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2023年10月16日月曜日

忍びの国 (2017)

現在の三重県の西部山間に伊賀国があり、農耕に厳しい土地であったため鎌倉時代から人々は傭兵として各地に出向くことが多かったらしい。その中で、厳しい修練が行われ忍者と呼ばれるゲリラ戦格闘集団が形成されます。


伊賀のすぐ北方には甲賀があり、ここにでも忍者が養成されていましたが、彼らは一人の長の元に結束しつつも多数決を重んじたのに対し、伊賀では金銭契約により主従が決まり実力者による決定が重んじられました。

織田信長の次男、信雄(のぶかつ)は1558年生まれで、信長が伊勢に攻め込んだ際に領主北畠家に養子として入り、その後1576年に北畠一族を粛清しています。1579年に、信長に無断で伊賀出兵を行い大敗を期し、信雄は信長から大叱責を受ける。1581年にあらためて信長より伊賀平定を命じられ、大軍勢により鎮圧に成功しています。

1582年、本能寺の変により信長と長男信忠が討たれると、信雄は伊勢から北上しますが、伊賀残党の抵抗に合い、明智光秀の成敗は三男信孝と羽柴秀吉により遂げられます。その結果、織田家の家督を決める清須会議では、信雄と信孝が対立。のちに信雄は秀吉と結託して、柴田勝家と組む信孝を攻め滅ぼすのです。

このくらいの史実を知っておいて・・・映画です。ある程度、事実に基づいていますが、時系列は必ずしも正しくはありませんし、主人公は完全なフィクション。和田竜がもともと脚本として執筆した小説が原作。監督は中村義広です。

伊賀の忍者は、グループごとに小競り合いを繰り返し、有力者の一人である下山甲斐(でんでん)の息子、下山平兵衛(鈴木亮平)は、弟を同じ伊賀の無門(大野智)に殺されたことで、金によって仲間であっても殺す伊賀人に疑問を感じます。平兵衛は、義父である伊勢国の北林具教(国村隼)を討った織田信勝(知念侑李)に伊賀攻めを進言するのです。

無門は幼児の時にどこからともなく買われてきて、徹底的に伊賀流を教え込まれた優秀な忍者でした。よそからさらってきたお国(石原さとみ)を妻としていましたが、お国は金が溜まるまでは一切手出しをさせてくれません。

信勝は伊賀に金で軍門に下ることを提案し、受け入れた伊賀流は信勝のために城を整備しますが、信勝軍勢が到着したとたんに城を焼き払い、金だけをせしめるのでした。怒った信勝は、ついに大軍勢で伊賀攻めを開始。自衛のためどこからも金が出ないと知った大多数の伊賀人は逃亡します。無門もお国を連れて逃げようとしますが、お国の言葉によって思い直しすのでした。

歴史をもとにしたエンターテイメントですから、細かいことを気にしていたらとても見ていられませんが、ある意味伊賀忍者の本来の姿を浮き彫りにすることは成功していますし、出演者の頑張りでそこそこアクション・シーンも見れる。

鈴木亮平の他、伊勢谷友介、マキタスポーツ、満島新之助らの脇役陣が盛り立てて、逆に主演の大野智のふだんの「冷めた」雰囲気がより強調されている感じで、それはそれで悪いキャスティングではありません。ただ、昨今問題視されているいわゆる「ジャニーズ枠」であろう知念侑李の信勝は、偉大な父に対するコンプレックスによる空威張りとしても弱々しすぎます。

お国の行動も理解しにくいのですが、最後の行動などにつながる無門に対する心情をもう少し盛り込めるとよかったように思います。いずれにしても、伊賀人の宿命みたいなところに焦点が当たればよかったんですが、ところとごろでマンガ的な展開が挟まれたのは残念というところ。