原作はノエル・カレフのサスペンス小説。ルイ・マル監督のデヴュー作。そして、それ以上に自分にとって有名なのは、音楽が全編にわたりマイルス・デイビスが担当したということ。
この映画のためにフランスに招かれたマイルスは、映画のラッシュを見ながら現地ミュージシャンと即興的に音楽をつけていったという伝説を残しました。本当にその場で急に演奏したのか信じがたいほど、緊張感のある場面とマッチするジャズの音楽が心地よい。
サンウドトラックは、立派なトータル・アルバムとして成立していて、今までに音だけでも何度も聞き返したものです。評論家諸氏が指摘するのは、エコーを深くかけたトランペットの音が、まさにマイルスの音を確立させた原点と言うことで、確かに納得です。
映画も素晴らしい。白黒で撮影され、まさにフランス・フィルム・ノワールのジャンルを形成する名作の一本と呼ぶのにふさわしい。冒頭、ジャンヌ・モローのどアップから始まり、いきなり「ジュテーム(愛しているわ)」が繰り返される。これだけで、もうが画面に引き込まれてしまいます。
社長夫人フロランス(ジャンヌ・モロー)は、夫の部下であるジュリアン(モーリス・ロネ)と不倫関係にあり、夫を共謀して殺すのです。ジュリアンは社長を殺したあと、偶然に会社のエレベーターに閉じ込められ、フロランスは待ち合わせ場所でなかなかやって来ない恋人を心配する。
若者が出来心からジュリアンの車を盗んで、恋人とドライブにでかけます。若い二人は深い思慮はなく、モーテルで事件を引き起こし、シェリエ警部(リノ・ヴァンチュラ)は二つの事件のもつれた糸をたどっていくことになるのです。
日本でもドラマ化されたり、映画化されたりして人気があるストーリーですが、やはりジャンヌ・モローの圧倒的な美しさと存在感の前では陳腐な印象は拭えません。言葉では言い表せないこれがパリのけだるさ・・・まさにフランス映画ならではという雰囲気が濃厚に漂う名作です。