2021年8月30日月曜日

アナイアレイション -全滅領域- (2018)

ナタリー・ポートマンの最新のSF主演映画がこれ。ナタリー・ポートマンはハーバード大学卒業の才媛で、身長160cmは欧米人に混ざると小柄でこどもっぽいイメージ。とはいっても、もう今年で40歳ということで、この映画でもかなり大人の女性になりました。


映画の原作はジェフ・ヴァンダミアが2014年に発表した小説「全滅領域」で、「サザン・リーチ」シリーズとなる3部作の1作目。企画段階では残りが出版されていなかったため、ある程度映画として独自の解釈をしてストーリーを完結しているようです。監督は2015年の「エクス・マキナ」で一躍注目されるようになったアレックス・ガーランド。

大学で生物学を教えるレナ(ナタリー・ポートマン)の夫ケインは、軍の秘密任務に就いて行方不明となって1年たっていました。ある日、いきなりケインが家に帰ってきますが、記憶はほとんど無い。ケインは、急に体調を悪くし救急車を呼んで搬送する途中で、二人は軍によってサザンリーチにある研究施設に強制的に連行されてしまいます。

心理学者のヴェントレス(ジェニファー・ジェイソン・リー)の説明によると、3年前に岬の灯台に何かの光が落ちてきて、以来次第に周辺地域にこのシマーと呼ばれるようになった不思議な光が拡大しているというのです。何度も送り込まれた調査隊は、誰一人として戻ってこず、最初の生還者がケインですが、今や多臓器不全で重体です。

ケインを救うにはシマーの中に行くしかないと考えたレナは、数日後に予定されているヴェントレスの女性だけの調査隊に参加を志願します。メンバーは、救急隊員のアニャ・ソレンセン(ジーナ・ロドリゲス)、物理学者のジョシー・ラデック(テッサ・トンプソン)、地形学者のキャシー・シェパード(ツヴァ・ノヴォトニー)です。

シマーの中に進んだ5人は、携帯した食料の減り具合から数日はたっているのに、寝て起きると昨夜までの記憶が思い出せないのでした。外界との通信手段は一切機能せず、コンパスも頼りになりません。

そして、奥に行くと、動物・植物の変異が強くなっていることがわかりました。シマーの拡大で廃棄された基地では前回の調査隊が残したビデオがあり、そこにはケインが別の隊員の腹部をナイフで割くと、中でうごめく物体が映っており、施設内でその隊員と思われる変異した遺体を発見します。

夜になって巨大な動物が襲ってきてシェパードが連れ去られ、先に進むと食い殺されたような変わり果てた姿を発見します。アニャは、レナのかけていたロケットの中にケインの写真を発見し、混乱して3人を縛り上げました。しかし、また熊のような動物が襲ってきてアニャは嚙み殺されます。ヴェントレスは自分がわからなくなる前に灯台にたどり着くと言って、暗いうちに一人で出ていきました。

翌朝、ジョシーは「ヴェントレスは事実を、あなたは戦いを求めている。私はどちらもいらない」と言って人間の姿の木に変容してしまいます。一人、灯台にたどり着いたレナは、「俺は誰だ」と言いながらケインが白リン弾で自害すると同時に、それを見守ったもう一人のケインが移っているろビデオを発見するのでした。奥にはヴェントレスが・・・


何で? どうして? の連続で、真実は最後までよくわからない映画。意図的に説明しないようにしているのかもしれませんが、わからないことだけで観終わってもスッキリした気分とはだいぶかけ離れています。これは、映画の中で、救出されたレナがいろいろと質問される映像が断片的に何度も出てくるのですが、レナの答えもほぼ「わからない」だけです。

ただ、間違いなさそうなことは、レナがシマーの中に行くのはケインを助けるためではなかったということ。危険が大きすぎるこの任務に参加したケインは、自己破壊を望んでいた・・・簡単に言えば、レナの浮気に気が付いて消えてしまうことを望んだということ。そしてレナは、そんなケインに対する贖罪の気持ちから志願したのだということです。

全編にわたり、幻想的な美しい背景であり、美しいオブジェが随所に見られ、特殊効果の凄さと美術担当の努力はひしひしと伝わってきます。批評家からの評判は悪くないのですが、一般向けしにくいと考えた制作したパラマウントは映画の配給権をNetflixに売却したといういわくつきで、確かに好き嫌いが分かれるところかなと思います。