2021年7月22日木曜日

AKIRA (1988)

大友克洋原作のマンガを作者自ら監督・脚本し、当時としては画期的な技術をふんだんに用いて映画化したもの。世界中で高い評価を受け、いまだに大人のための近未来SF映画として上位にランキングする傑作とされています。音楽を担当したのは芸能山城組で、和楽器を駆使した現代的な独特の響きが絶賛しれました。

実はこの話の舞台は、1982年に第3次世界大戦勃発により世界が破壊された後、復興した新首都、ネオ東京での2019年ということになっています。しかも、2020年にオリンピックをひかえてスタジアムが急ピッチで建造されているという設定(しかも、それが壊滅!!)。

まるで、コロナ渦によってオリンピックの計画がぐちゃぐちゃになった昨年を予見したかのような、大友の時代感覚の先取り感には驚かされます。30年くらい前に初めて見た時は、本当に東京2020があるなんて誰も思ってもみなかったし、それがこんなに混乱するとは想像だにしませんでした。

ネオ東京は大戦後巨大な街として生まれ変わりましたが、反政府活動をするゲリラも横行し不安定。不良少年の金田は、仲間の鉄雄らとバイクで暴走に明け暮れていましたが、ある日ゲリラが誘拐し連れ出したタカシと衝突事故によって鉄雄は軍に連れ去られ、金田は警察に捕まります。

軍の敷島大佐は、鉄雄がアキラと同じ能力を秘めていることに気が付きます。金田は、ゲリラに参加する少女ケイに一目ぼれします。金田に対して大きなコンプレックスを持つ鉄雄は、能力の開花と共にコンプレックスが怒りに昇華し頭痛がひどくなっていきます。

実は、特殊能力を持つアキラ、タカシらのこどもたちを軍が秘密裏に研究していたのですが、1982年に特に能力が高いアキラの暴走が東京を壊滅させ、世界大戦の引き金となったのです。アキラは研究のためバラバラにされ、オリンピック・スタジアム建設現場の地下深くに隠蔽されていました。

アキラに匹敵する能力を持ち始めた鉄雄は、どんどん増長しアキラの封印を解きますが、自らの肉体もコントロールできなくなり、膨張・肥大化してついにアキラの精神世界に消えていくのです。

映画制作時、原作は連載中で最終的には原作の半分までが映画化されました。映画版では、大友自ら一定の話の帰結をさせていますが、登場人物たちの、特にアキラと鉄雄を中心とした謎は残る。

人類が獲得するかもしれない新しい能力とそれを利用したい体制側、利用されその運命に従う者、能力をもてあまし飲み込まれる者などが織りなす、いわゆるハードSFと呼ばれる内容で、映画だけではその全容を把握することは難しいかもしれません。

ハリウッドで実写映画化の計画は、だいぶ前からあるものの、あまりにも大きな世界観を描くことの困難から、計画はなかなか軌道に乗らないようです。