どんな優れた電池を大量に積んでも、最終的に車としての性能そのものは「走り」にかかっているわけで、従来のガソリン車ならまさにエンジンそのものが注目されていました。マニア的にはいろいろな要素が関わってくるところですが、素人的には単純にわかりやすいのは排気量と馬力。どちらも大きいほど力強いと直感的に理解できるのですが、BEVやPHEVのモーターというのがなんかよくわからない。
HEVであれば、あくまでもモーターは補助的な位置づけですから、それほど気にすることはありません。しかし、BEVやPHEVでは、モーターの性能をある程度は理解しておく必要はありそうです。ポイントは「出力」と「トルク」の2つです。
とりあえず、トヨタのプリウスPHEVの諸元表を確認してみます。
エンジンは直列4気筒、排気量1986cc、最高出力は111kW(151PS)/6000rpm、最大トルクは188Nm(19.2kgfm)/4400~5200rpm、燃料タンクは40Lです。モーターは型式は交流同期電動機1VM、最高出力は120kW(163PS)、最大トルクは208Nm(21.2kgfm)、動力用主電池容量は51.0Ahとなっています。
数字だけ見れば大きい方が良いと感じてしまいますが、同じ出力ならばエンジンよりモーターの方が立ち上がりが早いため加速力が抜群に高い。PHEVの場合はエンジン+モーターの出力の合計が理論上最大値になるはずですが、一般に言われているプリウスPHEVは223PSと言われています。エンジンとモーターは協調して作動するので、両者が同時に最大出力を出すことはありません。トヨタの場合は、モーターの出力を90%程度(馬力だと半分くらい?)として合算しているらしい。
先代のプリウスPHEVは、エンジンが75kWでモーターは53kW、システム全体では90kWでした。現行はどちらもパワーアップしていますが、特にモーター出力が強化されているのがわかります。ということは、初動の加速性は相当力強化されていて、高速でのモーターの補助も拡充したことが容易に想像できます。
ただ、今HEVからPHEV、今後はBEVやFCVと言ったエコロジーを重視するからには、ズバズバ走れれば良いと言うものでもない。そもそも日本の自動車産業の雄、トヨタがBEVに後れを取ってもFCV開発に注力していたのは、バッテリーを作ることのCO2排出がバカにできないことも理由の一つにありました。
自動車のCO2排出量をコントロールすることは重要な課題の一つであり、これについても国土交通省が定める測定方法が用いられています。ガソリン車の場合、人一人を1kmの移動させるのに約150gのCO2が排出され、ディーゼル車でも130gです。HEVなら95g、そしてPHEVはできるたけ電力走行するなら55g、FCVはゼロではなくて14gという測定結果があります。ちなみに飛行機は96g、鉄道なら18gです。
プリウスPHEVはトヨタの公表では77g。エンジンも使う現実的な走行では、妥当な数字だろうと思います。エクリプスクロスPHEVは173g、CX-60PHEVは155gですから、小型のプリウスが少ないのは当たり前かもしれませんが、RX450h+でも123gですから、この辺りもトヨタの技術力を認めないわけにはいかなさそうです。