もともとの原作は江戸時代後期(1814~1842年)に曲亭馬琴による「南総里見八犬伝」で、室町時代後期を舞台に、安房里見家の伏姫と八犬士の伝奇小説です。その後、多くの派生作品を産んでおり、歌舞伎、新劇などでも数多く取り上げられています。映画化も多数ありますが、この映画は鎌田敏夫が書いた「新・里見八犬伝」をもとにしています。
監督は深作欣二、特殊撮影を駆使し、音楽は角川得意の英語歌詞によるロックを使用するという、一般的な時代劇とはまったく異なるアプローチが話題になりました。全体の音楽を担当したのは矢沢永吉のバックバンドをしていたNOBODY、松田優作の諸作や、ここまでの角川映画を担当した仙元誠三が撮影をしました。
領主、蟇田定包(ひきたさだかね)は玉梓(たまづさ)の色香に迷い民衆の怒りを買います。里見義実(さとみよしざね)はついに定包を討ちますが、断末魔に玉梓は里見一族を呪うのです。そのため隣国から攻め込まれた里見は飼い犬の八房(やつふさ)に助けられ、義実の娘、伏姫は八房と共に城を出ます。追ってきた里見の配下の八房を狙った矢は伏姫を射抜き、死ぬ間際に8つの光る玉が飛び散りました・・・というのが100年前の話。
そして、魔物の力で蘇った玉梓(夏木マリ)、その息子、蟇田素藤(目黒祐樹)は、里見一族を皆殺しにしますが、静姫(薬師丸ひろ子)だけを取り逃がしてしまいます。逃げ延びた静姫のもとに犬山道節(千葉真一)と犬村大角(寺田農)が現れ、光の玉を示し姫を守って魔物と化した玉梓らを倒すと話します。そのために、あと6人の光の玉に導かれる同志を探さなければなりませんでした。
もともと百姓で武士になりたいと思っていた犬江親兵衛(真田広之)は、褒美欲しさに静姫をさらいますが、蟇田軍のあまりの非道を目の当たりにして、静姫を連れて洞窟に逃げ込みます。そこで、道節、大角らと相対しますが、犬塚信乃(京本政樹)、犬坂毛野(志穂美悦子)、犬田小文吾(苅谷俊介)、犬川荘助(福原拓也)らが光る玉を持っていて次々に同志に加わっており、親兵衛は追い返されてしまいます。
そこへ玉梓が現れ、親兵衛は二人目の息子の生まれ変わりで、その証拠に自分と同じ痣があると話しアジトである館山城に連れて行きます。しかし、玉梓の部下である犬飼現八(大葉健二)は今までのの悪行から目が覚め、抵抗する親兵衛を助けて城を脱出するのです。そして、親兵衛と現八にも光る玉が現れるのでした。彼らを追ってきた玉梓は、静姫を拉致して消えていきます。
8つの光る玉がそろい、伏姫の霊から光る弓矢を授けられた八犬士は、館山城に向けて出発します。しかし、城の頑強な守りと大挙して押し寄せる敵との戦闘で、一人また一人と犬士は倒されていくのでした。そして親兵衛が最後の一人となり、静姫を助けると静姫が放った光の矢によって玉梓は絶命し、城は一気に崩れ去っていくのでした。
何しろ千葉真一率いるJapan Action Clubのトップスターだった志穂美悦子と真田広之が参加して、アナログな時代のアクションとしてはなかなか見応えがあります。とは言え、全体的に前時代的な大袈裟な演技と妙な間が空くセリフ回しは、やはり古さを感じさせます。
135分の映画で犬士がそろうまで100分を使うのはしょうがないのですが、それでも各犬士のいろいろな因縁が駆け足過ぎて、集まった即決戦という流れはバタバタした感じです。その中で、薬師丸と真田のラブ・シーンだけは、何しろまだ十代だった薬師丸ですから、直接的な演技はなくて官能的な顔だけ延々と見せられるのには興覚めします。反対に夏木マリの全裸がちょっと出てくるのも、サービスし過ぎという感じ。
とは言っても、もう40年前の作品ですから、当時はそれなりに新しい時代劇を感じさせるいろいろな工夫は評価すべきポイントです。この映画の数年前に、日本でも大ヒットした「スター・ウォーズ」と「レイダース 失われた聖柩」へのオマージュ的なシーンも随所にあり、単なる薬師丸&真田のアイドル映画にしなかったところも愉快です。
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2023年10月1日日曜日
里見八犬伝 (1983)
1976年の「犬神家の一族」を手始めに日本映画界に旋風を起こした角川映画が、80年代はじめにピークを迎えた頃の映画。特に1978年に「野生の証明」でデヴューした薬師丸ひろ子は、1981年の「セーラー服と機関銃」、「ねらわれた学園」、1983年の「探偵物語」と本作など、角川ブームを牽引しました。