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2021年8月16日月曜日

ボディ・スナッチャー / 恐怖の街 (1956)

ジャック・フィニイの小説「盗まれた街(1955年)」はSFホラーの元祖みたいな話であり、これまでになんと4回も映画化されています。その最初が、B級映画の巨匠、ドン・シーゲルが監督した1956年のこの作品であり、低予算で特別な仕掛けもほとんどありませんが、いまだに最高傑作とされています。

ストーリーは比較的単純。精神科の医師マイルズ・ベネル(ケヴィン・マッカーシー)は、数週間ぶりに学会から戻ってくると、街の人々から「自分の家族がおかしい」という話を聞きます。姿は一緒で、会話にもおかしいところは無いのですが、感情が無いという。

初めはノイローゼだろうと思っていたマイルズでしたが、しだいにその人数が増え、友人の家で巨大なさやえんどうのような殻の中から友人そっくりの生物が生まれてくるのを発見します。

おそらく宇宙からの侵略者が、住民なり替わって街を占拠し始めていると考えたマイルズは、恋人のベッキー・ドリスコル(ダナ・ウィンター)と街からの脱出を図ります。しかし多くの偽住民に追われ炭鉱に逃げ込みます。

逃亡に疲労したベッキーを残して付近を偵察したマイルスは、戻ってベッキーにキスをした・・・それはすでにベッキーではなかったのです。マイルズは街道に走り出て、次から次へと走って来る車に「次はあなただ!!」と叫ぶしかありませんでした。

・・・で終わるのがシーゲルの意図だったんですが、スタジオがバッド・エンドはダメと言うので、しかたがなくちょっとだけ希望が持てる終わり方のエピローグが追加されました。

シーゲルは、限られた予算の中で宇宙人が侵略する理由とか方法論についてはほとんど省略し、細かい説明はほとんどありません。その分、どんどん知人が入れ替わっていく恐怖に焦点をあてて、無駄な時間を排してスピーディにストーリーを進めていきます。

このあたりはシーゲルの独壇場で、B級とは言え観客を一気に映画の中に引き込む術はさすがです。このスピード感が、最終的に恋人も乗っ取られた絶望感をより強く描き出すことにつながっているようです。

2回目の映画化は1978年で、フィリップ・カウフマン監督、ドナルド・サザーランド主演で、より「何故?」を説明した内容。3回目は1993年で、監督はアベル・フェラーラ。4回目は2007年で「インベージョン」とタイトルを変え、オリヴァー・ヒルシュビーゲルが監督しています。主役はニコール・キッドマンとダニエル・クレイグで、スペース・シャトルに付着していた宇宙ウイルスが原因としています。