2023年10月24日火曜日

ノイズ 【noise】 (2022)

もっかのところ藤原竜也主演の映画としては最新作。原作は筒井哲也のマンガ。今どきマンガが原作というのは驚きませんが、マンガはヴィジュアルが初めから固定してしまうので、映画化についてはハードルが上がると思うので、作りてにとってはなかなか大変。

この作品も、マンガにしては過疎化が進む孤島という社会問題が底辺にあり、小さな島に生じた小さな「ノイズ」がどんどん波紋を広げていく様は、なかなかの構成力です。

小御坂(渡辺大知)という前科者が孤島の猪狩島にやってきますが、社会更生の世話人を絞殺し島内をうろつきます。島中の期待を背負って黒いちじくを名産にしようと頑張っている泉圭太(藤原竜也)は、妻の加奈(黒木華)、娘の恵理奈(飯島莉央)と暮らしていますが、恵莉奈の姿が見えなくなったため、不審な挙動の小御坂を発見し問い詰めます。

圭太の同級生で農園を手伝う田辺純(松山ケンイチ)と新任警察官の守屋真一郎(神木隆之介)が駆けつけますが、圭太が小御坂と揉みあいになり倒れた小御坂は頭を打って死んでしまいます。島を活気づける大事に時期だったため、三人はこのことを隠蔽することにします。

しかし、そのことに気が付いた町長(余貴美子)が現れ、島のためには圭太の農園が必要なので、真一郎にあんたが犯人として自首しなさいと言い放ちます。そこへ長老の横田(柄本明)がやってきて争いになり町長が横田を殺してしまったため、田辺は町長をスコップで殴り殺してしまうのでした。

島を守る、島の人々を守るという歪んだ気持ちが次第に島民を巻き込んで、嘘が嘘を広げていくことについに真一郎は耐えきれなくなり、自分がすべての犯人だとメッセージを残して拳銃自殺してしまいました。

そこへ死んだはずの町長の携帯から、島民に一斉メールが送られ来る。そこには「死体はイチジク農園。犯人は圭太」という内容でした。小御坂の死体が発見され、圭太はついに自白してしまうのでした。しかし、畠山刑事(永瀬正敏)は、そこには圭太も知らなかったもう一つの秘密が隠されていることを確信していました。

「デス・ノート」のコンビの藤原・松山による、狭い島で育った長い年月をかけて熟成された親友同士の深く刻まれたコンプレックスが影の主題として存在します。そして、開かれた密室ともいえる閉塞感の漂う小さな島では、山奥の過疎化した農村と同じような集団意識が現実の世界でも実在するだろうことは容易に想像できます。

島の産業の担い手として大きな期待がかかるのは、圭太が島の出身者であるからで、他所からの移住者であれば、むしろ相手にされなかったかもしれません。島の人々がいつの間にか隠蔽工作の共犯者となっていく様は、多少強引なところはありますが、確かにそういうことも起こりうると感じさせる絵作りだと思いました。

監督はポルノ映画出身の廣木隆一で、原作では描かれる他所者である刑事たちの主観をできるだけ排除して、島民主体に集中させたのは正解のようです。ただ、精神的に追い詰められ自殺してしまう真一郎については、もう少し踏み込んでもよかったかもしれません。

町長が小御坂を迷い込んできた小さなノイズと表現しましたが、圭太と田辺の間にもノイズがあり、島全体でも最初は無視できたノイズがどんどん増幅して耳をふさぎたくなるほどの騒音になってしまう。そうなると後は暴発して、坂を転がり落ちるしかないという状況が、抑制された映像の中でうまく表現できていた作品です。