2023年10月27日金曜日

僕だけがいない街 (2016)

三部けいの2012年に連載が始まったマンガが原作で、完結するのは2016年4月なので、実写化されることになったときはまだ連載中。監督は平川雄一朗で、途中からは原作を離れた展開となっている映画。2017年にはNetflixでドラマ化もされています。

藤沼悟(藤原竜也)は宅配ピザ店の配達の仕事をしていましたが、自ら「リバイバル」と呼ぶ特殊能力を持っていました。これは本人の意思とは関わりなく、何が起きるときに突然時間が戻ってしまい、起きることの原因を取り除くまで繰り返されるというものでした。


配達の途中でリバイバルが発生した悟は、交通事故を未然に防ぎますが自分は入院。見舞いに来た同僚の片桐愛梨(有村架純)と親しくなりました。事故の知らせで悟の母親、藤沼佐知子(石田ゆり子)もやって来て、しばらくアパートにいることになるのです。退院して、佐知子と買い物に出た時、再びリバイバルが発生し、佐知子がこどもを車に誘っていた男と目を合わせたことで何かを未然に防いだらしい。

18年前、北海道にいた悟の周囲で連続小児誘拐殺人事件がありました。犯人として白鳥潤(林遣都)という若者が逮捕されましたが、当時、悟は白鳥は犯人ではないと主張したことを思い出します。悟がアパートに帰ると、佐知子は包丁で刺されて殺されていたのです。悟は今こそリバイバルが起これと念じるのです。

気が付くと、悟は小学生の時にリバイバルしていました。小学生の悟(中川翼)は事件で殺された同級生の雛月加代(鈴木梨央)を守ることを決意します。しかし、加代は母親から虐待によって死んでしまいます。そこで現在に時間が戻り、その場から逃げ出した悟は警察から追われる身になっていましたが、愛梨は悟を信じて匿ってくれるのです。

しかし、今度は愛梨の家が放火され悟は何とか愛梨を助け出す。悟は佐知子が直前に電話していた昔の同僚、澤田(杉本哲太)と連絡を取ります。澤田は記者で事件をずっと調査していて、佐知子は目が合った男が、実は以前の事件の真犯人ではないかと考えたのです。病院から抜け出した愛梨は、河川敷で悟と合流し犯人と会っているかもと話しますが、つけてきた警察によって悟は逮捕されてしまいます。

再び18年前、加代が死ぬ前日に戻った悟は、加代を学校の裏の廃バスに隠すことにします。しかし、悟はバスの中に白鳥が犯人とされた証拠の品があることに気が付きます。担任の八代(及川光博)の連絡で、ついに児童相談所が動き、加代を無事に保護することが出ました。しかし、リバイバルは終わらない。悟は他の事件も防いで、真犯人を見つける必要を理解するのでした。

SF映画では、時間が戻って同じことが繰り返される状況を、一般に「タイム・リープ」と呼びますが、そもそもその元祖と呼べるのは筒井康隆の「時をかける少女」ですし、トム・クルーズ主演でヒットした「オール・ユー・ニード・イズ・キル」の原作も桜坂洋で日本人。もしかしたら、この手の発想は日本人が得意なのかもしれません。

タイム・トラベルでは現在や未来が変わってしまうので、過去を変えることは禁忌というのがよく言われることですが、タイム・リープでは積極的に過去に介入してしまうところが特徴かもしれません。この映画でも、主人公が過去に移動しているわけではなく過去をやり直すということで、こどもの自分と鉢合わせのようなことはありません。

タイム・リープを現実の現象として許容できるのなら、この映画は実に複雑な話をわかりやすく、かつ面白くまとめ上げていると言えると思います。映画の公開後に完結した原作の結末と違うところは、むしろ作者が映画を意識して変えたのかもしれません。映画という限られたパッケージの中では、この結末はありだと思います。

ただ、ある程度配役で誰が犯人なのかは想像できてしまうところが、ややもったいない。まぁ、重要な役どころですから、あまり無名の俳優さんを使えないというところでしょうがない。藤原竜也の心を開き切らない抑えた演技はさすがなんですが、それにも増してこども時代を演じた中川翼くんがなかなかいい。最近では主役の映画もあって注目株です。