世間では、クリスマス・イブと呼ばれる24日の前夜祭が派手で、25日はもうケーキは投げ売り状態。クリスマスは、あくまでもイエスの誕生日であり、当然それは25日の今日です。
キリスト教では今日から降誕節に入り、新しい年を迎えて3日間連続でお祝いをするわけです。当然、待降節の間、我慢していた音楽もじゃかじゃかやってかまいません。
そんなわけで、バッハの仕事もにわかにあわただしくなってきます。第1日のためのカンタータは4曲残されています。
BWV63 キリストの徒よ、この日を彫り刻め (1714)
BWV91 讃美を受けたまえ、汝イエス・キリストよ (1724)
BWV110 笑いはわれらの口に満ち (1725)
BWV191 いと高きところには神に栄光あれ (1745)
なんと、すごいことに、どれも初演されたのは12月25日です・・・って、12月25日は固定された祝日ですから、当たり前。
BWV63はワイマール時代に作られたもので、バッハ自身も気に入っていたのか、その後ライプツィヒの最初のクリスマスをはじめ、数回再演していることが確認されています。
管楽器のいかにも楽しげな響きから始まり、またはじけたような合唱が割って入ってくるところは、まさにイエス生誕の喜びにあふれています。
BWV110は、管弦楽組曲第4番の序曲を冒頭合唱に転用しているのが驚きです。また途中のソプラノとテノールの二重唱が印象的ですが、これもマニフィカトBWV243からパロディにしています。
さて、問題はBWV191です。このタイトルは、原題は "Gloria in excelsis Deo" で、これはまさにミサ曲のグロリアにほかなりません。バッハのカンタータで、唯一のラテン語作品なのです。
1733年にザクセン選帝侯に献呈した、キリエとグロリアからなるミサ曲から、グロリアの部分を抜粋した形。ということは、晩年のロ短調ミサ曲への橋渡しになるもので、カンタータとして扱うかは議論の多いところ。
アーノンクール & レオンハルトの全集には収録されておらず、ガーディナーも鈴木もロ短調ミサを収録してから、だいぶ時が経過していますから、注意して聴きたい。
さて、当然ここにさらなる聴くべき音楽があります。
BWV248 クリスマスオラトリオ第一部 歓呼の声を放て、喜び踊れ (1734)
これだけまとめて、楽しげな音楽を聴くと、もうキリスト教徒でなくても、2000年以上昔のイエスの誕生をお祝いする気分になるってものです。