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2021年11月9日火曜日

ジャスティス・リーグ ザック・スナイダー・カット (2021)

始まりからして違う。劇場版は、ほのぼのとしたこどもによるスーパーマンへのインタヴュー映像から始まりましたが、こちらは前作のクライマックス、スーパーマンとドゥームス・デイの戦いでスーパーマン死すの緊張感のある場面からです。続いてサイボーグの部屋に置かれていた立方体が揺れ始めるのです。さらに海底のアトランティス、アマゾンでも同様に立方体が光り震えます。

パート1 諦めろ、バットマン
ブルース・ウェインは冬山を超えて北の海辺の町で、人々を細々と助けているアーサー・カーリー、正体はアクアマンに会いに行きました。ウェインはカーリーに敵が来るので一緒に戦ってほしいと頼みますが、孤独が好きで誰にも借りは無いと断られます。クラーク・ケントの母、マーサは住み慣れた家を売りに出し引っ越し、ロイス・レインは敏腕新聞記者とは程遠く、スーパーマンの死んだ場所に毎日通うだけの日々を過ごしていました。

ヨーロッパではテロ組織が人質を取って爆弾テロを起こそうとするのを、ダイアナ・プリンスことワンダー・ウーマンの活躍により未然に防ぎました。ワンター・ウーマンの故郷、アマゾンでは数千年守り続けてきた立方体、マザーボックスを手に入れるためステッペンウルフが襲撃します。ダイアナの母、ヒッポリタ女王(コニー・ニールセン)を筆頭に戦うもののマザーボックスは奪われてしまう。

パート2 ヒーローの時代
サイラス博士が勤務する、クリプトンの宇宙船を格納するSTAR研究所がステッペンウルフの兵士パラデーモンに荒らされ、職員が誘拐されました。ヒッポリタはダイアナに知らせるため警告の炎の矢を射て、ダイアナは3つのマザーボックスが狙われることをしります。ステッペンウルフはロシアの廃炉になった原子炉を拠点に、マザーボックスを使って地球を支配した後、より強大な存在であるダークサイドにこの世界を捧げ、過去の自分の過ちを許してもらおうと考えていたのです。

ダイアナはウェインのもとを訪れ今回の敵について説明します。大昔に、征服のために別世界からやって来たのがダークサイドでしたが、3つのマザーボックスを融合させ強力な力を持つユニティを発動する直前に、別々に戦っていた人間、アマゾン、アトランティスは共闘し、マザーボックスの奪取に成功しました。そしてそれぞれがマザーボックスをひとつずつ厳重に保管することになったのです。

パート3 最愛の母 最愛の息子
大学で有望なアメフト選手だったビクター・ストーンは、交通事故により運転していた母と共に死亡します。父親のサイラス博士は、息子だけでも何とか救おうと、ラボで保管していたマザーボックスの力によってビクターをサイボーグとして再生し、デジタルな信号のあらゆるものを簡単に操ることを可能としました。ビクターは、ダイアナと話をしますが拒絶し、マザーボックスを自分の墓に隠しました。

バリー・アレン(エズラ・ミラー)の父親は妻殺しの罪で収監されており、バリーはたびたび面会に訪れますが、父親は自分が重荷になって定職につかない息子を心配します。バリーは大学生の時、実験中の事故により超高速の能力を手に入れ、フラッシュとして少しずつ町の平和に貢献していました。孤独だったバリーは、ウェインの誘いに二つ返事で仲間入りを承諾するのでした。

もう一つのマザーボックスがアトランティスにあることを知ったステッペンウルフは、襲撃して手に入れますが、アクアマンは間に合いません。女王に捨てられ憎んでいたアクアマンでしたが、マザーボックス守護者であるメラ(アンバー・ハード)に、捨てたのはダークサイドから守るためであり、今度はあなたが戦う番だと諭されます。

パート4 チェンジ・マシン
サイラス博士も誘拐されたためサイボーグも仲間になり、4人はSTAR研究所の職員が監禁された換気口施設に向かいます。人質救出には成功したものの、ステッペンウルフには逃げられてしまう。その際洪水に巻き込まれますが、アクアマンに助けられ彼も仲間に入るのでした。

ビクターは、隠していたマザーボックスを仲間に見せ、自分がサイボーグとして再生されたことから、これは物質の再構築をする力があると話します。彼らは勝利にはスーパーマンが必要であることで意見が一致し、スーパーマンの蘇生を試みることにするのでした。いまだに仕事に戻れないロイスのもとをマーサが訪れ、自分を取り戻すように話しますが、実は普段は国務長官の姿をしている火星出身のマーシャン・マンハンターの変身した姿でした。

パート5 王家の家来
バットマンらはクラーク・ケントの棺を掘り返し、STAR研究所に向かいます。クリプトン宇宙船のチェンバーに遺体を沈め、フラッシュの光速移動で発生する電流によってマザーボックスを起動します。蘇ったスーパーマンは、記憶が混乱しており、バットマンらを敵とみなし攻撃してくるのでした。しかしロイスの説得で攻撃をやめ、ロイスを抱えて飛んで行ってしまいます。

マザーボックスを起動したことでその位置がわかってしまい、ステッペンウルフがやってきます。サイラス博士は、特殊レーザーを当ててエネルギー熱量を増加させ探知しやすくしますが、その反動で亡くなってしまいます。ステッペンウルフは「終わりの始まりだ」と言い残し最後のマザーボックスを持って消えました。ビクターは、父親を救えなかったことで涙し、復讐を誓うのです。

パート6 暗い何か
ロシアの廃炉になった原子炉にマザーボックスを確認したバットマンらは、外部からのマザーボックスの分離は無理と考えますが、ビクターが危険を承知で自ら内部に接続しコントロールすると言い出します。クラークは実家に戻ると完全に記憶を回復し、ロイスとマーサを抱きしめます。そしてチェンバーで、改めて自分の存在理由を再確認するとスーパーマンとして飛び立ちます。

バットマンは飛行艇で攻撃をかけステッペンウルフの基地のシールドを破壊します。ワンター・ウーマンらも突撃し、決戦の幕が切って落とされました。

あらすじを追うだけで長くなってしまいましたが、何しろ4時間あるんです。そりゃ、長くなるわ。基本的なストーリーは劇場版と同じですが、長いのはそれなりの意味があって、2時間では描き切れない、登場人物たちの内面に時間をたっぷりとってあります。

一番はビクターと父親の関係。仕事一筋で過程を顧みなかった父親は、多くの後悔を持っています。それが息子をサイボーグとして蘇生することにつながるのですが、そういう体になったことでさらに父親を憎むようになる。しかし、お仕着せがましくない程度にビクターがしだいに父親を理解していく過程はなかなかうまい。

バリーと父親の関係、アクアマンすらも家族内の断絶を抱えている。スーパーマンも含めて、家族の再生という裏テーマが見えてきます。こちらを見てしまうと、劇場版のつまらない笑いを取ろうとするシーンなどは、まったく不要な存在であることがわかる。これは劇場版を、急なスナイダーの降板の後を継いだジェス・ウェドンの責任ではありません。たったの数か月で会社の意向に沿ってよくまとめ上げたというべきでしょう。

そもそも、スナイダーが手を付けた時点で前後2部作の4時間くらいを想定して撮影を進めていたもので、劇場公開版があまりに評判が悪かったために、ファンの間でスナイダーのオリジナルの構想をもとにした版が見たいという意見が噴出し制作会社を動かしました。そして、実際この盤はネット公開されたのですが、同じ原作のまったく違う映画を見せられたかのような印象になります。

スーパーマンについては、劇場版では青いスーツに真っ赤なマントのお馴染みのいで立ちで登場しましたが、スナイダー・カットでは、なんとスーツもマントも黒。ステッペンウルフの倒され方もまったく違う。さらに話題をさらったのが、比較的長めのエピローグ。

劇場版でも、エンドロールの後にレックス・ルーサーJr.が脱獄して、さぁこれからどうなる? という短いエピローグがあった。スナイダー・カットでは、これに続きがあって、マーシャン・マンハンターがウェインのもとを訪れこれからは自分も協力すると言います。

さらに、ステッペンウルフの失敗により、ついにダークサイドが自ら地球侵攻をかけるようです。しかも、アクアマンは死んでメラがリーグに加わり、バットマンの失策でロイスが死んでスーパーマンは闇に墜ちているらしい。さらに驚くべきことにジョーカーがリーグに加わっている。

本編の中でも、未来からバットマンに警告しに来るフラッシュが登場したり、ロイスが未来の鍵だというセリフがあったりして、どうやらスナイダー監督は、今後2作分くらいの構想の伏線を織り込んでいるようです。ただし、制作会社は興行不振により、このシリーズの今後の発展については計画は白紙撤回したようなので、実現の可能性は今のところありません。

ちなみに、日本版は例によって高価ですが、US版は日本語字幕付きで千数百円で手に入ります。自分は必要ありませんけど、吹き替えもついてます。