2010年4月27日から、日本では殺人罪の時効が撤廃されました。しかし、4月26日までに解決していない事件については従来の死刑相当は25年が適応されます。この映画はこの時効が大きく関与するので、事件が起きたのは1995年、5人が殺された連続殺人事件で最後の発生が4月26日で、4月27日に時効が撤廃されたということになっています。
1995年、東京で4件の連続殺人事件が発生します。いずれも被害者は絞殺され、家族を対面でその様子を見せるという残酷な手口でした。当時新人刑事の牧村(伊藤英明)は、4件目の事件で犯人の右肩に発砲しますが、逆に顔を切りつけられ今も痛々しい傷を残しています。
犯人は、次の標的は牧村だと通告してきたため、自分のアパートに急行した牧村たちは爆発に巻き込まれ、先輩刑事の滝(平田満)が殉職、同居していた妹の里香(石橋杏奈)が行方不明になっていました。しかし犯人逮捕に至らず、ついに一連の事件は2010年4月26日に迷宮入りとなってしまいます。
それから7年、突然曽根崎雅人(藤原竜也)と名乗る人物が、「自分が犯人である」と名乗り出る手記を発表するのです。曽根崎は大々的な会見を開き、本のサイン会まで行う。その会場で、被害者の遺族である美晴(夏帆)や戸田(早乙女太一)らが曽根崎を襲いますが、牧村は曽根崎を守るのです。さらに、曽根崎は遺族の山縣(岩松了)の病院に突然現れ土下座するパフォーマンスを行います。
事件発生時から取材に奔走したジャーナリストの仙堂(仲村トオル)は、現在はニュース番組を持っており、曽根崎に出演を依頼します。船頭は曽根崎に手記の目的などを訪ねる一方、動機やあまり知られていない牧村の妹のことが書かれていない点などの疑問を投げかけます。
放送後、番組を見た「真犯人」から曽根崎は偽物であるとし、犯人である自分でないと撮れない映像がネットに流されました。仙堂は、曽根崎と牧村、そしてあらたに登場した「真犯人」を番組で一堂に会させることにします。そして、覆面を被った「真犯人」もテレビに登場することになりました。
元ネタが映画なので、全体の構成は最初からある程度出来上がっていて、無理なところはありません。ただ、登場人物の描き方のウエイトに明らかな差があるので、曽根崎の行動は真犯人をおびき出すための作戦であることはすぐにわかるし、犯人についても正体も時効とのからみも容易に想像できてしまうのはちょっと残念。
その分、犯行の動機について社会派的な面を強調することで謎を深めるようにしているように思います。ただし、その動機についても特殊な環境下でしか体験できないトラウマが原因にあるので、共感はなかなか難しい(もちろん共感する必要はありませんが)。
遺族の怒りを気にせずこ憎たらしく「自分が犯人」と名乗り出る役は、藤原竜也にはぴったりで、また伊藤英明も泥臭い直情型刑事に実にうまくはまっています。彼らの熱演も相まって、緊張度の途切れない映画作品であることは間違いありません。