約40年たって、もはやSFホラーの古典的名作と言える映画。初めて見た時は、あまりにもグロテスクなビジュアルに度肝を抜かれたものです。監督はジョン・カーペンター。そして、主演は監督との相性が良いカート・ラッセルです。
原題は「John Carpenter's THE THING」で、わざわざ監督の名前を冠したのは、1951年のハワード・ホークスが制作した「遊星からの物体X (THE THING)」のリメイクだから。原作はジョン・W・キャンベルによる1938年に発表された「影が行く (Who Goes There?)」で、カーペンター版の方が、より原作に忠実と言われています。
南極の大氷原をノルウェイ隊のヘリコプターが、犬を追いかけ狙撃を繰り返している。犬はアメリカ基地に逃げ込み、興奮したノルウェイ隊の隊員はなりふり構わずアメリカ隊にも発砲してきたため、やむをえず射殺します。
ヘリコプター操縦士のマクレディ(カート・ラッセル)らは、ノルウェイ隊の基地の調査に向かい、壊滅した基地に呆然とするのです。そして、異形の人間のような生物の死体と、調査を記録したビデオを持ち帰ります。
その夜、逃げてきた犬の外見が突然割れ、見たこともない生物に変化していくのを隊員は目撃し、何とか火炎放射器で焼き殺しました。ノルウェイ隊の記録から、彼らがはるか昔に地球にやってきた宇宙船を発見し、凍結していた宇宙生物が蘇り壊滅させられたらしいことがわかりました。
この生物は、血の一滴でも他の生物に付着すれば、相手の細胞を取り込み同化していくことが可能らしい。すでに生物に体を乗っ取られた隊員がいるかもしれないと、お互いが疑心暗鬼になっていきます。そして、実際に正体を現し、一人、また一人と隊員が減っていく。
マクレディはついに基地全体を爆破炎上させ、基地ごと謎の生物を焼き殺しました。燃え上がる基地の横で、マクレディは生き残ったもう一人の隊員に「あとはどうなるのか見ているしかない」と言うのです。
これで生物を退治できたのか、そもそも最後の二人が正真正銘人間かどうかはわからない。人間だとしても、南極の屋外では当然生存は不能です。この曖昧な結末が、見終わった後も怖さを持続させます。
ホラーと言っても、いわゆる「スプラッター」ではなく、不気味なクリーチャーの造形のおどろおどろしいところと、人間ではなくなった誰かが仲間の中にいるかもしれないという心理的な恐怖を、南極の閉鎖された空間の中で作り上げていきます。
CGによるド派手な演出に慣れてしまうと物足りなく感じるかもしれませんが、すべてがアナログの特撮は当時としては最先端を行く物でした。メイクアップの巨匠、リック・ベイカーの弟子で、いまだハリウッドで現役で活躍するロイ・ボッティンの特殊メイクが素晴らしい。モンスター造形には「ターミネーター」でも活躍するスタン・ウィンストンが参加しています。