近年では「♪みんなまぁるくたけもとピアノ」というCMソングでお馴染みだと思いますが、若者には「何だろうこの人、しかもけっこう昔から同じCM流して・・・」くらいにしか思われていないのかもしれません。
タケモトピアノは、晩年ずっと病気療養をしていた財津さんの生命線だからと、損得度外視でこのCMをずっとテレビに流し続けていたという話を聞いたことがあります。
でも、本当にすごい人なんです。昭和の芸能・・・それは大衆演劇、お笑い、歌謡などなど、思いつくものすべてに秀でた芸を持っていて、けして看板スターとは言えませんでしたが、着実に存在感を示した人。
昭和9年に熊本に生まれ、昭和28年上京し喜劇王「エノケン」こと榎本健一に弟子入り。昭和37年、吉本新喜劇に参加して頭角を現しますが、それまでの10年弱の下積み時代は相当経済的にも大変だったらしい。
何故?
自分の父親が知り合いだったから。父親は熊本から東京にでてきて開業した内科医でしたが、同郷のよしみで下積み時代の財津さんにいろいろ便宜をはかったらしい。レコードが発売されて、当時のお礼を言うためにわざわざうちに届けに来たんです。
和田誠が描いたイラストがジャケットに使われ、なかなかセンスの良いジャケットで、ジャズを聞き出していたので「アレクサンダーズ・ラグタイム・バンド」にわくわくしたレコードでした。
そんなわけで、自分が直接知っている唯一と言ってよい芸能人が財津さんなんです。ちょっとしたニュースになっても、いつも気にかけていましたが、つい訃報に接するとは、重ね重ね残念です。