2013年2月7日木曜日

骨粗しょう症とロコモティブ・シンドローム

今日はケアプラザで、介護事業に関係する方々向けの講演を行ってきました。ケアプラザというのは、横浜市社会福祉協議会が運営する介護の拠点で、2007年から協力医という形でちょっとだけお手伝いをしています。

毎年必ず一度はこういう講演を行っていますが、今回は「骨粗しょう症の最新の治療」について解説してほしいというテーマをいただきました。

いつも、関節リウマチについては21世紀になって、どんどん進化が続き勉強するのが大変と書いていますが、もちろん骨粗しょう症についても、それなりに変化があるんです。

数年前までは、骨粗しょう症というのは骨密度の低下という概念でよかったのですが、今は違います。最新の定義は「骨密度と骨質の異常により骨強度が低下して、骨折の危険が増した状態」となっています。

近年、硬い骨の網目の間をつないでいるコラーゲンが注目され、建物で言えば鉄骨だけではなく、間を埋めているコンクリートにも注目しようということです。

治療についても、副甲状腺ホルモン剤という、積極的に骨形成を促進できる薬が使われるようになって、より強力に骨粗しょう症を改善することが可能になりました。ただし、自分で注射をするタイプなので、誰にでも簡単に処方するわけにはいきません。

日本では整形外科学会が推進しているのが、「ロコモティブシンドローム」という概念。骨粗しょう症を中心に、加齢と共に体の機能が低下してだんだん日常生活の能力が低下してくる運動器の状態の総称です。

寝たきり状態になって、どんどん機能が落ちていく状態は「廃用症候群」という言葉が以前から使われていました。ロコモティブは寝たきりになる前の段階についての考え方で、これは高齢化社会になり、より元気な状態を保つ事か重要視されていることが基本にあります。

ロコモティブ・シンドロームの範疇に入らない状態は、屋内でつまづかない、手すり無しで階段を上がれる、15分以上続けて歩ける、横断歩道を無理なく渡れる、片足立ちで靴下を履ける、2キロの重さの買い物ができる、掃除機の使用や布団の上げ下ろしができる、といった項目でチェックします。

メタボリック・シンドロームも同様ですが、21世紀になって医学会は「病気の予防」ということにも注目するようになったわけですが、これは医療費の増大にたいしての社会的な要請ということが大きい。

病気そのものの治療よりも、病気を予防して減らす事が、医療にかかる費用を抑制できるということだと理解していますが、高齢化に対して病的状態が増える事は避けられないわけで、こういう予防概念を導入することで実質的に医療費の増加傾向に歯止めがかかるのかはまだまだわかりません。

いずれにしても、寝たきりで長生きをしてもしょうがないわけで、普通に生活ができる健康寿命を延ばすことが大変重要です。一人一人が、健康寿命の延長に向けて意識するところから始めたいものです。