70年代には、いわゆるパニック映画という娯楽映画が流行しました。何気ない日常的な風景の中に、突然事件・事故がおこり、恐怖に駆られた一般の人々が逃げ惑うという設定で、たいていスーパーマン的な人物が現れなんとか窮地を救うというもの。
うがった見方をすると、60年代にベトナム戦争の泥沼に入り込んだアメリカの心の闇が社会的に問題になり出すのが70年代。単純な平和な日常がもろく崩れ去る恐怖を、多くのアメリカ人が感じ始めていた時代なのかもしれません。
「大空港」という映画は、そういったパニック映画の元祖という位置づけ。グラントホテル形式の、大スターが顔をそろえ、パニックになった時に見える本当の人物像を熱演します。
大雪のためにてんやわんやになるなか、冷静に対処する空港長がバート・ランカスター。その愛人で空港の有能なグランドスタッフにジーン・セバーグ。実際に雪をなんとかしようと、滑走路で除雪作業にあたる現場の指揮官がジョージ・ケネディ。
仕事がうまくいかず自殺するために爆弾を持って男が乗り込む飛行機のパイロットがディーン・マーチン、その恋人のスチュワーデスがジャクリーン・ビセット。自殺男の奥さんはモーリン・スティプルトン。
もともと、アーサー・ヘイリーの原作をベースにジョージ・シートンが監督し、大変中身の濃い充実した作品になった。このあとシリーズ化されましたが、あとは単なるパニックを見せるためだけのもので、人間ドラマとして成功したのはこの最初の一本だけでしょう。