トム・クルーズが若手敏腕弁護士を演じていますが、裁判は特に無い。つまり法廷物ではなくて、弁護士事務所を舞台に陰謀に巻き込まれるサスペンス系の映画です。原作はジョン・グリシャムのベストセラー小説です。監督は名匠シドニー・ポラックで、ジーン・ハックマンが若いクルーズを盛り立てます。
ハーバード大学法科を優秀な成績で卒業したミッチ・マクディーア(トム・クルーズ)は、破格の条件でメンフィスの法律事務所に就職し、妻のアビー(ジーン・トリプルホーン)と共に新天地に向かいます。
所長のオリヴァー・ランバート(ハル・ホルブルック)、ミッチの指導に当たるエイヴァリー・トラー(ジーン・ハックマン)に歓迎され、最初は有頂天だったミッチでしたが、仲間の弁護士二人が謎の死を遂げ、ミッチの周囲にも謎の男たちが出没するようになりました。
この事務所はシカゴのマフィアと深いつながりがあり、彼らの資金を浄化して海外に貯える操作をしていたのです。ある程度中堅になって来るとマフィアの話を打ち明けられ共犯として抜けることができないようにしていました。
ミッチは就職時に収監されている兄がいることを隠していましたが、面会に行ったときに事務所の謎を調べるために私立探偵を紹介してもらいます、しかし、調査を開始した途端に探偵は殺されてしまい、謎の男たちが接近してきました。彼らはFBI(エド・ハリス)で、ミッチに事務所の不正、マフィアの資金源についてのファイルを渡すよう迫ってくるのです。
ミッチは兄の保釈と引き換えに了承しますが、いくら悪者とはいえ顧客の情報を開示してしまうことは弁護士資格を失うことになるのです。そこでミッチは、事務所が費用を顧客へ水増し請求していることに目を付け、自分は罪とならない方法で事務所の不正を暴くことにしたのです。
「ア・フュー・グッドメン」に続いて、クルーズは弁護士の役。今作では、裁判とかより弁護士の収入になる実務、つまりクライアントの資産管理・税金対策などに焦点が置かれていて、特に守秘義務が大きなポイントになっています。そして訴訟大国と言われるアメリカでは、いかに弁護士が高給取りの美味しい商売というところも見て取れる。
クルーズは「ミッション・インポッシブル」前夜にあたり、またもやジーン・ハックマンのような大物の名優と共演できる機会を得ましたが、欲を満たすことを優先して陰謀に巻き込まれ、しだいに何が大切なのかに気が付いていくところをうまく演じています。アクションは全力疾走くらいですが、演技で自分を映画の枠の中に目立たせることにかけては天才的という感じがしました。
ポラックの演出はもちろんあまり文句をつけるようなところはありませんが、2時間半という長さで、ややだれ気味のところも無いわけではありません。音楽を担当したのはフュージョン音楽畑で有名なデイブ・クルーシンで、全編にわたってブルージーなピアノを主体にした音楽が登場します。