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2021年7月19日月曜日

猿の惑星 (1968)

ピエール・ブールの1963年の原作を、監督フランクリン・J・シャフナーで映画化したもので、そのヒットにより1973年までに続編が4作作られ、2001年にはティム・バートン監督によるリメイク、2011~2017年にはリブート・シリーズ3作が作られました。

しかし、特殊メイクを駆使した第1作での「人間のように」振る舞う猿人や、そして驚愕のラストのインパクトは圧倒的で、間違いなくシリーズを通しての最高傑作です。宇宙や科学的な道具が登場するわけではありませんが、SF映画の古典として忘れられない作品です。

6か月間の宇宙飛行の間に、相対性理論により地球ではすでに700年が経過していました。飛行士のテイラー(チャールトン・ヘストン)は、記録を済ませると仲間と同じく冬眠に入ります。さらに1300年が経過して、飛行艇はある惑星に不時着し、テイラー、ドッジ、ランドンの三人の飛行士は荒地が広がる土地に足を下ろします。

滝のある池にたどり着いた3人でしたが、水浴びをしている隙に衣服などを盗まれ、付近を探すと原始的な人間の集団を見つけるのです。彼らは何かに気が付き、一斉に逃げ出します。そこに現れたのは、馬に乗り銃を構える猿たちでした。猿たちの人間狩りにより、ドッジは殺され、ランドンは捕獲されます。テイラーも喉の付近を撃たれ捕まりました。

チンパンジーの動物心理学者のジーラ(キム・ハンター)は、青い目をしたテイラーに興味を持ちケガの治療を行います。ジーラは捕まえた「雌」のノバ(リンダ・ハリソン)を檻の中のテイラーに与え行動を観察するのです。テイラーは喉のケガで話せないが、文字を書けることを見せると、ジーラは驚ろき、猿が人類から進化したと考えている恋人のコーネリアス(ロディ・マクドウォール)に知らせます。

しかし、オラウータンのザイアスは、テイラーが危険な存在であると考え、テイラーを去勢しようします。テイラーは脱走しますが、再び捕まりついに「俺に触るな」と言葉を発し、猿たちを驚かせます。テイラーの存在を恐れるザイアスは裁判を開き、猿の社会不安を煽ったとして、ジーラとコーネリアスを有罪とします。

ジーラの甥、ルシアスの手引きで脱出したテイラーは、自分が不時着した猿たちの禁止地帯をノバも連れ目指します。追ってきたザイアスに、コーネリアスは以前発掘調査した場所を見せ過去に人類の文化があった証拠を見せます。しかし、ザイアスはかたくなに信じない。

実は、ザイアスは人類が猿類より前に文明を持っていたこと、人類がお互いに殺し合いをして滅亡していったという伝聞を知っていたのです。テイラーはノバと共に、海に沿ってさらに奥地へと去っていきました。そして、何とテイラーが目にしたものは、焼け焦げて瓦礫と化した自由の女神像でした。テイラーは「ここは故郷だった。ついにやってしまったんだ、バカ野郎」と慟哭するしかありませんでした。

今の我々人類が猿たちを見て思うことと正反対のことが、この猿社会で起こっています。地球の支配者たる人間の醜さを猿に例えて表現する発想は、当時としては画期的でした。また、それを可能にしたのは、今でも色褪せない猿の特殊メイクでした。

メイクを考案し施したのはジョン・チェンバースで、この功績によりアカデミー名誉賞を授与されています。俳優の顔と一体となった、確かに猿としか見えない、にもかかわらず俳優の表情の変化がしっかり表に出るメイクは素晴らしい。彼はまた、「スター・トレック」のスポックの耳も作っています。

猿類は、支配・指導者の階級はオラウータン、知識層や一般市民はチンパンジー、兵士や労働階級はゴリラという分け方をしています。猿に対する先入観の現れのようですが、現実に存在する人類の格差を皮肉っているのだろうと思います。裁判でテイラーの主張に対して、三匹のオラウータンが「見ざる言わざる聞かざる」のポーズをするところは笑える。

そして、どこか別の惑星での出来事と思ってみていた視聴者は、ラストの自由の女神像の登場によりテイラーと一緒に衝撃を受けます。この映画は東西冷戦の真っ只中という時代背景の中で作られたので、人類が過ちを犯した結果の可能性の一つとして、強烈なメッセージを提示しているのです。