2023年3月22日水曜日

WBC2023 準決勝 メキシコ戦


ついにアメリカ上陸した日本チーム。

マイアミの地で、昨日の準決勝の相手はメキシコ。先発は佐々木朗希。前半、投手戦の様相を呈していたものの、日本は何とも球が絞れず、バットにボールが当たらない雰囲気。

先に点をとったのはメキシコでした。4回表、佐々木がスリーラン・ホームランを打たれてしまいました。その後の攻撃でも・・・

もう、結果は散々メディアで流れているので

やったぁ~、決勝進出だぁ!! !! !!

もう、涙が出そうです。

昨日も3三振と不信を極める村上宗孝。栗山監督はよくぞ我慢して使い切った。最後の最後、村上は伝説になりました。センター・オーバーの逆転サヨナラ・ツーベース。

ウォオオオオ!! としか言いようがない。

今日も日本時間、朝8時のプレイボール。街から人が消える!!

ガンバレ!! 侍JAPAN!!

2023年3月21日火曜日

Jordi Savall / Marin Marais Pieces de Viole (1975-92)

ジョルディ・サヴァールは、1941年生まれのスペイン、バルセロナ出身。キャリアの初めからヴィオラ・ダ・ガンバを学び、1974年に古楽器グループであるエスペリオンを結成し頭角を現しました。1987年には合唱団であるラ・カペイラ・リイアル、さらに1989年に大規模なオーケストラであるコンセール・デ・ナシオンを設立し、中世、ルネッサンス、バロック、古典と幅広い時代をカバーする活躍をしています。

そもそもサヴァールは、ガンバニストなので、ヴィオラ・ダ・ガンバの演奏もたくさん録音しており、現代ヴィオール奏者のトップクラスの巨人と位置付けられます・・・って、そもそもヴィオラ・ダ・ガンバって何? という感じです。

ヴィオラ・ダ・ガンバはイタリア語、ウィオールはフランス語。ガンバは脚という意味で、足で支える弦楽器です。大小さまざまなものがあるので、これらをまとめてヴィオール属と呼ぶことがあります。ヴィオラ・ダ・ブラッチョは腕で支える弦楽器で、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロを含むヴァイオリン属のこと。

音量の小さいヴィオール属は古典期以後急速に使われなくなりましたが、70年代以降の古楽復興が盛んになるにつれ復活し、現在では古楽の演奏には無くてはならない重要な楽器の一つとされています。

バロック期に、最も有名だったガンバニスト(ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者)は、たぶんフランスのマラン・マレー(1656-1728)です。ルイ14世の宮廷で演奏し、作曲家としても活躍しました。

マレーの代表作品は、1686年から1725年にかけて発表された全5巻からなるヴィオール曲集です。サヴァールは、まだ楽器がほとんど知られていない70年代から、これらを全曲録音しており、ヴィオールを世に知らしめる記念碑的な偉業となっています。

基本的にはクラヴサン(チェンバロ)かテオルボ(リュート、ギターのような楽器)とのソナタですが、曲によってはいろいろな組み合わせになっていて、聞き続けていても雰囲気がいろいろと変化するので飽きません。クラブサン演奏は、学者肌のトン・コープマンですから、サヴァールととことん議論を重ねて、虚飾を廃してマレーの時代を正確に表現したものと思います。

2023年3月20日月曜日

John E.Gardiner / Purcell MUsic for the Funeral of Queen Mary (1976)

ドーバー海峡を渡ってイギリスに行くと、ヨーロッパ大陸とは地続きではないので、フランスやドイツとは一味違うような雰囲気の音楽が発達しました・・・かどうかは詳しくないのでよくわかりませんが、何しろ中世ではアーサー王と円卓の騎士が有名な騎士道の国、今でも紳士の国として、先進国の中では今でも王政を維持している。


バロック時代の音楽というと、ほぼイギリス人の作曲家はヘンリー・パーセル(1659-1695)の一択という状況です。ただし、J.S.バッハ最大のライバルであるドイツ人のヘンデルは、イギリスに帰化していて、一応パーセル亡き後のイギリス・バロックを盛り上げました。何しろ「ハレルヤ・コーラス」で有名なヘンデルの「メサイア」は歌詞が英語です。

パーセルが活躍したのは、時代的にはバロック中期、時の王はチャールスII世。18歳で王室楽団の指揮者に抜擢されました。36歳の若さで亡くなりましたが、多くの歌劇、あるいは劇不随音楽を作りました。

最も有名なのは「ディドとアエネアス」で、他に「アーサー王」、「妖精の女王」、「テンペスト」、「インドの女王」などがあり、さすがはイギリス人のジョン・エリオット・ガーディナーが、これらを録音しているので、ガーディナー好きにはお馴染みです。

他にも、アンセム(宗教的な賛歌)もいくつかありますが、器楽曲はほとんどないので、声楽が苦手の向きにはちょっと辛いかもしれません。自分も、ガーディナーの演奏を聞いていなければたぶん見向きもしなかったと思います。

チャールズII世が1685年に退位し、次はジェームズ7世が王になりますが、1688年で名誉革命で追放されると、王位に就いたのがメアリーII世女王でした。

そのメアリー女王は、1694年に天然痘で亡くなります。この女王の葬儀のためにパーセルが作ったアンセムがあります。

まさに葬送の曲と言わんばかりの、女王を失った悲しみを目一杯表現しているわけですが、ガーディナーが鍛え上げた、手兵のモンテヴェルディ合唱団の一点の淀みも無い合唱が素晴らしい。

最もさすがに明るいところはありませんので、これだけだと気持ちが沈み込んでしまいますので、カップリングの威勢の良い「来たれ、汝ら芸術の子よ」と合わせて楽しみましょう。

2023年3月19日日曜日

Jordi Savall / Rameau Suites d'Orchestre (2011)

フランス・バロックでおさえておきたい作曲家は、まずバロック中期のジャン=バティスト・リュリ(1632-1687)です。もともとイタリア人なんですが、ルイ14世の大のお気に入りとなり、宮廷音楽家として栄華を極めたらしい。遺されている作品は、ほとんどは歌劇的な物です。最後は自らのドジで怪我をして急死しました。

次に思い出すのは、フランソワ・クープラン(1668-1733)です。教会のアルガン奏者として実績を積んだクープランは、王宮にも出入りするようになり専属のクラブサン(チェンバロ)奏者になります。一部の器楽曲、宗教曲を除くと、作曲した大多数は200曲以上あるクラブサン用の曲集です。今、手に入るクラブサン曲全集はCDで1o枚を要する物になっています。

バロック後期の代表的な作曲家がジャン=フィリップ・ラモー(1683-1764)です。ラモーも教会オルガン奏者として名を上げた後、オペラ作曲家として人気を得ました。しだいにルイ15世にとり立てられ、王室付となります。多くの作品はオペラですが、いくつかのクラブサン曲集を通して、音楽理論の体系化も行っていました。今日用いられる和音を意味する「ハーモニー」はラモーの著書から生まれたものです。

フランス・バロックの作曲家が、特にオペラに力を入れていたことから、オペラ苦手の自分としては当然敬遠しがちになってしまうわけですが、ラモーの場合は自らのオペラの曲を管弦楽用の組曲としてまとめ直したものがたくさんあるのが助かる。

おそらく、それらを一番録音に残したのはフランス・ブリュッヘンです。ブリュッヘンはリコーダー奏者として有名になった後に、自らの古楽楽団を組織しバロックから古典にかけてたくさんの業績を残しました。

ただし、ここではあえてスペイン出身のヴィオラ・ダ・ガンバ奏者、ジョルディ・サバールの演奏を取り上げます。サバールも自らの古楽器オーケストラを組織していて、特にルネッサンス期にまで遡る徹底した古楽追及は他の追従を許しません。

例えばJ.S.バッハの曲の演奏でも、同じ古楽系でもガーディナーのものとはまったく異なる表現をするので興味深い。うまい言葉がなかなか思いつかないのですが、古色蒼然としたひなびた音という感じで、作曲家が生きていた時代のリアルタイムの音楽は確かにこんな感じだったのかもしれないと強く共感できる。

ここでは、CD2枚に歌劇「優雅なインドの国々」組曲、歌劇「ナイス(ナイアス)」組曲、歌劇「ゾロアストル(ゾロアスター)」組曲、歌劇「ボレアド」組曲の4つが演奏されていて、歌劇本編を知っている人ならエッセンスを抽出したようなところかせさらに楽しめのではないでしょうか。

2023年3月18日土曜日

今年の桜


東京あたりに少し遅れて、このあたり、横浜北部地域も今年のソメイヨシノが開花しました。

とは言っても、写真の状態ですから、せいぜい三分咲きくらいでしょうか。

天気は雨模様ですが、さすがにこのくらいでは花が落ちる心配もなさそうで、来週に満開となる感じです。

来週末が見頃のピークということになりそうなので、久しぶりに大々的なお花見をしたいと思っている方は、準備を滞りなく始めましょう。


2023年3月17日金曜日

WBC2023 準々決勝 イタリア戦


東京ドームで見れる最終戦となった昨夜の準々決勝で、日本代表は9対3でイタリアを降しました。

先発は、開幕戦に続いて2回目となる大谷。一球ごとに声が出る力の入ったピッチングで、最速164キロにドームもどよめきました。

試合が動いたのは3回裏の日本の攻撃。何と、驚いたことに、3番バッターの大谷が1アウト1塁の場面で初球バントをしたんです。結果は一塁セーフのヒットになり、チャンスを広げ先制点につながります。

これは、見ている人も相手も想像していなかったと思います。おそらくマウンドに立っていなければやらなかったプレイでしょう。1、2回の残塁という何となく嫌ぁな雰囲気を変える大きな意味がありました。

チーム全体が絶対に勝ちたいという気持ちを新たにした瞬間だったように思いますし、結果として岡本のスリーランにつながりました。その後も、やっと村上にタイムリーも出ましたし、今永、ダルビッシュも投入する鉄壁の投手リレーで完勝です。

さあ、いよいよ場所を決勝ラウンドの地、マイアミに移し、準決勝は20日月曜日、日本時間では21日(祝日!!)朝8時プレイボールです。相手はメキシコかプエルトリコの勝者となります。

ガンバレ!! 侍JAPAN!!

2023年3月16日木曜日

Fabio Biondi / Leclair Violin Concertos (2016)

1764年10月22日、フランスのパリ、東のはずれ。比較的、生活の楽ではない人々のあばら家が集まっている地域でのこと。空気が冷えて隙間風が身に染みるような、部屋ともただの囲いとも区別がつかないような部屋で、一人の男性の遺体が発見されました。

たくさんの傷があり、明らかに何者かによって惨殺されたと思われるその遺体は、一昔前に一世を風靡した人気ヴァイオリン奏者、ジャン=マリー・ルクレールであったことから、パリ市民は大いに驚かされました。

・・・というわけで、何とも残念な死に方をしたルクレールですが、1697年にリオンで生まれ、イタリアで修業した後、バリに戻りヴァイオリン奏者、そして作曲家として大人気となりました。

ルクレールは、同時代のイタリアの人気ヴァイオリン奏者、ジュゼッペ・タルティーニとパリでステージを共にしたことがあるそうです。その時、優雅に弾くルクレールと、鬼気迫るようなタルティーニは「天使と悪魔」と形容されました。

フランス・バロックのヴァイオリン関連では、最も影響力を持った人物であるルクレールは、作曲家としては多くは残してはいないものの、ヴァイオリン協奏曲、トリオ・ソナタ、フルート・ソナタなどがあり、特に2台のヴァイオリンのためのソナタは、絡み合うヴァイオリンの響きが緻密に計算された優れた作品と言われています。

ファビオ・ビオンディは、古楽集団ユウロパ・ガランテを長く率いて、ヴィヴァルディ中心に多くの録音を残しています。イタリア物では、かなり強気の演奏で新しいイタリア・バロックの魅力を引き出していましたが、ここではフランス物ですから、やはり優雅・典雅とでも言えるような響きを紡ぎ出します。

明らかに両国のバロックの違いを意識した演奏ですし、なるほどと思わせる素敵な演奏なので、フランスの扉を開く最初の一枚としてもお勧めです。

それにしても、ルクレール殺人事件の犯人は・・・怪しい人物は数名名前が上がりましたが、結局お蔵入りとなり謎は謎のままなのでした。

2023年3月15日水曜日

春来たりなば


東京では靖国神社の標本木が開花したとかで、過去最速の桜の開花宣言となったみたい・・・ですが、少なくとも自分のテリトリーでは、まだ開花には数日は要しそうです。

何しろ、この時期は三寒四温、暖かくなったり寒くなったりを繰り返す時期。予報では、週末に向けて寒いらしい。膨らんだ蕾も縮こまってしまうかもしれません。

土手を支えるブロック塀の水抜きに溜まった、わずかな土の上に運ばれてきた種子が芽吹いて蕾を付けていました。

大雨とかになって流されなければいいなと思いつつも、どうせならもっと広く根を張れる場所に移動できた方が花も喜ぶかもしれません。

2023年3月14日火曜日

L'arte Dell'arco / Tartini Complete Violin Concertos (1996-2009)

西洋音楽の形成に大きな役割を果たしたのは、ローマ・カトリック教会の影響であったことは疑いの余地がありません。キリスト教の教義をわかりやすく伝える手段として、音楽の普及・発展は欠かせない重要事項でした。ですから、16世紀までは、その中心的な地域は間違いなくカトリックの本山であるイタリアでした。


そして、ヨーロッパに多数存在した王国における、ある意味貴族の娯楽としての需要も、音楽の発達に大きく関与しました。周辺のドイツ、フランスの諸国の宮殿は、音楽後進国としてイタリアに人を送ったり、またイタリアの音楽家を招聘して、自らの貴族趣味を充実させていたのです。

17世紀初頭に歌劇を通して、民衆にも娯楽としての音楽が広がりました。教会の中や宮殿の一室が演奏会場であった頃より、より大きな会場と大きな音量が必要となり、楽団の人数も増員していくことになります。

室内楽でよかった頃は、独奏者と伴奏者だけの二人から三人程度の組み合わせによるソナタ、あるいはトリオ・ソナタが音楽の中心でしたが、伴奏が増えるにしたがって合奏が強化され協奏曲と呼ばれる形式が登場します。イタリアでは、弦楽器が特に発達したため、中心となる楽器はヴァイオリンで、しだいに人々を驚かせるような技巧を盛り込んだ楽曲が主流になったようです。

ドイツでは、マルチン・ルターの宗教改革によるプロテスタントが主流で、ルター以来聖歌を重視した結果、各教会にはオルガンが標準的に配備されることになります。音楽の伴奏には鍵盤楽器が多く使われるようになり、ピアノの発展・普及につながります。

では、フランスはというと、一番の立役者は「太陽王」、ヴェルサイユ宮殿を作ったルイ14世で(フランス革命により処刑された16世のおじいちゃん)、宮殿を文化発信基地として、芸術家を囲い込みました。「語り」と「踊り」というフランス独自の芸術表現を取り込んで、音楽そのものの技術よりも、人に伝わるイメージが重視されたところが、独特の雰囲気につながっているようです。

にわか勉強では、このくらいしか理解できませんが、あえて簡単に考えると、「陽気なイタリア、生真面目なドイツ、そして深遠なフランス」という具合に、同じバロック音楽と呼んでも地域によって大きく異なる展開をしました。

でもって、どれもそれなりに魅力があるわけですが、目下のところ一番興味を持って深堀しているのがイタリア・バロック音楽です。いろいろ探していて気がついてのは、イタリアの作曲家の名前がほぼイ行(i)で終わっているのが面白い。

モンテヴェルディ、ナルディーニ、タルティーニ、ロカッテリ、ロリ、ガッティ、ボッゲリーニ、アルビノーニ、ヴィバルディ、ヴィオッティ・・・まぁ、どうでもいいんですけど、日本で言えば苗字に使われる「木」とか「川」とか「藤」みたいなものなんでしょうか。

「悪魔のトリル」と呼ばれる有名なヴァイオリン・ソナタを作曲したジョゼッペ・タルティーニ(1692-1770)は、ヴィバルディと同世代で、ソナタもたくさん作曲しましたが、協奏曲も山ほど作りました。

自国の偉大なレガシーを系統的に発掘・記録する丁寧な仕事で、とても頼りになるDynamicレーベルからなんとCD29枚組という特大ボックスでの全集が出ています。むむむ、三楽章形式のヴァイオリン協奏曲が125曲という、ヴィヴァルディにも及びませんが相当力の入った仕事です。

演奏はL'arte Dell'arcoという古楽集団。探すと結構いろいろな演奏のCDを残していて、それなりに有名です。リーダーはヴァイオリンのGuglielmo親子で、その演奏は定評があります。この全集は10年以上かけて完成させたものですが、一貫して統一された雰囲気を持続させた労作です。

聞く方も、全部真面目に耳を傾けていたら疲れてしまいますので、行き帰りの車で少しずつ聞いていますが、毎日一瞬「おっ!」と思わせるところが出てくるから厄介です。

ヴィヴァルディと比べるのがわかりやすいと思いますが、思いっきり明るいヴィヴァルディに対してタルティーニは陰陽があります。また、旋律重視のところと、技巧重視のところが混在していて、全体にメリハリがあるように思います。

それにしても、もう2週間くらい、ずっとタルティーニを聞いていますが、まだ半分も終わってない・・・・

2023年3月13日月曜日

WBC2023 第4戦 オーストラリア戦


来たぁ~、出たぁ~!!

大谷のホームラン、ついに出ました。

昨日の1次リーグ最終戦。オーストラリアを相手に、1回表、いきなりノーアウト、1塁2塁。打った瞬間に入るとわかる物凄い打球が、ライトスタンドの自分の顔の看板めがけて飛んで行った!!

いやぁ、すごいなぁ。今までは海の向こうの話でしたが、今もテレビの中の話というのは同じですけど、自分が知っている東京ドームでのことだと思うと、その凄さが何倍にもなってきます。

期待されるというのは本人にとっては重圧のはずなんですが、その期待の上を行く結果を出す大谷という男は凄いを通り越して、もう尊敬するしかありません。

投げては天下の山本由伸です。コンパクトな投球フォームなのに、どこからこんなに多彩な投球ができるのか不思議。だからこそ、打者も打ちあぐねるわけでしょうけどね。

オーストラリアから着実に追加点を加えて、結果は7対1で勝利。日本は4連戦を全勝し、1次ラウンドのリーグ戦プールBを1位突破です。16日の木曜日、東京ドームで予定される準々決勝の気になる相手は、全チームが2勝2敗で並ぶ混戦となったプールAを失点率で抜け出し2位通過したイタリアです。

それにしても、チェコ戦に続いて昨日もヒットが出た村上ですが、どうも不振は相当重症でチャンスで結果が出せない。スタメンをはずせという意見もありますが、不振だからこそ4番を信じて使い続けるというのは栗山監督の決断です。なんとかきっかけを見出してもらいたいものです。

ガンバレ!! 侍JAPAN!!

2023年3月12日日曜日

WBC2023 第3戦 チェコ戦


連日の試合で、選手も疲れが出てくるかもしれませんが、見る方も大変。ゆっくりと結果を吟味している暇もありません。

昨夜の試合の相手はチェコ。

野球があまり浸透していないヨーロッパからの参戦で、野球を職業にしている人はいません。そういうところでは、敵と言えども頑張ってもらいたいなとは思います。言ってみればアマチュア・チームですが、中には大リーグ経験者もいるらしい。

日本の先発はロッテの佐々木朗希。21歳、最速165キロ、そして昨年最年少で完全試合を達成した、将来は球界を背負って立つだろう若者です。昨日は東日本大震災から12年目という日に当たりましたが、陸前高田の出身の佐々木は被災者の一人であり、父と祖父母を失っています。

さて、試合の方は・・・今夜も序盤はどうもぴりっとしない。佐々木は普通の調子だと思いますが、豪速球にうまくタイミングを合わせたヒットを打たれ、内野のエラーで相手に先制されてしまいました。

日本の攻撃はというと、先発した軟投型の投手に手こずり、大谷を含めてバッターはみんな待ちきれず打ちあぐねている。でも、さすがにトップクラスの選手たちですから、二巡目からは打ち崩し逆転、そのまま引き離し10対2で勝利し、三連勝です。

さて、そろそろ準々決勝ラウンドへの進出が気になってくる頃ですが、日本のいるプールBは、このまま行けば日本とオーストラリアで決まり。オーストラリアは、残る日本、チェコに負けて、韓国が残るチェコ、中国に勝つと両国とチェコが2勝2敗で並びますが、複雑な進出規定を韓国がクリアするのはかなり難しそうです。

さて、今夜もあります。1次ラウンド最後の試合相手はオーストラリアで、攻撃陣が好調ですからあなどれません。勝って全勝で次のラウンドへ行ってほしいものです。

ガンバレ!! 侍JAPAN!!

2023年3月11日土曜日

WBC2023 第2戦 韓国戦


連日の侍ジャパンの激闘に、応援する側としても力が入るというもの。

昨夜は1次ラウンドの韓国との対戦でした。過去の成績は、4勝4敗の五分。何かといろいろな因縁を話題にするメディアが多いのですが、選手からすれば目の前にある一つ一つの勝負を着実につかみ取っていくということかと。

日本の先発は、もはや大ベテランとなったダルビッシュ。往年の勢いが感じられませんが、ベテランの味で・・・と言いたいところですが、ちょっとお疲れ気味という感じ。3Rホームランを浴びて先制されてしまい、ちょっと不安な感じになりました。

ところが、それで目が覚めたのか攻撃陣が覚醒して、終わってみれば13対4の大差をつけての勝利。コールドゲームに追い込みそうになるという、おそらく韓国からすれば屈辱的な大敗です。

1次ラウンドはリーグ戦で、勝率が同じなら失点率、防御率、打率などの差で順位が決まって来るので、2次ラウンドに向けて日本はかなり有利な状況になりました。

サッカーと違って野球は連戦になるので、今夜はチェコと、そして日曜日はオーストラリアと試合が続きます。

それにしても、昨夜も長い試合でした。もう少してきぱきと進まないかなぁ。

ガンバレ!! 侍JAPAN!!

2023年3月10日金曜日

WBC2023 開幕戦 中国戦


いよいよ開幕しました、白黒カラー・・・じゃなくて、World Baseball Classic 2023。

今回の日本チーム、侍JAPANの目玉は、何と言っても大リーグからかけつけたダルビッシュと大谷の二人。そして、最年少三冠王の村上ら国内組オールスターズの爆発力が見所。

短期決戦で、初めての投手との連戦は高校野球みたいなものですが、データ野球を基本としているプロにとっては難しいところかもしれません。

侍JAPANの初戦は中国。先発は大谷。同じテレビで見ているにもかかわらず、遠いアメリカでの映像と、すぐそこの東京ドームからのものでは雰囲気がまったく違うものです。

圧倒存在感というのが、画面からあふれ出てくる感じは、まさにスーパースターだなと思います。ピッチャー大谷は、ほぼ完璧でした。バッター大谷も、ホームランこそ無い物のさすがの活躍でした。

前半は、緊張からかストライクが入らない中国の若い投手に対して、何とももやもやする攻撃が続き、何度もある満塁での残塁の山にちょっと盛り上がれませんでした。

後半、やっと目が覚めた侍。終わってみれば8対1。まぁ、結果オーライということで良しとしますが、それにしても長い試合でした。

今日は続けてダルビッシュ先発の韓国戦です。

ガンバレ!! 侍JAPAN!!

2023年3月9日木曜日

A.Netrebko, M.Pizzolato, A.Pappano / Pergolegi Stabat Mater (2010)

ジョバンニ・バッティスタ・ペルゴレージは、イタリア・バロック最後期の作曲家。1710年生まれで、ナポリで頭角を現します。23歳でオペラ「奥様女中」が大評判となりますが、結核のため26歳の若さで亡くなったため、遺された作品は多くはありません。

しかし、死後にバロックから古典派音楽への転換に大きく影響を残した作曲家として大きく評価されることになり、特に最後の作品となった「スターバト・マーテル」は、最も優れたものとして人気があります。

13世紀にキリスト教カトリックで作られた聖歌である「スターバト・マーテル」は、聖母マリアが磔刑に処されたイエスを悲しむ内容のもので、9月15日の聖母マリアの記念日に歌われる習慣があります。

多くの作曲家が、この歌詞を基に新たな音楽を作っていて、ペルゴレージ以外ではヴィヴァルディ、ハイドン、ロッシーニ、ドヴォルザークのものなどが有名です。しかし、ペルゴレージの「スターバト・マーテル」は、その中で最も高く評価されていることは間違いない。

12曲から構成され、演奏時間は35~40分程度。歌手は、ソプラノとアルトによるの女性二重唱です。ただし、アルトのかわりにメゾ・ソプラノ、コントラ・アルトが登用されることもありますし、男性のカウンター・テナーが歌うのも珍しくありません。

古楽演奏が盛んになる前の、この曲の定番のレコードはクラウディオ・アバド盤でした。1983年の録音で、ロンドン交響楽団から小編成で伴奏を行い、ソプラノはマーガレット・マーシャル、アルトはルチア・ヴァレンティーニ・テッラーニ。

アバドは、後に何と古楽器編成で再び再録音をしていて、優雅さよりも奥行きを増しているように思います。自分としては新録音の方が好みですが、いずれも素晴らしい演奏であることにかわりはありません(ちなみにアバドは1979年のライブDVDもあり)。

ただし、ここで紹介するのは現代オペラ界最大の人気を誇る歌姫、アンナ・ネトレプコが歌うもの。ネトレプコにとっては初めての宗教曲であり、オペラでの情緒的な歌唱を封印して、ビブラートをおさえた中で、聖母マリアの悲しみを歌い上げるのはさすが。

ただ、ネトレプコありきの企画なので、アルトのマリアンナ・ピッツォラート、指揮のアントニオ・パッパーノがちょっと弱い感じなのが残念かもしれません。2010年7月、バーデン=バーデンにおけるオペラ・ガラでのライブで、この模様はビデオとしても見ることが出来ます。

内容としては、歌手の感情表現が強すぎるとの否定的意見も多く、必ずしも「名盤」とは言いにくいのですが、聖母としてよりも母親として悲しみを率直に表現するという意味では悪くありません。


2023年3月8日水曜日

G.Carmignola, C.Abbado / Mozart Violin Concertos (2007)

例えば、武満徹の音楽を聴くなら日本人の演奏で聞きたい。というのは、世界中に優れた演奏はたくさんあるわけで、何も日本人の演奏がことさら秀でているわけではありません。ただ、日本人のなら、最も武満の音楽を理解できるはずという願望みたいなところでしょうか。

同じ理由で、イタリア・バロックならできればイタリア人の演奏で、ドイツ・バロックならドイツ人の演奏でというのは、絶対的な条件ではありませんが、それがあるならそっちを選択というくらいのもの。

できるだけ作曲者の生きた時代の楽器と演奏法で音楽を再現するという、古楽の考え方にちょっと似ている感覚です。もっとも自分の古楽の先生はJ.E.ガーディナーで、この方はイギリス人ですけどね。

そこで、御年72歳となるジュリアーノ・カルミニョーラは、イタリア・バロックを聞く上ではヴァイオリン奏者として重視したくなる。イタリア人だということもありますが、ベルリン・フィル勇退後のクラウディオ・アバドとのコラボレーションがけっこうあるというのも理由の一つ。

アバドもイタリア人で、自分にとってはアバド抜きでマーラーを聞くことができません。一方で、アバドは、自ら育てた若手や、アバドのもとに一緒に演奏したいと世界中から集まったベテランと共に、古楽系(に近い)の演奏を行うモーツァルト管弦楽団というのも組織しています。

ルツェルン祝祭管弦楽団とメンバーは被りますが、とにかくどちらも音楽を演奏することが楽しくてしょうがないという雰囲気の中で、アバドの中心に常設の楽団に負けないエネルギーを感じられるところが気に入っています。

モーツァルト管弦楽団の準レギュラーのようなソロイストとして、カルミニョーラはしばしば登場するわけで、バッハのブランデンブルグ協奏曲とともに音源が残されたのが、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲集です。バッハもモーツァルトもイタリア人じゃありませんけど・・・

実はカルミニョーラは、1997年にも全曲録音をイタリアのレコード会社に行っていて、その後Brilliantレーベルから登場した廉価版がクラシックとしては大ヒットしていました。地元の仲間とリラックスした伸びやかな演奏は、モーツァルトの楽しさを倍増させていました。

アバドとの演奏はというと・・・モーツァルトがより大人になったという印象。小難しなったわけではなく、余裕をもって音符をいじっているというところが、安心して聴けるところ。たぶん、どちらも人によって好き好きなんですが、自分は円熟の演奏を選択したい感じです。

2023年3月7日火曜日

キケン


通りすがり・・・シリーズではないんですが、通勤の途中でひと際目を引くのがこれ。

キケン!!

否が応にも、何だろうと見やってしまいます。いかにも、素人が即席で紙を貼りだした感じ。

ちょうど、信号待ちでけっこう長く停車していることが多い場所なので、なおさら観察してしまいます。

正面から見るとこんな感じ。


なるほど玄関脇のブロック塀が、倒壊したというわけですね。

でも、これ、もう2週間くらいほったらかしになっているんですよね。

どうするつもりなんでしょうか。

というより、この家の人、出入りはどうしているんでしょうか。どうでもいいけど、気になるなぁ。

2023年3月6日月曜日

春近し


暦の上では、とっくに春なんですよね。

実際の体感としては、まだまだ風も冷たかったりして、晩冬という感じ。それでも、日差しだけなら暖かいということもある。

3月から4月の間は三寒四温の時期。寒い暖かいを繰り返しながら、しだいにしっかりと春になる。三月が寒くて、四月が温かいという意味だとボケてる場合じゃない。

今は梅が満開の頃か、少し満開を過ぎたぐらいだと思いますが、近くを流れている早渕川の川沿いにやたらと派手に咲き誇った樹木が植わっています。

梅にしては派手。ソメイヨシノよりも開花時期がはやいのは山桜ですが、それにしては赤味が強く樹高も高くない。となると、残ったのは桃でしょうか。

車通勤の通りすがりで、もう何年も見ている光景なんですが、ゆっくり観察したことがありません。何とももったいないことだと、また今年も思ったわけです。

2023年3月5日日曜日

Musica Amphion / Corelli Complete Edition (2004)

17世紀前半をイタリア・バロック音楽の前期とするなら、17世紀後半が中期となり、その時代を代表する作曲家としてあげられるのはアルカンジェロ・コレッリです。

1653年にイタリア北部で生まれ、13歳でボローニャに出て音楽家としての下地を作りました。ヴァイオリン奏者として実力がつくと、19歳でパリ、22歳でローマ、28歳でドイツ・バイエルンと各地を転々として、ヨーロッパにおいて名が知られるようになりました。

1681年に最初の作品を出版し、器楽曲作曲家としても名声を得ます。32歳からはローマで、後に教皇となる枢機卿の庇護を受け悠々自適の生活を送り、1713年に59歳で亡くなりました。

出版されたのは、すべて複数楽章の12曲からなるトリオ・ソナタ作品1から4まででと、同様形式のヴァイオリン・ソナタ作品5、合奏協奏曲作品6と、死後に見つかった数曲だけしかありません。

多くの作品は作曲者自身によって破棄されたと考えられていますが、バロック前期のよりもメロディを強く意識した曲作りであり、この後に活躍する音楽家に多大な影響を与えました。コレッリは、ヴァイオリンの曲芸的な演奏は否定的だったようで、そういう意味でも当時のヴァイオリン教育の場て大いに使われたことも関係しています。

特に有名なのはトリオ・ソナタ作品5と合奏協奏曲作品6の2つですが、CDを探すとほとんどこれだけになってしまいます。全部まとめてもCD10枚程度なので、ここは廉価版レーベルで有名なBrilliantレーベルの全曲集ボックスがお勧めです。

廉価版と言っても、素人同然の知られていない演奏者が出てくるわけではなく、ちゃんとした他のレコード会社の演奏をライセンスを受けているものなので心配ありません。

ただし、ここでは、オランダの古楽鍵盤奏者として有名なピーター=ヤン・ベルダーが率いるムジカ・アンフィオンがこのCD全集のために演奏しており、中心となるヴァイオリン独奏はレミー・ボーデと山縣さゆりで、チェロにはヤープ・テル・リンデンが名を連ねています。


2023年3月4日土曜日

John E.Gardiner / Monteverdi Vespro Della Beata Vergine (1989)

クラシック音楽の中で、そもそも「バロック (baroque, barock)」って何・・・

何となくイタリアならヴィヴァルディ、ドイツならJ.S.バッハの音楽がバロック・・・くらいにしか考えていませんでしたが、実はこのあたりはバロック音楽という時代区分で言えば末期。

16世紀のルネッサンス音楽から、バロック音楽と呼び方が変わるのは17世紀初頭の劇音楽の登場(劇音楽は今で言うオペラ)。J.S.バッハの死(1750年)と共に終焉し、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンらが活躍する古典派音楽の時代に移ります。

初期バロックはキリスト教カトリックの総本山があるイタリアが中心で、特にもヴェネチアは音楽形式熟成の拠点でした。現在、その中で最も重視される作曲家の一人がクラウディオ・モンテヴェルディです。

1567年に生まれたモンテヴェルディは、マントヴァの宮廷楽長として仕え、膨大なマドリガーレを作曲しました。これは、感情表現を取り入れた無伴奏か、数人規模の伴奏を伴う歌曲で、今で言うポップスみたいなもの。また1607年には自身最初のオペラである「オルフェオ」を世に送り出しています。

一方で、宗教曲も積極的に作曲していて、この「聖母マリアの夕べの祈り」は最も有名で、バロック音楽を演奏する集団、特に古楽系の楽団で録音を残していないところを見つけるのが難しいくらい必須の曲になっています。

 カトリック教会での聖務日課の一部である晩課が元になっていて、独唱と合唱、当時としては大人数の器楽演奏者を必要とする大規模な物で、時間も90分程度かかります。実際の教会の中では、すべてを演奏するのは大変なので、必要に応じて部分的に演奏されたと考えられています。

ジョン・エリオット・ガーディナーは、ケンブリッジ大学在学中の1964年にモンテヴェルディの名を冠した合唱団を結成しました。これは、まさに「聖母マリアの夕べの祈り」を歌いたいがためといわれています。

ガーディナーの目標は10年後に実現し、今もCDが発売されていますが、何と言ってもこの曲の名盤とされのは合唱団結成25周年として行われた1989年の録音で、ビデオも作られています。

個人的には、数年前に新たに演奏された盤が、音質・画質とも最高で、全体的に円熟の味わいを感じられるので気に入っています。







2023年3月3日金曜日

Luca Fanfoni / Lolli Violin Concertos (2006)

アントニオ・ロッリの作曲による、今度はヴァイオリン協奏曲集です。

番号付き9曲と番号無し1曲の全10曲の「Complete」と銘打ったCD枚組のアルバムで、独奏者はソナタ集と同じルカ・ファンフォーニ。演奏はレアル・コンセルトで、ブックレットの記載を見るとほぼ全員楽器はモダンで、ファンフォーにだけ18世紀初頭の古楽器を曲によって使い分けているようです。

すべての曲が長調の3楽章構成で、急-緩-急のパターンですから、イタリア・バロックのフォーマットとしては普通というところ。とは言え、ヴァイオリンのソロ・パートが多めで、ヴィヴァルディりも曲想も色とりどりという感じがします。

聞きやすい安心感はヴィヴァルディが勝りそうですが、ヴァイオリンの名手と言われたロッリですから、いかにヴァイオリンで聴衆を唸らせるかを実作に生かしたというところなのか、実際にヴァイオリンを弾く方だったら凄い演奏と思ってくれるかもしれません。

こうやっていろいろ聞いてみると、どれも似ていると言われればその通りなんですが、やはり作曲者ごとの個性は感じられます。ただ、ヴィヴァルディが一番現代でも有名なのは、やはり耳に残るメロディをうまく配置するのが一番うまいということなのかなと思います。

2023年3月2日木曜日

自宅居酒屋 #56 じゃがいも炒め


簡単、時短、そして肴になるメニューを紹介するのが、自宅居酒屋シリーズの趣旨なんですが、これはご飯にも合うし、昔はこどもの弁当にもよく入れていた、我が家の定番の一つ。

材料
じゃがいも げんこつ大 1個
たまねぎ 中くらい 1個
たらこ 普通サイズ 1腹
バター できれば無塩 20g程度

無塩バターが無い場合は、たらこは味を見ながら入れるのが良いと思います。これでけっこうな量になりますので、じゃがいもの大きさによって調節してください。

多少めんどうなのは、じゃがいもの皮むきと千切りにするところ。たぶん調理時間の大半はここで消費してしまいます。

たまねぎはじゃがいもに合わせて、切る厚さは適当に。

フライパンにバターを入れ溶かしたら、じゃがいもとたまねきを投入して炒めます。数分したら、ほぐしたたらこを入れて軽く火を通しつつ混ぜ合わせるだけ。

じゃがいもは少し芯が残っているかなくらいが、シャキシャキ感もあって美味しいと思いますが、そのあたりは人それぞれのお好みでどうぞ。

バリエーションとしては、たらこの代わりにコンビーフとか、細かく切ったベーコンなども美味しくできます。

2023年3月1日水曜日

Claudio Scimone / Albinoni 12 Concerti Op.10 (1979)

第二次世界大戦末期、1945年2月に連合国軍はドイツ東部の都市、ドレスデンへ大規模な空襲を行いました。この爆撃によって街のほとんどが破壊され、多くの市民が亡くっています。

この空襲によって失われたものの中に、国立図書館が所有していた多くのアルビノーニの直筆楽譜もありました。それでも、多くのアルビノーニの音楽を復元演奏している音楽家がいるわけで、クラウディオ・シモーネもその一人。

1934年生まれで、N.アーノンクールよりちょっと若く、J.E.ガーディナーよりは10歳くらい年上。1959年にイタリア・バロックを専門に演奏するイ・ソリスティ・ヴェネティを結成し活躍しました。イ・ソリスティ・ヴェネティは、イ・ムジチ合奏団と同じように、古楽系ではありません。シモーネは、学生教育にも力を注ぎ、2018年に亡くなっています。

アルビノーニの音楽は、ERATOレーベルにまとまった録音を残していますが、12曲でまとめてある協奏曲集である作品2、5、6、7、9、10などを聞くことができます。主役はヴァイオリンと一部がオーボエ。

ヴィヴァルディでも言えることですが、イタリア・バロックは基本的に宮廷音楽なので、明るくじめじめしていない。長々と演奏して国王を飽きさせたりしません。そして、ところどころで超絶技巧を聞かせて拍手喝采してもらうというのはお約束。

アルビノーニの音楽もヴィヴァルディと同時代の同じ空気を吸っていた人ですから、全般的にはどれも似たような雰囲気の急・緩・急の三楽章もので、それが12曲でひとまとめになっているので、第何番を聞いているのかよくわからなくなってしまいます。

ヴィヴァルディと比べてもしょうがないとは思いますが、あえて言うなら、やや音楽的。ヴィヴァルディほど忙しくはなかったのか、多少アンサンブルとしての完成度は上のような感じがします。その分、サーカス的なヴァイオリンはおとなしめ。

イ・ソリスティ・ヴェネティ創立時から、ヴァイオリンのコンサート・マスターを務めるのはピエロ・トーゾという人。多くの曲でソロを聞かせてくれますが、曲のせいか華々しくはないのですが、堅実で美しい響きは悪くありません。

そんな中で、作品10をここに選んだのは、12曲中3曲でヴァイオリン独奏がジュリアーノ・カルミニョーラだから。まだ若き28歳のカルミニョーラが、古楽に目覚める前の数少ない演奏が聴くことができます。

さすがに、すでにイタリア・バロックの重鎮となっていたシモーネの元での演奏ですから、好き勝手はできないようで、カルミニョーラのイメージからするとかなり型通りの安全運転の演奏です。

2023年2月28日火曜日

Herbert von Karajan / Albinoni Adagio (1983)

クラシック音楽のヒット曲ランキングがあったら、知名度と共にベスト10に入りそうな一曲が「アルビノーニのアダージョ」という曲。

普段クラシックを聞かないという人でも、絶対に聞いたことがあるはず。何とも哀愁の漂うメロディは、一度聞けば心に残ること間違いなし。

そもそもトマゾ・アルビノーニは、1671年ヴェネチア生まれの、イタリア・バロックの作曲家です。宮廷ヴァイオリニストとして生計を立てつつ、主としてオペラとヴァイオリンを主役にした器楽曲の作曲で有名になりました。

帝王として君臨したカラヤンの演奏は有名。もちろんオーケストラはベルリン・フィル。荘厳な雰囲気の中、重低音を響かせるオルガンと一糸乱れぬ弦楽器が奏でる調べは、さすがとしか言いようがない。

ネオリアリズムの悲劇的な映画の主題歌でも聞いているような感じですが、カラヤンが自ら進んで選曲したとも思えない。80年代になって、いろいろとベルリン・フィルとの軋轢が表面化してきた頃ですから、どこか商業ベースでの妥協もあったのかもしれません。

このアルバムは、過去の録音からアダージョと呼ばれるゆったりした情感あふれる楽章をベスト・セレクトしたものですが、「アルビノーニのアダージョ」については、わざわざ録音したようです。

ところが・・・ここで今となっては大問題がある。イタリアの音楽学者であるレモ・ジャゾットが、図書館で埋もれていたアルビノーニの楽譜を発見したとして、1958年に出版したのがこの曲でした。美しいメロディは、オーソン・ウェルズの映画にも使われ、またたくまに世界中に知れ渡りました。

なんですが・・・アルビノーニが作曲したと思われていたこの曲、実は贋作だったんです。ジャゾットは自身をアルビノーニの原曲を少しいじった編曲者と言っていましたが、今では完全にジャゾットの創作によるものであることが判明しています。

ですから、20世紀までの録音では、作曲者はアルビノーニ、編曲者がジャゾットとクリジットされるのが普通で、当然カラヤン盤でもそうなっている。カラヤン先生が生きていたら、「恥をかかせおって」と顔を真っ赤にしていたかもしれません。

2023年2月27日月曜日

Zubin Mehta / Vivaldi Le Quattro Stagioni (1982)

超人気曲のヴィヴァルディの「四季」だけに、探してみると様々な興味深い演奏が出るわ出るわ、もう7が揃いまくったパチンコ台みたいな感じ。

これはズービン・メータ四季のイスラエル・フィルハーモニーによる演奏で、それだけだと「なんだ大袈裟な面白みのない普通の演奏」かと思ってしまいますが、実は超有名なヴァイオリン独奏者が揃っていて、ちょっと知っているなら驚愕すること間違いない。

「春」はアイザック・スターン、「夏」はピンカス・ズッカーマン、「秋」はシュロモ・ミンツ、そして「冬」はイツァーク・パールマンが登場するという・・・

こんな「時代のスーパースター」を誰がどうやって頼めば集められんだぁ!! と、叫ばずにはいられない。1982年、テルアビブでのライブで、ドイツ・グラモフォンからCD発売と共に、画質は悪いのですが、テレビ放送の録画? と思われる動画もYouTubeで見ることができます。

イスラエル・フィル創設者であるフーベルマン生誕百周年記念イベントとして行われたもので、ユダヤを代表するヴァイオリニストが一堂に会したというもの。

イスラエル・フィルの上手さは定評があり、バーンスタインも大のお気に入りのオケでしたが、それにもまして4人の独奏者の素晴らしい音色はさすがとしか言いようがない・・・のですが、それ以上のものでもない。

つまり、これはお祭りとしての名人を一度に楽しむものであって、ヴィヴァルディである理由は感じられません。普通に有名なヴァイオリン協奏曲を4曲、30分ずつ4人で2時間のコンサートとかで良かったんじゃないかと思ってしまいます。

まぁ、こんなんありました的なところですが、興味がある方は一度は聞いておいて損はしません。


2023年2月26日日曜日

Luca Fanfoni / Lolli Sonatas for Violin and Basso Continuo (2010)

イタリア・バロック音楽の主役は・・・なんと言ってもヴァイオリン、間違いない。ヘンデル、テレマン、J.S.バッハなどの活躍で18世紀以降はドイツに音楽界の主導権を取られ、独奏楽器としてはピアノが主役になり、大人数の管弦楽団が整備されていきます。

とは言え、音楽史の中で、17世紀まではイタリアが先進国として主導権を握っていたわけで、ストラディバリのような優れた弦楽器製作者にも支えられて、小編成の楽団を中心に華やかなヴァイオリン独奏者が活躍しました。

そしてこの時期、優れた技能で聴衆を喜ばせたヴァイオリン独奏者は、演奏者であると同時に自分を演出するための作曲者でもあったのです。ヴィヴァルディ以外は、一般にはあまり知られていませんが、それは技巧ありきの曲が音楽としてそれほどたいしたことが無かった・・・

という一面も否定できないのですが、実際、ヴィヴァルディですら大ヒットの「四季」を除けば、「同じ曲を600回書き直した」と陰口を叩かれてしまう有様です。でも、それを言ったらモーツァルト、ハイドンくらいまでは似たり寄ったりの話。バッハも、自分の気に入ったフレーズはかなり使いまわししているのは事実。

今回の主人公はアントニオ・ロリ。ヴィヴァルディとは入れ違いに頭角を現した人。当然、18世紀半ばの一目置かれたヴァイオリン奏者でした。彼はシュトゥットガルト宮廷管弦楽団のソロ ヴァイオリン奏者であり、イタリアだけでなく、ドイツ、ウィーン、パリ、オランダ、イタリア、さらにはロシアでも演奏会を開いています。

作曲家としての知名度はあまり高くはありませんが、数曲の協奏曲とソナタを出版しています。AmazonでCDを探しても数枚しか見つかりませんが、こういう時頼りになるのがイタリアのレコード会社のDynamicです。自国の作曲家を系統立てて整理・紹介する仕事を地道に行っていて、ロリについてもCD3枚組で全協奏曲、CD1枚でソナタを網羅しています。

ソナタ集は、ヴァイオリンの活躍がより鮮明にわかります。こんな高音出せるの? と言いたくなるほどの音で、ほぼ曲芸じみた演奏も出てきますが、言ってみれば軽いテーマがあって、その後にアドリブが延々と続くハード・パップ・ジャズみたいなもので、確かに曲としてのテーマはどうでもいい感じ。ひたすらヴァイオリンのアドリブを聴くと思えば、それはそれで楽しい。もうはっきり言って、伴奏のチェンバロとかチェロとかいなくてもかまいません。

ロカテッリのCDでも演奏するファンコーニは、ほぼ知られていませんが、60歳くらいで多くのコンクールで入賞した実績があり、イ・ムジチで活躍したサルヴァトーレ・アッカルドに師事していました。それにしても、超絶テクニックを持つ知られていないヴァイオリン奏者が、一体イタリアにはどんだけいるんだろうと思ってしまいます。

2023年2月25日土曜日

Julia Fischer / The Four Seasons (2001)

何しろヴィヴァルディの「四季」は知名度の高い人気曲ですから、ヴァイオリン奏者にとっては一定の顧客を掴むことが見込める大事なドル箱であることは否定できません。新人にとっては、自分の名前を世間に知らしめるのに大変都合が良い。

ユリア・フィッシャーは1983年生まれで、現代女流ヴァイオリン奏者としてはトップ・クラスの実力と人気を誇っています。

十代から様々なコンクールで優勝をさらい、2004年にCDデヴューをしましたが、実はその3年前に収録された「四季」のDVD映像があります。

なんと、2001年ですから、フィッシャーは18歳という若さ。イギリスのウェールズ国立植物園で、園内に特設ステージを組んで、四季折々の美しい光景を交えながらの演奏はなかなか堂々としたものです。

一緒に演奏するのは、Academy of St.Martin in the Fieldsのメンバーで、実力派揃いで手堅くサポートしています。内容は、まさに正統派、よけいな遊びはありません。ただ、きびきびとした若さがはじける爽快な演奏です。

見方によっては、新人を売り出すためのMV。実際、美しい自然の風景や、音楽の邪魔にならない程度の環境音もところどころに混ざっていたりします。

しかし、実際のヴァイオリンの実力が素人目にもものすごくわかり、この曲の正統派演奏としてはベストにあげたくなる内容です(おじさん的には、ビジュアルの良さも忘れてはいけないポイントですが・・・)。

2023年2月24日金曜日

Gidon Kremer / Eight Seasons (1998)

ギドン・クレメールは、現代クラシック音楽界では最高のヴァイオリン奏者の一人。2016年に高松宮殿下記念世界文化賞を受賞しニュースにもなったので、名前を聞いたことはある人が少なくないのではないでしょうか。

1947年、旧ソビエト連邦のラトビア生まれですが、旧体制の厳しい芸術に対する規制を嫌い、主として海外での活動を中心に、多くの名演を残しています。

自分が最初にこの名を記憶に遺したのは、マルタ・アルゲリッチと共演したベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタです。本当に火花が散るような掛け合いは、楽譜がある音楽としては驚きの演奏でした。また、シューベルトの楽曲での、あまりにも見事な弱音にも感動しました。

ただ、芸術家としての妥協の無いとんがった部分がしばしば衝突にもなっているようで、クラウディオ・アバド指揮、ロンドン交響楽団との「四季」旧録音(1981)では、アバドと解釈を巡って対立し、後に著作の中でアバドを無能と書いたことは有名。他にも意見対立からお蔵入りになった企画も多数あるようです。

アバドとの「四季」は、本人の意向はともかく、人気者の共演とあってレコード会社は名盤扱いして何度も再発売されていますが、基本的に交響楽団と「四季」を演奏すること自体に無理があるわけで、クレメールの上手さは多少伝わる程度で、それほど良い物とは思えません。

さて、クレメールは90年代なかばから、アルゼンチン・タンゴの作曲・演奏家であるアストル・ピアソラに傾倒し、続けざまにCDをリリースしました。その中の一枚がこれ。「8つの季節」というのは、ヴィヴァルディの「四季」にピアソラの各季節にまつわる曲を交互に配した構成になっているから。

本当の目的はピアソラでしょうから、このアルバムでクレメールの「四季」を聞くのは正しくないのかもしれませんが、何しろヴィヴァルディの部分で38分、ピアソラで25分なので、知っているヴィヴァルディの方に耳が向いてしまいます。

共演するのは手兵のクレメラータ・バルティカで、古楽でもモダンでもない、独自のクレメール流という感じがします。やや早めの演奏で、一音一音を区切って、プツプツした感じは独特で好みが分かれそうなところ。もしかしたら、タンゴの歯切れの良さみたいなものを取り入れたのかもしれません。

まぁ、正直言って、雰囲気が違うので、ヴィヴァルディかピアソラか、どちらかに統一してくれた方が聞きやすいかなと思います。

2023年2月23日木曜日

I Musici / Vivaldi Le Quattro Stagioni (1970)

いつも古楽を褒めたたえて推奨しているので、古楽至上主義のように思われてしまうかもしれませんが、モダン楽器による演奏を否定しているわけではありません。実際、古楽系に傾いたのはこの10年程度のことで、それまではまったく普通に意識せずに音楽を聴いていました。

ヴィヴァルディの超有名曲「四季」についても、初めての出会いは70年代に買ったレコード盤で、当然のことですが演奏者はイ・ムジチ合奏団。

イ・イムジチは、フェリックス・アーヨ(ヴァイオリン)が中心に1951年に結成され、アーヨ、ロベルト・ミケルッチ、サルヴァトーレ・アッカルドら歴代コンサート・マスターによって絶大な人気を博し、もう70周年を越えたというからすごいことです。

どうも記憶が定かではないのですが、レコードのジャケットは4つの四季を表す絵画が縦2横2でデザインされていたので、おそらく1970年版で独奏はミケルッチだろうと思います。何しろ驚いたのは、丸々楽譜が付属していたこと。

当然、当時も今もまともに楽譜がよめるわけではありませんが、まさにイ・ムジチの目指しているものがよくわかる。つまり、作曲者の意図を、楽譜通りに最大限忠実に再現するということ。もっとも、まだ古楽という言葉が定着するずっと前ですから、モダン楽器によるモダン奏法です。

何度も聞いた演奏ですから、自分の中ではベストではないけどスタンダードの位置づけであり、いろいろな「四季」を聞く時の比較対象のベースになっていることは間違いない。

CD時代になって、ヴィヴァルディの40枚組の安価なBOXセットをあまり考えずに購入しましたが、実はこの中の半分はイ・ムジチの演奏でした(残り半分はネグリの声楽曲)。ヴィヴァルディの器楽曲はほぼ全部がイ・ムジチで揃ってしまうという何ともありがたいセット。

ここに含まれる「四季」は、独奏ヴァイオリンは初代コンマスのアーヨなので1959年録音版です。古い音源ですが、初期のステレオ録音としては優秀で何ら問題ありません。古楽系に演奏を知ってしまうと、何ともオーソドックスというか、丁寧というか、教習車が路上練習をしているような感じ。

よく商品レヴューで、古楽系の演奏はエキセントリックで初心者にはお薦めしませんみたいなことがコメント欄に書かれていたりするんですが、それぞれに面白さは違うので必ずしもイ・ムジチが初心者向けということではありません。後は、いろいろ聞いて自分のお気に入りを見つければいいだけの話ですね。

2023年2月22日水曜日

Rachel Podger / Vivaldi Le Quattro Stagioni (2018)

女流の古楽系ヴァイオリン奏者というと、思い出すのは今は60代になったヴィクトリア・ムローバ、50代ではレイチェル・ポッジャー、そしてもう少し若いイザベル・ファウストの三人がトップ・ランナーでしょうか。

この中で、筋金入りのピリオド奏者となると、ルネッサンス期の音楽からロマン派の一部まで、一番レパートリーの幅が広いポッジャーをあげざるをえない。ただ、主にCDをリリースしているのが、他の二人から比べるとややマイナーな「Channel Classics」というレーベルなのが残念な所。

CDベースの話になると、やはり商業的な側面を無視するわけにいかないので、ドイツ・グラモフォンのような巨大レコード会社からのリリースの方がより多くの人が耳にする機会があるのは事実。

もっとも、マイナーな会社の方が、実力さえあればより良好なコンテンツを取り上げてくれることもあります。アーティストにとっても本当に自分がやりたい音楽をしっかり作りこめる部分があるので、少なくともクラシック音楽の世界ではあなどれない部分が多い。

さて、当然ポッジャーもヴィヴァルディの「四季」は比較的最近CDとして演奏しています。一緒に演奏しているのは、結成されて15年くらいになる、比較的若い古楽演奏集団であるBrecon Baroqueです。

さて、この「四季」はどんなかと・・・予想通り、ではなく、あららら、比較的おとなしい演奏です。いかにも古楽奏法のきびきびした感じはあるのですが、ところどころで遊んでいる感じもします。

ただし、ビオンディカルミニョーラのようなほとばしるエネルギーみたいな爽快感は感じられず、とりあえず合格点を取りに行った安定した演奏という印象です。男性と女性、あるいはイタリア人とイギリス人の違いみたいなところがあるかもしれません。

もちろん、随所にポッジャーのさすがという見せ場は出てくるのですが、ソロイストとオーケストラというよりは、7~8人程度の室内楽的なコンセプトなので、ポッジャーが全体の中に溶け込んでいるようなところがあります。もっとも合奏協奏曲というジャンルの曲なので、それもまた当然なのかもしれません。

つまり優れた技巧を持つ主席ヴァイオリン奏者のいる集団演奏としては、そこそこ古楽演奏として楽しめるのですが、ポッジャーの個性を感じたい向きには物足りないかもしれませんね。

2023年2月21日火曜日

Claudio Abbado / J.S.Bach Brandenburg Concertos (2007)

愛好家ならずとも、誰もが一度は耳にしたことがあるクラシック音楽の名曲の一つに「ブランデンブルグ協奏曲」があります。作曲者は、これまた超有名なのヨハン・セバスティアン・バッハ。1721年にブランデンブルク=シュヴェート辺境伯に献呈されたため、そう呼ばれるようになった全6曲からなる合奏協奏曲集です。

バロック音楽を得意とするオーケストラでは、レパートリーからはずすことなどありえないくらい必須の名曲ですし、実際録音された音源の数は数えきれないくらいあります。

古楽系の集団では、ラインハルト・ゲーベルの80年代の録音は個人的にはお気に入り。イ・ムジチ合奏団による、いじりの無い「正当派」も悪くはありません。もともと宮殿での愉しみのために用意されたわけですから、少なくとも大編成のオーケストラで演奏されるべきものではありません。

しかし、最近はどれを聞こうかと思うと、ついつい手を出すのはこれ、クラウディ・アバドのブランデンブルグです。大指揮者のアバドですから、えっ?、なんでっ?! という感じがするとは思いますが、実に楽しく爽快な演奏はこの曲の名演として間違いなく数えられると断言します。

病気のため2002年にベルリン・フィルの音楽監督を辞任したアバドは、2014年に亡くなるので期間、大きな足かせが無くなった分本当に心から音楽を楽しむ姿勢が見えて、遺された音源は一つ一つが傑作ぞろいです。

その原動力になったのがルツェルン祝祭管弦楽団で、そのメンバーは、アバドが若い演奏者の育成のために結成したマーラー室内管弦楽団に、世界中からアバドのために集まったスーパー・プレイヤーが結集したものでした。ですから、全員が音楽を、そしてアバドを盛り上げたいという意識が非常に高く、密度の濃い演奏を聴くことが出来ます。

ほとんど同じメンバーの中から、主として古典までの古楽演奏のために編成されなおしたのが、ここに登場するモーツァルト管弦楽団で、古楽器のスペシャリストが加わり、実に凄いメンバーとなっている。

中心となるヴァイオリンは、ジュリアーノ・カルミニョーラ。そしてリコーダーはミカラ・ペトリ。もうバロック音楽ファンなら、それだけでも唸ってしまうこと間違いなし。そして、チェンバロはオッターヴィオ・ダントーネと来れば、もう感動物としか言いようがない。

名人が集まれば良いというものではありませんが、ここでポイントになるのは、ミラノで行われたこのコンサートの動画があることです(YouTubeでも見れます)。一目でわかりますが、実に楽しそうに演奏している。まさに、音を楽しむというのはこのことだと思わされます。

曲の性質上、実はアバドはほとんど仕事はしていません。はっきり言って、指揮者はいなくても何ら問題ないのですが、ここは皆でアバドを囲んで美しい音楽を奏でるという雰囲気であり、アバドも聴衆の代表みたいになって楽しんでいるのが見ていて嬉しくなります。

2023年2月20日月曜日

Fabio Biondi / Vivaldi Le quattro stagioni (1991)

おそらくもクラシック音楽をヴィバルディの「四季」から聞くようになったという人は多い。そのくらい有名。昭和人は、その場合ほぼ100%、イ・ムジチ合奏団のどれかのレコードから始まっています。イ・ムジチ合奏団は歴史が長く、何と昨年出た新譜でレコード、CD合わせて9種類もあるというから驚くほかありません。


ただし、悪く言えばイ・ムジチの「四季」は受験英語のような画一的なモダン楽器による演奏で、安心・安全な誰もが楽しめる演奏です。ヴィヴァルディは主として18世紀前半に活躍した人で、「四季」が出版されたのは1725年のこと。300年前の演奏は、もちろん録音があるわけではありませんが、少なくともそんな優等生的なものではなかったでしょう。

80年代以降、古楽の演奏が盛んになってから、当然ヴィヴァルディの音楽についても再構築の試みがいろいろな演奏家によって行われています。イタリア人のファビオ・ビオンディもその一人。

ビオンディは、古楽系のヴィヴァルディについては、おそらく第一人者と呼んで間違いない。90年頃から、自らの楽団エウロパ・ガランテを率いて、約30年間で協奏曲、ソナタ、宗教曲、歌劇などほぼ全分野を網羅しています。

1991年、そのキャリア初期に録音されたこのアルバムは、おそらくイ・ムジチしか知らなかった日本人にとっては青天の霹靂のような音楽だったと思います。これが四季? ヴィヴァルディが壊れた! いくら何でも好き勝手しすぎ・・・などなどの評が踊ったことは想像に難くありません。

てきぱきとした軽やかな進行の中で、自在に揺れ動くテンポ、際立つ楽器同士の絡み、目が眩むような速弾きなどによって、ドラマチックに四季を描き出しています。物凄い快速演奏のように思うかもしれませんが、全4曲12楽章で約40分。イムジチも43分くらいなので、実はそんなに違いは無いのに驚きます。

「四季」と言っているのは、「和声と創意の試み 作品8」と題された全12曲からなる協奏曲集に含まれる最初の4曲のこと。できるなら全曲セットで聞くことが望ましい。ビオンディは2000年に「四季」の採録を含めて全曲をCDにしています。

2023年2月19日日曜日

J.E.Gardiner / Beethoven Symphony No.9 (1992)

しばしば出てくるモダン楽器、ピリオド楽器(古楽器)という言葉。


そもそも、何がそんなに違うのかという話なんですが、演奏する側と聴衆側の要望によって楽器は変化してきたということ。

その前にクラシック音楽での時代区分をおさらい。9世紀頃にグレゴリオ聖歌という単旋律の音楽が普及し、多声、和音が使われて教会を中心に発展。15~16世紀になって、芸術的価値観が付加されたルネッサンス音楽が誕生します。

以後、モンテヴェルディから始まる17世紀~18世紀初めの音楽が「バロック」、ハイドンから始まる18世紀の音楽が「古典派」、シューベルトあたりからの19世紀の音楽が「ロマン派」と呼ばれます。20世紀はロマン派を残しつつも、印象主義音楽も混ざり、近代音楽、そして現代音楽とつながっているというのがおおまかな説明。

さて、その中で演奏者は、より新しい表現方法を模索してきたわけです。例えば、ベートーヴェンのピアノ・ソナタで言えば、最初の頃の比べると後年の物はより高い音・低い音を使っています。楽器の進歩により鍵盤の数が増えたというのもあるし、逆に作曲者側からもっと増やしてほしいというリクエストもあったことでしょう。

ヴァイオリンについても、もっと早く、より多くの音を弾きこなせるように、長く細くなってきました。これは特に曲芸的な超技巧を誇ったパガニーニの登場が大きく関与しています。また使用する弦もガット弦(羊または牛の腸を利用)だったものが、より丈夫で強く弾きやすいスティール弦に変わりました。弓の形状も変化してきています。

一方、もともとの儀式用教会音楽を、娯楽用に一般化したのは貴族たちです。宮殿の中で演奏者と貴族たちの距離は近いので、音の大きさはそれほど必要ありませんでした。しかし、歌劇の普及と共に一般民衆が多数集まる場所での演奏機会が増えるにつれ、より大音量が必要とされ、より響きの良い大きな音量が出せる必要が出てきます。当然、演奏者の人数(楽器の数)を増やすことも求められてきました。

ですから、現代のモダン楽器による大人数のオーケストラの演奏でのバロックあるいは古典派の音楽の演奏は、当時の作曲者らが意図した音楽とはだいぶかけはなれたものとなっているわけです。そこで、それぞれの時代に応じた楽器と編成で演奏しようというのが、古楽演奏として80年代以降定着してきたのです。

ですから、昭和の評論家たちはカラヤン指揮ベルリンフィルのJ.S.バッハの演奏が最高で、それに比べて古楽演奏家たちのものはしみったれた音楽かのように否定し受容できませんでした。本来の作曲者の意図した音楽と現代における解釈による音楽とでは、時代が古いほど乖離したものだという認識を持って両者を楽しむ姿勢が大事です。

・・・と、まぁ、ずいぶんと上から偉そうな話をしてますが、自分はもともとカラヤンとかは大袈裟な印象で好きになれなかったので、ピアノ独奏とか室内楽が好きなクラシック愛好家だったのですが、J.E.ガーディナーの古楽奏法によるベートーヴェンの交響曲で初めてオーケストラの楽しさを知りました。

響きが少なめの古楽器では、長く音を伸ばすのが不得意ですから、一般的早目の演奏になります。重々しい重戦車のようなカラヤンの演奏(第9は約70分)に比べて、ガーディナーは軽やかで爽快(なんと60分)。ベートーヴェンだって、そんなにいつでも苦虫嚙み潰したみたいな哲学者然としていたはずもないので、ガーディナーの演奏の方がより説得力を感じます。

まぁ、カラヤンを目の仇にしているようですが(実際今でも好きじゃない)、基本的に好き嫌いは個人の自由ですから、カラヤンの好きな方はそれはそれで良いと思います。音を楽しむのが音楽ですから、聴いて気に入ればいいだけの話。自分は今後も、できるだけオリジナルに近い形での音楽を聴きたいと思います。

2023年2月18日土曜日

どん兵衛 天ぷらそば


カップ麺の歴史は1971年日清のカップヌードルから始まったわけですが、日本の蕎麦・うどんについても、カップ麺化されたのは遅れること5年、1976年にスタート。

当初から「どん兵衛」のネーミングで親しまれてきました。以来、東洋水産(マルちゃん)の「赤いきつね・緑のたぬき」とのライバル一騎打ちとなっています。

自分はそもそもうどんか蕎麦かと聞かれれば、絶対的に蕎麦派。特にカップ麺のうどんは、とてもうどんと呼ぶのには抵抗がある。

一方、カップ麺の蕎麦も、以前はちぢれ麺で蕎麦の食感とはかけ離れたものであまり食べたいとは思いませんでした。何かの麺が和風のつゆにつかっているだけというのが正直な感想。

ただ、「どん兵衛」シリーズは、数年前に「ぴん蕎麦」と呼ぶストレート麺に変更され、これで格段と美味しくなった。

最近、コンビニで何やら新しいラベルの「どん兵衛」を見つけたので、早速食べてみました。何しろ「最&強」、「このどん兵衛 すべてが主役」という文字が踊っていて、さらに美味しさアップ感が半端ない。

結論。最強じゃない。麺は「ぴん蕎麦」で、カップ麺の蕎麦としては現在望みうる最強であることは変わらない。かき揚げは、マルちゃんと優劣付け難くどちらも最強と呼ぶにはちょっと違和感を残します。

一番ダメなのはつゆ。以前、「どん兵衛」は液体スープを採用して、ほぼ完璧なつゆになったと思っていたのですが、これは粉末スープで和風っぽい液体に戻ってしまいました。

う~ん、何か残念としか言いようがないところですが、まぁ和風カップ麺はそれほど食べる機会が多いわけではないので、どっちでもいいかなというところでしょうか。


2023年2月17日金曜日

Luca Fanfoni / Locatelli L'arte del Violino (2001,02)

イタリア・バロック音楽が面白い。

イタリアの16~18世紀の音楽は、モンテベルディとヴィヴァルディの二人の有名人だけ知っていれば事足りると思っていました。さすがに浅はかな考えであったと、大変反省しています。それぞれの作曲家にいろいろと個性があり、音楽史の中で無視できない大事な作品がいろいろとあるんですね。

ピアノの進歩は古典期以降のドイツに譲るものの、弦楽器、特にヴァイオリンについてはバロック期のイタリアでほぼ完成したと言えそうです。優れた作曲家は同時に優れた演奏家であって、自らの演奏技術を誇示することが音楽家として地位に影響したわけです。

ピエトロ・ロカッテリは1695年生まれで、その存在が忘れられていない最大の理由がこの「ヴァイオリンの技芸」と呼ばれる作品。

それぞれが3楽章の12曲のヴァイオリン協奏曲から構成される作品で、全部で3時間半くらいを要します。合奏部分は、実にシンプルでそれほど手の込んだことはしていないので、そこだけ聞いていると軽いBGMにしかなりません。

ところが、これらの作品のすごいところは、1曲の中の2楽章にヴァイオリン独奏のカデンツァが組み込まれているところ。カデンツァは楽章の終結部に演奏者の独奏部分のことで、即興的な自由が許されています。実際は有名になった演奏が、譜面に取り入れられていることが多いようです。

有名なのは、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番の第1楽章。ラフマニノフ自身が超高度なテクニックを要する大カデンツァを作っていますが、一般人向け的な小カデンツァもあり、どちらを披露するかは演奏者の選択に任されています。

ロカテッリの作品では、何とこのカデンツァが長い。ほぼカデンツァのために合奏部分を取って付けた、と言っても過言ではないくらいのもの。1曲3楽章に含まれる2か所のカデンツァだけで演奏時間の半分くらいをしめています。

合奏部分を廃して、このカデンツァだけを演奏する演奏会やCDもあるようです。でも、たいしたものではないかもしれませんが、合奏があってからの独奏だから目立つわけで、最初からカデンツァだけだとヴァイオリン・サーカスみたいなので、やはり全曲で聞くのがおすすめです。

フル・ヴァージョンとしては、古くはイ・ムジチ合奏団のCDもあるのですが、やはり古楽器による古楽奏法で聴きたい。こういう時に重宝するのが、イタリア本来のイタリア人によるイタリア人の音楽をしっかり再現していくことを使命としている「Dynamic」というレーベル。

独奏者のルカ・ファントーニはあまり情報が無く、世界的には知られていない人のようですが、カデンツァ部ではバカテクを披露していて十分に聴き応えがあります。CD一枚に4曲ずつで、CD3枚で全曲を聞くことができます。

後に、この全部で24あるカデンツァ部をヒントに、独立した独奏曲集を作ったのがニコロ・パガニーニの超有名な「24カプリース」です。さあ、ヴァイオリンの歴史の一ページを飾る至芸を堪能しましょう。

2023年2月16日木曜日

Isabelle Faust / J.S.Bach Sonatas & Partitas (2009,10)

毎年恒例の正月番組で、大変高価な楽器の音色を聴き分けるというのがありますが、そこに登場するヴァイオリンと言えば、ストラディバリウス(安くて2億円、高いと10数億円)。

17~18世紀にイタリアで作られた、現在でも最高の音を出すヴァイオリンとして有名です。作ったのは、アントニオ・ストラディバリ、そしてその息子であるフランチェスコ、オモボノの三人。

チェロ、ヴィオラなどもわずかに現存していますが、圧倒的に多いのはヴァイオリン。全部で1,200挺弱が制作されましたが、J.S.バッハとだいたい同じ時代である300年ほど前のものですから、現存するのは世界中でその半分の600弱と言われています。

これらのヴァイオリンは、バロック・ヴァイオリンと呼ばれ、それだけなら古楽器と呼ばれるものですが、通常のモダン奏法の演奏者も当然使用していて、たいていはモダンの標準であるスティール弦を使用していのすが、古楽器奏法を行なう奏者は一般にガット弦を用います。

古楽器(ピリオド)奏法で有名なヴァイオリン奏者としては何人かが有名ですが、イザベル・ファウストもその一人。1972年生まれのドイツ人ですが、名前が知られるようになったのはフランスでの活躍からでした。

愛器は1704年に制作されたストラディバリウス(愛称はスリーピング・ビューティ)で、ヴァイオリン奏者の聖典とも呼べるJ.S.バッハの独奏ヴァイオリンのための「Sonatas & Partitas」全6曲の演奏は、この曲におけるピリオド奏法による頂点を極めた作品と評価されています。

何しろ、バッハが得意とした対位法(違う複数のメロディが同時に進行する)による独奏という高難易度の曲集ですから、モダン楽器と比べて響きが少なくなりやすい古楽器での演奏はより難しいと言われています。

もっとも、本来バッハが耳で聞いた音を出すわけですから、そういう音楽のつもりで作ったはずで、ファウスト自身も「これを一般聴衆に聞かせるために作った」かは疑問があると言っています。

ソナタは声楽曲に対する器楽曲という意味で、後に一定の形式にのっとったものをソナタ形式と呼ぶようになります。パルティータは組曲ということ。バッハのこれらの曲集では、それぞれが数分の短い楽章が組み合わされて一つになっているもの。全部で31楽章で、演奏時間はだいたい2時間ちょっと。さすがに一度のコンサートで、一気に演奏するには無理がありそうです。

でも、我々一般人は時間の許す限り、ゆったりと自由な格好で好きなだけ聴き続けることができる。まぁ、何と幸せな時代であることか。

2023年2月15日水曜日

Giuliano Carmignola / Vivaldi Le quattro stagioni (1999)

イタリア・バロックで最大の有名人と言えばアントニオ・ヴィヴァルディ(1678-1741)。J.S.バッハよりちよっと年上ですが、ほぼ同時代の人。何しろ、クラシック音楽をとりたてて聞かない人でも、「ヴィバルディ」、「四季(Le quattro stagioni)」というのはたぶん知らないことは無い。

日本では1970年代に、イタリアのイ・ムジチ合奏団によるレコードがクラシックでは異例の大ヒットして、長らくバロック音楽とはこれだ!!、みたいな価値観を日本人に植え付けました。

当然、クラシック音楽を一般化する「功」と固定観念を作ってしまった「罪」の両面があったわけですが、自分も確かにイ・ムジチのレコードを持っていて、随分と親しんだ覚えがあります。

今の耳で聞くと、イ・ムジチの「四季」は、まさに優等生。モダン楽器の美しい響きによる、楽譜から丁寧に一つ一つの音を積み上げで完成した音楽は、間違いなく現代におけるクラシック音楽のあり方の典型なのかもしれません。

しかし、80年代以降に、その曲が作られた時代の実際に奏でられた音をできるだけ再現しようとする「古楽器」による「古楽」が盛んになり、イ・ムジチのようなモダンな端正な演奏は影をひそめるようになりました。

ジュリアーノ・カルミニョーラは、1951年生まれのイタリア人で、モダン・バイオリンの演奏もしますが、バロック・バイオリンの第一人者の一人として認知されています。特にその名を有名にしたのが「四季」の演奏でした。

カルミニョーラより前に、例えば古楽合奏集団、イル・ジアルディコ・アルモニコの「四季」も圧倒的なハイ・スピードで、それまでのイメージを崩した演奏を披露して愛好家を驚かせました。

しかし、カルミニョーラは、それだけではなく、楽章内で自由自在にテンポを揺らし、アドリブに近いような装飾音を混ぜ込んで、本当にこれが「四季」なのかと思わせるような圧倒的な演奏を聞かせてくれました。

やり過ぎという批判にさらされることもありますが、多くは好意的に迎えられ、時代の音楽はこうあるべきという一つの規範として名盤と呼ばれています。

大浴場でゆったりつかっているのもいいんですが、高温のサウナと水風呂のような刺激的な楽しみ方も温泉の醍醐味と思えば、カルミニョーラの「四季」から古楽の世界に飛び込むのも悪くはありません。

2023年2月14日火曜日

John Eliot Gardiner / Santiago a capella (2004)

クラシック音楽の聴き方としては、実は3種類あると思うんですよね。

まず、楽器の演奏者として、あるいは指揮者としてどのように曲を作り上げるかという・・まぁ、楽しみというよりは責任を伴う勉強みたいなものが一つ目。


自分のような一般人は、作曲者を中心に聴くか、または演奏者を中心に聴くかの二択が残されています。どちらかだけというのは、かなり難しいので、実際はどちらも混在して楽しむのが現実的。

例えば、ベートーヴェンを制覇しようとして、交響曲から協奏曲、室内楽、独奏楽器と幅を広げていくわけですが、そうなるといつの間にか違う演奏者のものと聴き比べたくなってくる。

クラシックなんて楽譜通りに演奏するんだから誰がやっても同じ、と昔の自分は思っていましたはこれが間違い。独奏はもとより、オーケストラでも指揮者の考え方によって、けっこう同じ曲でも聴いた印象は変わってくるものです。

そうこうしていると、気に入った演奏家というのが見つかって来るもので、今度はその演奏家のいろいろなものを聴きたくなってくるのは当然ということになります。

ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集を出したピアニストは一体何人いるんでしょうか。ちょっと考えれば、名演と呼ばれるものだけでも軽く20人くらいは挙げられますが、今でも毎年数セットは増えているように思いますので、100じゃきかないかもしれません。

それはそれとして、ジョン・エリオット・ガーディナーは大好きな指揮者。自分にとってはオーケストラの面白さを再認識させてくれた恩人みたいな人ですが、本来はバロック初期の偉人、モンテヴェルディの「聖母マリアの夕べの祈り」を歌いたくて、モンテヴェルディ合唱団を結成したのが始まり。

だったら、伴奏も自前でしようというわけで、古楽系の草分けであるEnglish Baloque Soloistsを結成。さらにベルリオーズの「幻想交響曲」を演奏したくてOrchestre Révolutionnaire et Romantiquemも結成しました。バロックから古典、さらにロマン派にまでレパートリーを延ばしてくれたおかげで、ガーディナーのCDを追っかけていると、驚くほど多種多様な音楽を聴くことができます。

2000年に1年かけてJ.S.バッハの教会カンタータ、約200曲を教会暦に沿って演奏し続けるという大偉業を達成し、従来の仕事に一区切りつけたガーディナーと手兵のモンテヴェルディ合唱団のメンバーは、キリスト教の巡礼の旅に出発しました。

敬虔なキリスト教徒は、フランスをスタートしてスペインの聖地サンチャゴ・デ・コンポステラへと巡礼する伝統があるそうです。日本で言えば四国八十八か所のお遍路さんみたいと思えばわかりやすい。

彼らは、途中で立ち寄った教会や修道院で、16~17世紀の多くの古いメロディを収集しました。それらをまとめたア・カペラのアルバムがこれ。もう一枚、「Pilgrimage to Santiago (2005)」というアルバムもあり、巡礼の旅の成果がこの2枚に凝縮しています。

古い宗教曲というとグレゴリオ聖歌のような単旋律のお経みたいなものを想像しがちですが、ここに収められた曲はいずれもカラフルで、美しい物ばかりです。宗教という型にはめ込まれていない、民衆のための本来の音楽の原点のようなものなのかもしれません。

心が現れるような清らかさがあり、最近の言葉で言えば「究極の癒し」の音楽とでも言えそうです。珈琲をゆっくりすすりながら、静かに気持ちを落ち着けるひと時にぴったりの音楽だと思います。

2023年2月13日月曜日

味噌を作ってみる 8 新シリーズ開始


去年の5月に仕込んだ自家製味噌は、多少のトラブルはあったものの、初めてにしてはほぼ順調に「味噌」になりました。

冷蔵庫に入れれば発酵は止まりますが、そのまま室温で保存しさらなる熟成中です。写真の左が、約8か月経過した最初の味噌ですが、さらに色が濃くなっているようです。

ちょこちょこ料理にも使用していますが、まろやかな味わいでなかなか優れものだと自負しています。何しろ、米麹、大豆、塩以外の保存料とか着色料とかよけいなものは入っていない、まさに無添加というのが嬉しい。

そこで、出来上がりまで半年以上かかりますので、次なる味噌の仕込みに取り掛かりました。

材料、分量、手順などは過去の記事を参照してください。米麹の下処理大豆の下処理なども基本的には一緒です。ただし、熟成開始については、前回はすべてジッパー付きのビニール袋で行い、だいたい食べれそうになってから容器に移したのですが、今回はビニール袋の中で混ぜ合わせた後、すぐに密閉できる容器に仕込んでいます。

この場合、注意が必要なのは一気に詰め込まないこと。手に握れる程度の量を少しずつ詰めて、入れるたびにしっかり押さえつけて空気を抜く必要があります。隙間に空気がたくさん残るとカビの原因になります。

さあ、今回はどうなるでしょうか。順調にいけば秋には食べれる予定です。

2023年2月12日日曜日

C.Maccari & P.Pugliese / Giuliani Rossiniane (2007)

いかにもクラシック音楽通みたいな話ばかりしていても、所詮楽譜をまともに読めるわけではないし、ましてやヴァイオリンやピアノを弾けるわけでも無い。多少は嗜んだと言えるのはギター。とは言え、クラシック・ギターともなると・・・

ドイツがクラシック音楽の中心になってからはないがしろにされてしまった感がありますが、クラシックの世界でもギターは登場するわけで、特にバロック期から古典期のイタリア音楽では普通に使われていたようです。

イタリアのナポリで1781年に生まれたマウロ・ジュリアーニは、クラシック・ギターの巨匠の一人。ギター以外の弦楽器も勉強した後の二十代なかばにウィーンに移り、作曲活動も開始しました。ベートーヴェンにも一目置かれる存在でしたが、40歳頃にローマに移り少しずつイタリアでも知られるようになった1829年、48歳で亡くなっています。

自己のオリジナルによるギター作品だけでなく、他の作曲家の有名曲を基にした変奏曲も多数作り、特に有名なのがロッシーニの歌劇のアリアをふんだんに盛り込んだ「ロッシニアーナ」と呼ばれる一連の幻想曲集です。

自分はオペラはずっと苦手で、ロッシーニの歌劇をほとんど知らないので、原曲がどのように使われているのかわからないのが残念ですが、知らなくても十二分に楽しめる。本来はギター独奏曲ですが、このアルバムでは、クラウディオ・マッカリとパオロ・プリエーゼというコンビによる二重奏で奏でられ、音楽的な厚みが増しているので大変聞きやすい。

例えば、ナポリの港町の夜にバルコニーで、ギター弾きながら物思いに耽っているような映画のシーンを思い浮かべるといいかもしれません。

2023年2月11日土曜日

初雪らしい初雪


天気予報は・・・まぁ、だいたい当たりますが、こと災害につながろうかという天候については、やたらと大袈裟に言うことが増えたような印象があります。

たいしたことは無いと言っていてとんでもないことになると、後で痛烈に批判されるご時世なので、それも危機管理の現れなのかもしれませんが、どうも肩透かしになることが多い。

昨日の天気予報は雪。それも大雪になるかもしれないので、不要不急の外出は控えろ・・・と、テレビで散々伝えていました。

確かに朝から雪。お昼ごろは、けっこうな勢いで降っていましたし、土のところは白くなり出した。先週でしたか、ちらりと埃が舞う程度の雪はありましたが、雪らしい雪ということでは、昨日が横浜の初雪というところ。

でも、次第に雨に変わり、夜にはほぼ雪は溶けている状態で、雪がった痕跡があるかな程度。生活の利便を考えれば、大人としてはよかったと思うところなんですが、何か天気予報に振り回されている感じも無いわけではありません。

もっとも、地域によっては積雪で深刻な被害を受けている所もあるわけですから、天気予報を非難するのは筋が違う。あくまでも可能性の情報として、各自が自分の責任において行動しないといけないというところでしょうか。

2023年2月10日金曜日

Andrew Manze / Tartini Devil's Sonata (1997)

17世紀のヨーロッパの音楽の中心はイタリアであったことは間違いなく、テレマン、ヘンデル、そしてJ.S.バッハらによってドイツ・バロックが隆盛を迎えるのは17世紀末の話。イタリアでは、今でも人気を誇るのはバロック前期ならモンテヴェルディ、バロック後期ならヴィヴァルディ、古典になるとパガニーニとかです。

有名人の影に隠れて、「知られざる作曲家」はいろいろいるわけですが、ヴィバルディとほぼ同世代に修道僧でありヴァイオリンの名手といわれたのがジョゼッペ・タルティーニでした。

タルティーニは1692年にヴェネチアに生まれ、研究熱心な理論派のヴァイオリン奏者でした。作曲家としては、ヴァイオリン曲だけが残されていて、当時の重要な仕事だった教会音楽や歌劇は作っていないようです。ただし、出版された協奏曲は125曲もあるというから驚きです。

中でも、ほとんど知られている唯一の曲が「ヴァイオリン・ソナタ ト短調」で、通称「悪魔のトリル」と呼ばれる曲。原題でも 「Il trillo del diavolo」で、そのまんま。

なんでも、寝ていたタルティーニの夢に悪魔が出てきて、ハッとする素晴らしい旋律を奏でたので、目が覚めたタルティーニはすぐに楽譜に起こしたという逸話が残っています。悪魔のように難しいトリルが出てくるということではありません。

トリルはヴァイオリン奏法のテクニックの一つで、半音または一音上の音を指で細かく混ぜて弾くこと。聞いていると「ティロリロリロ・・・」みたいな感じ。トリルだけに限らず、かなり高度のテクニックを要する難曲と言われていて、基本的にごく軽めの鍵盤楽器伴奏が付くだけで三楽章、約20分という演奏時間ですから、演奏する人はかなり緊張するんでしょうね。

マンゼは、1965年生まれのイギリス人。トレヴァー・ピノックの後釜としてイングリッシュ・コンソートを率いているので、古楽系が好きな人には馴染み深いバロック・ヴァイオリンのベテランです。

このCDのすごいところは、無伴奏というところ。聞く方は、すべてヴァイオリンの音だけに集中することになりますから、これはごまかしがきかないので相当の覚悟と自信があってできることだと思います。

現代女流奏者のトップに君臨するA.S.ムターの録音もありますが、弦楽オケの伴奏がついて主旋律中心の「わかりやすい」演奏になっています。マンゼは、主旋律に装飾音を追加して自分で同時に伴奏もしている雰囲気。オリジナルの指定がどうなっているのかわかりませんけど、その分難易度は格段と上がっている感じです。

2023年2月9日木曜日

Ysaye Quartet / Franck String Quartet (2006)

セザール・フランクは、1822年にベルギー生まれ、13歳以後はパリで過ごした作曲家なので、一般にはフランスの音楽家として認知されています。後年、サン=サンーンス、フォーレらの有名な作曲家と共に国民音楽協会を設立しています。

ドビューシー、ラベルらの印象派と呼ばれる、いかにもフランスらしいクラシック音楽が主流になる前の中心人物の一人と言える存在なんです。

じゃあどんな曲があるのと問われると、たぶんヴァイオリン・ソナタ一択というところ。ヴァイオリン・ソナタ以外には何があるのかと言われても、よほどの愛好家でないと答えられそうもありません。

クラシックのヴァイオリン奏者では、フランクのソナタを弾かないという選択肢は無いかのように多くのCDが発売されています。また、そのままチェロで演奏されるように転調・編曲されたバージョンも普及していて、多くのチェロ奏者も重要なレパートリーと位置付けているようです。

人生の多くをピアニスト、教会オルガニストとして過ごしたフランクが、作曲に本腰を入れたのは中年になってからなので、作品数がそれほど多くはありません。それでも、交響詩、ピアノ独奏曲、オルガン曲、オラトリオなどのある程度の作曲があります。

このアルバムは、CD2枚で残された室内楽作品を「だいたい」網羅したもの。1枚目は弦楽四重奏曲、2枚目はピアノのパスカル・ロジェが加わり、ピアノ五重奏と必殺のヴァイオリン・ソナタという構成です。

もともと鍵盤奏者であるフランクですから、かなり弾きこなすのに技巧を必要とするピアノ曲があるようですが、室内楽の伴奏部分でもピアノ奏者は指の筋トレをしているかのような難易度があるらしい。

ここでは、弦楽四重奏とピアノ五重奏に注目するわけですが、うーん、正直に言うとあまり面白くない。個人の好き好きなので、ご容赦いただきたいのですが、特徴的な半音階多用によるやや不協和音的な響きが続き、もやもやした印象がずっと続く感じ。

まぁ、コレクターとしては一度は聞いておくべきもので、フランクの曲の中ではヴァイオリン・ソナタが人気を維持できているというのも理解しやすくなるかもしれません。

2023年2月8日水曜日

自宅居酒屋 #55 時にはしくじることもある


居酒屋で出せそうな・・・簡単で手早く、そして肴にもなるレシピをいろいろとやってみているシリーズなんですが、ある意味、冷蔵庫の残り物処理的な面もある。

そろそろ賞味期限切れとか、乾燥したり色が変わってきた野菜とか、捨てることになる前に何とか食べ切ろうという時、そのままじゃイマイチなので、適当に味を付けてみたという感じ。

そんなわけで、時にはこれは無理だったという、どう見てもしくじり例も時にはあるんです。まぁ、こういうのも反面教師みたいなところなんで、反省し今後にいかしていくことが大切です。

今回紹介するしくじりは、ごはんのお供の定番、「瓶詰めエノキ」を使った和え物。そろそろ賞味期限が近づいてきたので何とかしようと思い立ち、大根・キュウリの千切りと和えてみました。

う~ん、う~ん、う~ん・・・ごはんとならちょうど良いはずのエノキですが、こうやって食べると・・・甘すぎる。塩味も強いので、野菜がすぐにしなしなになってしまい、何かフニャフニャした食感です。

酒のお供としては、好き好きはあるというものの、うちでは却下のメニューとなりました。

2023年2月7日火曜日

自宅居酒屋 #54 菜の花辛子和え


最近は生産者の努力で一年中流通する食材が増えて、「旬」の食べ物が減った感じですが、春が近くなるとスーパーに並ぶ「菜の花」は、基本的にこの時期だけのもの。

食によって季節を感じるというのは、昔は当たり前のことでした。これも日本人の感性を育てた大事な要素ですから、季節感を意識することは悪い事ではありません。

菜の花は、食べ方の定番は辛子醤油で和えるというもの。茹でる、和えるという2ステップでできるので、ほとんどレシピらしいレシピも無いくらい簡単。

そこらの原っぱに生えているものと、食用にするものは多少違うようですが、基本的には若い花芽が出てきたころを摘み取って食べる。そもそも菜の花の「菜」は食用という意味。

ビタミン豊富な黄緑色野菜の一つとしてもポイントが高く、抗酸化作用のβカロテンの含有量も抜群に多いので、この時期に一度や二度は食べておきたいものです。



2023年2月6日月曜日

Antje Weithaas / Bruch Complete Violin Concertos (2013-15)

音楽界には、一つだけある大ヒット曲だけで一生活躍しているような、いわゆる「一発屋」と呼ばれる人たちがいますが、クラシック音楽の作曲家にも似たような存在があったりします。

例えば、ハッチャトリアン。必ず小学校の音楽の授業とかで「剣の舞」を聞かされたと思いますが、何だかテンポの速い威勢の良い曲で妙に耳に残る。でもハッチャトリアンって、それ以上知っている人はまずいない。ロシアの人で、1903年生まれで亡くなったのも1978年ですからけっこう最近の人。

イギリスのホルスト(1874年~1934年)はどうでしょうか。はっきり言って、組曲「惑星」、それもその中の「木星(ジュピター)」しか知られていません。クラシック好きでも、その他の作品を一つでも知っていたら拍手喝采物です。

マックス・ブルッフも、そんな一曲だけが有名な作曲家の一人。何故か、「ヴァイオリン協奏曲第1番」だけは、演奏しないヴァイオリン奏者を見つけることは至難の業と言えるくらい、必殺の有名曲です。

ブルッフは1938年、ケルン生まれのドイツの人。同時代人にはブラームスがいて、当時のドイツの音楽界は、はワーグナー派とブラームス派に分かれてかなり敵対していたらしい。ブルッフは、終生、ブラームスを兄貴分として敬愛していました。

非常に魅力的なメロディを生み出す人で、ところどころに印象的なフレーズが散りばめられ、ムードだけに流されないところが良いと思います。以前にも室内楽で取り上げていますが、あまり知られていないのが残念な作曲家です。

ヴァイオリン協奏曲も「第1番」と言うくらいですから、実際2番、3番がある。やたらの「Complete Edition」とかばかり作っているレコード会社なんだから、1番出すなら全部で企画しそうなものですが、たいてい他の作曲家のヴァイオリン協奏曲との抱き合わせのアルバムばかりが登場しています。たぶん、今までに全部録音しているのはイ・ムジチ合奏団で有名なアッカルドだけじゃないかと思います。

となると、そういう仕事はマイナーなレーベルに期待。室内楽も出していたドイツのCPOレコードは、そういう期待に応えてくれるので要チェックです。サンチェ・ヴァイトハースという女性奏者がCD3枚で、協奏曲および関連作品を取りまとめてくれました。

しかも、最初に登場したのが1番じゃなくて2番というのも勝負かけている感じです。そのかわり、一緒に収録されているのは多少知られている「スコットランド幻想曲」ですから、ブルッフに興味がある者には嬉しい。

オーケストラも北ドイツ放送フィル、通称NDRで手堅い布陣です。指揮者のヘルマン・ボイマーは、元々アバド時代のベルリンフィルでバストロンボーンを吹いていた人。バラバラに順次発売されたものが、まとまった物が安く手に入ります。

第2番は、叙情的な1番と比べると迫力があって劇的な雰囲気。「ツィゴイネルワイゼン」の作曲者として有名なサラサーテのために作られ、独奏サラサーテ、指揮ブルッフで初演されています。第3番になるとオーケストレーションがさらにしっかりしてきます。いずれも第1番の影に隠れてしまっているのがもったいない。

ブルッフは、交響曲や合唱曲も作っていて、全体の曲数はそれほど多くはありませんから、是非「Bruch Complete Edition」を作ってもらいたものです。

2023年2月5日日曜日

N.Lahusen & R.Zubovas / Čiurlionis Complete Piano Works (1999-2008)

ヨーロッパ大陸の北部にはバルト海があり、外海の北海からの入口が大小の島々からなるデンマークです。北側はスカンジナビア半島で、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド。南側はドイツ、ポーランド、東のどん詰まりはロシアが囲んでいます。そして、ポーランドとドイツの間に挟まれた3つの国があり、バルト三国と呼びます。

バトル三国は、北からエストニア、ラトビア、リトアニアで、地政学的に不安定な緊張を強いられてきた歴史があります。音楽の世界では、現代で有名な作曲家アルヴォ・ペルト、指揮者ネーメ・ヤルヴィ、その子であるパーヴォ・ヤルヴィはエストニア出身。

リトアニア出身の作曲家で、知る人ぞ知るという存在が、ミカロユス・チュルリョーニス(1875~1911)です。普通のクラシック音楽愛好家は、たぶん手を出すことは無いくらいマイナー。

自分は以前にピアノ曲を漁っていた時に、たまたま知ってCDを買いましたが、興味深かったのは音楽ではなく絵画。音楽以上に有名なのが、300点ほど残されている何とも言えない不思議な景色・・・幻想的と一言で片づけられない、病的なものすら感じられる絵画です。リトアニア文化史の中では最重要人物なのですが、日本では1992年に初めて展覧会が開かれて紹介されました。

もともとロシアの影響下にあった時代に音楽家を目指し、ワルシャワ、ライプツィヒで学びましたが、20代なかばに美術学校に入りリトアニアの民族文化の保存に力を入れるようになります。しかし、徐々に精神異常が始まり療養所に収容され、36歳で短い生涯を終えました。

管弦楽曲、室内楽曲はそれぞれ数曲ありますが、残された楽曲のほとんどはピアノ独奏曲です。廉価版で何でもありで有名なNAXOSレーベルにもCDはありますが、自分が購入したのはCelestial Harmoniesという、アメリカの変わり種専門みたいなマイナー・レーベルの物。
1999年から2008年にかけて断続的に二人のピアニストによって網羅された、CD5枚からなる「ピアノ独奏曲全集」なんですが、今はAmazonではバラ売りしか見つかりません。

演奏者はCD3枚分がドイツのNikolaus Lahusen、残りがリトアニアのRokas Zubovasという人。いくつかアルバムを出しているようですが、情報量が少ないのであまりよくわかりません。

さて内容は・・・絵画と同じで何とも不思議な世界。はっきり言えば、たまにハッとするフレーズが無いわけではないのですが、それほど名曲として人に推奨するような物ではないという印象。全部で184トラックが収録されていますが、いずれも2分程度で短く、習作の域を脱するものはごくわずかだと思います。

いきなり、対位法でまるでJ.S.バッハのようなフーガで始まりますが、続くのがプレリュード、マズルカ、ノクターン、ワルツと来るのでショパンを意識している感じ。少なくともスラブ系の曲調はほとんど無さそう。

そうかと思うと、おそらく後年の作品は無調だったり、不協和音が入ってきたり、いかにも時代の音楽風になって来るのですがどれもが単調。唯一の大曲と言えるのが4楽章からなるピアノ・ソナタ。これも、ほぼショパン風と言えそう。一部の現代音楽風のものを除けば、耳障りは無い。まぁ、普通にBGMとして流しておくのには差支えはなさそうです。

さんざん文句ばかり言っているようですが、当然ながら一定水準以上、少なくとも他人が弾いてみようと思える物であることは間違いないし、こうやって実演してみるだけの価値はある音楽だろうと思います。ただ、普通の愛好家は知らなくても何も問題はありません。