70~80年代に青春時代をすごした自分たちにとっては、当時の映画は、基本新作を劇場で見るか、あるいはテレビで旧作を楽しむ(ほぼ毎日各局でゴールデンに番組がありました)しかありませんでした。やっとビデオテープが普及し始めた頃で、まだまだハードもソフトも簡単に手が出せる値段ではありません。90年代になるとレーザーディスクを経てDVDが登場し、2000年以降は映画は簡単に繰り返し楽しめるメディアとなりました。このディスク時代の映画は、比較的簡単に今でも手に入れやすい。
そういう意味では、メディアが無かった時代の人気スター俳優の作品は、今でも活躍しているクリント・イーストウッドのような例を除いて、ほとんど忘れ去られようとしている印象がありとても残念。入手したくてもDVD化されていなかったり、ましてやBlurayが無いことは珍しくありません。シリーズ化されて今でも人気があるものやごく少数の名作DVDはあっても、けっこうプレミア価格になっていたりします。
例えば、スティープ・マックィーンと言えば、60~70年代のアメリカのトップ・スターの一人。今どきは「それでも夜は明ける」の監督と思われていますがもちろん別人。あれだけ人気だったスティープ・マックィーンの出演作も、けっこうコレクションするのは大変です。
スティープ・マックィーンは、1930年生まれ、1958年のテレビの「拳銃無宿」でブレイク。アクション・スターとして地位を確立し、多くのヒット作に出演。しかし、悪性の胸膜中皮腫により、わずか50歳で1980年に亡くなりました。
映画では1960年に出演したこの映画は、マックィーンの名を世界中に知らしめたもので、多くのスター俳優が共演していること、特に日本ではこの映画が黒澤明の名作「七人の侍」のリメイクであったことから、ことさら話題になりました。
舞台は国境に近いメキシコの貧しい町。人々は収穫の頃に毎年やって来る盗賊カルベラ(イーライ・ウォラック)に、作物を奪われ苦しんでいました。ミゲルは勇敢なガンマンであるクリス(ユル・ブリンナー)に戦い方を教えて欲しいと申し出ますが、クリスはガンマンを雇ったほうが早いと話します。
クリスはヴィン(スティーブ・マックィーン)、チコ(ホルスト・ブッフホルツ)、オライリー(チャールズ・ブロンソン)、ブリット(ジェームズ・コバーン)、ハリー(ブラッド・デクスター)、リー(ロバート・ヴォーン)を仲間に引き入れます。そしてカルベラとの決戦が始まるのでした。
「七人の侍」の東宝が許可したリメイクとは言っても、監督の黒澤明、共同脚本の橋本忍、小国英雄には話が通っておらず、黒澤の東宝に対する不信感の引き金になったことは有名な話。その後、東宝は「用心棒」のリメイク(クリント・イーストウッド主演)も黒澤に全く相談することはありませんでした。
監督は西部劇や戦争物などの多くの名作アクション映画を生み出したジョン・スタージェスで、音楽は巨匠エルマー・バーンスタインが作曲したテーマは大ヒットしました。元が文句なしの名作ですが、西部劇としての換骨堕胎は大変うまく、基本的な流れは同じでも別の作品として十二分に楽しめます。