昔はホラーと言えば、吸血鬼、狼男、フランケンシュタイン、半魚人・・・などなどの理屈を抜きにしたモンスター系が登場するのが王道でしたが、ある意味日本の怪獣映画もそういう系統に入るのかもしれません。ですから、科学的な話が主となるSF映画との相性はあまり良いとは言えません。
古いところでは「ボディ・スナッチャー(1956)」は、じわじわと身近な人が入れ替わっていく怖さを見事に描いていました。そして、「エイリアン(1979)」は、SFホラー映画の金字塔です。ただし、エイリアンを真似て量産された多くの作品はB級の域を出るものではありません。
次に思い出されるのは「遊星からの物体X(1982)」で、不気味な恐怖を感じさせる傑作です。「ザ・フライ(1986)」は生物を分子に分解して再生するという、まさにSF的な発想が生かされていました。21世紀になると、怖がらせることよりアクション路線との融合したものが主流になったように思います。
さて、本題に入りますが、これは今や名監督として名が上がるようになったメキシコ出身のギレルモ・デル・トロの初期の作品。医学生物学的な分野が関わるSFホラーで、近未来のニューヨークが舞台。
ストリックラー病と呼ばれる伝染病が蔓延し、こどもだけが罹患し多くの命が失われていました。媒介しているのはゴキブリ(!)で、昆虫学者のスーザン・タイラー博士(ミラ・ソルヴィノ)は、天敵のアリとカマキリの遺伝子から「ユダの血統(Judas Breed)」と呼ぶ新種の昆虫を作り、ストリックラー病を根絶させました。
3年後、スーザンは繁殖能力がなく死滅するはずだったユダの血統の幼虫を発見し、夫のアメリカ疾病予防管理センター(CDC)のピータ(ジェレミー・ノーサム)と調査を開始します。そして、地下鉄の古い区画の中に、犠牲になった人々の死骸と共に、進化・巨大化して人間に擬態(ミミック)したユダの血統を発見しました。
何しろ、相手が巨大ゴキブリなんで、あまり気持ちの良いもんじゃない。最初は小出しで怖さを煽りますが、中盤で姿が見えてここからは怖さよりはゴキブリ対人間の格闘アクションみたいな感じです。あえて分類すればホラーなんでしょうけど・・・
一緒に戦うはめになったおじさんを演じているのが、名優ジャン・カルロ・ジャンニーニというのは驚いた。この映画の数年後にはハンニバル・レクター博士に惨殺される役もやったりしてます。
アメリカ人は、ゴキブリは普通の昆虫という認識なんでしょうか。嫌悪感は少ないようで、何と続編、続々篇まで作ってます。日本人的には生理的に無理という感じ。これ以上見たいとは思わない。