2023年11月2日木曜日

大脱走 (1963)

監督ジョン・スタージェス、音楽エルマー・バーンスタインの「荒野の七人」コンビが、スティーブ・マックィーンを主役に迎え、ここでもオール・スター・キャストで異色の戦争映画を大ヒットさせました。原作は1943年に撃墜されドイツ軍捕虜になったポール・ブリックヒルが、収容所での脱走計画を回想した実話。

スタラグルフト捕虜収容所は、フォン・ルーゲル所長(ハンネス・メッセマー)の元、厳しい監視下に脱走常習者を集めていました。鉄条網の前は広々として多くのドイツ兵が監視し、その向こうの森までは100mほどもあります。

新たに送られた来た捕虜は、所長との連絡係を任されるラムゼイ大佐(ジェームズ・ドナルド)、ヘンドリー(ジェームズ・ガーナー)、ダニー(チャールズ・ブロンソン)、セジウィック(ジェームズ・コバーン)、アシュレー=ピット(デヴィッド・マッカラム)らがいました。初日から脱走を企てますがことごとく失敗し、ヒルツ(スティーブ・マックイーン)とアイブス(アンガス・レニー)は独房行になってしまいます。

そこに多くの脱走を指揮してきたバートレット(リチャード・アッテンボロー)が送られてきて、ラムゼイに大規模脱走によりドイツ軍の後方攪乱を起こすと語ります。すぐさま計画に取り掛かり、森まで長いトンネルを掘ることにします。

ヘンドリーが収容所内で様々な必要なものを調達し、ブライス(ドナルド・プレザンス)は脱走後に必要な身分証明書などの偽造を担当します。独房から出てきたヒルツとアイブスは、さっそく独自に脱走を試みますが、あえなく再び独房行となってしまいます。

その間にトンネル計画は着々と進んでいましたが、脱走後の周辺の地理が不明のままだったため、バートレットは独房から出てきたヒルツに再び脱走した暁にはそれを調べて捕まって戻ってくるように頼みます。精神的にまいっていたアイブスが発作的に鉄条網に飛びつき射殺されたため、ヒルツはバートレットの頼みを引き受けるのでした。そして、ついに脱走の日がやってきます。

映画では原作の史実を改変してあるのは当然で、主要人物のいろいろな葛藤なども的確に織り交ぜてドラマ性を高めています。様々な偶発的な出来事により予定よりも少ない76名が脱走しますが、それでも収容所のメンツは丸つぶれでした。脱走後、あちこちに散らばった者たちのうち50名はゲシュタポにより銃殺され、成功者はわずかに3名だけでした。このあたりは原作に比較的忠実な結果です。ラストでは、再び収容所に戻ったヒルツが、得意の独房に入ったところで終わります。

いわゆる戦闘シーンはありませんが、戦争の裏側を描いた傑作として後世に残る名作であることは間違いない。前半の地道なトンネル堀りの中では、マックィーンの単独行動が良いアクセントになっています。脱走した後は、動きがある各自の逃避行がダイナミックに描かれるので、3時間ほどの長丁場でも飽きさせません。

どの人物に共感しても良い作りになっていて、場合によってはドイツ側の比較的人道主義的な所長の気持ちに寄り添って見ることもできます。連合国軍としていろいろな国から集まった捕虜たちですが、一つの目的のために一致団結し、どんな苦難もあきらめずに前に進もうとすることを称える映画です。