんな生活をしているのかなどを掘り下げていれば、映画としての面白みは倍増したでしょうし、その場合は別の俳優を起用した方がよかったのかもしれません。

2022年1月3日月曜日

おせち


正月の定番、おせち料理。「お節」と書くわけで、弥生時代に中国から伝わった五節句に、豊作を祈念して神様に供えるというのが起源。江戸時代から重箱につめるようになったとか。

たぶん、昭和になってから年末年始にお店が休みになり、その間の保存食的な意味合いで味が濃くなったのかと思いますが、さらに甘いものが多いおせち料理は、自分もこどももそれほど好みじゃない。

伝統を伝えるという意味もあって、こどもが小さいときはそれなりのものを用意したことがありましたが、このところもう何年も、正月はおばあちゃんの家に集合ということで、元旦のお雑煮以外はとんとご無沙汰していました。

今年は、自立したこどもたちがうちに来ることになりました。最近はスーパーの年始営業もしなくなり、かと言って今更年末に買い集める元気もないので、初めてネットおせちを注文してみました。

そもそも、まぁ、正月らしいかっこつけるパーツの一つくらいにしか思っていないので、おせちセットとしては安めの約1万円のセットにしてみました。中身はいろいろで、少しづつですけど、これだけでもだいぶ豪華な感じです。

こどもはどうせ肉が好きなんですから、あとはローストビーフとか、焼き豚とか・・・とにかくビールとワインをたくさん用意すればOKということです。


2022年1月2日日曜日

中華ちまき


うちの、と言うより、うちの実家で母が何十年と前から、正月というと必ず作ってくれたのが中華ちまき。うちの子たちも、おばあちゃんの味ということで大好きなので、今回は自分で作ってみました。

・・・が、何が大変って、大量のもち米を炒めるのに手が疲れます。焦げないように持続的に力がけっこういるので、腱鞘炎になりそうでめげそうになる。

ネットなどを参考にしましたが、レシピはてきとうです。

もち米は1kgで、ざるで洗ったら水につけておく。これが大事みたいで、短くて数時間、長いもので8時間。今回は間を取って6時間くらいです。これを怠けると芯が残ってしまいます。

その間に具を作ります。

鶏モモ肉1枚をこまかく切る。親子丼とかに入っているイメージの1/4くらいにしますが、これもまたけっこう面倒な作業です。椎茸は大きめの物で3枚くらいを、これもまた細かく刻む。筍もスーパーに売っている大きめのパックを丸々1個を刻みました。

あまり細かくし過ぎると、食べる時につまらない。まぁ、そのあたりはお好みでかまいません。おばあちゃんのちまきはこれだけなんですが、さすがにつまらないので、隠し味的にムキエビ6個、牡蠣3個を細かくして追加しました。

ごま油で具材を炒めて、味付けは醤油と少しの砂糖。もち米に混ぜるので、けっこう濃いめです。味が寂しいと思ったら、オイスターソースを追加して調整します。多少汁が残っているくらいが丁度よい。

ざるからあげたもち米は大きめのフライパン、というかIH用のコーティングしてある鍋を使いましたが、これにドバーっと入れてごま油で炒める、炒める、炒める、炒める・・・

焦げないようにかき混ぜながら、全体が透明感が出てくるまで続けます。透明感が出てくると、パラパラ感が無くなって塊状になって来るので、この間中火~強火で30分以上。そしたら、汁ごと具材を鍋に投入して、また混ぜる、炒める、混ぜる、炒める・・・

ちょっと食べてみて芯が無さそうならOK。味が物足りないときは醤油、またはオイスターソースを追加してください。

後は食べたい分量ごとに笹にくるんで・・・と言いたいところですが、そんな気の利いたものは用意してません。アルミ箔で代用です。チャーシューとかウズラの卵とかを真ん中に入れておにぎり風にするともっともらしいですけど。

蒸し器で30~40分ほど蒸して出来上がり。美味しく出来たので、手の疲れは忘れてしまいました。

2022年1月1日土曜日

謹賀新年 2022


あけましておめでとうございます。

コロナ渦が続き安心できない日々が続きますが、
今年こそ良い年になることを願っています。

皆様方には、くれぐれも体調にご注意下さい。

クリニックは4日(火)まで休診とさせていただいています。
5日(水)から通常診療を再開いたします。よろしくお願いいたします。