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2021年7月7日水曜日

ターミネーター ニュー・フェイト (2019)

ターミネーター・シリーズの最新作は、何といろいろと権利関係が紆余曲折してジェームズ・キャメロンの手に戻ってきました。とは言っても、キャメロンは製作にまわり、監督は「デッド・プール」でデヴューした新鋭ティム・ミラー。キャメロン自身がシリーズの中で、2作目からの正当な続編と胸を張って作ったもので、原題は「Dark Fate」、つまり「暗黒の運命」というところです。アーノルド・シュワルツェネッガーだけでなく、オリジナル・キャストのリンダ・ハミルトンもサラ役で再登場しました。

まず、驚かされるのは、1998年、サラ。コナーがビーチで息子のジョン・コナーと休息をとっているところに、いきなりシュワルツェネッガー姿のT-800が現れ、ジョンを撃ち殺して去っていくというシーン。未来の大事な鍵を握るジョンをいきなり死なせたら、今後の運命はどうなるのかまったく想像できません。

しかも、さらに驚くのは、ここに登場する3人は、まさに「ターミネーター2」の時の姿。まさか30年近く前に、今回の続編を考えて撮りだめしておいたなんて・・・さすがにそれはなくて、実はこの場面は、役者はすべてフルCGというからすごい。もうここまで来ると、何が本物で何が嘘なのか・・・

ともかく、「2」で消滅したスカイネットにかわり、新たにリージョンと呼ばれるAIネットワークが構築され、未来では同じように人類が絶滅の危機に瀕しているという設定。未来からタイムスリップしてくるのは、最初は女性兵士のグレース(マッケンジー・デイヴィス)。彼女は強化人間でスーパーパワーを持っているものの、力を使うと動けないくらい体調を悪くする。もう一人は新型のほぼオールマイティともいえるREV-9というターミネーター(ガブリエル・ルナ)。

REV-9は、メキシコの町工場で働くダニー(ナタリア・レイエス)を抹殺する目的で2020年にやってきました。グレースは逆にダニーを守ることが任務。REV-9は工場で父親の姿に変身して襲撃し、グレースが何とか助けますが、橋の上でREV-9とその分身に挟み撃ちにされ絶体絶命。

そこへ登場するのが、サラ・コナー(リンダ・ハミルトン)で、グレネードやバズーカを持ち出して一時的に撃退するところは、まさに新しいターミネーター・ワールドという感じ。サラはこれまでのことを説明しますが、未来が変わったためグレースはスカイネットは知りません。

グレースは、何故、襲撃されている場所がわかったのかと尋ねると、サラはターミネーターが現れると誰かからメールが届くのだと答えます。グレースがサラの携帯を解析すると、テキサス州からであり、メールを送信していたのはグレースが困ったら尋ねろと言われていた協力者と同一人物らしいことがわかります。

REV-9の襲撃を逃れ、テキサスに着くと現れたのは何と老けたシュワルツェネッガーでした。彼はジョンを殺した後、人間として暮らしていたのです。指令を遂行して目的が無くなったシュワルツェネッガーは、少しずつ人間を理解し、生きる目的を失わないようにタイムスリップを感知するとサラにメールを送っていたのでした。

最初は敵意を感じたサラも、次第に本気で人間らしい感情を持つようになったターミネーターを信じるようになります。そしてシュワルツェネッガーの協力のもと、ついにREV-9との最終決戦に挑むのです。

ということで、基本的にはサラが破壊した新しい未来に、新たな運命を背負った人々がいるということ。ところが、キャメロン復帰で威勢が良かった割には、興行収入も評価もいまいちという意外な結果になっています。

全体のストーリーとしては、未来が変わったので続編としては当然ありだと思うのですが、ジョンを死なせてしまったのが残念かもしれません。ジョンが死ななくても、未来は変わったわけですから、リンダ・ハミルトンを復帰させるためだけのことになってしまったかもしれません。

とはいえ、新登場の強化人間グレースの魅力はなかなかいい。この女優さん、相当頑張ったなというのがよく伝わってきます。仮に続きがあるとしたら、グレースがカイル・リース的な役回りなので、そこにヒントがあるのかもしれません。

それにしても、これだけシリーズ化されたにも関わらずそれぞれの作品がバラバラというのは・・・一つ一つの作品は、近未来アクションSFとしては、平均点を上回っていると思いますが、「ターミネーター」と冠することで評価を落としているように思います。

この最新作も本家キャメロンが参加したけど、やはりモチーフを利用した別個の映画という印象。今後も続くとしても、肝腎のシュワルツェネッガーが70歳を超えていますので、あまり大きな期待はできないかもしれません。