年の瀬に出向した豪華客船ポセイドン号は、老朽化してこれが最後の航海でした。乗員・乗客は1400名で、皆さまざまな期待を込めて乗船していました。
新年のカウント・ダウンが終わり、大広間には多くの客が集まり新年をお祝いしていました。しかし、近海で巨大海底地震が発生し、山のような大津波がポセイドン号めがけて押し寄せてきます。船は転覆、上下がさかさまになってしまいました。
フランク・スコット牧師(ジーン・ハックマン)は、「神は弱きを助けるのではない。神に祈るのではなく、自分に祈れ。そして立ち向かえ」という独自の宗教観を持っています。浸水してくることを想像し、スコットは助かるためには船底に向かって登っていくしかないと言います。
一緒に行動を共にしたのはスコットを含めて全部で10人。マイク・ロゴ(アーネスト・ボーグナイン)は強面の警察官で、妻のリンダ(ステラ・スティーブンス)との新婚旅行の途中。ジェームズ・マーティン(レッド・バトンズ)は雑貨店を営み、結婚もせずひたすら働いてきました。マニー・ローゼン(ジャック・アルバートソン)と妻のベル(シェリー・ウィンタース)は孫に会うための旅で、ベルはかなり太っていますが、面倒見の良い性格。
スーザンとロビンの17歳と12歳の姉弟は活動的で、特にロビンは船に興味があり、この船のこともかなり詳しく知っています。ノニー(キャロル・リンレイ)は船内のステージで歌う歌手。エイカーズ(ロディ・マクドウォール)は、客の世話をするボーイです。彼らが上に部屋に着いた時、大広間には一気に海水がなだれ込んでしまうのでした。
換気口を伝って煙突に出た一行でしたが、梯子を上る途中で爆発がありエイカーズが落下してしまいます。機関室に抜ける通路が浸水していて潜って通り抜ける途中では、スコットを助けたベルが心臓発作で息を引き取ります。
最後の扉を抜ければ最も鉄板の薄いプロペラ室というところで、再び爆発がありリンダが転落。ロゴはお前のせいだとスコットに怒りと悲しみをぶつけるのでした。その時扉の前のバルブから蒸気が噴き出し、通れなくなってしまいます。スコットは通路からバルブに飛びつき、何とか蒸気を止めるのですが、力尽きてロゴに後のことは託して墜落していくのでした。
マーティンはリンダを失い呆然としているロゴに、文句ばかり言ってないで警察官らしく役に立てと檄を飛ばします。ロゴはやっと立ち上がると、先頭に立ちプロペラ室に皆を導きます。そして、外から鉄板を叩く音が聞こえてきたのでした。
最初の人物紹介は比較的簡単で、スコットと行動を共にする人々に関する最低限のエピソードが提示され、開始して30分もしないうちに船は転覆してしまいます。生き残るために行動していく中で、少しずつ各キャラクターの特徴が補強されていく脚本はうまくできています。
主役のスコット牧師は、どんな苦難にあっても前に進む選択しかしない。これはこの映画が伝えたい強烈なメッセージになっています。ただし、誰もがスコットになれるはずはなく、むしろ現実的な人物としてロゴのほうが普通に見えます。マーティンも気遣いの人で、さりげなく縁の下の力持ち的な働きをしています。
このような緊急時には、正しいかどうかは二の次で主観的な行動ができる人間は必要ですが、客観的にサポートする人々が周りにいて物事がうまく運ぶということ。何度見ても、長すぎず短すぎず、スリルのテンションが持続する作りは見事です。