「大脱走」と同じ年公開された、スティーブ・マックィーンとナタリー・ウッドによる恋愛ドラマ。監督は「アラバマ物語」のロバート・マリガン。原題は「Love with the Proper Stranger (まったく知らない人との恋)」で、おそらく邦題は「アラバマ物語」のヒットを受けて考えられたのかもしれません。それにしても、アクション俳優というイメージのマックィーンからすると異色作と言えそうです。
ニューヨークで、しがないバンジョー奏者として暮らすロッキー(スティーブ・マックィーン)は、仕事が無いわりには女たらしで、ショーガールのバービー(エディ・アダムス)と同棲中。ある日、音楽家協会に仕事をもらいに行くと、数か月前に一度きりナンパしたアンジー(ナタリー・ウッド)に声をかけられます。アンジーは「妊娠したの。あなたを巻き込むつもりはないけど、堕ろすために医者を探してほしい」と言い出すのです。
アンジーはデパートの9時5時の仕事を終えると、毎度店の前で待っている3人の兄たちがわずわらしい。狭いアパートに戻ると自分の部屋もなく、小うるさい母親がいる生活に息苦しさを感じる毎日でした。いろいろなストレスに抵抗する気持ちから、魔が差してロッキーとの関係を持ったのです。
ロッキーはアンジーを連れて医者探しを始めます。結婚は人生の墓場だと思っているロッキーと愛のある皆から祝福される結婚を望むアンジーは、なかなか意見が折り合わない。やっと見つけた女医は怪しげで、ロッキーはアンジーをアパートに連れ帰ります。ロッキーはアンジーの兄にすべてを話し(殴られますが)、責任を取ってアンジーと結婚すると言い出します。しかし、アンジーは結婚は罰ではないと断るのでした。
しかし、二人は次第にお互いを必要としていることに気が付きます。しばらくして、デパートの仕事を終えたアンジーは、店の前で「BETTER WED THAN DEAD (死ぬより結婚が良い)」書いたプラカードをかざしてバンジョーを引くロッキーを見つけるのでした。
一見、ロマンス・コメディの体裁をとっていますが、結婚に対する人生観を突き詰めるかなりシリアスな内容の映画です。今だったらあまり驚くこともありませんが、昭和38年の日本だと、一夜の火遊び、ましてやそれで妊娠、その挙句のできちゃった婚などは、到底受け入れることはできなかったろうと思います。
妊娠を契機に逆の順番に愛情を作っていくという、変わり種の恋愛映画はアメリカでも注目されました。主人公たちの社会の底辺に近い生活環境も、映画の主題の一分となっているように思います。
人気絶頂だったナタリー・ウッドと、人気急上昇中のマックィーンの共演も話題性が高かったことと思います。しかし、ウッドの適役感に対して、残念ながらマックィーンがお気楽な売れない音楽家には到底見えないのが難点。正直に言うと、ミス・キャストと思いました。
また、台詞が多くて、始終誰かががなり立てているようなところが、映画というより舞台劇のような雰囲気になってしまい、台詞なしで二人が仲直りするラストシーンだけが映画的で印象に残ります。