2021年11月23日火曜日

ザ・フォッグ (1980)

B級映画の鬼才と呼ばれることが多いジョン・カーペンターの、例によって監督・脚本・音楽とマルチな才能を発揮した作品。低予算で映画製作をすることが多いためB級と言われてしまいますが、アイデアやそれを映像化する力量があるから、主としてSFとホラー系の(隠れた)名作と呼ばれる作品を多く作り、多くの映画人に影響を与えている監督です。

アントニオ湾には、100年前の深い霧の夜に難破した帆船の船員たちが、再び霧が立ち込めた時に亡霊となって蘇るという言い伝えがありました。そして100年目の午前0時を過ぎたとたんに、街のあちこちで不思議な現象が起こり始めるのです。沖合にいた漁船は急に発生した霧に飲み込まれ、謎の帆船を目撃した直後殺害されてしまいます。

マローン神父(ハル・ホルブルック)は、突然崩れた壁から救いを求める祖父の日記を発見します。岬の灯台のラジオ局のDJ、スティービー(エイドリアンヌ・バーボー)は、沖合に不思議な光を一瞬みとめます。ニック(トム・アトキンス)はヒッチハイクのエリザベス(ジェイミー・リー・カーティス)を拾いますが、車のガラスが割れたり、家にも不審なノックする音が響く。

朝になり、スティービーの息子は海岸から帆船の破片と思われる流木を拾います。町の有力者、キャシー・ウィリアムズ(ジャネット・リー)は今夜の町の100周年記念式典の準備に忙しくしていました。しかし、マローン神父から、100年前に金持ちの船を湾に誘い込み難破させ、彼らを殺して得た財産で街を興したという日記の内容を聞かされます。

ニックは沖合に漂流する漁船を発見し、まるで水死したかのような腐敗した遺体を回収しますが、急に動き出すのでした。夕闇が迫り、再びアントニオ湾には霧が近づいてきました。スティービーの家も霧に覆われ何者かに襲われますが、間一髪ニックが救い出し、教会へ逃げ込むのでした。

この映画ではSF的な要素はほとんどありませんので、純粋にホラー映画と言った方がわかりやすい。CGが普通に使われるようになる前、アナログの時代ですから、特殊撮影はお世辞にもすごいとは言えませんが、さすがに「B級」の巨匠だけあって、サスペンスの盛り上げ方はうまい。映画での驚かせ方のお手本みたいな感じです。

「ニューヨーク1997」でハードな役をこなしたエイドリアン・バーボーは、ここではお母さんで、ラジオで霧の進展を実況して必死に危険を訴える役回り。この映画の頃は、カーペンターの奥さんでした。「サイコ(1960)」のショッキングな役だったジャネット・リーは何か嬉しい。ホルブロックも、70~80年代の貴重な脇役です。ちなみに殺されちゃう測候所の職員さんの役名はダン・オバノン。カーペンターの旧友で「エイリアン」の原作者と同じ名前。

とはいえ、町とは関係ない巻き込まれのエリザベスの存在意義が意味不明。最後の解決策も、今時の複雑な世界観の映画からすればちょっと簡単すぎかなと思います。なんて思っていたら、25年たって2005年にカーペンターは製作にまわったリメイクが作られ、エリザベスの設定と解決策が変更になっているようです。さすが、カーペンターもちょっと後悔していたのかもしれません。