2023年11月17日金曜日

億男 (2018)

川村元気・・・って何者?


現代の邦画界で、最も注目すべきクリエイターの一人と言える人物。1979年生まれで、最初の足跡は2006年に企画・製作に携わった「電車男」で、以後「デトロイト・メタル・シティ」、「告白」、「悪人」、「モテキ」などを立て続けにヒットさせました。他にも「君の名は」、「怒り」、「何者」、「天気の子」、「すずめの戸締り」、「怪物」と話題作に関わっていることは特筆すべきことです。

2012年に自ら初めての小説「世界から猫が消えたなら」を発表し、2014年には「億男」、2016年に「四月になれば彼女は」、そして2019年の「百花」まですべてが映画化、または映画化が予定されています。2021年には「神曲」を発表しており、おそらく映画化を見据えているのではないでしょうか。

3歳で初めて見た映画が「E.T.」で、以来、父親の影響もあって古今東西の名作映画を見まくったという学生時代までの蓄積が、確かな鑑賞眼を培い、映画作りの立場でもしっかりと生かされているということだろうと思います。

さて、その川村元気の2番目の小説は、大友啓史により映画化され、主演は「世界から・・・」に続いて佐藤健が勤め、「るろうに剣心」のペアが再びというところ。

大倉一男(佐藤健)は、図書館で働ていますが、莫大な借金を背負いパン工場でバイトもする生活。妻の万佐子(黒木華)は、愛想をつかして娘を連れて別居してしまいました。しかし、たまたま買った宝くじが当選して、一男は三億円を手に入れます。

大金に不安になった一男は、起業した会社が成功して大金持ちになった大学からの友人である九十九(高橋一生)に、これからどうすればいいか相談に行きますが、九十九はお祝いだとパーティを開き、一男は飲み過ぎて寝込んでしまいます。

目を覚ますと、三億円と共に九十九は消えていました。一男は、パーティに居合わせたアキラ(池田エライザ)が持っていた名刺をヒントに、九十九の行方を追います。九十九の会社で技術責任者をしていた百瀬(北村一輝)に会いに行くと、億万長者の遊び方を見せつけられるのでした。百瀬は元財務責任者だった千住(藤原竜也)を紹介します。

千住はセミナーを主催するマネーアドバイザーとなっていて、集まった人々を洗脳して金を巻き上げるような怪しい男でした。千住の話によると、九十九の会社は最初の勢いが無くなり、火の車になっていたのです。百瀬や千住らは沈みかけた船から真っ先に逃げ出したということ。千住は元広報担当の安田(沢尻エリカ)なら、行方を知っているかもしれないと言います。

安田は公営住宅で質素な暮らしをしていて、結局、夢と理想を追いかける九十九に付いて行けず、みんながお金が一度手にしたことで変わってしまったと話します。一男は九十九とかつて旅行して熱く語り合ったことを思い出し、お金が無いことでも自分は変わってしまったことを思い知るのです。そんな一男の前に、三億円を持った九十九が姿を現しました。

お金って何だろう、お金によって人が変わってしまうのは何故なんだろう、という問いかけをしている映画。急に金持ちになってどうしていいかわからない主人公が、行く先々で出会う人々からその答えを探っていくという内容です。

・・・なんですが、キャスティングの割には、それぞれの俳優の良さが見えてこない。そもそも庶民的には到底手にしたことが無いレベルの大金の話なので、どうも絵空事感かついて回ります。

要するに、一つ一つのエピソードにリアリティが無さすぎで、そんな中で「お金とは・・・」みたいな話をされても何かなぁ・・・という映画でした。