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2023年11月27日月曜日

カサブランカ (1942)

もう言わずと知れた、世界中でこれまでに作られた映画の中でも10本の指に入りそうなくらい有名な作品。ハリウッドのフィルム・ノワールを代表する映画であり、主演したハンフリー・ボガート、イングリッド・バーグマンにとってもまさに代表作と言えます。監督のマイケル・カーティスはもとはユダヤ系ハンガリーの人で、ドイツを経て第1次世界大戦後にアメリカに帰化し、多くの作品に携わりました。

第16回のアカデミー賞において、作品賞、監督賞、脚色賞の三冠を受賞しました。多くの名セリフと共に、元は他のミュージカルのために作られた劇中で歌われる「時の過行くままに(As Time Goes by)」を誰もが知る名曲に押し上げました。

1941年12月、フランス領モロッコが舞台。当時、フランスはナチス・ドイツの傀儡であったヴィシー政権下にありましたが、多くの人々が亡命する経由地としてモロッコは重要な政治的要衝となっていました。

モロッコの旧市街、カサブランカで酒場を経営しているリック(ハンフリー・ボガート)は、闇で飛行機に乗るための通行証を用意しているウーガーテ(ピーター・ローレ)から、ドイツ軍発行の最優先通行証を預かります。

警察署長のルノー(クロード・レインズ)は、ウーガーテが通行証を売る相手がドイツ政府からお尋ね者とされているヴィクター・ラズロ(ポール・ヘンリード)であることをリックに話し、店で逮捕するので邪魔をするなと言います。ウーガーテを捕らえた後、店に訪れたラズロは、イルザ(イングリッド・バーグマン)を連れていました。

リックとイルザはかつてパリで甘い時間を過ごした仲でしたが、ナチスの進軍によりパリが落城する直前、何も理由を告げずにイルザは消えたのでした。イルザの来訪に動揺を隠せないリックを尻目に、ルノーはラズロに明日警察署に来るように伝えます。

ドイツ軍司令官から絶対にカサブランカからは出させないと宣言されたラズロは、ウーガーテが持っていた通行証をリックが持っていること耳にします。ラズロはリックに通行証を売ってくれるように頼みますが、リックは理由はイルザが知っているからと断ります。イルザはリックの元を訪れ、拳銃をリックに向けますが撃てません。

イルザはラズロとすでに結婚していたのですが、収容所で死んだと思っていたのが、パリが落ちる直前に生きていることがわかったのです。リックはルノーに、イルザと出国するが、ラズロが現れるから飛行場で逮捕するように話すのでした。

まぁ、結末も知れ渡っているので今更隠すことはありませんが、一見クールに立ち振る舞うリックという男は、本来は熱い心を持った人情家であり、そういう意味では純粋な「ハードボイルド」ではありません。結局はかつて愛した女性のために、すべてを捨てて助けるという、「しびれる」行動を起こす人物です。

付きまとう女が「昨夜はどこにいたの?」と聞けば「そんな昔の事は覚えていないさ」と答え、さらに「今晩会える?」に対しては「そんな先の事はわからない」と答える・・・って、カッコ良すぎです。イルザとの恋の思い出のキーワードは「Here’s looking at you, kid」というもので、実は映画の中で4回も使われます。

「Here is to ~」は「~に乾杯」という意味で、直訳すれば「君を見ていることに乾杯」という意味ですが、これを日本語に訳したのが「君の瞳に乾杯」という超有名な名セリフ。戦前から戦後にかけて字幕翻訳者として活躍した高瀬鎮夫さんという方が訳しました。

イルザが店のピアノ弾きのサムに、リックとの思い出の曲である「時の過行くままに」をリクエストする時の「あれを弾いて、サム (Play it once,Sam)」もなかなか気が利いたセリフです。これが大好きなウッディ・アレンが脚本を作った映画が「ボギー! 俺も男だ(1972)」で、原題は「Play it again, Sam」です。ボギーはボガートの愛称です。