原作は宮部みゆきによるミステリーで、連載は足掛け10年、原稿用紙4700枚に及ぶ超大作です。「事件」、「決意」、「法廷」の三部構成になっていますが、映画は「前編・事件」、「後編・裁判」の二部構成で2015年3月と4月に続けて公開され、こちらも合わせて4時間半の大作になりました。
監督は成島出、脚本は真辺克彦が担当し、出演者の生徒たちはオーディションによって、ほとんどが演技経験が無い者が選ばれました。特に主人公の一人、藤野涼子は役名がそのまま芸名となっています。
1990年、クリスマスの朝、江東区立城東第三中学校の校庭に雪に埋もれて柏木卓也の遺体が発見されます。警察は屋上からの飛び降り自殺と断定しますが、不良の大出俊次に殺されたという匿名の告発状が届きます。担当刑事の佐々木玲子と校長の津崎は、告発状を表沙汰にせずに調査をします。
告発状を書いたのは大出のいじめ被害を受けていた同級生の三宅樹里と浅井松子でしたが、マスコミに知れるところとなり、担任の森内恵美子は攻撃の矢面に立たされ辞職、校長も辞めざるを得ないことになります。しかし、佐々木刑事は保護者会で告発状が虚偽であると説明したため、浅井は三宅に会うため家を出たところ交通事故で死んでしまいます。
柏木の遺体の第一発見者であった学級委員長の藤野涼子、野田健一は真実をはっきりさせるため、卒業制作の一環として学校内で陪審員形式の裁判で関係者を一堂に集めることを提案します。そこへ柏木と小学校での同級生だった神原和彦が、弁護士役をやりたいと名乗り出てきたため、藤野は検察官を務めることになりました。
いよいよ4日間に渡る裁判が始まりました。判事、陪審員、検事、弁護士、被告である大出らのすべてが生徒たちです。証人には、佐々木刑事、辞めた森内らも証言し、さまざまな仮説が検証されていきます。しかし、藤野は神原の裁判に参加した真意を測りかね、裁判開始後もいろいろな状況証拠を調べていました。そして、最終日。藤野は弁護人であるはずの神原を検察側証人として証言させることにしたのです。
映画は藤野涼子が教師として城東第三中に赴任してきたところ、現校長に過去の伝説となっている校内裁判のことを尋ねられるて答えるところから始まります。大人になった涼子を演じるのは尾野真千子、涼子の両親は佐々木蔵之介、夏川結衣。校長は小日向文世、森内は黒木華、佐々木刑事は田畑智子、大出の母に江口のり子、三宅の母に永作博美、神崎の母に森口遥子などのベテランが固めています。
生徒役は、神崎役の板垣瑞生、三宅役の石井杏奈、野田役の前田航基くらいが知られているだけで、他はほぼ演技初めてというのはすごいこと。主役の藤野涼子を演じた藤野涼子は、その後も俳優として現在も活動しています。
内容として、確かに2時間の1本の映画に納めるのは無理がある内容で、前後編に分かれたのは正しい判断だと思います。ただし、やはり長い。本物の犯罪事件の映画のようなアクション部分が無いし、生徒たちの捜査も現実的で地味ですから、なかなか盛り上がりが少ないのが難点。
やはりその中で、生徒が裁判をするという過程が映画だけ見ている自分には現実的ではないではないし、法的拘束力が無い中で真相が暴かれるのか懐疑的にならざるを得ません。警察が間違うということがフィクションの世界ではありますが、警察が自殺としたものをひっくりかえそうとするには説得力不足は否めません。
それらの大前提が許容できるのなら、後編の裁判はそれなりの緊迫感があって興味が途切れない作りになっています。これは映画的なうまさというよりは、原作者の宮部みゆきの力が大きいように思います。