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2014年12月17日水曜日

バッハのカンタータCD

バッハのカンタータ全集いろいろ、というタイトルを書いたのが半年前の事。意外に、このブログへのアクセス数としては、最近のものでは高い。けっこう、同じような趣味の人がいたりするのかと、楽しくなります。

カンタータ素人の自分が探して書き留めたメモみたいなものですが、半年たってだいぶ知識も増えてきましたので、再度まとめてみます。と言っても、新たに全集がふえたわけではありません。

まずは、もう一度、出ている全集の整理から。

約200曲ある教会カンタータを網羅した最初の全集は、ヘルムート・リリング指揮、シュトゥットガルト・バッハ・コレギウム。録音は70~80年代にかけて行われ、モダン楽器によるもので、世俗カンタータも含みます。これはHensslerのバッハ全集にまるごと含まれています。

続いて登場たのが、ニコラス・アーノンクールとグスタフ・レオンハルトが共同制作したもので、古楽器を用いた最初の全集になりました。およそ2/3がアーノンクール、1/3がレオンハルトが担当していて、BWV番号順に収録されています。純粋な世俗や世俗っぽいものは含みません。

TELDECのバッハ全集である「BACH2000」に含まれ、現在はWernerから発売されているバッハ全集として入手可能。バッハのすべての全集としても、カンタータ単独の全集としても、比較的購入しやすい価格です。

クラシックの廉価レーベルとして知られるBrilliantがバッハ全集を制作するに当たり、1999年から2000年に集中的に録音されたのがピーター・ヤン・リューシンク指揮、ネザーランド・バッハ・コレギウムによるもの。当然、一番安い。カンタータのみのボックスもあります。

次がトン・コープマン指揮、アムステルダム・バロック・オーケストラが、1994~2003年にかけて作曲年代順に録音されたもの。途中で挫折しそうになりながらも完成。世俗カンタータ、小ミサ曲、断片なども含みます。ただし、ボックスはあまり出回っていないし、中古でもけっこう値段が高いために、手に入れにくい。せっかくの偉業なのに、聴ける人は数少ないのでは。

そして、1999年のクリスマスからスタートし、1年間かけて毎週教会暦に沿ってライブ演奏する「カンタータ巡礼」の企画を収録したのがジョン・エリオット・ガーディナー指揮、イングリッシュ・バロック・ソロイスト、モンテヴェルディ合唱団 。当初ARCHIVから4枚のCDが発売されましたが頓挫。ガーディナーが自らSDGレーベルを立ち上げこつこつと発売し、先行したArchiv盤も含めた全集として今年完結しました。

自分がメインで聴いているセットはこれですが、価格も良心的で、一番手に入れ易いセットだと思います。ただし、残念ながら世俗カンタータは含まれません。

さらに今年発売されたのが、我が日本の鈴木雅明指揮、バッハ・コレギウム・ジャパンによるもの。1995年からスタートし、スウェーデンのBISレーベルが一貫して高水準の録音で作曲順に世界に発信し続け、昨年完結したもの。世俗カンタータは、現在別に進行中で、今のところ4枚のCDが発売されています。

5月に限定発売されたものの、すぐに完売。来年春に限定再生産が決まりましたが、とにかく値段が高い。それもそのはずで、すべてSACDになっています。清水の舞台から飛び降りた気持ちで、ついつい買ってしまいました。ガーディナー盤と聴き比べながら、楽しんでいます。


以上、全集として完成されたものは6種類。何しろCDで50枚以上必要な量ですから、そうそう簡単に企画制作されるものではありません。いずれも偉業として讃えられるものばかりです。

さて、残念ながら全集とはいきませんが、まとまった録音を残している演奏家もいます。

まずは、いまだに神格化され、バッハならリヒターと言う人が多数存在し、古楽器での演奏が主流になっている現在でも、無視して通り過ぎる事ができないのがねカール・リヒター指揮、ミュンヘン・バッハ・オーケストラ。70~80年代の収録で、CD26枚のセットが発売されています。

最初に出たものは、かなりのプレミアがついていますが、最近廉価なボックスが出ました。ただし、これも売り切れ状態で、安く手に入れるのはなかなか難しいかも。

自分はたまたま、最初のボックスを破格の値段の中古で購入できました。ただし、ガーディナーの古楽演奏から入った者としては、正直この演奏は「大げさ」な感じがしてしまい辛い。

フリッツ・ヴェルナーも、リヒターと同じ時代で、20枚のCDにまとめられボックス化され安く入手可能。ヴィンシャーマンも、まとまった録音を残していて、以前に5枚のCDとしてまとめられましたが、廃盤でほとんど中古も出回っていません。

これらは、いずれもモダン楽器による、古いバッハ解釈、つまり厚化粧のバッハという評価は間違ってはいませんが、バッハを現代世界に広めた功績は消えるものではありません。

80年代以降、古楽器を用いてピリオド奏法による、実像に近づくバッハの素顔が見え隠れする演奏が増えはじめました。いまのところ、最も多くの録音をしているのが、フィリップ・ヘレヴェッヘ指揮、コンソート・ボカーレ・ゲントでしょうか。Harminoa MundiとVirginに20枚程度の録音がありますが、テーマ別に収録していて、全集にしようという感じてはありません。

現役トーマスカントルのビラーがゲバントハウス・オーケストラ、トーマス少年合唱団とともに収録したカンタータ選集は、 テーマ別でCD10枚が発売されていて、真のバッハの音楽の一面を聴くことができます。

1982年にジョシュア・リフキンが提唱したOVPP方式は、当初受け入れられませんでしたが、本人が実証しようと数枚のカンタータCDを制作しています。それらは、とにかくやってみた感は否めません。面白いのは、バッハ・コンチェルティノ大阪と組んで、一部だけが残されている「満ち足れるプライセの都よ(BWV216)」復元演奏というのがあったりします。

しかし、バッハがそんなに大人数の歌手や楽器奏者を集めることはできなかっただろうことは、数々の研究でも認められるようになり、賛同する演奏は着実に増えています。




確かに、毎週教会にコンサート規模の人数を集めて演奏会をするというのは、現代であっても現実的とは思えませんから、少人数の室内楽としての音の方が、300年前のライプツィヒを再現しているように思えます。

現在本気でOVPPに取り組んで成功しているのがシギヴァルド・クイケン。レオンハルトから受け継いだ手兵のラ・プティット・バンドとともに、2006年からスタートし、教会暦に沿ってセレクトして現在までに18枚のCDがSACDで発売されています。

もともと20枚のセットとして計画されたようで、もう少しでゴール。ところが、計画は遅れ気味で、なおかつ政府からの補助金がなくなり名門ラ・プティット・バンドそのものの存続が危ぶまれていて心配です。そういう状況では、当然全集は無理でしょうね。

同じくOVPP方式で、なかなか秀逸な録音をいくつか行っているのが、ピエール・ピエロットと彼が率いるリチュルカーレ・コンソート。 テーマを決めたアルバムが数枚でていますが、深みのある優秀な録音によって、人数の少なさをうまくカバーしているところもあり、今後が期待されます。

特に、カンタータではありませんが、マグニフィカトのOVPPは、他には見つけられません。祝典的な華麗な冒頭ですが、人数の少なさはほとんど気になりません。

あと、ちよっと興味があるのですが、CDが高いので手が出ないものに、ルドルフ・ルッツ指揮、バッハ財団の演奏というシリーズが出ています。一応、全曲制覇する予定らしいのですが、櫻田亮なども参加していたりして注目ではあります。

番外として、ヘルヴィヒが偽作とされるカンタータ集を収録したものがあり、BWV番号の抜けたところにどんな音楽があったのかという興味を満たしてくれる、なかなか面白いものです。

カンタータ趣味事始からまだ1年の初心者ですから、まだまだ把握できていないものも多数あることと思いますが、今のところこのくらいをセレクトできれば十分かなと思っています。