原作は松本大洋のマンガ。監督は曽利文彦、脚本は宮藤官九郎。主人公の挫折と復活を2時間弱の映画の中にうまくまとめ上げました。
舞台は神奈川県の藤沢市。小学生の時から通称ペコの星野(窪塚洋介)と通称スマイルの月本(井浦新)は、オババ(夏木マリ)が経営すると呼ばれる町のタムラ卓球場で切磋琢磨してきました。
ペコは前陣速攻型で攻めまくり、スマイルはカットマンという特徴があります。二人は片瀬高校の卓球部に所属していて、コーチはかつてバタフライジョーと呼ばれた優秀な選手だった小泉(竹中直人)です。小泉はとくに月本に目をかけていました。
インターハイに出場した二人でしたが、ペコは同じタムラで卓球を始め、今まではカモにしていた海王高校の佐久間(大倉孝二)に敗れ、意気消沈してラケットを燃やしてしまいました。スマイルは中国からの辻堂高校への留学生、卓球エリートのチャイナ(サム・リー)を追い詰めますが、相手にすぐ同情してしまう悪い癖によって敗れてしまいます。海王高校の主将の風間(中村獅童)はチャイナを簡単に下し優勝しますが、風間は月本に注目していました。
やっとやはり卓球が好きだと思えたペコは、あらためてオババに一から卓球を教えて欲しいと頭を下げます。オババは基礎体力作りからペコを鍛え直し、ペコの良いところを伸ばす戦法を伝授していくのでした。
そして、またインターハイの時期となり、ペコはチャイナを倒し、さらに風間の対戦しますが、膝を痛めておりピンチを招きます。しかし、楽しいから卓球をすることを理解したペコは、ついに風間を退け決勝に進むのです。決勝の相手はスマイルでした。
卓球の実演シーンは何度も出てきますが、もちろん俳優たちがそんなにプロ・レベルのラリーをできるはずはなく、ボールは全部CGで描かれています。地味なCGですが、それでも本当に派手なラリーに見えるので、なかなか楽しい。
スポ根ものの流れとしては挫折と復活は定番ですが、この映画の面白さは主人公のペコと同じか、時にはそれ以上にスマイルの存在がクローズアップされていること。スマイルはこどもの頃から、快活なペコとは対照的に物静か。卓球をしていても相手を蹴落とすのを好まず、実力があるのに抜いた試合をしてしまうのです。
スマイルはこどもの時にいつも助けてくれたペコが自分にとってヒーローであり、ペコが本当に実力を発揮するのを心待ちにしていたのです。この流れが、実に丁寧に描かれているので、ある意味スマイルが主役と思ってみても十分に楽しめると思います。