自信家のギャンブラーを演じた、いかにもスティーブ・マックィーンらしいヒット作。監督はノーマン・ジェイソン、音楽はラロ・シフリン、主題歌はレイ・チャールズが担当しました。
ここで主として行われる賭け事がファイブ・スタッド・ポーカー。5枚の手札で勝負しますが、最初に配られる2枚のうち1枚は表向きで勝負に参加する全員が知ることができます。ここから表向きに1枚づつ配られるごとに、降りるか続けるか決めることができます。
前のプレイヤーと同額のチップを支払う時は「コール」と宣言し、ゲームの継続の意思を表します。降りる場合は「フォールド」、掛け金を釣り上げて継続する場合は「レイズ」と言います。
戦前のニューオリンズの町で、シンシナティ・キッドと呼ばれるエリック・ストーナー(スティーブ・マックィーン)はポーカーの名手として知られ、自身もこの世界でトップを取ることを夢見ていました。ポーカーの世界の長老はシューター(カール・マルデン)で、彼の遊び好きの愛人のメルバ(アン・マーグレット)は、ストーナーの恋人、クリスチャン(チューズデイ。ウェルド)を連れ歩いていました。
ポーカーの世界の頂点に君臨するランシー・ハワード(エドワード・G・ロビンソン)が町にやって来て、有力者のスレイド(リップ・トーン)はランシーにポロ負けします。ストーナーはシューターにランシーとの勝負の場を設けてくれるように頼み込みますが、トップになることだけに熱くなるストーナーに不安になるクリスチャンは実家に帰ってしまいます。
スレイドは貸のあるシューターにランシーとストーナーの勝負で、八百長でストーナーに勝たせるように迫ります。日程が決まって気持ちが落ち着かないストーナーはクリスチャンの実家を訪ね、ぎこちなかったクリスチャンの両親ともトランプを通して打ち解けます。
いよいよ勝負が始まり緊迫した心理戦が続き、他のメンバーは次々に脱落していきます。ストーナーとランシーの一騎打ちになって、勝敗は翌日に持ち越されます。ストーナーは、配られる手札が自分に有利なことに気が付きディーラーをするシューターを問い詰め、余計なことをしなくても俺は勝つと言うのです。
仮眠をとるストーナーのもとにメルバが誘惑しに来ますが、心配して戻ってきたクリスチャンと鉢合わせしてしまい、彼女は再び出て行ってしまいました。ストーナーのつきも無くなり、最後に全額を賭けた勝負を落としたストーナーは、逃げるように会場を後にするのでした。しかし、外ではクリスチャンがストーナーを待っていました。
というわけで、一応メデタシメデタシという終わり方。ライバルのポール・ニューマンが「ハスラー」をヒットさせた後ですから、製作サイドも当時の観客も意識したことは間違いない。ギャンブラーの真剣勝負を真っ向から取り上げて、配られた手札のツキだけでなく、記憶力や勝負所での精神的力が強さに関係していることを示しててくれました。
何となくギャンブルと言うと裏社会の楽しみのように思えてしまいますが、ポーカーそのものはここでは表も裏も無く、また上下も関係無く一つの仕事として成立していたのは時代というものなのかもしれません。
ここでのマックィーンは自惚れ屋の勝負師ですが、トランプの分析力がありそれなりに押す所と引く所をわきまえた冷静な勝負をしています。そういう紳士的な態度が、女によって揺さぶられるところがドラマとして面白い。
ポール・ニューマンは最後は勝者になりましたが、マックィーンは敗北します。どんなに優れた才能でも、さらにその上を行く者がいることを示しました。しかし、マックィーンは最後に幸運の女神を再び手に入れることができたということで、うまく映画は着地したように思います。