アメコミ、DCコミックのトップ・スターである「スーパーマン」は、ダーク・ヒーローとしてリブートされました。前作の最後にデイリー・プラネット社に入社したクラーク・ケントが実はカル・エルであり、地球での姿がスーパーマンであることをロイス・レインだけは知っています。そして、地球人はスーパーマンが異星人であることまでは知っていて、エイリアンとして警戒心を捨てられません。
悪者が人々を苦しませていると、正義のスーパー・ヒーローが登場してさくっと退治して去っていくという昔ながらの作法から脱却した、ヒーローの内面に焦点を当ててヒーローであるが故の葛藤を前面に出すのが制作・監督のクリストファー・ノーランのリブート・シリーズ。
マーヴェル・コミックの垣根を超えたヒーロー集結戦隊、アヴェンジャーズに対抗して、DCコミックも自分の抱えるヒーローを集めたジャスティス・リーグ結成に向けて着々と歩みを進めました。監督は前作に続きザック・スナイダーで、ノーランは製作総指揮のみで一歩退いた感じです。
ウルトラマン・シリーズでいろいろなウルトラマンが一堂に会することがありますが、基本的な世界観が共通なので無理やり感はありません。「エイリアン vs プレデター」もどっちも宇宙人の悪者ですから共演は可能かと。スーパーマンとバットマンが対決したら・・・確かに興味深いセッティングですが、宇宙人の超々能力を持つスーパーマンに対して、バットマンは基本的にただの人間。いろいろなアイテムで人間離れした活躍をするものの、リアルに近づくヒーロー物の中では勝てる道理が無い。
本作は、冒頭でバットマンであるブルース・ウェイン(ベン・アフレック)が子供の時に劇場裏で両親が強盗に殺されてしまうところから始まりますが、いきなりまたこれを見せられるのかという感じ。すぐに前作の最後、スーパーマン(ヘンリー・カヴィル)とゾッド将軍の対決で街は崩壊し、多くの市民が犠牲になっている。ブルース・ウェインは、地上から成す術もなく見守るしかありませんでした。
メディアでも、スーパーマンの存在に対して議論がされました。スーパーマンの力を危険と考えるウェインは、彼の所在を探しているうちにロシアの武器商人が、スーパーマンの地球での宿敵、レックス・ルーサーJr.(ジェシー・アイゼンバーグ)と接触していることを知ります。ルーサーは、インド洋から引き揚げた鉱石クリプトナイトが、クリプトン人を無力化することに気が付きスーパーマンに対する武器にしようと考えていました。
一方、クラークはバットマンが正義の名のもとに法を犯していることを問題と考え、記者として取材をするうちにウェインにたどり着きます。慈善パーティで、ウェイン、クラーク、ルーサーは一堂に会し、さらに謎の美女ダイアナ・プリンス(ガル・ガドット)も登場します。ウェインはハッキングしたルーサー・コーポのデータから、ルーサーがクリプトナイトをアメリカ国内に運ぶことを察知し、奪取しようとしますがスーパーマンによって「バットマンは死んだ。手を出すな」と警告されるのです。
ロイス・レイン(エイミー・アダムス)は、ルーサーの陰謀により、スーパーマンが不利な立場に立たされていくこと知りますが、スーパーマンの是非についての公聴会が開かれ、スーパーマンにも出席が求められるのです。しかし、その場でルーサーの企みによって爆発が起こり、多数の死者が出たことで、スーパーマンは自分の存在を否定する思いにかられます。
ウェインは再びルーサーの研究所からクリプトナイトを奪取することに成功し、クリプトナイトを用いた武器を作り決戦に備えます。ルーサーは、保管されていたクリプトンの宇宙船に進入し再起動させ、クラークの母マーサ(ダイアン・レイン)を拉致し、スーパーマンに母を死なせたくなかったらバットマンを殺せと命じるのでした。
ついにスーパーマンとバットマンの直接対決になり、バットマンはクリプトナイトのガスによってスーパーマンを無力化、ついにクリプトナイトの槍を振り上げます。そこへロイス・レインがかけつけ、ルーサーの陰謀を説明します。バットマンはマーサを助けに、スーパーマンはルーサーを捕えに向かいますが、ルーサーはゾッド将軍の遺体を怪物ドゥームデイとして再生し、圧倒的な破壊力でスーパーマンは危機に陥るのでした。
・・・って、この結末は有名で知れ渡っていますから、今更隠す必要はありません。スーパーマンとバットマン、そしてダイアナ・プリンスことワンダー・ウーマンも加勢して立ち向かいますが、ついにスーパーマンは自らの命と引き換えにドゥームデイを倒したのです。
ヒーローは死なない・・・を覆す結末。スーパーマンの死は衝撃的。今回、視聴したのは劇場公開版2時間半ではなく、3時間のディレクター・カット版です。劇場公開時は、前作を見ていない人には何だかよくわからない。過去のスーパーマン作品、バットマン作品、そしてワンダー・ウーマンを知らないと、展開があちこちに飛び過ぎて「何でそうなるの」の連続です。
未公開映像を再編集した結果、ヒーロー達の基本知識さえあれば、この映画の展開はある程度理解できるようになっています。とは言え、スーパーマンにしても、バットマンにしてもあまりに単純に互いを敵視して、勝手に盛り上がる雰囲気は馴染めません。唐突に登場するワンダーウーマンも何かなぁというところ。結局、ヒーロー達に共感しずらいところが最大の欠点となり、一般的な評価としては失敗作の呼び声が高い。
バットマンは今回、アーマード・スーツを着用してやたらとごつく、逆にこれで身軽に振る舞うのは噓っぽい。ワンダー・ウーマンが強烈な熱線を丸い楯で防ぐのですが、自分より盾の方が全然小さいですし、とにかくリアリティ・ヒーロー物を目指していたはずなのに、かなり嘘っぽい展開も残念感が漂います。そこまでしなくても、もっと簡単にジャスティス・リーグを結成してもいいんじゃないかと思いますよ、基本的にファンタジーなんだから。