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2023年10月31日火曜日

ハロウィン (1978)

キリスト教カトリックの暦に諸聖人の日(All Saints' Day)というのがあって、毎年11月1日をすべての聖人を記念し、古くは万聖節とも称されていました。神聖なもの、あるいは不思議な力持つものをhallows、そしてすべての聖人はAll Hallowsとも呼ばれました。近世になって11月1日の前日、つまり10月31日の夜を「All Hallows' evening」として楽しむ民間行事として定着したと言われています。

これがしだいに短くなってHalloweenとなったわけで、ジャック・オー・ランタン(お化けカボチャ)と呼ばれる、黄色カボチャを顔のようにくりぬいて、中にロウソクを立てたものがシンボルとされました。日本では80年代以降に商業的な利用で知られるようになり、90年代の東京ディズニーランドでのイベントにより定着したと言われています。

1974年に監督デヴューしたジョン・カーペンターは、監督のみならず脚本、音楽、製作までマルチにこなす鬼才として知られ、「ハロウィン」は低予算ながら大ヒットとなり、シリーズとして何度も取り上げられるようになりました。

1963年のハロウィンの夜、閑静な住宅が並ぶハドンフィールドの街。6歳のマイケル・マイヤーズは、姉を刺し殺し、精神病院に収容されました。それから15年後、マイケルの主治医であるサミュエル・ルーミス(ドナルド・ブレザンス)は、裁判所にマイケルを出頭させるため病院を訪問しますが、マイケルはルーミスの車を奪って逃走してしまいます。

ハロウィンの日、ハドンフィールドの高校生、ローリー・ストロード(ジェイミー・リー・カーティス)は、ずっと白塗りの仮面をつけた何者かに後をつけられていることに気が付きます。ハドンフィールドに到着したルーミスは、保安官にマイケルが危険な人物であることを説明し、今では空き家となっているマイヤーズ邸を捜索し彼が戻っていることを確信します。

ローリーの家の向かいに住むアニーは、妹のリンジーをローリーに預けパーティーの準備のため車に乗り込んだところを絞殺されてしまうのでした。さらに友人のリンダとボブがアニーの家にやってきて、二人ともマイケルの餌食になってしまうのでした。不審な気配にローリーはアニーの家に向かうのです。

後年のサイコキラー・キャラクターの先駆けともいえるブギーマン、マイケルの登場は画期的ですが、いわゆる血が飛び散る殺しの場面、いわゆるスプラッター的な描写はありません。カーペンターは、効果的な場面転換、主観描写などの演出と、自ら作った繰り返される不気味なテーマ曲などよって、心理的恐怖を盛り上げていきます。

ルーミスは「マイケルには何も無い」と言いますが、それは殺す動機も罪悪感も何もないということ。さらに倒されても倒されても襲ってくる終わりの見えない恐怖の連続が、しだいに見ている者も主人公と同化していく様は、今では当たり前ですが、映画が観客にショックを与えるための教科書のような作りと言えます。

カーペンターが尊敬するハワード・ホークス監督の「遊星からの物体X」(後にカーペンター自らリメイク)が、映画の中のテレビで放送されていて、台詞がこのストーリーにも効果的にリンクしているところは興味深い。「悲鳴の女王」とも呼ばれるジェイミー・リー・カーティスは、これがデヴュー作ですが、早くもその片鱗を見せてくれました。

もっとも、この手の映画はあまり好みではないので、ハロウィンという時節柄とジョン・カーペンター監督作ということが無ければ、進んで見ることはありません。