2013年2月27日水曜日

エイリアン (1979)

SF映画というと、現在とは違う世界、主として未来を描いたもの。想像の世界を表現するために、いろいろな特殊効果が使用され、映画の製作技術を進歩させる原動力の一つという評価ができる。にもかかわらず、荒唐無稽みたいな評価がされて映画芸術として低めの評価で語られる事が多いものです。

歴史的には「月世界旅行」(1902)で始まり、「メトロポリス」(1927)で確立。50年代に「宇宙戦争」、「タイムマシーン」、「禁断の惑星」 などで人気となり、宇宙物を中心とした娯楽映画としてのジャンルとして認知されたわけです。

60年代にはいり、「ミクロの決死圏」、「猿の惑星」のように時代設定も重要ですが、人間があり得ないものと戦うような話が登場。宇宙物でも、「バーバレラ」のようなエロティック・コメディや、そしていまだにSF映画の金字塔的な「2001年宇宙の旅」のような哲学的内容のものも出てきて、内容は多岐に渡るようになりました。

しかし、なんと言ってもSF映画の絵空事的な世界をリアル化する技術革新が進み、現在まで続く名立たる名作が続々と登場したのが70年代。

「エイリアン」は1979年。当時「宇宙ではあなたの悲鳴は誰にも聞こえない」というキャッチフレーズは、かなりインパクトのあるもので、内容としても監督リドリー・スコットの評価を十二分に高めるものでした。

それまでは、宇宙人は普通に登場し、普通に人間と同じように攻撃してくるわけで、いかに地球を救うかの戦いがテーマだったものです。しかし、この映画では出てくる宇宙人・・・というよりも、宇宙生命体は一人、というか一匹。

彼には単に自分以外を排除する本能しかなく、戦いの理論は原始的。しかも、なかなか登場せず、ちょっと出てきても一瞬。最後の最後まで、その全容が画面に映し出されることはほとんどありません。

見えないものに対して人間は恐怖を感じる、原始的感覚をSFの世界、孤立した宇宙船の中を「お化け屋敷」に見立てて展開。まさにスペース・ホラーと呼ぶにふさわしい作り方が斬新でした。

そもそも、主人公が女性というのも目新しく、何が原因なのか、何が目的なのかなど、見ている側が整然と理解する説明も明示されていないところも面白い。

後にシリーズ化され、第2作では、一作目で出し渋ったエイリアンを大挙して登場させ、「今度は戦争だ」という内容。そこまではよかったのですが、その後の3作目、4作目は世界観を多少引き継ぎながらも内容的には見るに値しない。

とにかく映画芸術として、1作目だけは「これだけは観ておきたい」1本として記憶に残る名作だと思います。それにしても、シリーズ4作詰め込んだブルーレイが4000円以下で買えてしまうのは、かなりお得な感じですね。