2021年11月30日火曜日

バイオハザード IV アフター・ライフ (2010)

日本発祥のビデオ・ゲーム「バイオハザード」がハリウッドで実写映画化され、ついに4作目にしてオープニングは東京。渋谷のスクランブル交差点からというだけで、日本人としてはワクワクしてポイントを高くしてしまいそう。

シリーズ全体を統括するポール・WS・アンダーソンが再び監督に戻り、主役のアリスは当然、ミラ・ジョヴォヴィッチが続投です。この映画の撮影中か終了した時点で、監督と主演女優は結婚してますので、熱々のコンビネーションというところでしょうか。

アンブレラ社の地下秘密研究所、ハイブから生物兵器になるTウイルスが漏洩し、あっという間に世界中にウイルスは拡散しました。遠く離れた日本、東京、渋谷にもウイルスは広がっており雨のずぶ濡れになりながらスクランブル交差点に立ちすくむ女は、突然目をむいて通行人に襲い掛かるのでした。この女は役名は「JPOP Girl」となっていて、何と中島美嘉が演じています。感染は日本中に拡大し、東京も死の街となった4年後、つまり前作でアリスがアンブレラ社に宣戦布告した1年後が本編のスタート。

渋谷のスクランブル交差点の地下深くに建造された、アンブレラ社東京本部の要塞にアリスと大勢のクローン・アリスが侵入、上級幹部のアルバート・ウェスカー(ショーン・ロバーツ)はオスプレイで脱出し基地を爆破します。

しかし、すでにオリジナルのアリスはオスプレイに乗り込んでおりウェスカーを殺そうとしますが、ウェスカーは「俺が新型だ」と言って逆に抗Tウイルス血清を注射されてしまう。オスプレイが富士山腹に墜落して、アリスはウイルスを取り込むことで身につけた超能力を無力化されてしまったためウェスカーを取り逃がしてしまうのでした。

それから半年後、アリスはクレア・レッドフィールド(アリ・ラーター)を追って単発機でアルカディアに向かいます(前作参照)が、そこには何もない平原でした。そこで記憶を無くしたクレアと再会し、ロサンゼルスに戻ると無数のアンデッドに包囲され孤立した刑務所の屋上に生存者を発見し、着陸を強行します。

そして、アリスは生存者からアルカディアは沖に停泊している貨物船の名前だと知ります。クレアの兄、クリス・レッドフィールド(ウェントワース・ミラー)も犯罪者間違われ監禁されていましたが、ついにアンデッドが侵入してきたため、アリス、クレア、クリスは仲間を失いつつも刑務所を脱出し船に向かいます。

実はアルカディアはウェスカーの船で、Tウイルスを接種して超人的なパワーを得たものの人間のDNAを補給しないとアンデッド化してしまうため、生存者をおびき寄せる罠だったのです!!

例によって「次回に続く」です。当然アリスは勝利するのですが、すぐにアンブレラの武装集団が迫って来る。しかも! しかもですよ、その指揮を執っているのがジル・バレンタイン(シエンナ・ギロリー)というところをチラ見せして終わります。

前作で感じたことですが、やはりアンブレラ社というものがほとんどの人類がアンデッドになった終末世界で、これだけの金をかけた設備を作り、軍隊を持つだけの目的がさっぱりわからない。

支配するということは、支配されるものがあって成立するわけで、それだけの力があるなら地上のアンデッドを一掃して、あらたな地球の創造主にでも何でもなればいいじゃんという感じ。

ミラ・ジョヴォヴィッチも30代半ばになって、正直おばさんぼくなりました(ファンの方ごめんなさい)。超能力を消されてしまったので、多少人間らしくなったということなのかもしれません。これは、前作まででほとんどワンダー・ウーマン並みのパワーを身につけていたので、このままではなんでもあり過ぎなので一度リセットしたということでしょうか。

それは設定としてはグッジョブなんですが、その後の展開はクレアに助けられるところはあるものの、ほとんど変わらずの無敵キャラ。せっかく超能力消えたのに、なんのこっちゃ的な展開にはかなりがっかりします。冒頭の渋谷で激戦で気分が盛り上がりましたが、後は星をどんどん失う結果かと・・・

スローモーション・カメラを多用したところは、映像としては見ごたえがあります。ただしウェスカーが弾丸を簡単に避けるところなんかはバイオハザード版マトリックスです。それにしても、スクランブル交差点の下にこんな要塞があったら半蔵門線はどこにいっちゃった??

2021年11月29日月曜日

カップヌードル 年に一度の謎肉祭り 2021


10月に発売され買っておいたのですが、食べる機会がなかなかなくて今頃食べました。なので、もう売ってないかもしれません。

5年前から秋の恒例となったカップヌードルの謎肉祭り。

謎肉呼ばれるフリーズドライの「肉」らしくかやくを大量投入したもので、「肉盛りジューシーしょうゆ味」となっていますが、ほぼ普通のスタンダードと味は同じ。

過去には、本当に大量に入っていると感動したこともありますが、今年は「あれっ? こんだけ?」っていう感じ。

ざっと数えて30個くらいで、普通よりはもちろん多いのですが、過去の謎肉祭りからするとかなり寂しいです(去年もこんなだった)。

さすがにそろそろ話題性は乏しくなってきたので、来年あたりはエビ盛祭りとかにしてくれてもいいんじゃないかなと思ったりします。

2021年11月28日日曜日

バイオハザード III (2007)

シリーズ3作目。続けて監督をしたポール・WS・アンダーソンは脚本担当で、監督はラッセル・マルケイに任せています。原題では「Extinction (絶滅)」というサブタイトルがついています。

今回もミラ・ジョヴォヴィッチの眼球のアップからスタート。1作目のシャワー室で目覚めるシーンになり、おやおやまたもや今までのあらすじ紹介かと思いきや、薄手の赤い服を着たアリスは扉を開けるとそこは、ハイブのコンピュータ室に通じる廊下。1作目で特殊部隊の隊員が殺人レーザーで小間切れにされた場所です。アリスは何とかレーザーをかいくぐって、天井裏に飛びつきます。

ダクトから抜け出すと、今度は第2作の捕まっていた病院。結局罠にはまって死んでしまう。死体は屋外の溝に無造作に放り投げて・・・何と、そこには何体ものアリスの死体が捨てられていました。砂漠のような場所で、周囲は金網で仕切られ、金網の外にはゾンビが群がっていました。Tウイルスは数週間でアメリカ全土、そして数か月で世界中に広がり、人類は滅亡に向かっていたのです。

あれから、3年が経ちアリスはバイクで各地を転々とする生活をしていました。前作で、アリスに助けられラクーンシティを脱出できた、カルロス(オデッド・フェールロイド)とL.J.(マイク・エップス)は、クレア(アリ・ラーター)がリーダーの生存者集団と共に移動生活をしています。アリスは彼らを助けたことで行動を共にします。

アンブレラ社は砂漠の地下深くに研究施設を整備し、アイザック博士(イアン・グレン)を中心に、アリスの血液から抗血清を作り、ゾンビを無力化して従順にさせる研究をしていました。そして、その為の実験に大量のクローン・アリスを利用しているのです。

アリスが超能力を覚醒させ使用すると、その波を検知したアイザックはどうしてもアリスを捕えたくて独断専行するのです。衛星からの脳波コントロールでアリスを操れるはずでしたが、アリスの抵抗により失敗し、アイザックもゾンビによって負傷します。何とか研究施設に戻ったアイザックは抗ウイルス薬を注射し、その結果「ネメシス」化するのでした。

カルロスやL.Jら多くの仲間を失うものの、クレアらと研究施設を急襲したアリスは、皆をヘリコプターでアラスカにある感染が広がっていない地「アルカディア」に向けて脱出させ、自分は一人研究施設内に足を踏み入れのでした。

クローン・アリスの登場で、ホラー色は薄まりSF調が強まった感じですが、そもそもこれだけアメリカ中を不毛の土地にしてしまって、アンブレラ社は一体何を求めているのかよくわからない話になってきました。表向きの製薬企業として、買い手の客がみんなゾンビじゃもうからない。裏の商売の武器商人としても、こうなると戦争にもならないので商売上がったりです。

前作で生き残ったジルとアンジェラについては映画の中では言及されていませんが、実は小説版だとアイザックによる脳を遠隔操作されたアリスがアンジェラを殺してしまったらしい。アリスは人工衛星による監視を受けていたので、仲間とは別行動をすることにしたようです。

これまでのイメージが続いてマンネリ感を恐れた制作陣は、今回はゾンビ映画としては異例の白昼の砂漠を舞台にしました。当然、それによってホラー感はかなり薄まっていることは間違いない。まさにバイオハザード版マッドマックス。

もう驚きもしませんが、当然のように最後は「次回に続く」なわけで、アリスが渋谷(!)の地下にアジトがあるアンブレラ社のトップに宣戦布告して終わります。



2021年11月27日土曜日

バイオハザード II アポカリプス (2004)

黙示録・・・アポカリプスは、新約聖書の最後の章で世界の破滅のこととか書いてあるので、小説・映画などにはよく引き合いに出されます。シリーズ第2作は、このサブタイトルを冠しています。前作で「次回につづく」状態でしたので、当然ストーリーは連続しています。

この映画では、アリス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)が街に出て壊滅している光景に呆然とする少し前から始まります。アンブレラ社は、彼らの送り込んだ特殊部隊が壊滅したにもかかわらず、アリスを確保した後直ちにハイブの扉を開け調査に入りますが、Tウイルス感染した死者が襲い、あっという間にウイルスは外界に拡散してしまうのです。街は感染者が次々とゾンビ化し、混乱は急速に拡大しました。

アンブレラ社の意のままの警察は街を封鎖し、感染拡大を抑止できないため住民すら銃で脅して街から出さないのです。警察の特殊部隊の隊員、ジル・バレンタイン(シエンナ・ギロリー)とペイトン・ウェルズ(ラズ・アドティ)は、テレビ・キャスターのテリ・モラレス(サンドリーヌ・ホルト)と教会に避難します。アリスは銃砲店で武器を手に入れますが、体に不調を感じ病院で薄れる意識の中でTウイルスを接種されたらしいことを思い出します。

T-ウイルスを開発したアシュフォード博士は、アンブレラ社のティモシー・ケイン(トーマス・クレッチマン)の退避要請に娘のアンジェラが救助されていないという理由で拒否し、街の監視カメラシステムにアクセスしてアンジェラを探すのです。教会ではモンスターのリッカーが襲ってきますが、間一髪でアリスが突入しジル、ペイトン、テリらを連れ出します。

監視カメラでアリスたちを補足したアシュフォードは、公衆電話からアンジェラを救出することを条件に脱出する方法を教えると言ってきました。夜が明けると核攻撃で街全体を焼却する可能性が高いために、アシュフォードを申し出を受けるしかありません。

ケインは感染制御不可と判断し、ネメシス計画を発動しました。実は、ネメシスは前作でアリスと共にハイブから脱出したマットがウイルスにより変異しモンスター化した姿でした。重火器で武装したネメシスはアリスを狙って襲ってきたため、ジル達は逃れて学校に隠れていたアンジェラを発見します。

アシュフォードは、自分と娘の筋ジストロフィーの治療のためにTウイルスを開発したのを、アンブレラ社に研究を横取りされたのです。脱出用のヘリコプターに向かいますが、そこにはケインとネメシスが待ち構えていました!!

前作のいかにもホラーっぽいゾンビが体を揺らしながら近づいてくるところは、町中ですからパワーアップしたものの、これが主じゃない感も半端ない。ホラーの要素はほとんど飾りで、アンブレラ社の人を人と思わない悪行だけが先走っています。

アクションは前作よりかなり派手で、前作ではほとんどスタントなしで演じたジョボヴィッチも今作ではだいぶスタントとCG合成の恩恵を受けたようです。ジルはゲームにも登場するキャラクターで、演じたシエンナ・ギロリーはゲーム中のジルを相当研究してコスチュームや動きはかなり寄せて来たらしい。ある意味、超人的なアリスよりもジルの方を応援したくなる感じもしてしまいます。

どうやら普通はTウイルスに感染すると、死んでも細胞が再生しゾンビ化するようです。しかし、何らかのウイルスに対する耐性をもっている人間がいるらしい。マットはその一人ですが、遺伝子変異からモンスター化してしまい、彼の限界はそこまで。ところがアリスは、同じく感染してウイルスを自分の体内で取り込み未知の力を増幅させるようです。

今回も、終わりは「次回につづく」で、アリスの超進化を促進していこうとするアンブレラ社の次の戦略「アリス計画」が始動して終わります。全体にはネメシスがチェーンマシンガンをうちまくるところなんかは、バイオハザード版ターミネーターと呼ぶのがふさわしいかも。


2021年11月26日金曜日

バイオハザード (2002)

21世紀になって、SFホラー映画はだいぶ様変わりし、アクションの要素が強くなりました。そして、アクションの主役がヒロインというのが珍しくなくなった。70~80年代にはテレビでは、「ワンダー・ウーマン」、「バイオニック・ジェミー」、「チャーリーズ・エンジェル」のような女性が活躍する連続ドラマがたくさんあったことを考えると、映画界の変化はだいぶ遅かった感じがします。

もちろん以前も女性が活躍する、例えば「エイリアン」シリーズのリプリーのような存在もありました。シリーズ第1作はSFホラーの傑作ですし、2作目はSFヒロイン・アクションの先駆者と言えますが、それに追随する作品は登場しませんでした。守られる女性から戦う女性への変化は、まさに時代の流れに則した必然のようです。

ヒロインが活躍するSFホラー系では、吸血鬼・狼男という古いモンスターをモダンに進化させたシリーズとして「アンダーワールド」が2003年に始まっています。そして、死人が死体のまま復活してゾンビとなって襲って来る「バイオハザード」が、2002年に始まりシリーズ化されました。

そもそも「バイオハザード」は日本発祥。1996年にCAPCONから発売されたPlaystation用のビデオゲームで、サバイバルホラーというジャンルに入ります。海外では当初から「Resident Evil」というタイトルが使われており、映画においてもオリジナルのタイトルになっています。

映画のシリーズはいずれも「モータル・コンバット」を手掛けたポール・WS・アンダーソンが監督・脚本・制作し、ヒロインとしてミラ・ジョヴォヴィッチが活躍します(二人は2009年に結婚)。

20世紀の初め、製薬大手の大企業のアンブレラ社は、ラクーンシティの地下研究施設「ハイブ」で密かに生物兵器の開発をしていました。ある日、何者かが研究中のTウイルスを漏洩させバイオハザードを発生させたため、メイン・コンピュータのレッド・クイーンは施設を封鎖し、浄化システムを始動しました。その結果、500名の職員全員が死亡します。

ラクーンシティの郊外の洋館。目を覚ましたアリス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)は、自分が誰で何故ここにいるのか思い出せません。突然警察官と名乗るマット・アディソン(エリック・メビウス)に抱えられますが、直後に窓から飛び込んできた特殊部隊に取り押さえられます。彼らはアンブレラ社からバイオハザード調査に派遣された部隊で、途中でスペンサー・パークス(ジェームズ・ピュアフォイ)を発見し、地下の列車でハイブに向かいます。

隊長はアリスも隊員の一人で、スペンサーと偽装結婚しハイブの入口を守る任務に就いていたと説明します。彼らの任務は、暴走していると考えられたレッド・クイーンをシャットダウンすることでした。しかし、侵入者を検知・追跡するレッド・クイーンは防衛システムを起動し、コンピュータ室入口で多くの隊員がレーザー光線により死亡しますが、何とかシャットダウンに成功します。

レッド・クイーンによる区画封鎖が解除されたため、研究所の所員の死体が解放され、しかも何とゾンビになって部隊に襲い掛かってきました。アリスらは再びコンピュータ室に逃げ込み、レッド・クイーンを再起動し脱出ルートを探します。アリスの記憶が戻り、アンブレラ社の不正を暴くためマットの妹と協力してウイルスを盗むはずだったのです。しかし、スペンサーに横取りされ、彼がウイルスを散布したのでした。彼らは無事に脱出できるのか?!

まぁ、続編があるので少なくともアリスは生還するのは間違いないんですけどね。地上に戻ったアリスは病院で気密室に隔離され、意識が戻ると部屋から脱出するんですが、病院の中には人っ子一人いない。外に出て見ると、ラクーンシティの街は壊滅している!! というところで映画は終わります。

最初から続編の構想がある作りで、第1作としてはアリスが生還した以外は何も解決していません。あくまでも、アンブレラ社の悪事とそれに対決していくアリスというヒロインが誕生するまでのイントロダクションという内容です。

ミラ・ジョヴォヴィッチは、このアリスの役には積極的で、ヒロインにも関わらずアクション・シーンはほぼ自ら演じたそうです。そのせいで、撮影では生傷が絶えなかったらしい。死人がうようよと近寄って来て襲う様子は、まさに「Walking Dead」状態。これについては目新しさは無い。

悪徳企業のアンブレラ社を組み込んだことで、単なるゾンビ映画からスリラーとしての謎が膨らんできてアクション映画としても成立させたところは製作者のよく考えたところでしょう。コロナ渦ということもあって、未知の生物や遺伝子操作によるバイオハザード(生物学的危機)が単なる絵空事とは言えなくなってきました。

2021年11月25日木曜日

ベルヴィル茅ヶ崎ビル修繕工事始まる


ベルヴィル茅ヶ崎ビル・・・と言っても、たいていの方はどこ? なに? という感じだと思いますが、うちのクリニックが入居している建物の名称です。

正確な住所は「神奈川県横浜市都筑区茅ヶ崎中央51-1」
横浜市営地下鉄センター南駅のバスロータリーに面した建物の一つ。

このビルが完成したのは2005年春の事。4月から3階に小児科、4階に泌尿器科が開業しました。その後11月末に3階に眼科、そして12月初めに4階にうちの整形外科クリニックが開院しています。少し遅れて4階の内科、3階の耳鼻科が埋まり、クリニック・モールの形が出来上がりました。

ビルができてからは16年と6カ月。外装の汚れ、ひび割れ、塗装剥げなど、当然のように歳月を感じる変化が出ています。というわけで、ビル・オーナーさんもついに修繕工事に着手したというわけで、今週から足場組み作業が始まりました。

予定は来春までの4か月間となっていて、当然各クリニックはその間も通常通りに診療をします。工事業者は細心の注意を払って作業を進めると思いますが、ビルにおいでの方には何かとご不便をおかけすることがあるかもしれませんので、ご注意ください。

2021年11月24日水曜日

ミスト (2007)

原作は、ホラーの巨匠、スティーブン・キングの1980年の小説。監督は、キング原作としては「ショーシャンクの空に」、「グリーンマイル」の映画化を手掛けたフランク・ダラボン。ある意味かなりの問題作です・・・

霧の中から恐怖がやって来るのは、ジョン・カーペンターの「ザ・フォッグ(1980)」と共通ですが、もちろん関連はありません。しかし、冒頭でカーペンターの「遊星からの物体X」の映画ポスターが主人公の家の壁にかかっていることから、一定のリスペクトをしているものと思われます。

昨夜の雷を伴った嵐によって、湖畔のデヴィッド・ドレイトン(トーマス・ジェーン)の家は倒木でめちゃくくちゃになり、息子のビリーと同じく被害を被った隣人のブレント・ノートン(アンドレ・ブラウアー)と町へ買い出しに向かいます。湖面には不気味な霧が立ち込めていました。

スーパーで会計の順番を待っていると、顔から出血したダンが走りこんできて、「霧の中に何かがいて襲って来る」と叫びます。気が付くと、もうあたりは霧が立ち込め、視界がほとんどなくなってしまいました。自家発電機の具合を直そうと、裏のシャッターをあけた途端に、鋭い触手のような長い者が入り込み若い店員が犠牲になります。

店内に閉じこもるしかない状況で、それぞれの精神状態は次第に緊張が高まっていくのです。車のショットガンを取りに体にロープを巻いた客が外に出ると、強い力がかかりあわてて引き戻すと下半身だけになっていました。そして、夜になると巨大な昆虫のようなモンスターが表のガラスを割って侵入し犠牲者が出ます。

神による最後の時が来たと言う狂信家のカーモディ夫人は最初は相手にされませんでしたが、次第に彼女に同調する者が増え始めました。けが人のために隣の薬局に向かったデヴィッドたちは、俺たちのせいだと言いながら体内から無数の幼虫を放出して死んだ軍人を見つけます。そのことを知ったカーモディは、一緒に店内に閉じ込められていた二等兵を問い詰め、軍が異次元への扉を開く実験をしたという噂を聞き出します。

カーモディに扇動され恐怖に自制心を無くした人々を二等兵をリンチにし、店の外へ生贄として放り出すのです。ついにデヴィッドらは外に脱出する決意をしますが、カーモディらが立ちはだかりビリーを生贄に差し出せと言い出します。そして、カーモディを射殺して何とか車で脱出しましたが・・・

この霧とモンスターの発生原因はSFですが、そこについてはほとんどきっかけに過ぎず話の内容に絡んでくることはありません。そしてホラー映画なのかというと、一見、モンスター・パニックと言うのがあっているかもしれません。

しかし、実際は、かなり宗教的なというか、恐怖を前にした人間の本性を描き出すのが最大のテーマのようですし、主人公たちの選択が必ずしも正しいわけではなく、人は間違いを犯すことを徹底的に見せつける映画になっています。

この結末の後味の悪さは前代未聞で、本当にここまで悲惨な結末(原作とは異なるが原作者は絶賛)をよくも考えたというところ。監督は、見た人がそう感じるのを承知の上で、それこそが狙いであり、全ての人に受け入れられないことを目指したと述べています。

であるなら、最初からストーリーを知らせるか(当然、無理な相談ですけど)、この映画に対して失望した人には鑑賞に要した費用と時間を返すぐらいのことをしてもらいたい(もっと無理)。

しかし、この結末に納得する人いるんでしょうか。少なくとも、自分としては比較的評価が高いのが理解できない。絶望的な終わり方でも、もう少し違うエンディングがあるだろうと思います。


2021年11月23日火曜日

ザ・フォッグ (1980)

B級映画の鬼才と呼ばれることが多いジョン・カーペンターの、例によって監督・脚本・音楽とマルチな才能を発揮した作品。低予算で映画製作をすることが多いためB級と言われてしまいますが、アイデアやそれを映像化する力量があるから、主としてSFとホラー系の(隠れた)名作と呼ばれる作品を多く作り、多くの映画人に影響を与えている監督です。

アントニオ湾には、100年前の深い霧の夜に難破した帆船の船員たちが、再び霧が立ち込めた時に亡霊となって蘇るという言い伝えがありました。そして100年目の午前0時を過ぎたとたんに、街のあちこちで不思議な現象が起こり始めるのです。沖合にいた漁船は急に発生した霧に飲み込まれ、謎の帆船を目撃した直後殺害されてしまいます。

マローン神父(ハル・ホルブルック)は、突然崩れた壁から救いを求める祖父の日記を発見します。岬の灯台のラジオ局のDJ、スティービー(エイドリアンヌ・バーボー)は、沖合に不思議な光を一瞬みとめます。ニック(トム・アトキンス)はヒッチハイクのエリザベス(ジェイミー・リー・カーティス)を拾いますが、車のガラスが割れたり、家にも不審なノックする音が響く。

朝になり、スティービーの息子は海岸から帆船の破片と思われる流木を拾います。町の有力者、キャシー・ウィリアムズ(ジャネット・リー)は今夜の町の100周年記念式典の準備に忙しくしていました。しかし、マローン神父から、100年前に金持ちの船を湾に誘い込み難破させ、彼らを殺して得た財産で街を興したという日記の内容を聞かされます。

ニックは沖合に漂流する漁船を発見し、まるで水死したかのような腐敗した遺体を回収しますが、急に動き出すのでした。夕闇が迫り、再びアントニオ湾には霧が近づいてきました。スティービーの家も霧に覆われ何者かに襲われますが、間一髪ニックが救い出し、教会へ逃げ込むのでした。

この映画ではSF的な要素はほとんどありませんので、純粋にホラー映画と言った方がわかりやすい。CGが普通に使われるようになる前、アナログの時代ですから、特殊撮影はお世辞にもすごいとは言えませんが、さすがに「B級」の巨匠だけあって、サスペンスの盛り上げ方はうまい。映画での驚かせ方のお手本みたいな感じです。

「ニューヨーク1997」でハードな役をこなしたエイドリアン・バーボーは、ここではお母さんで、ラジオで霧の進展を実況して必死に危険を訴える役回り。この映画の頃は、カーペンターの奥さんでした。「サイコ(1960)」のショッキングな役だったジャネット・リーは何か嬉しい。ホルブロックも、70~80年代の貴重な脇役です。ちなみに殺されちゃう測候所の職員さんの役名はダン・オバノン。カーペンターの旧友で「エイリアン」の原作者と同じ名前。

とはいえ、町とは関係ない巻き込まれのエリザベスの存在意義が意味不明。最後の解決策も、今時の複雑な世界観の映画からすればちょっと簡単すぎかなと思います。なんて思っていたら、25年たって2005年にカーペンターは製作にまわったリメイクが作られ、エリザベスの設定と解決策が変更になっているようです。さすが、カーペンターもちょっと後悔していたのかもしれません。

2021年11月22日月曜日

亜人 (2017)

桜井画門によるコミックが原作・・・って、もう邦画ではマンガばっかり使われるというのが寂しい限りですが、それは本題では無いので横に置いておいて、監督は「踊る大走査線」シリーズの本広克行。画面の使い方が「踊る・・・」を彷彿とさせるところがあって、ちょっと笑っちゃいます。何度死んでも生き返るゾンビが主役のSFアクション映画というところでしょうか。


研修医の永井圭(佐藤健)は、自動車事故で死んだはずが生き返ったことで、亜人と呼ばれる特殊な能力があることが判明し、亜人研究所に保護されます・・・というのは表向きで、ここでは密かに亜人を使った人体実験が長年に渡って指揮を執る戸崎(玉山鉄二)のもと行われてきました。

すでに亜人であることが判明していて、研究所から脱出した佐藤(綾野剛)と田中(城田優)は、非人道的な扱いから復讐のため永井を奪還するため研究所を襲撃しますが、佐藤のあまりに簡単に人を殺す振る舞いに永井は仲間になることを拒否して雲隠れします。

彼らは死にそうになったり、不利な状況になると自ら死ぬことで、瞬時に再び元の体として蘇生できるのです。また、体から亜人粒子を放出し、実体化させた「幽霊」を思うがままに操るのでした。

佐藤は研究所が亜人に対して行ってきたことを暴露し、その本山である厚生労働省ビルを破壊、警察の精鋭部隊SATも壊滅します。佐藤は、東京に毒ガスを巻いて都民全てを葬り去ろうとしていました。永井は戸崎に面会に、身分を保証する見返りに協力を申し出ます。毒ガスを密かに製造・保管していたフォージ重工業に侵入した佐藤、田中らと永井との間で壮絶な戦いが開始されるのです。

何度でも生き返ると言っても、腐乱死体みたいな外見では無いので安心。亜人を捕獲するには自死する前に麻酔銃で眠らせるか、蘇生する前に殺し続けるしかありません。どっちにしても決着がつきそうもないなと思って見ていたんですが、最後はその手があったかと言う感じでした。

佐藤健は「るろうに剣心」シリーズでアクションは鍛えたせいか、なかなか動きはよくスビート感のあるアクションは見ごたえがあります。綾野剛の冷酷で無慈悲な悪役も様になっている。戸崎の部下で、実は自身も亜人である泉を演じるのは川栄李奈で、こちらもまぁまぁのアクション・シーンをこなしていました。

邦画でもCGを利用した派手なシーンとワイヤー・アクションを使ったフィジカルな格闘は、ハリウッド並みとまではいきませんが、まぁまぁ合格点。ただし監督の遊びの要素が雰囲気を壊した感があります。YouTuberヒカキンが出てきたり、「踊る」のSATの隊長(高杉亘)がここでもSAT隊長で登場したりは遊びすぎ。

ラストは明らかに続編を意識したエンディングですが、「るろう」シリーズが終結した佐藤健の次の活躍の舞台となるのかどうか? とりあえず何度ても生き返る「ジョン・ウィック」という雰囲気は評価できるところです。

2021年11月21日日曜日

ダークシティ (1998)

この映画は基本的にはSFなんですが、全体を支配している夜しか存在しない古き良き時代のスリラー。記憶を無くした男の自分探しのストーリーです。監督・脚本・制作は「アイ、ロボット」のアレックス・プロヤス。


冒頭のシュレーバー博士(キーファー・サザーランド)によるナレーション。意思の力で物質を変化させられる力(チューン)を持った異星人が、生存のために地球にやって来た。私は彼らの実験に協力して人類を裏切った・・・というもの。時計は夜の12時。そのとたんすべての街の動きが止まってしまいます。

街は禁酒法時代のようなアメリカという風情。ホテルの一室、浴槽で目を覚ましたマードック(ルーファス・シーウェル)は記憶が無く、部屋の隅に娼婦の死体を発見。そこへシュレーバーと名乗る電話があり、追手が来るから逃げろと教えられる。殺人犯として警察から追われる一方で、謎のスキンヘッド集団にも追われますが、マードックは「チューン」を発揮してその場を逃れます。

マードックは持ち物から自宅らしいアパートに戻り、エマ(ジェニファー・コネリー)に会いたぶん殺人はしていないと話をしていると、バムステッド警部(ウィリアム・ハート)が乗り込んできます。マードックは何もない壁に扉を作って逃亡します。

精神科医のシューレーバーはスキンヘッド集団の命令で、患者から集めた人間の「心のエッセンス」を調合していたのです。そして毎晩12時になるとチューンの力で時間を停止し、建物や住む人々をいろいろと入れ替えていたのでした。彼らは自分たちのチューンを使えるマードックを恐れ、シューレーバーが調合したマードックの記憶を仲間に注射・・・刷り込み、彼の行動を予測しようとします。

バムステッド警部はマードックのもとに行き、スキンヘッド集団から救い出し記憶のキーワードになっていたビーチを探しに向かいます。しかし、そこには壁があるだけ。二人は壁を破壊すると、なんとその向こうは宇宙空間なのでした。

ラストが大味な感じですが、全体的には独特の世界を映画の中にうまく構築していますし、100分という長さもちょうど良い。これ以上長いと、話の展開がくどくなりそうですし、短いと内容が掴めなさそう。

結局、昨日の自分と今日の自分は本当に同じ人間なのか? みたいな、考えるとかなり大きなテーマが見え隠れしますが、さらに心というのも人によって様々なのか、あるいは結局何か底知れぬ力で統制されているのかみたいなことまで考えさせられる映画です。

現代人は、CMでこれを買ってと言われると、右向け右で買いに走ったりするところがありますが、結局うまく見えない力に操られているみたいなものなのかもしれません。そういう深いテーマのせいで、興行収入こそ振るいませんでしたが、カルト的な人気が持続している作品と言うことのようです。


2021年11月20日土曜日

「iPhoneの限界」


昨夜は「ほぼ皆既」月食が、日本各地で雲の合間に見ることができました。

そこで、誰しも空を見上げてスマホで撮影・・・して、どうやっても白くボーっとしか写らないことでSNSに呟いたのが「iPhoneの限界」とか「スマホの限界」ということ。

はっきり言って、アップル嫌い(なのにiPhoneを使っている)を公言している自分としては、何をいまさらという話です。

ソフトウェア的なデジタル処理が進化して、スマホでもかなり美しい写真や動画を見ることができるようになりましたが、所詮この程度の大きさのレンズとセンサーでは無理と言うもの。

露出やシャッター速度をかなり落とさないと、輪郭を映し出すことはできません。「簡単に撮れる」ということは、「複雑なことは撮れない」の裏返しです。


2021年11月19日金曜日

ミミック (1997)

人を怖がらせることが目的の映画はスリラーですが、その中でも恐怖を感じるようなものはホラー映画。怪奇現象的な色合いが強いものはオカルト。死人が蘇るのはゾンビ、殺すシーンがメインで血が飛び散ってばかりだとスプラッターなどと呼ばれます。正直に言って、ゾンビ、スプラッターは苦手。おぞましいだけで興味が湧きません。

昔はホラーと言えば、吸血鬼、狼男、フランケンシュタイン、半魚人・・・などなどの理屈を抜きにしたモンスター系が登場するのが王道でしたが、ある意味日本の怪獣映画もそういう系統に入るのかもしれません。ですから、科学的な話が主となるSF映画との相性はあまり良いとは言えません。

古いところでは「ボディ・スナッチャー(1956)」は、じわじわと身近な人が入れ替わっていく怖さを見事に描いていました。そして、「エイリアン(1979)」は、SFホラー映画の金字塔です。ただし、エイリアンを真似て量産された多くの作品はB級の域を出るものではありません。

次に思い出されるのは「遊星からの物体X(1982)」で、不気味な恐怖を感じさせる傑作です。「ザ・フライ(1986)」は生物を分子に分解して再生するという、まさにSF的な発想が生かされていました。21世紀になると、怖がらせることよりアクション路線との融合したものが主流になったように思います。

さて、本題に入りますが、これは今や名監督として名が上がるようになったメキシコ出身のギレルモ・デル・トロの初期の作品。医学生物学的な分野が関わるSFホラーで、近未来のニューヨークが舞台。

ストリックラー病と呼ばれる伝染病が蔓延し、こどもだけが罹患し多くの命が失われていました。媒介しているのはゴキブリ(!)で、昆虫学者のスーザン・タイラー博士(ミラ・ソルヴィノ)は、天敵のアリとカマキリの遺伝子から「ユダの血統(Judas Breed)」と呼ぶ新種の昆虫を作り、ストリックラー病を根絶させました。

3年後、スーザンは繁殖能力がなく死滅するはずだったユダの血統の幼虫を発見し、夫のアメリカ疾病予防管理センター(CDC)のピータ(ジェレミー・ノーサム)と調査を開始します。そして、地下鉄の古い区画の中に、犠牲になった人々の死骸と共に、進化・巨大化して人間に擬態(ミミック)したユダの血統を発見しました。

何しろ、相手が巨大ゴキブリなんで、あまり気持ちの良いもんじゃない。最初は小出しで怖さを煽りますが、中盤で姿が見えてここからは怖さよりはゴキブリ対人間の格闘アクションみたいな感じです。あえて分類すればホラーなんでしょうけど・・・

一緒に戦うはめになったおじさんを演じているのが、名優ジャン・カルロ・ジャンニーニというのは驚いた。この映画の数年後にはハンニバル・レクター博士に惨殺される役もやったりしてます。

アメリカ人は、ゴキブリは普通の昆虫という認識なんでしょうか。嫌悪感は少ないようで、何と続編、続々篇まで作ってます。日本人的には生理的に無理という感じ。これ以上見たいとは思わない。





2021年11月18日木曜日

ブルーノート東京


ブルーノートは、ジャズが好きなら常識みたいなものですけど、老舗のレコード・レーベル。数々の不朽の歴史的名盤を制作しており、BEST100みたいなランキングの最大勢力であることは確実です。

さて、そのブルーノートの名を冠したライブハウスが、東京、南青山に開業したのは1988年のこと。骨董通りとして知られているところにあります。

横浜の赤煉瓦倉庫にも系列のライブハウスがありますが、同じ頃に開業した大坂・名古屋・福岡の店は閉店しているようです。

21世紀になって、ジャズと言う文化は明らかに衰退しており、こういう場所はかなり貴重。実際、ここから生まれた巨匠たちのライブ・アルバムも少なくありません。

クロークの上の壁にかかっているジャズメンの写真が壮観。ほとんどが亡くなった方ばかりですが、これだけでジャズの歴史に思いをはせることができてうれしくなってしまいます。

2021年11月17日水曜日

0.45平米


先月末に撤去した飲料水の自販機・・・その後をどうするか?

無くなったことに気が付く患者さんもいれば、まったく知らなかったという方もいて、反応は様々。

もともと、特殊な薄型の自販機を置くために、専用の場所を確保するように内装工事を設計したという経緯があります。一番よくある自販機に比べて、幅は一緒(約150cm)ですが奥行きが1/3程度、わずかに30cmくらいしかありません。

撤去した後は、開院時に内装工事をした業者さんが、できるだけ違和感が無いように床と壁をきれいに修復してくれました。しばらくぶりに院内を見た業者さんは、意外と年月による古びた感じが無いと驚いていました。

それはともかく、結局、自然の景色をプリントしたカーテンみたいな布をぶら下げてみました。灯りは余っていた魚水槽用のLED照明を活用。雪だるまの人形は、以前に入り口に置いておいたものを復活させました。

結局、この0.45平米は実用的な使い道には向かないということで、当面これで様子を見たいと思います。

2021年11月16日火曜日

テネット (2020)

2020年のコロナ渦により、大きな影響を受けた映画の一本。度々の延期の末、9月に劇場公開したものの、当然ながら劇場での興行収入はまったく伸びず、クリスマスに公開した「ワンダーウーマン1984」にも遠く及ばない結果になりました。


監督・脚本・制作はクリストファー・ノーラン。時間軸をいろいろいじって来る名手で、これまでの作品以上に複雑な展開は一度見ただけでは到底理解できるものではありません。そういう意味では、早々にネット公開され、DVD・Blurayが発売されたことは悪いことではないかもしれません。

主人公の黒人男性(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は、名前が無い。脚本上も「PROTAGONIST(主人公)」となっているだけ。ウクライナのオペラハウスでプルトニウム241を奪取したCIAスパイを救出する任務に就くが、ロシア人たちに捕らえられ自決用の毒薬 - 実は睡眠薬を飲む。実は作戦はテストであり、唯一の合格者として戦争を阻止する為の「TENET」の一員となります。

そして研究室で弾痕から拳銃の中へと逆行する弾丸を見せられ、未来からもたらされたものと説明される。残りのプルトニウムも未来から送り込まれたもので、主人公はその調査に当たることになります。在英ロシア人の武器商人アンドレイ・セイター(ケネス・ブラナー)が未来人と関与しているという情報をプリヤという闇商人から得て、協力者のニール(ロバート・パティンソン)と共に、セイターの妻であるキャサリン(エリザベス・デビッキ)に接触します。

キャサリンは贋作画家アレポと深い関係にあり、セイターはアレポの描いた贋作をあえて落札し、妻を脅迫して自由を束縛していたのです。主人公はセイターが贋作を保管しているオスロ空港の秘密倉庫を襲撃しますが、逆行してきた武装兵に邪魔される。何とか政府が保有しているプルトニウムを奪うことでセイターを信用させようとしますが、作戦はすべてセイターに筒抜けで、強奪した直後に主人公はキャサリンと共に拉致されます。


そこへニールがプリヤの舞台を連れて駆け付け、セイターら過去に逃亡しますが、キャサリンは重傷を負い、彼女を助けるためにオスロ空港内の逆行マシンで1週間時間を戻すことにします。・・・って、ここまで書いてみて、正直何が何だか理解できません。テレビのCMで逆走する車とかがさんざん映っていましたが、本編で観ても何でそういう事態になるのか・・・う~ん、脳がもうだいぶ固くなっているんですかね。とにかくオスロ空港に戻ると、前回邪魔に入った武装兵は実は自分というパラドックス。

とにかく、未来から何者かがセイターに9つあるプルトニウム・・・アルゴリズムと呼んでますが、揃えることを指令し、それが集まって何かが起動すると今の世界は一瞬で終わるということらしい。主人公、ニール、プリヤの部隊はアルゴリズムが隠された場所に向かうのでした。

評論家諸氏からの評判は高い。よくぞ、この複雑な時間軸を同一画面で実現したと拍手喝采のようです。自分からすると・・・ここまで複雑にする意味がわからない。ノーラン讃美者からは怒られそうですが、単なるタイムスリップとして描いてはいけなかったのか。興行収入が上がらなかったのはコロナ渦の責任だけなのか。

いきなりタイム・スリップするのではなく、時間を逆行するというプロットは面白いし、少なくともそこは大前提として認めないと映画が成立しません。ただし、一番気になったのは、時間を逆行してキャサリンのケガを治すという発想。肉体的な変化が消えるのなら、当然その間に起こった脳の変化、つまり記憶とかもリセットされるのではないか。

名無しの主人公は、まさにこの映画の本当の意味での主役で、ほぼすべての起こっている事柄に未来で関わっているらしい。ある意味、そういうネタバレ的なことを知っていないと、簡単には理解できない映画です。難しくすると「名画」とか、あるいは「カルト」とか言われて賞賛する雰囲気がありますが、それは10年、20年後の評価です。

現時点では、奇才クリストファー・ノーランの作品としておさえておくべき作品であることに間違いはありませんが、真の評価が定まるのはだいぶ時間がかかりそうです。


2021年11月15日月曜日

ワンダーウーマン1984 (2020)

2020年、パンデミックの発生は当然エンターテイメントにも多大な影響を及ぼし、映画業界も数々の苦渋の決断を迫られました。当初2020年6月公開予定だったこの映画も、度々公開延期を余儀なくされ、最終的にはクリスマスにまでもつれ込み、さらに同時にネットでの配信も行われました。当然興行収入は前作より激減したものの、比較的好評を得たようです。


監督はパティ・ジェンキンスが続投。原案・脚本・制作にも名を連ね、結果がすべての世界で前作が高く評価されたことが明確に示されています。ダイアナ・プリンス / ワンダーウーマンを演じるガル・ガドット、彼女をサポートするスティーブ・トレバーを演じるクリス・パインは引き続き登場します。

前作では2018年、第一次世界大戦末期が舞台となっていましたが、今回はそれから66年、より現代に近いタイトル通りの1984年の物語になっています。

さてさて、お婆さんになったダイアナは・・・って、そんなことはありません。ワンターウーマンは年を取らない(じゃあ、何でこどもから大人になれたんだろう?)。スミソニアン博物館で働き、街の悪党を懲らしめていました。鑑定のために持ち込まれた黄水晶に、ラテン語で「ひとつだけ願いが叶う」と書かれていて、ダイアナは密かにスティーブ・トレバーに再会したいと願います。すると、ダイアナにだけスティーブに見える男性が現れるのです。

ドジばかりしている同僚のバーバラ・ミネルバ (クリステン・ウィグ)は魅力的なダイアナになりたいと願うのでした。石油で儲けテレビでも一般の出資を募るマックス・ロード(ペドロ・パスカル)は、実は会社は破綻寸前でした。マックスは、急に魅力的になったミネルバに近づき、黄水晶の秘密を知り、自分の物にしてしまいます。そしてマックスは、願いが叶う石になりたいと願うのでした。

66年後に復活したトレバーは、前作のダイアナと逆の立場。時代のずれで、時代の文化にとちくるうところが、今回の息抜き。ダイアナはトレバーを蘇らせた黄水晶の謎を調べるため、トレバーと共にマックスを追いエジプトに向かいます。

ミネルバは、(ワンダーウーマンのような)物凄い力がみなぎることに気が付き、しだいに自信をつけ独善的に変わっていきます。ダイアナは逆に力が衰えていることを自覚するのです。マヤ文明の古書から、この黄水晶によって歴史上多くの文明が滅び、この石の力は願いと引き換えに大事なものを失うことがわかり、もとに戻すためには願いを取り下げるしかないことがわかりました。

暴走したマックスは自分の希望に沿うように、誰彼かまわず願い事をさせ、街は次第に混乱に陥ります。ついに大統領までも思うがままに操り、ミネルバはダイアナと対峙して自分の力を維持するためにマックスの側に着きました。世界は一触即発の危機を迎えてしまいます。

トレバーの必死の説得で、ダイアナは願いを取り下げます。ダイアナはトレバーの言葉によって風に乗り空を飛べる力をえました。そして、かつてアマゾン最強戦士と言われ自らを犠牲にしたアステリアの黄金の鎧を身につけマックスとミネルバを止めに向かうのでした。

アステリアは、本編の中で一瞬だけ登場するんですが・・・何と、リンダ・カーターのカメオ出演です。テレビのワンター・ウーマンで人気を博してこの撮影の時は70歳手前。しかも、いつもなら飛ばしてもいいエンドクレジットには、飛びっきりのサプライズがありますから、目をそらさずに集中していないといけません。

昭和オヤジとしては、もうこれだけで100点満点をあげたいところなんですが、内容的にはやはり前作を超えるものとは言い難い。全世界を巻き込んで、人間の本質の一つである「欲望」の暴走が悲劇となるという大々的なテーマがあるんですが、その欲望の実現には様々な形での代償が必要と言うのはわかります。ただ、願ったことを取り下げることで元通りというのは簡単な解決法のような感じがします。

悪役のマックスについも、世界を破滅に導く極悪人のはずなんですが、ちょっと弱っちい。基本的には失敗の人生で劣等感の塊みたいな感じで、基本的には子煩悩なお父さん。一つの街で終われる話を世界規模に膨らませたので、最後は何だか収拾がつかない感じです。

ただ、ダイアナとトレバーの関係を大きな軸にして、単なるアクション映画にせず、ワンダーウーマンの内面に切り込んだところは評価してよさそうです。スーパーヒーローを人間的に描くために、代償によって力が衰えてしまうという設定は悪くない。

何故、1984年なのかはよくわかりませんが、人気があったテレビ・ドラマ(1975~79年)のイメージを壊さない程度の時代設定なのかもしれません。もしかしたら第3作として今の時代を考えているのだとしたら、少なくとも簡単にまたもやトレバー復活というのだけは勘弁してもらいたいところでしょうか。




2021年11月14日日曜日

ワンダー・ウーマン (2017)

DCエクステンデッド・ユニバースの構想の下に「スーサイド・スクワッド」の次に作られた作品。ワンダー・ウーマンは、すでに皆が知っているものとして「バットマン VS スーパーマン」に映画初登場をしていましたが、本作で主役としてその出自が詳細に語られます。

昭和おやじとしては、やはり1975~79年(日本では1977~81年)に放送されたリンダ・カーター主演のテレビ・ドラマが圧倒的に馴染み深い。星条旗を思わせる露出度の高いユニフォームと華麗なアクションに拍手喝采したものです。


神々の世界で、全能の神ゼウスは自分たちの姿に似せて神々に使える「人間」を作りますが、ゼウスの息子、軍神アレスは人間を堕落させ敵対させ人間は戦に明け暮れるようになりました。ゼウスは女族のアマゾンを作り、愛を満たすことで何とか平和を保ちます。

しかしアマゾンの長、ヒッポリタ女王(コニー・ニールセン)は人間からの奴隷のような扱いに立ち上がり、神々もアマゾンに加勢しました。この機に乗じて、アレスは神々を倒しますが、ゼウスによって退けられます。アマゾンはアレスに見つからないようにセミッシラ島の隔絶した世界を与えられ、日々戦いの訓練を怠ることなく暮らしていたのです。

ヒッポリタ女王が粘土をこねてこどもの形を作り、ゼウスが命を吹き込んで生まれたのがダイアナ、後のワンダー・ウーマン(ガル・ガドット)です。女王はダイアナが戦いに巻き込まれることを恐れ、戦闘術を覚えることを禁止していましたが、女王の妹、アンティオペ将軍(ロビン・ライト)は、ダイアナの素質を見抜き様々な訓練を施しました。

さて、外の時代は第一次世界大戦の時代。外界と隔たてるバリアを突き破って、一機の戦闘機がアマゾンたちの島の沖合に墜落します。目撃したダイアナは、操縦していたスティーブ・トレバー(クリス・パイン)を救出しますが、彼を追ってドイツ軍船隊もバリアの中に出現。剣と弓が武器のアマゾン戦士と銃器を持つドイツ兵との間で激しい戦闘になりますが、アンティオペはダイアナをかばい命を落とします。

それでもアマゾンは驚異的な戦闘力でドイツ軍を撃退。トレバーは、アメリカのスパイとしてドイツの大量虐殺兵器の情報を奪取して逃げる途中だったこと、この戦争が世界中でたくさんの悲劇をうんでいることを説明します。この戦争にアレスが関わっているに違いないと考えるダイアナは、女王の静止を振り切ってトレバーと共に外の世界に旅立ちます。

ロンドンに着いて、外界を知らないダイアナは、ややトンチンカンな行動で、映画的にはちょっと息抜きタイム。トレバーは、ドイツの好戦的なルーデンドルフ総監の指示でガス兵器を開発するドクター・ポイズンことイザベル・マル博士(エレナ・アナヤ)のノートを証拠として連合国軍会議に提出しますが、休戦・講和を優先する指導者に相手にされません。

トレバーは仲間を集めルーデンドルフの秘密基地に乗り込み、ダイアナはアレスの化身と思っていたルーデンドルフを倒しますが、それでも戦争が終わる気配が無い。そこにトレバーのパトロンであるパトリック卿が姿を現し、真のアレスの姿を見せます。アレスは、ダイアナは実はゼウスとヒッポリタの間に生まれたことを告げ、共に救う価値のない人間を滅ぼそうと提案するのです。

毒ガス兵器を満載した爆撃機がロンドンに向けて離陸しようとしたため、トレバーは一人爆撃機に飛び乗り、そして機を自爆させるのです。ダイアナは、今一度、世界を救う決意を新たにしアレスに立ち向かっていくのでした。

女性アクション物では、どうしても美とある程度のエロディシズムを前面に押し出す作品が多い中で、この映画は露出度の多いコスチュームにもかかわらず、それをあまり売りにしている感じがありません。これは何といっても監督である、パティ・ジェンキンスが女性であるということと無関係ではないようです。

ワンターウーマンの容姿を美しく見せることは当然ですが、それよりもアクションそのものの美しさに重点を置いた見せ方をしています。そして、戦争を通して、単純に勝者が善で敗者が悪とは決められない偉大な矛盾を再確認し、争いをやめられない人間の性みたいなものを見せつけるのは女性ならではの視点なのかもしれません。

バットマンからスーパーマンに続くリブート・シリーズは、ダークな色合いと雰囲気が支配していたので、この映画もお気楽なアクション物ではありませんが、多少明るさを取り戻した感じがあり悪い出来ではないようです。実際、興行的にも成功し批評的にも好感を持たれた結果になっています。

DCエクステンデッド・ユニバースでは、多くのヒーローを同じ世界観の中に登場させることで、空間的・時間的な連続性を持たせようという企画でしたが、そこにこだわり過ぎてかえってあちこちに無理が生じていました。この作品では、ストーリーとしては他と独立した内容で高い評価を得たことで、今後は直接的なストーリーの絡みは意識しない方針に変更されています。


2021年11月13日土曜日

紅葉はオワコン


オワコン・・・は、最近ネットでよく使われる言葉で、「終わりそうなコンテンツ」、あるいは「終わって欲しいコンテンツ」などの略と言われていて、ブームが去った的な意味合い。

街中の紅葉は、雑然とした都会の中でも四季を感じる楽しみの一つなんですが、ここ数年は美しい紅葉を見かけなくなったきがします。

なんでだろう?

自分の勝手な想像ですけど、夏が暑すぎるのが原因じゃないかと・・・

樹木が暑すぎて勢いを失い、紅葉しても葉がすぐ枯れてしまい、落葉もほぼ同時に起こっている感じがします。

都会の中では「紅葉」はオワコンということなのかも・・・

2021年11月12日金曜日

見え始めた光


昨日書いたように、今や古いISDN回線からやっと光回線への変更に着手したわけですが、それが可能かどうかの調査と準備工事が昨日午後にありました。

一応、サーバー室という名称の2畳ないくらいの小部屋がありまして、そこに配電盤やら、ネット環境のルーター類、電話の交換機、レントゲン画像サーバー機器、ケーブルテレビのモデムなどなどが置かれています。

床に約50cm四方の蓋がありまして、開院以来開けたことも無かったのですが、NTTの担当者の方が「ここだな」というなりパカって開けちゃった。それがこの写真。

小さなクリニックですが、様々な配線がここに集まっているわけで、何が何だか素人にはよくわかりません。エレベータホールの配電盤に行った担当者の方が、ケーブルが見えたら教えてというので、じっと見ていたら・・・

オレンジのホースからガサゴソと音がしてケーブルが出てきました。出てきましたよ~、と教えると向こうからもOKでぇ~すと返事。その後もガチャガチャと1時間くらいかけて準備作業は終了したようです。

光が見え始めました。本工事は来月になります。

2021年11月11日木曜日

ISDN


ISDN・・・って、今時知らない人も多いかもしれませんが、Integrated Service Digital Network の略で、20世紀末に一般化したすべてデジタル化された電話回線のこと。

もともと音声通話のための電話回線は当然アナログ信号を送っていたわけで、昔々のパソコン通信をする時は、デジタル信号をモデムを通してアナログ化して送っていました。あの、ピー〇×◆※□◆・・・という音がする奴です。アナログ・モデムだと通信速度は、90年代に一般向けで14.4kbpsが一般普及したように思います。

これがISDNになると、信号の授受の際の基本速度は64kbpsとなり、2つのチャンネルを利用すると倍の128kbpsになるという驚異のスピードが出せました。CMでも「ろくよん、ろくよん、いちにっぱ」と宣伝していましたよね。

通信速度だけでも、めっちゃ早いと思いましたし、音声電話にしてもデジタルで番号を送れたり一つの回線で複数の番号を使えたりと便利なことだらけ・・・でしたが、時代の変化はハードの進化を軽く追い越して、今やISDNは化石のような扱い。文字だけ送るデータ量くらいはいいとしても、画像やまして動画を送るとなると、ISDNはとてもとてもまともに使えなくなってしまいました。

今や携帯も5Gの時代で、通信速度は最大で3.4Gbpsです。64kbpsは64,000 bits/secですが、3.4Gbpsは3400,000,000 bits/sec なので約5万3千倍の通信速度です。21世紀以降しだいに普及してきた光通信技術は、さらにすごくて最大10Gbps、つまり5Gの3倍の速度を誇ります。

自宅の通信環境は、長らくISDNを使っていましたが、もう10年くらい前からはケーブルテレビの光通信を利用して、電話もインターネットも統合してます。クリニックはというと・・・実は今でもISDN。診療報酬請求をオンラインで行うのに機密性が要求されるので、オープンなインターネット環境は使えません。

さて、巷で話題になっているマイナンバーカードが保険証の代わりなる・・・という話。保険証やマイナンバーカードをスキャンして、即座にオンラインで照合するシステムが開始されました。これは画像データのやり取りが必要になるため、ISDNではとてもやっていられない。

ISDNは2024年には廃止になることも決まっていますので、まずはこの回線見直し、つまり光通信への変更が必要になるんですね。これが簡単そうでなかなか大変で、運営の基幹システムの変更なので、あちこちいろいろなところの手配をしないといけません。

というわけで、現在保険証のオンライン認証システムは、来年春までには導入できるよう準備中ということで・・・よろしくお願いします。


2021年11月10日水曜日

スーサイド・スクワッド (2016)

DCエクステンデッド・ユニバースに数えられる映画で、本当は「バットマン vs スーパーマン」の後、「ジャスティス・リーグ」よりは前の時期の話。スーパーマンとバットマンがメインだと思えばスピンオフ的なダーク・アクション・コメディという位置づけ。


人気シリーズになった「ワイルド・スピード」なども手掛けたデヴィッド・エアーが監督・脚本を担当し、製作総指揮にはザック・スナイダーも加わっています。

スーパーマンが死んで、またメタヒューマンが現れて騒動になった時どう対処するか・・・ってんで、アマンダ・ウォーラー(ヴィオラ・デイヴィス)という黒人女性のかなり冷酷な政府高官が、密かに組織したのが「スーサイド・スクワット」でした。バットマンらが捕えた極悪人の首にナノ爆弾を仕込んで、言うこと聞かないと爆発させちゃうぞということ。

選ばれたのは、百発百中のスナイパーのデッドショット(ウィル・スミス)、ジョーカーの愛人でぷっつん娘のハーレイ・クイン(マーゴット・ロビー)、ブーメランを武器にする強盗キャプテン・ブーメラン(ジェイ・コートニー)、炎を体から自由に放射できるエル・ディアブロ(ジェイ・ヘルナンデス)、爬虫類のような皮膚で地下水道を根城にするキラー・クロック(アドウェール・アキノエ=アグバエ)、縄使いのスリップノット(アダム・ビーチ)らでした。それぞれに、うまいこと単なる悪党で済まされない、十分に同情を引くような過去があったりします。

考古学者のジューン・ムーンは、発掘した魔女エンチャントレス(カーラ・デルヴィーニュ)に憑依されてしまい、エンチャントレスの姿の時にウォーラーに心臓を取られてしまい言いなりに利用されていました。監視についたリック・フラッグ大佐(ヨエル・キナマン)はジューンに恋してしまい、何とかジューンを助けたくてしょうがない。

エンチャントレスはジューンを体内に監禁し、弟のインキュバスを復活させ人類を滅ぼして暗黒の世界を作ろうとします。フラッグはスーサイド・スクワッドを率いて、エンチャントレスが支配する地域から脱出できなくなったウォーラーを救助する任務につきます。フラッグの護衛として日本刀の使い手カタナ(福原かれん)も部隊に加わります。

スプリットノットは、仕込まれた爆弾なんてはったりだろうと逃亡を企て爆死する。途中で、ジョーカー(ジャレッド・レト)がハーレイ・クインを救い出そうとしたりしますが失敗。結局、彼らはエンチャントレスと対峙することになるのです。

基本的に極悪人たちですが、それぞれの価値観の中での信義みたいなものがあって、けっこう応援したくなる構成はうまい。一番おいしいところを持っていくのはウィル・スミス。冷酷な暗殺者なのに、娘にだけはめっぽう弱い。何かにつけて娘と合わすと条件を出されると嫌とは言えないところが憎めない。

そして、ハーレイ・クインとジョーカーの馴れ初めと、ほとんど本気になることがないジョーカーが惚れてしまうまでの物語が面白い。可愛いけど頭がおかしい女と言われている割には、ハーレイ・クインの戦闘能力もバカにならない。

まぁ、お気楽な映画としてはそれなりというところなんですが、評判はすこぶる悪い。この後にハーレイ・クイン単独の映画があって、そちらは上々なんですが。またこの夏に続編もやってました。最後にウォーラーがブルース・ウェインに政府が把握しているメタヒューマンの極秘ファイルを渡す場面があり、これがジャスティス・リーグ結成につながるという流れになっています。

2021年11月9日火曜日

ジャスティス・リーグ ザック・スナイダー・カット (2021)

始まりからして違う。劇場版は、ほのぼのとしたこどもによるスーパーマンへのインタヴュー映像から始まりましたが、こちらは前作のクライマックス、スーパーマンとドゥームス・デイの戦いでスーパーマン死すの緊張感のある場面からです。続いてサイボーグの部屋に置かれていた立方体が揺れ始めるのです。さらに海底のアトランティス、アマゾンでも同様に立方体が光り震えます。

パート1 諦めろ、バットマン
ブルース・ウェインは冬山を超えて北の海辺の町で、人々を細々と助けているアーサー・カーリー、正体はアクアマンに会いに行きました。ウェインはカーリーに敵が来るので一緒に戦ってほしいと頼みますが、孤独が好きで誰にも借りは無いと断られます。クラーク・ケントの母、マーサは住み慣れた家を売りに出し引っ越し、ロイス・レインは敏腕新聞記者とは程遠く、スーパーマンの死んだ場所に毎日通うだけの日々を過ごしていました。

ヨーロッパではテロ組織が人質を取って爆弾テロを起こそうとするのを、ダイアナ・プリンスことワンダー・ウーマンの活躍により未然に防ぎました。ワンター・ウーマンの故郷、アマゾンでは数千年守り続けてきた立方体、マザーボックスを手に入れるためステッペンウルフが襲撃します。ダイアナの母、ヒッポリタ女王(コニー・ニールセン)を筆頭に戦うもののマザーボックスは奪われてしまう。

パート2 ヒーローの時代
サイラス博士が勤務する、クリプトンの宇宙船を格納するSTAR研究所がステッペンウルフの兵士パラデーモンに荒らされ、職員が誘拐されました。ヒッポリタはダイアナに知らせるため警告の炎の矢を射て、ダイアナは3つのマザーボックスが狙われることをしります。ステッペンウルフはロシアの廃炉になった原子炉を拠点に、マザーボックスを使って地球を支配した後、より強大な存在であるダークサイドにこの世界を捧げ、過去の自分の過ちを許してもらおうと考えていたのです。

ダイアナはウェインのもとを訪れ今回の敵について説明します。大昔に、征服のために別世界からやって来たのがダークサイドでしたが、3つのマザーボックスを融合させ強力な力を持つユニティを発動する直前に、別々に戦っていた人間、アマゾン、アトランティスは共闘し、マザーボックスの奪取に成功しました。そしてそれぞれがマザーボックスをひとつずつ厳重に保管することになったのです。

パート3 最愛の母 最愛の息子
大学で有望なアメフト選手だったビクター・ストーンは、交通事故により運転していた母と共に死亡します。父親のサイラス博士は、息子だけでも何とか救おうと、ラボで保管していたマザーボックスの力によってビクターをサイボーグとして再生し、デジタルな信号のあらゆるものを簡単に操ることを可能としました。ビクターは、ダイアナと話をしますが拒絶し、マザーボックスを自分の墓に隠しました。

バリー・アレン(エズラ・ミラー)の父親は妻殺しの罪で収監されており、バリーはたびたび面会に訪れますが、父親は自分が重荷になって定職につかない息子を心配します。バリーは大学生の時、実験中の事故により超高速の能力を手に入れ、フラッシュとして少しずつ町の平和に貢献していました。孤独だったバリーは、ウェインの誘いに二つ返事で仲間入りを承諾するのでした。

もう一つのマザーボックスがアトランティスにあることを知ったステッペンウルフは、襲撃して手に入れますが、アクアマンは間に合いません。女王に捨てられ憎んでいたアクアマンでしたが、マザーボックス守護者であるメラ(アンバー・ハード)に、捨てたのはダークサイドから守るためであり、今度はあなたが戦う番だと諭されます。

パート4 チェンジ・マシン
サイラス博士も誘拐されたためサイボーグも仲間になり、4人はSTAR研究所の職員が監禁された換気口施設に向かいます。人質救出には成功したものの、ステッペンウルフには逃げられてしまう。その際洪水に巻き込まれますが、アクアマンに助けられ彼も仲間に入るのでした。

ビクターは、隠していたマザーボックスを仲間に見せ、自分がサイボーグとして再生されたことから、これは物質の再構築をする力があると話します。彼らは勝利にはスーパーマンが必要であることで意見が一致し、スーパーマンの蘇生を試みることにするのでした。いまだに仕事に戻れないロイスのもとをマーサが訪れ、自分を取り戻すように話しますが、実は普段は国務長官の姿をしている火星出身のマーシャン・マンハンターの変身した姿でした。

パート5 王家の家来
バットマンらはクラーク・ケントの棺を掘り返し、STAR研究所に向かいます。クリプトン宇宙船のチェンバーに遺体を沈め、フラッシュの光速移動で発生する電流によってマザーボックスを起動します。蘇ったスーパーマンは、記憶が混乱しており、バットマンらを敵とみなし攻撃してくるのでした。しかしロイスの説得で攻撃をやめ、ロイスを抱えて飛んで行ってしまいます。

マザーボックスを起動したことでその位置がわかってしまい、ステッペンウルフがやってきます。サイラス博士は、特殊レーザーを当ててエネルギー熱量を増加させ探知しやすくしますが、その反動で亡くなってしまいます。ステッペンウルフは「終わりの始まりだ」と言い残し最後のマザーボックスを持って消えました。ビクターは、父親を救えなかったことで涙し、復讐を誓うのです。

パート6 暗い何か
ロシアの廃炉になった原子炉にマザーボックスを確認したバットマンらは、外部からのマザーボックスの分離は無理と考えますが、ビクターが危険を承知で自ら内部に接続しコントロールすると言い出します。クラークは実家に戻ると完全に記憶を回復し、ロイスとマーサを抱きしめます。そしてチェンバーで、改めて自分の存在理由を再確認するとスーパーマンとして飛び立ちます。

バットマンは飛行艇で攻撃をかけステッペンウルフの基地のシールドを破壊します。ワンター・ウーマンらも突撃し、決戦の幕が切って落とされました。

あらすじを追うだけで長くなってしまいましたが、何しろ4時間あるんです。そりゃ、長くなるわ。基本的なストーリーは劇場版と同じですが、長いのはそれなりの意味があって、2時間では描き切れない、登場人物たちの内面に時間をたっぷりとってあります。

一番はビクターと父親の関係。仕事一筋で過程を顧みなかった父親は、多くの後悔を持っています。それが息子をサイボーグとして蘇生することにつながるのですが、そういう体になったことでさらに父親を憎むようになる。しかし、お仕着せがましくない程度にビクターがしだいに父親を理解していく過程はなかなかうまい。

バリーと父親の関係、アクアマンすらも家族内の断絶を抱えている。スーパーマンも含めて、家族の再生という裏テーマが見えてきます。こちらを見てしまうと、劇場版のつまらない笑いを取ろうとするシーンなどは、まったく不要な存在であることがわかる。これは劇場版を、急なスナイダーの降板の後を継いだジェス・ウェドンの責任ではありません。たったの数か月で会社の意向に沿ってよくまとめ上げたというべきでしょう。

そもそも、スナイダーが手を付けた時点で前後2部作の4時間くらいを想定して撮影を進めていたもので、劇場公開版があまりに評判が悪かったために、ファンの間でスナイダーのオリジナルの構想をもとにした版が見たいという意見が噴出し制作会社を動かしました。そして、実際この盤はネット公開されたのですが、同じ原作のまったく違う映画を見せられたかのような印象になります。

スーパーマンについては、劇場版では青いスーツに真っ赤なマントのお馴染みのいで立ちで登場しましたが、スナイダー・カットでは、なんとスーツもマントも黒。ステッペンウルフの倒され方もまったく違う。さらに話題をさらったのが、比較的長めのエピローグ。

劇場版でも、エンドロールの後にレックス・ルーサーJr.が脱獄して、さぁこれからどうなる? という短いエピローグがあった。スナイダー・カットでは、これに続きがあって、マーシャン・マンハンターがウェインのもとを訪れこれからは自分も協力すると言います。

さらに、ステッペンウルフの失敗により、ついにダークサイドが自ら地球侵攻をかけるようです。しかも、アクアマンは死んでメラがリーグに加わり、バットマンの失策でロイスが死んでスーパーマンは闇に墜ちているらしい。さらに驚くべきことにジョーカーがリーグに加わっている。

本編の中でも、未来からバットマンに警告しに来るフラッシュが登場したり、ロイスが未来の鍵だというセリフがあったりして、どうやらスナイダー監督は、今後2作分くらいの構想の伏線を織り込んでいるようです。ただし、制作会社は興行不振により、このシリーズの今後の発展については計画は白紙撤回したようなので、実現の可能性は今のところありません。

ちなみに、日本版は例によって高価ですが、US版は日本語字幕付きで千数百円で手に入ります。自分は必要ありませんけど、吹き替えもついてます。

2021年11月8日月曜日

ジャスティス・リーグ (2017)

さてさて、ジャスティス・リーグです。前作はやらかした感が残った出映えでしたが、今作では完璧な悪役一人に対して、スーパー・ヒーロー戦隊が立ち向かうという、大変わかりやすい話。監督はシリーズお馴染みのザック・スナイダー・・・なんですが、ちょっと問題が起こった。


撮影がほぼ終了していた2017年3月にスナイダー監督の娘が急逝したため、5月に監督を降板するということになりました。急遽、マーベリック作品でお馴染みのジョス・ウェドンが残りの仕事を引き継ぎ、制作会社の意向で2時間にまとめ上げました。そのため、大勢の新しいヒーローが登場するものの、十分に描かれているとは言い難く、評判はあまりよくありませんでした。

スーパーマンが死んで数か月、昆虫のような飛行怪人が町に出没するようになり、バットマン(ベン・アフレック)は何かの異変の始まりを察知し、超人的な能力を持つメタヒューマンたちを探し出し、一緒に未知の敵に対抗する準備が必要だと考えます。アトランティスの生き残りアクアマン(ジェイソン・モモア)を探し出しますが、仲間になることを断られる。

アマゾンの女族ヒッポリタ女王(コニー・ニールセン)のもとに、宇宙支配を企むステッペンウルフ(キアラン・ハインズ)が現れ、長年保管していたマザーボックスを奪われてしまいます。その知らせはワンダー・ウーマン(ガル・ガドット)のもとにも知らされました。過去に強大な力を得られる力の源であるマザーを巡って、ステッペンウルフに対抗してアマゾン、アトランティス、人類が共闘し、マザーを3つのボックスに分割してそれぞれが保管したのです。

バットマンは、驚異のスピードで動けるフラッシュ(エズラ・ミラー)を、ワンダー・ウーマンはサイボーグ(レイ・フィッシャー)を仲間にするため説得します。サイボーグは事故で死んだ息子を、父親のサイラス博士が人間が保管していたマザー・ボックスの力を利用してサイボーグとして再生したのです。

海底のアトランティスでも、ステッペンウルフによってマザー・ボックスが奪われてしまったため、アクアマンも仲間になることを決意します。サイラス博士を誘拐して最後のマザー・ボックスを手に入れようとするステッペンウルフと対決し、自分たちだけでは力が足りないと考えたバットマンは、サイボーグのようにマザーボックスを使ってスーパーマンを蘇生することに成功しますが、マザーボックスは奪われてしまいました。

彼らはステッペンウルフのアジトである廃炉になった原子力発電所に乗り込み、一つになったマザーを何とか分離するため、最後の戦いに挑むのでした。

確かに主要な各登場人物の描写は物足りない。特に初登場のアクアマン、フラッシュ、サイボーグについては、本当にざっくりしたキャラクター説明に終わっていますので、DCコミック本編を知らないとよくわからずに物語が進行していく感じです。

とは言え、かなりラフな進行の反面、無駄は無く細かいことに気にしなければウェドン監督はノークレジットにも関わらず良い仕事をしたと思います。ただ、この映画の不評によって、ヒーロー達を同じ土俵で交わらせるというDCエクステンデッド・ユニバース構想は失敗と判断され、今後は相互補完はせず再び単独作品として映画化を目指すことになりました。

2021年11月7日日曜日

バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生 (2016)

アメコミ、DCコミックのトップ・スターである「スーパーマン」は、ダーク・ヒーローとしてリブートされました。前作の最後にデイリー・プラネット社に入社したクラーク・ケントが実はカル・エルであり、地球での姿がスーパーマンであることをロイス・レインだけは知っています。そして、地球人はスーパーマンが異星人であることまでは知っていて、エイリアンとして警戒心を捨てられません。

悪者が人々を苦しませていると、正義のスーパー・ヒーローが登場してさくっと退治して去っていくという昔ながらの作法から脱却した、ヒーローの内面に焦点を当ててヒーローであるが故の葛藤を前面に出すのが制作・監督のクリストファー・ノーランのリブート・シリーズ。

マーヴェル・コミックの垣根を超えたヒーロー集結戦隊、アヴェンジャーズに対抗して、DCコミックも自分の抱えるヒーローを集めたジャスティス・リーグ結成に向けて着々と歩みを進めました。監督は前作に続きザック・スナイダーで、ノーランは製作総指揮のみで一歩退いた感じです。

ウルトラマン・シリーズでいろいろなウルトラマンが一堂に会することがありますが、基本的な世界観が共通なので無理やり感はありません。「エイリアン vs プレデター」もどっちも宇宙人の悪者ですから共演は可能かと。スーパーマンとバットマンが対決したら・・・確かに興味深いセッティングですが、宇宙人の超々能力を持つスーパーマンに対して、バットマンは基本的にただの人間。いろいろなアイテムで人間離れした活躍をするものの、リアルに近づくヒーロー物の中では勝てる道理が無い。

本作は、冒頭でバットマンであるブルース・ウェイン(ベン・アフレック)が子供の時に劇場裏で両親が強盗に殺されてしまうところから始まりますが、いきなりまたこれを見せられるのかという感じ。すぐに前作の最後、スーパーマン(ヘンリー・カヴィル)とゾッド将軍の対決で街は崩壊し、多くの市民が犠牲になっている。ブルース・ウェインは、地上から成す術もなく見守るしかありませんでした。

メディアでも、スーパーマンの存在に対して議論がされました。スーパーマンの力を危険と考えるウェインは、彼の所在を探しているうちにロシアの武器商人が、スーパーマンの地球での宿敵、レックス・ルーサーJr.(ジェシー・アイゼンバーグ)と接触していることを知ります。ルーサーは、インド洋から引き揚げた鉱石クリプトナイトが、クリプトン人を無力化することに気が付きスーパーマンに対する武器にしようと考えていました。

一方、クラークはバットマンが正義の名のもとに法を犯していることを問題と考え、記者として取材をするうちにウェインにたどり着きます。慈善パーティで、ウェイン、クラーク、ルーサーは一堂に会し、さらに謎の美女ダイアナ・プリンス(ガル・ガドット)も登場します。ウェインはハッキングしたルーサー・コーポのデータから、ルーサーがクリプトナイトをアメリカ国内に運ぶことを察知し、奪取しようとしますがスーパーマンによって「バットマンは死んだ。手を出すな」と警告されるのです。

ロイス・レイン(エイミー・アダムス)は、ルーサーの陰謀により、スーパーマンが不利な立場に立たされていくこと知りますが、スーパーマンの是非についての公聴会が開かれ、スーパーマンにも出席が求められるのです。しかし、その場でルーサーの企みによって爆発が起こり、多数の死者が出たことで、スーパーマンは自分の存在を否定する思いにかられます。

ウェインは再びルーサーの研究所からクリプトナイトを奪取することに成功し、クリプトナイトを用いた武器を作り決戦に備えます。ルーサーは、保管されていたクリプトンの宇宙船に進入し再起動させ、クラークの母マーサ(ダイアン・レイン)を拉致し、スーパーマンに母を死なせたくなかったらバットマンを殺せと命じるのでした。

ついにスーパーマンとバットマンの直接対決になり、バットマンはクリプトナイトのガスによってスーパーマンを無力化、ついにクリプトナイトの槍を振り上げます。そこへロイス・レインがかけつけ、ルーサーの陰謀を説明します。バットマンはマーサを助けに、スーパーマンはルーサーを捕えに向かいますが、ルーサーはゾッド将軍の遺体を怪物ドゥームデイとして再生し、圧倒的な破壊力でスーパーマンは危機に陥るのでした。

・・・って、この結末は有名で知れ渡っていますから、今更隠す必要はありません。スーパーマンとバットマン、そしてダイアナ・プリンスことワンダー・ウーマンも加勢して立ち向かいますが、ついにスーパーマンは自らの命と引き換えにドゥームデイを倒したのです。

ヒーローは死なない・・・を覆す結末。スーパーマンの死は衝撃的。今回、視聴したのは劇場公開版2時間半ではなく、3時間のディレクター・カット版です。劇場公開時は、前作を見ていない人には何だかよくわからない。過去のスーパーマン作品、バットマン作品、そしてワンダー・ウーマンを知らないと、展開があちこちに飛び過ぎて「何でそうなるの」の連続です。

未公開映像を再編集した結果、ヒーロー達の基本知識さえあれば、この映画の展開はある程度理解できるようになっています。とは言え、スーパーマンにしても、バットマンにしてもあまりに単純に互いを敵視して、勝手に盛り上がる雰囲気は馴染めません。唐突に登場するワンダーウーマンも何かなぁというところ。結局、ヒーロー達に共感しずらいところが最大の欠点となり、一般的な評価としては失敗作の呼び声が高い。

バットマンは今回、アーマード・スーツを着用してやたらとごつく、逆にこれで身軽に振る舞うのは噓っぽい。ワンダー・ウーマンが強烈な熱線を丸い楯で防ぐのですが、自分より盾の方が全然小さいですし、とにかくリアリティ・ヒーロー物を目指していたはずなのに、かなり嘘っぽい展開も残念感が漂います。そこまでしなくても、もっと簡単にジャスティス・リーグを結成してもいいんじゃないかと思いますよ、基本的にファンタジーなんだから。




2021年11月6日土曜日

カラスとライダー


次のお題は・・・はい、この写真を見て一言。

カラス「水浴びするには浅いな」
ライダー「そこは轢かれちゃうぜ」

ライダー「俺の方が早いぜ」
カラス「でも空は飛べないだろ」

カラス「停止線を守れ」
ライダー「あんた、後ろ過ぎだよ」

カラス「真っ直ぐ行きたいんだけど」
ライダー「そこは右折レーンだぞ」

ライダー「ショッカーみたいに真っ黒だな」
カラス「できるものなら変身してみせろ」

どれも座布団はあげられませんね。

2021年11月5日金曜日

マン・オブ・スティール (2013)

「スター・ウォーズ」から始まったハリウッドのSF革命の波は、古くからのアメリカン・ヒーローにおよび「スーパーマン」にも及び、実写映画化されたのがもう40年ほど前のこと。最大の人気を誇ったアメコミのDCコミックの最大のヒーローである、スーパーマンは1978~2006年の間に5本の映画になりましたが、特に最初の4本で主役を務めたクリスファー・リープの悲劇と共に、実質的に終了しました。

その間隙を縫って、もう一方のアメコミの雄であるマーベル・コミックが「Xメン」の映画化シリーズでヒットを飛ばし、マーヴェルに登場するヒーロー達を次から次へと映画の世界に導き、ついにはそれらを一つの土俵上で活躍させるアヴェンジャーズの登場に、DCコミック側は相当焦りを感じたはずです。

2005~2012年にリブートされたDCコミックのもう一人のヒーロー、「バットマン」の三部作の成功はDCコミックに、アヴェンジャースに対抗するDCエクステンデッド・ユニバースの構想をもたらし、バットマン・トリロジーの立役者クリストファー・ノーラン監督にこの企画を任せたようです。監督に抜擢されてのが、ザック・スナイダー。この人は、ヴィジュアル重視で、とにかく画面に映す情景を作りこむことで有名。ここでも、当然CGによる作りこみが凄い。

そこで、その第1弾として登場したのが、この「スーパーマン」のリブート作。基本的なストーリーは原作に準じているものの、クリストファー・ノーランにかかると「バットマン」もそうでしたが、コミカルな要素は排除され、より現実的なキャラクターに生まれ変わりました。

何故カル・エルが地球にやって来て、そしてスーパーマンとして活躍することになったのか、かなり合理的(とは言っても所詮、ファンタジーですけど)な説明がなされています。惑星クリプトンは、数万年前には新たな入植地を求め宇宙に探査船を送っていましたが、人工的な出生のコントロールによって人口抑制に成功し繁栄しました。しかし、エネルギー資源の枯渇により滅亡の危機に瀕してしまいます。

ジョー・エル(ラッセル・クロウ)と妻のララ( アイェレット・ゾラー)は、密かに禁じられていた自然妊娠によってこどもを授かりカル・エルと名付けました。クリプトンが長くないと考えたジョー・エルは、カル・エルを乗せたポッドを地球に向けて発射しますが、クーデターを起こしたゾッド将軍(マイレル・シャノン)によって殺されてしまいます。ゾッドのクーデターは失敗し、仲間と共にファントム・ゾーンに追放されました。

地球に到着したポッドを発見した農夫を営むジョナサン・ケント(ケビン・コスナー)は、中にいた赤ん坊にクラークと名づけ妻のマーサ(ダイアン・レイン)と大切に育てました。こどもの頃に不思議な力があることに苦しむクラークでしたが、ジョナサンはそれを簡単に人前で見せることを禁じました。ジョナサンは青年になったクラーク(ヘンリー・カヴィル)に出自を話し、「何故、地球に送られてきたのか、そして何をすべきかをはっきりさせることが使命だ」と伝えます。

クラークは各地を放浪し、北極に埋まっていた宇宙船にたどり着きます。取材に訪れていたデイリー・プラネット社のロイス・レイン(エイミー・アダムス)は、偶然宇宙船と共に飛び去ってしまったクラークを目撃し記事を書きますが、編集長のペリー・ホワイト(ローレンス・フィッシュバーン)に没にされてしまいます。

ロイスは、不思議な力を持つ青年の目撃情報をたどりついにクラークを発見しますが、その力を使わせずに死んでしまったジョナサンの思いを聞き公にすることを断念するのでした。クラークは宇宙船の中でジョー・エルの実体化した意識と対面し、スーパーマンのスーツとマントを手に入れ正義のために働くように言われます。

ここまでで140分の映画の半分。何しろ一番違うところは、ロイス・レインはクラーク・ケントがスーパーマンだって知っているところ。今までは、もしかしたら天然系のクラークがスーパーマンかしら、いやそんなはずないわね、というのが基本的な設定。だから、そこから笑いの要素も引き出せていました。

しかし、クラーク・ケントの人間ドラマの深みを出すための立ち位置がロイス・レインにあるなら、こっちの方が自然な関係といえそうです。そのかわりコメディは当然無くなって、シリアスなドラマとして成立します。母親も全体に渡って、クラークを見守り続けることになるのも自然な展開に思えます。ここには「鳥だ、飛行機だ、いやスーパーマンだ」のフレーズはありません。

後半は、クリプトンの崩壊によって自由の身になったゾッド将軍が地球にやってきて、カル・エルの体に記録されたすべてのクリプトン人のDNAを使って地球でクリプトンを再興しようとする話。そのためには、地球人は犠牲になってもかまわないと考えるゾッド将軍とスーパーマンのド派手な戦い(長すぎ・・・)によって街がぼこぼこに壊されていきます。

ここでも以前の映画と決定的に違うのは、ゾッド将軍はひたすらクリプトンの民を復活させるのが目的であって、クリプトン側から見ると方法論は問題ありますが単なる悪人とは描かれていないところ。そのため、スーパーマンが単純な正義の人ではない難しい役回りを担っています。

これは父親の言葉に端的に現れています。ジョナサンは、超能力を出せずに葛藤するクラークに「その力を善に使うか、悪に使うか、いずれにしてもお前が世界を変える」と言います。ひたすら世界の頂点にあると思っていたアメリカ人が21世紀早々に味わった屈辱が、スーパーマンすらも大きくキャラを変えてくることにつながっているようです。

ノーラン版「バットマン」に続いて、ダークなイメージの本作は、アクションについてはやり過ぎ感はあるかもしれません。ドラマとして成功しているのは、とにかく名優が大挙して登場していることが大きなポイントです。スーパーマン役は、原作コミックに寄せた存在としてクリストファー・リーブは大成功でしたが、今回のヘンリー・カヴィル(もしかしたら次のジェームス・ボンド??)はダーク・ヒーローとしていい味を出していました。

2021年11月4日木曜日

アビス (1989)

ジェームス・キャメロンと言えば、「ターミネーター(1984)」でブレイクした映画監督。実は現在までのキャリアからすると、監督作品はそれほど多くない。ところが、その後の「タイタニック(1997)」と「アバター(2009)」と合わせて、ほぼこの3本でハリウッドの重鎮の地位を保持しています。製作側として多くの作品に携わり、テレビ作品との関わりの比重も同じくらい持っていて、エンタメ業界全体に力を発揮しているようです。

ところが、その有名に「タイタニック」は絶望的な悲恋ストーリーがどうも苦手で好きになれないし、「アバター」はCG技術博覧会みたいで興味が湧かない。もう一つヒットした「エイリアン2(1986)」は好きなんですが、どちらかと言えばリドリー・スコットのアイデア。単なる天邪鬼と言えばそれまでですけど、一つ興行的にはあまり成功とは言い難いのですが、いけてる映画があるんです。

それがこれ。「エイリアン2」の成功でお金をかけてもらえる監督として認知されたキャメロンが、高校生の時から温めてきたアイデアをついにまとめ上げた本作は珍しいSF海洋アドベンチャー物です。

アメリカの原子力潜水艦が沈没し、石油採掘を行う移動式海底石油プラットフォーム「ディープコア」が海軍特殊部隊を乗せて向かいます。ディープコアのリーダーであるバッド(エド・ハリス)は、ディープコアの設計者で別居中の妻リンジー(メアリー・エリザベス・マストラントニオ)、負圧的な特殊部隊のコフィ(マイケル・ビーン)と調査を開始します。

しかし、事故により動けなくなったディープコアは未知の海溝「アビス」の中で停止してしまいます。さらに、コフィは正気を失い危険な状態。そして深海の中に潜んでいた未知の生命体が現れたのです。

とりあえず、映画の中に人間ドラマがしっかり描かれているのが好感を持てます。主要キャスト3人の背景がしっかりしている。当然、簡単にロケなどできない深海の話ですから、特殊撮影に頼るしかないのですが、ここではあくまでも深海のリアリティを出すための脇役として節度のある使い方。もっとも未知なる生命体ばかりはしょうがありませんけど。

制作費用は約7千万ドルに対して、興行収入はアメリカ国内だけだと6千万ドルに届かず、世界での収入によって何とか制作費だけは回収したというところでしょうか。キャメロンに派手なアクションを期待して裏切られたということなのかもしれませんけど、現在は映画としての評価は高くなっています。

ただし、DVDはありますがBlurayは発売されていない。しかも、DVDも完全版という劇場版より30分長い約3時間という長編になっています。限られた空間で限られた登場人物というシチュエーションでは、さすがに3時間は長い。2時間くらいにまとめ上げれば、もう少し早い段階で評判になったのかもしれません。

2021年11月3日水曜日

目指せ100本のSF映画


いまさら書くまでもないことですが、この何ヵ月かはSF映画を見続けています。何を見るかというのは、ネットのランキングなどを参照して決めているわけですが、ネットに転がっている情報は明らかに「個人の意見」の域を出ない物や「広告意図」を含む物が多い。

このブログも、所詮個人の意見に過ぎないのですが、少なくともある程度の公平性が担保された情報をもとにしてタイトルを選択したい。そういう時に便利なのが「Rotten Tomatos」というサイトで、実績のある批評家や一般のレヴューから出された支持率が60%以上を肯定的な映画とラベルしています。

Rotten Tomatosでは、オールタイムのジャンル別ランキングもまとめられており、その中に「150 ESSENTIAL SCI-FI MOVIES TO WATCH NOW」という記事があるので、見たことが無かった映画を選ぶのに大いに参考になりました。今のところ、だいたい150本の半分くらいを見たところですが、BEST50に限ると40本以上見たか、あるいは見る準備ができている感じ。ランキングに登場するような古い映画は、DVD(できればBluray)が中古でもけっこうプレミアがついて高価なのであきらめていますし、どうみても趣味じゃない物もありますので150本制覇は無理というもの。

ランキングに紹介された映画がシリーズ物だと、結局評価の高くないものも含めて全部見ちゃうということもあるし、個人的に気に入っている映画というのもありますから、「良い物悪い物全部含めてだいたい100本のSF映画」を見ちゃいましたくらいが目標になっています。

2021年11月2日火曜日

バンブルビー (2018)

何だかなぁ~、と言いながら見ていた「トランスフォーマー」シリーズの現在のところ最新作。これまでのストーリーとしては、前日譚的な位置づけなんですが、どうやらシリーズのリブートという立ち位置にあるらしい。

制作は引き続きスティーブン・スピルバーグが参加していますが、監督はこれまでのマイケル・ベイに変わってトラヴィス・ナイトという人。この人、実はナイキ・シューズの創業者の息子。

時代設定は1987年。当時のポップ・ミュージックがふんだんに登場して、映画を見るためこどもを連れて来た親の世代をキュンとさせる趣向かと思います。いろいろあったあれこれはひとまず横に置いて、基本的な世界観を整理するところから始まります。

惑星サイバトロンではディセプティコンの攻撃によりオートボットは退却を余儀なくされ、隊長のオプティマス・プライムはそれぞれサイバトロンから個別に脱出することを決意。B-127と呼ばれるオートボットは、オートボットの拠点を作るため地球に向かいます。しかしあとを追ってきたディスセプティコンによって、記憶回路や発生装置壊されスクラップ状態になってしまいます。

18歳になる女の子、チャーリー・ワトソン(ヘイリー・スタインフェルド)、最愛の父親が病死してから内向的で父親の趣味を継いで車いじりばかりをしている生活。ある時、壊れて放置されていた黄色のビートル(フォルクス・ワーゲンの名車)を手に入れますが、実はB-127の変形した姿でした。チャーリーは怯えて、どこか憎めないB-127にバンブルビーという名前を付け匿います。そして、いろいろなトラブルを巻き起こしつつ、しだいにビーと心を通わせるチャーリーでした。

B-127を追ってきた2体のディスセプティコンは、セクター7の科学者バウエルを信じ込ませ軍のネットワークを使い居所を探知します。バンブルビーは軍に捕らわれ、ディスセプティコンはついに本性を現し、地球への軍団の派遣を伝えるため通信塔に向かいます。チャーリーと記憶が戻ったバンブルビーは、阻止するためにディスセプティコンを追うのでした。

もちろん女の子がロボット生命体と戦って地球を救う・・・はずもないのですが、そこは元々がマンガですから、夢と希望を膨らませる展開は許せるというもの。トランスフォーマー・シリーズとしては、バンブルビーを主役にしたスピンオフですが、シンプルな展開の中に、女の子の心の成長をうまく描きこんだことで、けっこう中身の濃い作品に仕上がりました。

バンブルビーも表情(?)豊かで、実にいい味を出している。ほのぼのとしてユーモアあふれる動きはとても人間的。顔がマスクで隠れると、一転して攻撃モードになり、兵士としての精悍な雰囲気がしっかりにじみ出てくる。今までの作品でもその片鱗は見られましたが、さすがにここでは「主役」としてたっぷりと楽しめます。

女の子が自分を取り戻す王道のストーリーとシリーズならではのアクションのバランスが、程よくミックスして、一般の観客からも評論家からも高評価を得ることができました。今後もリブート後の展開があるようですが、この流れをうまく繋いでいけるといいんですけどね。




2021年11月1日月曜日

衆議院議員選挙


選挙のタイトルで、この写真は何だと思われるかと・・・

昨日は選挙だったのですが、クリニックの自販機撤去とその後の修復工事の予定が入っていました。選挙は期日前投票を澄ましておきました。

自販機は無事に撤去されました。狭いスペースなので、あまり他に有効活用するアイデアも無いので、当面受付前が無駄に広がったというだけになりそうです。

それにしても、早く結果が知りたい・・・とは言え、昨日の開票が始まる午後8時の時点で、開票率0%にもかかわらず、たくさんの当確(当選確実)が出ているのには驚きます。逆にすれば落選確実を出したということで、その中には大物議員も含まれていました。

これは各メディアがあくまでも推測として発表しているもので、あくまでも推定の域を出ないものですが、メディアの情報収集力の競い合いみたいなもの。

与党は単独過半数を確保したのですが、事前に予想されたほどは議席を減らしませんでした。野党共闘作戦は失敗とまでは言えないものの、反発を招いた部分もあって難しいところだったのかもしれません。

それにしても、与党でもついこの前なったばかりの新幹事長や、派閥の長を担う大物が落選したのが驚きでした。まぁ、どうせ小選挙区でダメでも比例で復活と言う分けのわからないシステムがありますけど。

少なくとも国民が選ばなかった、つまり信任しなかった議員を比例で復活させるというのはどうも納得できませんけどね・・・